91 / 340
第十話 4
しおりを挟む
「余裕?わからないけど…今って緊張すべきところ?」
男二人が笑いをこらえたのがわかり何となくこの場を離れようと
「さっさと済まそう」
と言った時、男二人と潤たちの笑い声が廊下に響く。正宗は気にせず
「行くぞ」
と同時に勢いよく内障子を開けた。正宗に手を引かれ中央の座布団に向かう間に部屋を見渡すと30数人といったところか、黒スーツの中に今泉先生を見つけると先生がこちらへ手を上げるので小さく手を振った。座るまでに組長らしき人から声が掛かる。
「廊下から賑やかに聞こえてたな。正宗いつもこんな感じなのかお前?」
「潤と駿がうるさい」
「「いやいや、綸ちゃんが…」」
と二人は、はっと口を閉じ「「失礼しました」」と下がった。綸、小さく声を掛けられ正宗と並んで座る。ああ…正座はあの捻挫を思い出すくらいには足首に違和感を与えるな…大丈夫かな?なるべく負担のかからない箇所をごそごそと探すと、姐さんがにっこり言った。
「あら~正宗は正座も満足に出来ない娘を連れて来たの?」
正宗が何も答えないので私も黙ってやり過ごす。
「綸ちゃん、足首の靭帯が一部伸びたままやから正座はきついんやろ?車から飛び降りるようなやんちゃするからな。椅子かサポーター持って来ようか?」
今泉先生の関西弁が聞こえたのには答える。
「先生、ありがとう。いまゆっくり伸ばしたからもう大丈夫です。帰りはサポーター欲しいかも…」
と言いきる前に隣から腕が伸び一瞬で正宗の胡座の中に収まった。
「っちょっ…正宗、下ろして…ここでこれは流石におかしいでしょ?」
「何故?」
「はっ?何故?こっちが聞きたいくらいよ、何故この態勢?」
「綸の足を守ってるからだろ?」
「ねぇ…TPOって知ってる?」
「ああ」
「うそ…時と場所、場合に合わせて行動や言動をわきまえるってことだよ」
「綸の足に合わせて行動した俺は正しい」
「「「「「ぶわっはぁ…はっ」」」」」
広い和室が低い爆笑に包まれびくっとしながら前を見ると正宗に良く似た組長も声を上げて笑い、人二人分ほど開けて座る姐さんは唇を噛みしめている。
男二人が笑いをこらえたのがわかり何となくこの場を離れようと
「さっさと済まそう」
と言った時、男二人と潤たちの笑い声が廊下に響く。正宗は気にせず
「行くぞ」
と同時に勢いよく内障子を開けた。正宗に手を引かれ中央の座布団に向かう間に部屋を見渡すと30数人といったところか、黒スーツの中に今泉先生を見つけると先生がこちらへ手を上げるので小さく手を振った。座るまでに組長らしき人から声が掛かる。
「廊下から賑やかに聞こえてたな。正宗いつもこんな感じなのかお前?」
「潤と駿がうるさい」
「「いやいや、綸ちゃんが…」」
と二人は、はっと口を閉じ「「失礼しました」」と下がった。綸、小さく声を掛けられ正宗と並んで座る。ああ…正座はあの捻挫を思い出すくらいには足首に違和感を与えるな…大丈夫かな?なるべく負担のかからない箇所をごそごそと探すと、姐さんがにっこり言った。
「あら~正宗は正座も満足に出来ない娘を連れて来たの?」
正宗が何も答えないので私も黙ってやり過ごす。
「綸ちゃん、足首の靭帯が一部伸びたままやから正座はきついんやろ?車から飛び降りるようなやんちゃするからな。椅子かサポーター持って来ようか?」
今泉先生の関西弁が聞こえたのには答える。
「先生、ありがとう。いまゆっくり伸ばしたからもう大丈夫です。帰りはサポーター欲しいかも…」
と言いきる前に隣から腕が伸び一瞬で正宗の胡座の中に収まった。
「っちょっ…正宗、下ろして…ここでこれは流石におかしいでしょ?」
「何故?」
「はっ?何故?こっちが聞きたいくらいよ、何故この態勢?」
「綸の足を守ってるからだろ?」
「ねぇ…TPOって知ってる?」
「ああ」
「うそ…時と場所、場合に合わせて行動や言動をわきまえるってことだよ」
「綸の足に合わせて行動した俺は正しい」
「「「「「ぶわっはぁ…はっ」」」」」
広い和室が低い爆笑に包まれびくっとしながら前を見ると正宗に良く似た組長も声を上げて笑い、人二人分ほど開けて座る姐さんは唇を噛みしめている。
150
あなたにおすすめの小説
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
不埒な社長と熱い一夜を過ごしたら、溺愛沼に堕とされました
加地アヤメ
恋愛
カフェの新規開発を担当する三十歳の真白。仕事は充実しているし、今更恋愛をするのもいろいろと面倒くさい。気付けばすっかり、おひとり様生活を満喫していた。そんなある日、仕事相手のイケメン社長・八子と脳が溶けるような濃密な一夜を経験してしまう。色恋に長けていそうな極上のモテ男とのあり得ない事態に、きっとワンナイトの遊びだろうとサクッと脳内消去するはずが……真摯な告白と容赦ないアプローチで大人の恋に強制参加!? 「俺が本気だってこと、まだ分からない?」不埒で一途なイケメン社長と、恋愛脳退化中の残念OLの蕩けるまじラブ!
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる