津軽藩以前

かんから

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鹿角合戦 永禄十二年(1569)秋

他国者とは 3-1

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 梅が咲く。その薄い花弁は、潮風でひらりと舞い落ちる。池の水に浮かび、鯉が餌だと勘違いをして口を開ける。この有り様はなんと平和なことか。

 ここは鯵ヶ沢、津軽きっての港町。大浦家が種里城に本拠を置いていたころより、重点的に保護してきた。種里より赤石川を下れば、かの地につながる。……港から得られる利益は多い。
 南部氏は代々大陸的な統治志向で、海には目を向いていない。そんな中でも大浦家は、海洋的な性格も持ち合わせていた。かつてこのあたりは安東領であったためだろうか。

 ……船問屋、長谷川理右衛門の屋敷。為信は礼をいいに彼の元へ訪ねていた。新たなる家来と会うためでもあった。三人はござに座りながら話す。

 家来は言う。

 「……小笠原と申す。」

 この恰幅のいい男。万次はこやつがいいだろうと、理右衛門に預けた。為信は小笠原に問う。

 「出身はどこだ。」


 「……信州深志です。」

 小笠原は愛想がないというか、……表情がない。

 理右衛門は微笑みながら言葉を加えた。

 「寡黙ですが、真面目な男と伺っております。小笠原殿に加えて、科尻とがしりと鵠沼《くげぬま》と申す者も小笠原殿に付けてほしいと仰せでした。」

 「では、その二人も信州か。」

 「はい。武田から逃げてきた者同士だそうです。」

 武田のう……。日の本で一番強い大名だ。はるばるこちらに逃げてきたか。

 「よし、小笠原。下がってよいぞ。」

 小笠原は一礼をし、襖を閉めて去る。為信は息をついた。彼のことを哀れだとも思えたが、偽一揆での出来事……簡単に感情を入れることはできなくなっていた。

 「なあ……理右衛門よ……
。」

 お主は、他国者をどう思う。
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