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立ちはだかる業火
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──…やっぱり、笑わないんだよなぁ…
レグ=ディーユへ向かう道中、前を歩く姉妹を見つつ、フィーズは空を仰いだ。姉が楽しそうに歩いている横で、無表情に淡々と歩く妹。傍から見れば、立場を逆に捕らえられてもおかしくない状況だった。それでも一切笑わないリディルに、フィーズはチクリと胸を痛めた。
「あ、ラテュル、リディル! 次の分かれ道を左な!」
「はーい、次を左ですね!」
地図を持っているフィーズが指示をすれば、必ず返事をするのはラテュルだった。リディルも全く聞いていないわけではないのだが、視線を交わすこともなく、ひたすら指示通りに進んで行くだけであった。
前の姉妹だけではない。自分の一歩後ろを歩くテイザーも、未だ警戒心を解く気配が無い。道順を指示してラテュルが応える度に、後ろからの強い視線に悪寒が走ることも度々あったほどだった。そんな気の抜けない状況に軽くため息を吐く。
それからしばらく進み、フィーズの指示通り、分かれ道に突き当たった。そこを左へ進もうとした、その時…
「たっ、助けてーー!!!」
「!?」
一行のもとへ、右の道から一人の女性が走って来た。血相を変えて、道の窪みに足を取られそうになりながら、助けを求めている。思わずラテュルが女性に駆け寄る。
「大丈夫ですか!? 一体どうされたのです?」
「こっ…子供が…!」
「子供?」
「街の子供たちが通う学校が火事に…!!」
「なんだと…!? 消防は!?」
「それが、人手も水も足りなくて…! 不幸にも、水魔法を主流にしている使い手がみんな出払っていて…」
「……っ」
「リディル!?」
咄嗟にリディルは右の道へ走り出した。フィーズとテイザーも後を追う。ラテュルは女性を支えながら、ゆっくりと追っていった。
「リディル! お前、水魔法使えるのか!?」
「武器に水を纏わせる程度ならね!」
「はぁっ!? 消火まではできないのか!? じゃあ他に策でもあるのか!?」
「何もない! 現場を見てみないとわからない!」
「え、ちょっ…行き当たりばったりかよ!!」
彼女の行動に感心しつつ、不安が大きく占めているフィーズ。それでも止まらない彼女を追って、火事の現場へ駆けつけた。
しばらく走り、ようやく現場に到着した。見れば、なんとか子供たちの救出が終わりそうな状況だった。建物の炎は、消火が行き届いていない為か、更に激しく燃え上がっている。一部では、小規模の爆発のような炎も見える。
「…これはもう、建物はダメね…」
「子供たちはここにいる人数で全員か?」
「あ、はい…おそらく…これから点呼して確認を…」
「待って! 二人いない!」
「二人!?」
教師と見られる女性が、青ざめた表情で建物を見つめた。炎は、既に最上階まで達していることが見てとれる。絶望的な状況に、膝から崩れ落ちる者もいた。
それを横目に、リディルは周りを見渡した。
「………」
「リディル…?」
不思議に思ったフィーズが、声をかけたちょうどその時、消火の為の水が学校前に大量に運び込まれた。それを見たリディルはすぐに駆け寄り、バケツに入れた水を自ら被った。
フィーズはもちろん、周囲の人々は驚いていた。
「!? おいっ!?」
「まだ救出できてない子供たちの名前は?」
「え…っ? あ、フルーナとミリル、です…どちらも女の子です」
「わかった」
「ちょっ、おい! リディル! お前なんて無茶な…」
「まだ助かるかもしれないなら、ここで動かないわけにはいかないでしょう? 消火を待っていたら、中の二人が危険だわ」
「だからって…!」
必死に止めようと口を開くフィーズだったが、彼女の強い眼に圧倒された。そして一息吐くと、自分もバケツに汲んだ水を被った。
レグ=ディーユへ向かう道中、前を歩く姉妹を見つつ、フィーズは空を仰いだ。姉が楽しそうに歩いている横で、無表情に淡々と歩く妹。傍から見れば、立場を逆に捕らえられてもおかしくない状況だった。それでも一切笑わないリディルに、フィーズはチクリと胸を痛めた。
「あ、ラテュル、リディル! 次の分かれ道を左な!」
「はーい、次を左ですね!」
地図を持っているフィーズが指示をすれば、必ず返事をするのはラテュルだった。リディルも全く聞いていないわけではないのだが、視線を交わすこともなく、ひたすら指示通りに進んで行くだけであった。
前の姉妹だけではない。自分の一歩後ろを歩くテイザーも、未だ警戒心を解く気配が無い。道順を指示してラテュルが応える度に、後ろからの強い視線に悪寒が走ることも度々あったほどだった。そんな気の抜けない状況に軽くため息を吐く。
それからしばらく進み、フィーズの指示通り、分かれ道に突き当たった。そこを左へ進もうとした、その時…
「たっ、助けてーー!!!」
「!?」
一行のもとへ、右の道から一人の女性が走って来た。血相を変えて、道の窪みに足を取られそうになりながら、助けを求めている。思わずラテュルが女性に駆け寄る。
「大丈夫ですか!? 一体どうされたのです?」
「こっ…子供が…!」
「子供?」
「街の子供たちが通う学校が火事に…!!」
「なんだと…!? 消防は!?」
「それが、人手も水も足りなくて…! 不幸にも、水魔法を主流にしている使い手がみんな出払っていて…」
「……っ」
「リディル!?」
咄嗟にリディルは右の道へ走り出した。フィーズとテイザーも後を追う。ラテュルは女性を支えながら、ゆっくりと追っていった。
「リディル! お前、水魔法使えるのか!?」
「武器に水を纏わせる程度ならね!」
「はぁっ!? 消火まではできないのか!? じゃあ他に策でもあるのか!?」
「何もない! 現場を見てみないとわからない!」
「え、ちょっ…行き当たりばったりかよ!!」
彼女の行動に感心しつつ、不安が大きく占めているフィーズ。それでも止まらない彼女を追って、火事の現場へ駆けつけた。
しばらく走り、ようやく現場に到着した。見れば、なんとか子供たちの救出が終わりそうな状況だった。建物の炎は、消火が行き届いていない為か、更に激しく燃え上がっている。一部では、小規模の爆発のような炎も見える。
「…これはもう、建物はダメね…」
「子供たちはここにいる人数で全員か?」
「あ、はい…おそらく…これから点呼して確認を…」
「待って! 二人いない!」
「二人!?」
教師と見られる女性が、青ざめた表情で建物を見つめた。炎は、既に最上階まで達していることが見てとれる。絶望的な状況に、膝から崩れ落ちる者もいた。
それを横目に、リディルは周りを見渡した。
「………」
「リディル…?」
不思議に思ったフィーズが、声をかけたちょうどその時、消火の為の水が学校前に大量に運び込まれた。それを見たリディルはすぐに駆け寄り、バケツに入れた水を自ら被った。
フィーズはもちろん、周囲の人々は驚いていた。
「!? おいっ!?」
「まだ救出できてない子供たちの名前は?」
「え…っ? あ、フルーナとミリル、です…どちらも女の子です」
「わかった」
「ちょっ、おい! リディル! お前なんて無茶な…」
「まだ助かるかもしれないなら、ここで動かないわけにはいかないでしょう? 消火を待っていたら、中の二人が危険だわ」
「だからって…!」
必死に止めようと口を開くフィーズだったが、彼女の強い眼に圧倒された。そして一息吐くと、自分もバケツに汲んだ水を被った。
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