彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

感情、知性の複合体 1

女からの食事の催促は、思いやりも配慮も気遣いも一切なく、挨拶さえないたったの一語。

先は見えたと思い、その程度の奴だと軽く玖未の耳に入れておく。玖未は疑問にも不快にも思っていないが、客観的にはその程度の奴だと。

このワンクッションがあるのと無いのとでは、変事の受け止め方がずいぶんと変わってくる。

指定したのは須藤が組でも会社でもよく使うシティホテルだ。

決して大きなホテルではないしリゾートホテルでもないが、その規模だからこそ2フロア貸し切りなどといった要望に応えてくれる。

プールやスパが併設されていて複数のレストランがある。大きなエントランスやフロントがあり、ドアマンがいてコンシェルジュサービスやバトラーサービスがある、ビジネスホテルとは全く違うホテルだ。

「玖未、明日はこれな」

結局まだ俺のよく行く店へも行けていないので、食事のためのブラックドレスを帰りに購入してきた。

「そっか…ホテルで食事ってこういうことから準備を始めるんだね…知らなかった…」
「大丈夫だ。これから何度もある」
「うん、ありがと。プリーツネックが可愛い」
「ん。髪、どうする？今日裕子さんと会社で会って食事に行く話をしたら、玖未の髪をセットしようか？って言ってたぞ。食事の邪魔にならないのがスマートだとか、何とか…」
「そうだね…そういう風に教えてもらえるのはありがたいから…お願いしようかな？」
「自分で電話するか？」
「うん」
「あと、ピアスをこのパールにしろ」
「わ…ぁ…悠仁…嬉しい…」

その言葉と表情で俺は満足だ…こういうのが欲しかったと物語っている。

クリスタルフラワーが耳たぶに咲き、その下に小さな2粒のパールが揺れるピアス。髪をセットするのであれば、ブラックドレスに映えるな。