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14 似た者パーティ
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道々話を聞けば、二人は本当に育った状況がよく似ていた。
魔法と剣が逆なだけだ。
ピヒラの周りは魔法が得意な者が多く、しかしピヒラ自身は魔力容量が少ないうえに適性が低く、人の何倍も練習しなければ身につかなかった。
諦めずに何年も訓練した結果、多少容量が増えて、技術でカバーしてアイテムボックスまで習得し、住んでいた村でも一目置かれるようになったらしい。
そして、その地域の伝統的な成人の行事として、大剣を一振るいして丸太を切るそうだ。
「ほとんどの人は、表面に傷をつけるくらいね。すごく力のある男の子だと、丸太に大剣が刺さる感じ。そういう子でもかなり大剣に適性があるっていって、使えるようになったら重宝されるのよ。だけどあたしは、軽く振ったら丸太がスパッと切れて落ちちゃったの。もう周りも大騒ぎよ」
『その腕でよく大剣を持てたわねぇ』
トールヴァルドの前に座るピヒラは、どちらかというと小柄で細い。
なんなら華奢と言ってもいいだろう。
やはり、強化などの補助魔法を使っているのかもしれない。
「ピヒラは、身体強化を使っているのか?」
「身体強化、なのかな?大剣を持つときだけ、力が出るみたい。ほかの荷物は普通に重いのよ。でも大剣は羽みたいに軽いわ」
『特定の条件にすることで、効果を倍増させてるのかもしれないわね』
魔法剣(待機)の言うことも一理ある。
「遺伝的なものかもしれないな」
「うーん、確かにうちの一族にはたまにすごい大剣使いが生まれるって聞いてはいたんだけど、まさかあたしのことだとは全然思わなかったからびっくりしたわ。しかもそれが……ううん。この大剣、ずっと伝わってるものらしいんだけど、重すぎてほかの人は持つこともできないのよ。なんか特別なんだって。あと、魔法はあんなに頑張ったのに、大剣はちょっとやってみるだけで思い通りにできるから、なんかちょっと悔しかったわ」
途中で何か言うことを飲み込んでいたが、言いたくないことなら聞かない方がいいだろう。
「それはよくわかる。俺も、何年もかけて身体を作って剣術の免許皆伝をもらったのに、魔法は一発だからな」
「不条理よね。もちろん、大剣を思い通り使えるのは気持ちがいいわ。適性がわかった次の日とか、魔物退治に出てうっかり三桁やっつけてきちゃったもの。なんか、努力して身につけた魔法より、頑張らなくてもできる大剣の方が有用だって言われたみたいで後で落ち込んだわ」
ピヒラは、腰に下げている魔法の杖に触れた。
確かに、彼女は杖を下げてはいるものの、戦闘では一切使うところを見ない。
『そうよね、頑張ったところは報われたいわよね。でも自分の能力に気づいただけなら、どこに嫉妬したらいいのかわからないっていう。ピヒラちゃん、つらかったでしょうね』
魔法剣(待機)が、トールヴァルドに対して言ったよりも随分同情的な気がする。
なぜだ。
心理的に同性だからだろうか。
そもそも魔法剣(待機)に性別などあるのだろうか。
「まったくその通りだ。俺も、わかったときには落ち込んだな。頑張りが無に帰した気がして。あんまりあっさりできるから、思い入れもないのに簡単に大きな魔法を使えるところとかを余計に比較してしまう」
「それそれ!ほんとあっさり使えるのよね。でもまぁ、がっかりはしたけど悩みはしなかったわ。魔法はアイテムボックスとかそういう旅をするのに便利なもので、魔物を倒すのは大剣でいいやって。早いし」
『あらあっさり。でもま、女の方が現実的よね』
どうやら、ピヒラは素早く現実を受け入れたらしい。
トールヴァルドは、わかってはいるがまだ魔法を使う自分を全面的に肯定できない。
右手に長剣を持ち、左手に魔法剣(待機)というスタイルを変えるつもりもない。
「俺はまだ、どうにかこいつをちゃんと魔法剣として使えないか考えている」
そう言いながら、トールヴァルドは魔法剣(待機)を見下ろした。
『もうそろそろ諦めてよ。アタシは魔法の杖なんだからね』
頭を少し下げると、前に座るピヒラの頭が近づいた。
花のような香りがするので、いい石鹸でも使っているのかもしれない。
「魔法剣!それってなんだか素敵ね。あたしもそういうのを目指そうかしら。せっかく魔法も使えるんだし。どうしたら魔法剣になるのかしら……刀身に魔法を纏わせる?刀身に魔法を含ませる?どっちにしろ大剣に魔法を留まらせればそれっぽくなりそうだわ。一対多数なら、大きな杖のつもりで魔法を飛ばしても良いわね」
『ピヒラちゃんならできるでしょうね。可愛くて強いなんて最強よ!』
どうでもいいが、魔法剣(待機)が随分とピヒラびいきになっている。
「とりあえず、俺は魔法を訓練するよ」
言い終わると同時に、トールヴァルドは馬上から素手で魔法を飛ばして遠くの魔物を討伐した。
今のところ、氷が一番周りに影響が少ないので多用している。
『ぜひそうして、ちゃんとアタシを魔法の杖として使ってよね!』
魔法剣(待機)の言葉をスルーしたトールヴァルドと、にこにこしているピヒラの前には魔物が多そうな森が広がっていた。
「はい、それではパーティのここ三日の討伐数を……。えっ?あれ?すみません。タグをこちらに寄せていただけますか?はい。あ、……お二人で、合計二百五十八体、ですね。内訳は、小型が百二体、中型が九十七体、大型が五十九体。えっと、申し訳ないのですがそれほど現金をストックしていませんので、口座に入れる形での支払いでよろしいですか?」
『わぁお、大漁ね!』
「それで問題ありません」
「かまわない」
「ありがとうございます!」
それぞれの武器の練習と、二人の連携の訓練を兼ねて森に分け入ったところ、思ったよりも相性が良くてどんどん魔物を狩ることになった。
ピヒラが大剣で突っ込み、トールヴァルドが後ろから魔法で援護する。
またはトールヴァルドが魔法でほぼ削り、動けなくなったところでピヒラがとどめを刺す。
そういったパターンができあがり、面白くなった二人は奥へ奥へと進んで魔物を狩りつくす勢いであった。
少なくとも森の奥から街道へ戻る途中には、魔物の気配すらなかった。
『ちょっと狩りすぎよ。あの辺はまだ冒険者も多くないから、多分誰かの日銭を奪うことにはなってないけど』
魔法剣(待機)の言う通り、さすがにちょっとやりすぎた。
見上げるピヒラに笑顔を返したトールヴァルドは、問題ない、というつもりでうなずいた。
職員が手続きを終えて、二人は宿を探すことにした。
馬のシュネルがいるので、ちゃんと厩のあるところが良い。
ギルドで厩のある宿の場所を聞いて向かい、その日の宿を確保した。
トールヴァルドとピヒラはパーティメンバーということで、隣同士の部屋だ。
「荷物を置いたら、ちょっと訓練場に出ようか。一度、ピヒラと手合わせしてみたい」
『はぁ?トールヴァルド、何言ってんの?』
「うん!わかった。あたしももうちょっと動きたかったし、トールヴァルドの剣も気になってたの!魔法無しで一回、魔法ありで一回、でどう?今日の晩御飯は負けた方のおごりね!」
『え?ピヒラちゃんまで何言ってんの?』
魔法剣(待機)のツッコミもむなしく、二人は宿で一休みしてから冒険者ギルドに舞い戻り、訓練場を借りて手合わせすることになった。
魔法と剣が逆なだけだ。
ピヒラの周りは魔法が得意な者が多く、しかしピヒラ自身は魔力容量が少ないうえに適性が低く、人の何倍も練習しなければ身につかなかった。
諦めずに何年も訓練した結果、多少容量が増えて、技術でカバーしてアイテムボックスまで習得し、住んでいた村でも一目置かれるようになったらしい。
そして、その地域の伝統的な成人の行事として、大剣を一振るいして丸太を切るそうだ。
「ほとんどの人は、表面に傷をつけるくらいね。すごく力のある男の子だと、丸太に大剣が刺さる感じ。そういう子でもかなり大剣に適性があるっていって、使えるようになったら重宝されるのよ。だけどあたしは、軽く振ったら丸太がスパッと切れて落ちちゃったの。もう周りも大騒ぎよ」
『その腕でよく大剣を持てたわねぇ』
トールヴァルドの前に座るピヒラは、どちらかというと小柄で細い。
なんなら華奢と言ってもいいだろう。
やはり、強化などの補助魔法を使っているのかもしれない。
「ピヒラは、身体強化を使っているのか?」
「身体強化、なのかな?大剣を持つときだけ、力が出るみたい。ほかの荷物は普通に重いのよ。でも大剣は羽みたいに軽いわ」
『特定の条件にすることで、効果を倍増させてるのかもしれないわね』
魔法剣(待機)の言うことも一理ある。
「遺伝的なものかもしれないな」
「うーん、確かにうちの一族にはたまにすごい大剣使いが生まれるって聞いてはいたんだけど、まさかあたしのことだとは全然思わなかったからびっくりしたわ。しかもそれが……ううん。この大剣、ずっと伝わってるものらしいんだけど、重すぎてほかの人は持つこともできないのよ。なんか特別なんだって。あと、魔法はあんなに頑張ったのに、大剣はちょっとやってみるだけで思い通りにできるから、なんかちょっと悔しかったわ」
途中で何か言うことを飲み込んでいたが、言いたくないことなら聞かない方がいいだろう。
「それはよくわかる。俺も、何年もかけて身体を作って剣術の免許皆伝をもらったのに、魔法は一発だからな」
「不条理よね。もちろん、大剣を思い通り使えるのは気持ちがいいわ。適性がわかった次の日とか、魔物退治に出てうっかり三桁やっつけてきちゃったもの。なんか、努力して身につけた魔法より、頑張らなくてもできる大剣の方が有用だって言われたみたいで後で落ち込んだわ」
