さまよう綸◆◆若頭からの求愛…迷惑だわ◆◆ 【完結】

まぁ

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第三話 6

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「自分では怖い…けど殺してくれるなら…嬉しい……自分で死ぬ勇気はなかったので…その時…施設を出てから10年はとりあえず生きて…その間に死ななければもう…」
「もう?どうすんの?その時は自分で死ぬ?」

 先生は何も答えない私の足首に少し触れ、炎症を抑えるであろう薬を優しく塗りながら

「綸ちゃん、いくつや?」
「27です」
「ほな、施設出て10年って…」
「来年です」
「ほんで、こんなに物を持たへん生活してるん?」

 テーピングを手慣れた手つきでしてくれた先生は

「どこか痛くなってへんか?」

 と、テーピングをバックに片付けながら聞く。首を横へ振ると

「ホンマか?来年死ぬにしても体の不調は残さん方がええで」

 と先生が恐い真顔で言う。

「先生は、私が死にたいと言っても…何も言わないし聞かない…ありがと」
「正宗の周りにはいろんな奴がおるからな…大抵のことじゃ驚かんわ」

 結局先生は私の体中を確認しやっと治療具をバックに片付けた。

「先生…この重箱…持って帰ってください」
「なんで?」
「…もらった食べ物…食べたくないから」
「なんで?」
「小学生の時…何回も…数えきれないほど…親がいないこと、施設育ちなこと…口々にいろいろ言われて…食べ物あげるとかそんな優しい言葉じゃなく…物乞いしろとか…恵んでやるとか…ね。言われるだけでなく、渡された物に…虫が入ってたこともある…まあ先生いま話し切れないほどです…それにこれを置いて行かれてから…久しぶりにその頃の夢を見ていました…先生が来るまで…最悪の気分です」

 起き上がって座る私の頭をゴツゴツした分厚い手で撫でながら、先生は私に言い聞かせるように真っ直ぐ目を見て言う。

「その時の物と、この正宗の持ってきた重箱の意味は全然違うで。これは恵んでる訳やなくて、正宗の気持ちや。周りに人はいるがあいつも産まれた時から特殊な立場やからな…綸ちゃんが誰にも寄りかからんとピンと張り詰めた空気を持ってるのを自分と同じように感じてるんとちゃうか?ほんで惹き付けられてるんとちゃうかなと…まあわしの予想やけど、そう外れてもないやろ」

 先生は重箱の蓋を開け私に箸を持たせると、自分も箸を持ち皿に数種類おかずとお握りを乗せ私の前に置いた。

「わしも一緒に食べるわ。毒も何も入ってへんからな。これ…作ったん本家の奴やろな…うまそうやん。いただこか」
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