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乙女ゲームのモブに転生してしまった「彼女」の懸念事項
校舎裏でのやりとり 前編
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放課後のチャイムが鳴り始めたころ、俺は急に不機嫌になったエリザさんをなだめてから、そのまま校舎裏に来た。
俺を呼び出した。女の子を待つためだ。
俺は、校舎裏の花壇の前に立ち、左右に注意しながら、周囲を念入りに確認する。
どうやら、まだお相手は来てはいないようだ。
辺りには、人っ子一人いやしない。ただの雑木林だ。
まだ見ぬ彼女が一体どういう目的で俺を呼びつけたのか、俺はその事に多少なりとも思いを廻らせた。
とはいえ、その理由は深く考えずともすぐに分かる。きっと愛の告白かなにかなのだろう……クラウディンは色々と女の子から黄色い声援を浴びるし、モテるからな。
たとえ他人の体とはいえ、クラウディンには、エリザさんと言うきちんとした婚約者がいるわけで、どんな美しい人であれ断らなければなるまい。
だから、俺が別に彼を僻んでいるという訳ではない。まじだ。まじで僻んでいる訳ではない。
「やぁ、クラウディン。待たせたかい?」
俺はソプラノの音色をした声の方を振り向いた。
かなりのイケメンがそこに立っていた。
そう、男だ。男が立っていた。それもよく知る、青髪の男だ。彼は前髪はさらさらと揺れ、口元から覗かせる前歯が、夕焼けにきらりと光った。まじかよ。
「確か俺を呼んだのは、女の子のはずなんだけどな」
……リーレイだ。
出生である教皇の息子という立場からは全く考えられないようないい加減な性格でよく女の子と遊んでそうなくせに、なぜか爽やかそうで、結局コハナチャンの横にいる。猪突猛進なフィンと比べなくても、つかみどころが無くてよく分からない男というのが俺の彼への評価だった。
「騙したみたいで悪いね。でも校舎裏に呼んだのが僕だと知っていたら、きっと君はこなかっただろう?」
見事な肩透かしを受けて数秒呆けていた俺は、バカな面構えになっていたかもしれない。
「確かに、その可能性は低くは無いね」
リーレイの言葉は事実だった。
もしも彼が俺を呼び出したと知っていたら、きっと何かしらの理由をつけて俺はここに来ることはなかった。まんまと誘い出されてしまったというわけだ。もう少し慎重になるべきだったか、確かに女の子から告白されるかもと、浮かれていた気持ちもなくはない。数分前のバカな自分を哀れに思うよ。
「で、俺を呼び出した用はなんだい?手短に済ませていただけると嬉しいんだけどね」
「用件、用件ね……」
リーレイは、自分の前髪をクルクル指でいじり始めた。なにか言いづらい理由でもあるのだろうか?彼は神妙な面持ちで、その行動を繰り返していた。
「皆出てきてくれないか」
リーレイがおもむろにそういうと、手前の雑木林から、ガサガサと音をたて、ゾロゾロと人が出てきた。しかもそれは俺がよく知る人物達だ。
ちょっと前までは一緒にいることが多かったコハナチャン、フィンに、それに、確か後輩のアルト君だっけ。
その三人が何て表現するのか適切なのかわからない、苦々しい表情をして現れた。
一体、なんだというのだ。
まさか、イジメか。イジメなのか!?イジメで、袋叩きなのか?
俺の頬に一筋の汗がにじんだ。
正直、偽って俺を呼び出すなんて、それくらいしか理由は思いつかない。
こないだのエリザさんの件で彼らとはひと悶着あったばかりだ。もしかしたら、それで因縁をつけられたのかもしれない。確かに、あの時は俺も言いすぎたのかもしれない、と若干の後悔はあったが……
「ごめんなさい!」
茂みの奥にいたコハナちゃんは、意を決したようにクリーム色の髪の毛を揺らせた。
開口一番に聞こえたのは、そんな言葉だった。身構えていた俺が、拍子抜けして、ポカンとしていたのはいうまでもない。
「……すまん」
「ごめんなさい、勝手に疑ったりして」
続いて、フィンに、アルトが謝罪の言葉を言う。はて、何のことを謝っているのか。心辺りはないが……
そう俺が心当たりを探っていると、リーレイは言葉を続けた。
「こないだのエリザさんの件で皆君に謝りたかったんだ。勝手に彼女が犯人だと疑って君やエリザさんに迷惑をかけただろう。すまなかったね。後で、調べて分かったがが、あれは僕らの完全な誤解だったんだ。エリザ嬢が噂をしていたというやつも見つけたよ。申し訳ない」
彼の言葉になるほどと納得したと同時に、ある種の苛立ちが俺の中に芽生えた。
気付けば、俺は右手を強くにぎりしめていた。
確かに彼らのやり方は嬉しい。
あの日、俺も結構彼らに辛らつなことを言ったというのに、それを自分達に一方的に非があると認めて、直接謝ってくれるなんて。でも、なぜそれを俺に言うんだ?俺が苛立ちを覚えたのは、そこだった。しょせん俺はエリザさんを庇っただけに過ぎないわけで、謝るならエリザさんに直接謝るのが筋じゃないのか。
「……それで、よかったら君から口ぞえをして頂けないかな」
リーレイは言葉を続けて、さらに、申し訳なさそうに頭を下げてくる。
「まぁ、わかったよ……」
俺は、一度深呼吸して、自分の怒りを抑えて、そう告げた。
彼らの言葉に納得は出来ない。だが、一定の理解は出来る。俺が仲介して、エリザさんとコハナちゃんたちの仲を取り持つ。冷静に考えれば、それがお互いの妥協点だろうな。たぶん、直接エリザさんに謝っても、色々とまたこじらせることになるのは、目に見えていたし、学園での彼らの立場もある。俺が上手く動いて、丸く収まるならそれが一番いい。
「……俺は、納得したわけじゃないけどな」
フィンだけは、納得していないという風にそう呟いた。
俺を呼び出した。女の子を待つためだ。
俺は、校舎裏の花壇の前に立ち、左右に注意しながら、周囲を念入りに確認する。
どうやら、まだお相手は来てはいないようだ。
辺りには、人っ子一人いやしない。ただの雑木林だ。
まだ見ぬ彼女が一体どういう目的で俺を呼びつけたのか、俺はその事に多少なりとも思いを廻らせた。
とはいえ、その理由は深く考えずともすぐに分かる。きっと愛の告白かなにかなのだろう……クラウディンは色々と女の子から黄色い声援を浴びるし、モテるからな。
たとえ他人の体とはいえ、クラウディンには、エリザさんと言うきちんとした婚約者がいるわけで、どんな美しい人であれ断らなければなるまい。
だから、俺が別に彼を僻んでいるという訳ではない。まじだ。まじで僻んでいる訳ではない。
「やぁ、クラウディン。待たせたかい?」
俺はソプラノの音色をした声の方を振り向いた。
かなりのイケメンがそこに立っていた。
そう、男だ。男が立っていた。それもよく知る、青髪の男だ。彼は前髪はさらさらと揺れ、口元から覗かせる前歯が、夕焼けにきらりと光った。まじかよ。
「確か俺を呼んだのは、女の子のはずなんだけどな」
……リーレイだ。
出生である教皇の息子という立場からは全く考えられないようないい加減な性格でよく女の子と遊んでそうなくせに、なぜか爽やかそうで、結局コハナチャンの横にいる。猪突猛進なフィンと比べなくても、つかみどころが無くてよく分からない男というのが俺の彼への評価だった。
「騙したみたいで悪いね。でも校舎裏に呼んだのが僕だと知っていたら、きっと君はこなかっただろう?」
見事な肩透かしを受けて数秒呆けていた俺は、バカな面構えになっていたかもしれない。
「確かに、その可能性は低くは無いね」
リーレイの言葉は事実だった。
もしも彼が俺を呼び出したと知っていたら、きっと何かしらの理由をつけて俺はここに来ることはなかった。まんまと誘い出されてしまったというわけだ。もう少し慎重になるべきだったか、確かに女の子から告白されるかもと、浮かれていた気持ちもなくはない。数分前のバカな自分を哀れに思うよ。
「で、俺を呼び出した用はなんだい?手短に済ませていただけると嬉しいんだけどね」
「用件、用件ね……」
リーレイは、自分の前髪をクルクル指でいじり始めた。なにか言いづらい理由でもあるのだろうか?彼は神妙な面持ちで、その行動を繰り返していた。
「皆出てきてくれないか」
リーレイがおもむろにそういうと、手前の雑木林から、ガサガサと音をたて、ゾロゾロと人が出てきた。しかもそれは俺がよく知る人物達だ。
ちょっと前までは一緒にいることが多かったコハナチャン、フィンに、それに、確か後輩のアルト君だっけ。
その三人が何て表現するのか適切なのかわからない、苦々しい表情をして現れた。
一体、なんだというのだ。
まさか、イジメか。イジメなのか!?イジメで、袋叩きなのか?
俺の頬に一筋の汗がにじんだ。
正直、偽って俺を呼び出すなんて、それくらいしか理由は思いつかない。
こないだのエリザさんの件で彼らとはひと悶着あったばかりだ。もしかしたら、それで因縁をつけられたのかもしれない。確かに、あの時は俺も言いすぎたのかもしれない、と若干の後悔はあったが……
「ごめんなさい!」
茂みの奥にいたコハナちゃんは、意を決したようにクリーム色の髪の毛を揺らせた。
開口一番に聞こえたのは、そんな言葉だった。身構えていた俺が、拍子抜けして、ポカンとしていたのはいうまでもない。
「……すまん」
「ごめんなさい、勝手に疑ったりして」
続いて、フィンに、アルトが謝罪の言葉を言う。はて、何のことを謝っているのか。心辺りはないが……
そう俺が心当たりを探っていると、リーレイは言葉を続けた。
「こないだのエリザさんの件で皆君に謝りたかったんだ。勝手に彼女が犯人だと疑って君やエリザさんに迷惑をかけただろう。すまなかったね。後で、調べて分かったがが、あれは僕らの完全な誤解だったんだ。エリザ嬢が噂をしていたというやつも見つけたよ。申し訳ない」
彼の言葉になるほどと納得したと同時に、ある種の苛立ちが俺の中に芽生えた。
気付けば、俺は右手を強くにぎりしめていた。
確かに彼らのやり方は嬉しい。
あの日、俺も結構彼らに辛らつなことを言ったというのに、それを自分達に一方的に非があると認めて、直接謝ってくれるなんて。でも、なぜそれを俺に言うんだ?俺が苛立ちを覚えたのは、そこだった。しょせん俺はエリザさんを庇っただけに過ぎないわけで、謝るならエリザさんに直接謝るのが筋じゃないのか。
「……それで、よかったら君から口ぞえをして頂けないかな」
リーレイは言葉を続けて、さらに、申し訳なさそうに頭を下げてくる。
「まぁ、わかったよ……」
俺は、一度深呼吸して、自分の怒りを抑えて、そう告げた。
彼らの言葉に納得は出来ない。だが、一定の理解は出来る。俺が仲介して、エリザさんとコハナちゃんたちの仲を取り持つ。冷静に考えれば、それがお互いの妥協点だろうな。たぶん、直接エリザさんに謝っても、色々とまたこじらせることになるのは、目に見えていたし、学園での彼らの立場もある。俺が上手く動いて、丸く収まるならそれが一番いい。
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フィンだけは、納得していないという風にそう呟いた。
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