ピヒラは、腰に下げている魔法の杖に触れた。
確かに、彼女は杖を下げてはいるものの、戦闘では一切使うところを見ない。
『そうよね、頑張ったところは報われたいわよね。でも自分の能力に気づいただけなら、どこに嫉妬したらいいのかわからないっていう。ピヒラちゃん、つらかったでしょうね』
魔法剣(待機)が、トールヴァルドに対して言ったよりも随分同情的な気がする。
なぜだ。
心理的に同性だからだろうか。
そもそも魔法剣(待機)に性別などあるのだろうか。
「まったくその通りだ。俺も、わかったときには落ち込んだな。頑張りが無に帰した気がして。あんまりあっさりできるから、思い入れもないのに簡単に大きな魔法を使えるところとかを余計に比較してしまう」
「それそれ!ほんとあっさり使えるのよね。でもまぁ、がっかりはしたけど悩みはしなかったわ。魔法はアイテムボックスとかそういう旅をするのに便利なもので、魔物を倒すのは大剣でいいやって。早いし」
『あらあっさり。でもま、女の方が現実的よね』
どうやら、ピヒラは素早く現実を受け入れたらしい。
トールヴァルドは、わかってはいるがまだ魔法を使う自分を全面的に肯定できない。
右手に長剣を持ち、左手に魔法剣(待機)というスタイルを変えるつもりもない。
「俺はまだ、どうにかこいつをちゃんと魔法剣として使えないか考えている」
そう言いながら、トールヴァルドは魔法剣(待機)を見下ろした。
『もうそろそろ諦めてよ。アタシは魔法の杖なんだからね』
頭を少し下げると、前に座るピヒラの頭が近づいた。
花のような香りがするので、いい石鹸でも使っているのかもしれない。
「魔法剣!それってなんだか素敵ね。あたしもそういうのを目指そうかしら。せっかく魔法も使えるんだし。どうしたら魔法剣になるのかしら……刀身に魔法を纏わせる?刀身に魔法を含ませる?どっちにしろ大剣に魔法を留まらせればそれっぽくなりそうだわ。一対多数なら、大きな杖のつもりで魔法を飛ばしても良いわね」
『ピヒラちゃんならできるでしょうね。可愛くて強いなんて最強よ!』
どうでもいいが、魔法剣(待機)が随分とピヒラびいきになっている。
「とりあえず、俺は魔法を訓練するよ」
言い終わると同時に、トールヴァルドは馬上から素手で魔法を飛ばして遠くの魔物を討伐した。
今のところ、氷が一番周りに影響が少ないので多用している。
『ぜひそうして、ちゃんとアタシを魔法の杖として使ってよね!』
魔法剣(待機)の言葉をスルーしたトールヴァルドと、にこにこしているピヒラの前には魔物が多そうな森が広がっていた。
「はい、それではパーティのここ三日の討伐数を……。えっ?あれ?すみません。タグをこちらに寄せていただけますか?はい。あ、……お二人で、合計二百五十八体、ですね。内訳は、小型が百二体、中型が九十七体、大型が五十九体。えっと、申し訳ないのですがそれほど現金をストックしていませんので、口座に入れる形での支払いでよろしいですか?」
『わぁお、大漁ね!』
「それで問題ありません」
「かまわない」
「ありがとうございます!」
それぞれの武器の練習と、二人の連携の訓練を兼ねて森に分け入ったところ、思ったよりも相性が良くてどんどん魔物を狩ることになった。
ピヒラが大剣で突っ込み、トールヴァルドが後ろから魔法で援護する。
またはトールヴァルドが魔法でほぼ削り、動けなくなったところでピヒラがとどめを刺す。
そういったパターンができあがり、面白くなった二人は奥へ奥へと進んで魔物を狩りつくす勢いであった。
少なくとも森の奥から街道へ戻る途中には、魔物の気配すらなかった。
『ちょっと狩りすぎよ。あの辺はまだ冒険者も多くないから、多分誰かの日銭を奪うことにはなってないけど』
魔法剣(待機)の言う通り、さすがにちょっとやりすぎた。
見上げるピヒラに笑顔を返したトールヴァルドは、問題ない、というつもりでうなずいた。
職員が手続きを終えて、二人は宿を探すことにした。
馬のシュネルがいるので、ちゃんと厩のあるところが良い。
ギルドで厩のある宿の場所を聞いて向かい、その日の宿を確保した。
トールヴァルドとピヒラはパーティメンバーということで、隣同士の部屋だ。
「荷物を置いたら、ちょっと訓練場に出ようか。一度、ピヒラと手合わせしてみたい」
『はぁ?トールヴァルド、何言ってんの?』
「うん!わかった。あたしももうちょっと動きたかったし、トールヴァルドの剣も気になってたの!魔法無しで一回、魔法ありで一回、でどう?今日の晩御飯は負けた方のおごりね!」
『え?ピヒラちゃんまで何言ってんの?』
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