津軽藩以前

かんから

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鹿角合戦 永禄十二年(1569)秋

南部の跡継ぎ 4-2

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信直らは花輪の陣中に戻った。為信ら諸将は兄弟の周りに集まる。席に座ることなくその場で信直を囲み、立ち話を始めた。

 石川家筆頭家臣の大光寺は、顔をしかめる。

「……大変なことになりましたな。」

 信直は言葉を返す。

「これで決着をつけてしまうとは……豪快な大殿らしい。」

 ひやりとした汗が、信直の頬を伝う。弟の政信は言った。

「はたして……父上は存じておるのでしょうか。」

 信直は口を歪ませる。

「うむ……。」

 “もしかして、父上が邪魔であったか”

 “……確かに、父上のいる前ではあのようなことは言えまい”

 “……どうなさいます”

 皆、悩みこむ。そんな中、大光寺はある提案をした。

「夜駆けでしょうな。」

 “九戸に手柄をとられる前に、城を落とすしかない”

 “その実、あちらも同じことを考えているやも”

 考える中に突然、信直は閃く。話し合いの輪を抜け、陣中の上座に腰を下ろした。そして周りに叫ぶ。

「おい、地図を持ってこい。」

 政信は家来から大きな布に描かれた地図を渡されると、それを持って信直の隣に駆け寄った。手前の机に布を広げる。諸将は信直の周りに集まって、立ったまま共に地図を眺める。

「……北や東から攻め入るとき、この丘が厄介だ。」

 信直は指さす。その丘の草むらを避けてみても、小川が城を囲んでいる。さらには乗り越えたところで、城へと駆け上がる目前の土堀。矢じりがこちらへ向く。敵にとってたいそう守りやすいだろう。
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