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第九話 19
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「はい、国府力哉付き、樋川と申します」
「駒村綸です。治療ありがとうございました」
「いえ、こちらの管理不行き届きで誠に申し訳ございません」
「樋川先生、あの…今日お風呂入っていいですか?」
潤と駿が笑いを堪える気配がし、駿が耐えきれず声を発した。
「あーっ、綸ちゃんもうここに興味なくなったんだね。お風呂って笑わせないでくれよ」
「普通に大切なことじゃない?熱の時もケガした時も基本は寝て治すけど悪化するならお風呂は避けるべきでしょ?」
素で話をする駿と話しているとリンカさんに呼ばれた。
「マコちゃん…私たちがやったんじゃないよね…高須様やオーナーにそう言ってもらえないかしら?」
「いいですよ。リンカさんたちは何もしていない」
そう言うと正宗に向かって
「もう帰る?」
「ああ。力哉、こいつらを二度と俺たちの前に出すなよ」
「承知。処分後、ご報告と正式な謝罪は本家へ伺いますので、よろしくお願いいたします」
オーナーが頭を下げると
「えっ、何もしていないってマコちゃんも言ってる…」
「そんな事が通用しますか?マコちゃんの髪のカール部分は意図的でないと首筋に当たらないわ」
ママの言葉にドレスが広く開いた胸元を赤くした二人は項垂れた。
リンカさんたちは樋川さんたちにどこかに連れて行かれたが、樋川さんはすぐに戻って入浴の注意点を教えてくれお薬をくれた。
「もう明日も来ないだろうし、マコは終わりで綸ちゃんと呼ぶよ。俺の事はリッキーと呼んで」
「綸、呼ばなくていいぞ」
「おい、正宗。お前そんなに心の狭い男なのか?綸ちゃん、こんな奴でいいの?」
二人の話をこっちに振らないで…
「正宗、リッキー…二人とも面倒くさい」
「「ぶっわっ…はっ」」
双子も面倒だな…でももう体力の限界だ。火傷のヒリヒリに耐えながら接客したのは思いの外疲れたみたい。膝に掛かる毛布を掴み少し引き上げると瞼を閉じた。正宗の腕の中で意識を手放した私は、その後の4人の会話を全く知らない。
「綸ちゃんの表情はそそられるな。俺…落ちたかも」
「おお。リッキー、正宗と同じような事を言うね」
「ゾクゾクするよな?正宗」
「ふざけるな、綸は俺のだ」
「綸ちゃんは正宗ほどまだ落ちてないだろ?そりゃ、そうして眠るくらいの安心感はあるだろうが火傷の事も言わなかったし…」
「綸のこと何も知らずに語るな、うぜぇ」
こうしてキャバクラのアルバイトはこの日を以て終了してしまい、火傷は完治まで2週間かかった。
「駒村綸です。治療ありがとうございました」
「いえ、こちらの管理不行き届きで誠に申し訳ございません」
「樋川先生、あの…今日お風呂入っていいですか?」
潤と駿が笑いを堪える気配がし、駿が耐えきれず声を発した。
「あーっ、綸ちゃんもうここに興味なくなったんだね。お風呂って笑わせないでくれよ」
「普通に大切なことじゃない?熱の時もケガした時も基本は寝て治すけど悪化するならお風呂は避けるべきでしょ?」
素で話をする駿と話しているとリンカさんに呼ばれた。
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「いいですよ。リンカさんたちは何もしていない」
そう言うと正宗に向かって
「もう帰る?」
「ああ。力哉、こいつらを二度と俺たちの前に出すなよ」
「承知。処分後、ご報告と正式な謝罪は本家へ伺いますので、よろしくお願いいたします」
オーナーが頭を下げると
「えっ、何もしていないってマコちゃんも言ってる…」
「そんな事が通用しますか?マコちゃんの髪のカール部分は意図的でないと首筋に当たらないわ」
ママの言葉にドレスが広く開いた胸元を赤くした二人は項垂れた。
リンカさんたちは樋川さんたちにどこかに連れて行かれたが、樋川さんはすぐに戻って入浴の注意点を教えてくれお薬をくれた。
「もう明日も来ないだろうし、マコは終わりで綸ちゃんと呼ぶよ。俺の事はリッキーと呼んで」
「綸、呼ばなくていいぞ」
「おい、正宗。お前そんなに心の狭い男なのか?綸ちゃん、こんな奴でいいの?」
二人の話をこっちに振らないで…
「正宗、リッキー…二人とも面倒くさい」
「「ぶっわっ…はっ」」
双子も面倒だな…でももう体力の限界だ。火傷のヒリヒリに耐えながら接客したのは思いの外疲れたみたい。膝に掛かる毛布を掴み少し引き上げると瞼を閉じた。正宗の腕の中で意識を手放した私は、その後の4人の会話を全く知らない。
「綸ちゃんの表情はそそられるな。俺…落ちたかも」
「おお。リッキー、正宗と同じような事を言うね」
「ゾクゾクするよな?正宗」
「ふざけるな、綸は俺のだ」
「綸ちゃんは正宗ほどまだ落ちてないだろ?そりゃ、そうして眠るくらいの安心感はあるだろうが火傷の事も言わなかったし…」
「綸のこと何も知らずに語るな、うぜぇ」
こうしてキャバクラのアルバイトはこの日を以て終了してしまい、火傷は完治まで2週間かかった。
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