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16 第一回ハーレムキャンセル(あざとい枠)
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冒険者が必要とする雑貨類を扱う店はいくつかあり、近い範囲にまとまっていた。
店ごとに取り扱う商品が違うので、近くにあるのはありがたい。
雑貨類を扱う店でコットと簡易コンロ、テントを買い、食料品店で保存食材を何種類か手に入れた。
鍛冶の店でトールヴァルドの長剣の手入れを頼み、ピヒラと一緒に鍋と鉄板を選んだ。
「ピヒラは、買い物するときにあまり悩まないんだな」
どちらがいいか考えはするが、店員やトールヴァルドの意見を聞いてサクサク決めていた。
『確かに、ささっとピックアップして比べて選んでたわね』
「そうかな?でも普段使う物なら、使いやすいかどうかで選ぶから悩むところなくない?あ、でもあたしはおしゃれするための服もあんまり悩まないかも。着たいものを選ぶから」
『あら意外。皮鎧はともかく、小物はすごくかわいいのを選んでるからもっと悩むタイプかと思ってたわ』
確かに、ピヒラは髪留めや小物類も毎日きちんとつけている。
「俺としては助かる。どっちがいいか聞かれてもよくわからないからな。ピヒラみたいに、スープ中心の作り置きでもいいか、とかそういう質問なら答えやすいんだが」
「うふふ。トールヴァルドは具体的にどうか聞かれる方がいいのね。あたしは色々聞かれるよりも任される方が楽かな。あたしたちって、色々と相性がいいのね」
『ピヒラちゃんのおかげで旅が快適になるわよぉ。トールヴァルドはもっとピヒラちゃんに感謝した方がいいわ!』
「助かってるが、俺が頼ってる部分が多くないか?」
「そうかな?移動はシュネルに乗せてもらってるし、今回の買い物だってほとんどトールヴァルドがお金を出してるじゃない。提案したりご飯作ったりするくらいは普通じゃない?持ちつ持たれつだよ」
『ピヒラちゃんいい子!』
トールヴァルドとピヒラは、店を出た。
『じゃあ次はどこに』
「あの!あなたが王都からきた勇者様ですかっ?!」
魔法剣(待機)の言葉をぶった切り、話しかけてきたのは一人の女性だ。
白いローブを着ているので、サポートや治療がメインの魔法使いなのだろう。
「えっ?」
「あぁ、そうだが」
トールヴァルドの後ろで、ピヒラが驚きの声を上げていた。
そういえば、彼女にはそのあたりを説明していなかったかもしれない。
目の前の魔法使いは、ピヒラよりも少し背が低く、広がった茶色い髪の女性だった。
「やっぱり!噂は聞いています。長剣と魔法の杖を持っていて、金髪に青い目で身体を作りこんだカッコいい人だって。絶対あなただと思ったんです!」
「そうか」
ピヒラは、トールヴァルドの背中から動いていない。
女性は、トールヴァルドを下から覗き込むようにしながら一歩近づいて言った。
「私、治療魔法が得意です!絶対お役に立てるので、仲間に入れてくれませんか?」
何の用事かと思ったら、自分の売り込みだったらしい。
『まぁ可愛い子じゃない。ちょっとあざとさが前面に出てるけど、これはこれでありよね』
「あたしたちは、二人で十分よ!」
どう断ろうかと思っていたら、ピヒラが後ろから出てきてトールヴァルドの横に並んだ。
通行の邪魔をされたからか、ぷりぷり怒っている。
「あなたは?」
「トールヴァルドのパーティメンバーのピヒラよ。二人で十分バランスが取れてるし、サポートも治療もいらないわ」
腕を組んでそう言ったピヒラは、女性を睨むようにしていた。
女性は、ピヒラの背中にある大剣をちらりと見た。
「ピヒラさん?は、その大剣を使うんでしょ?だったら、やっぱりサポートはいる方がいいですよ!その点、私なら専門でサポートできますから。勇者様、いかがですか?お仲間が力技の大剣使いさんだけでは、連携に不安があるでしょうし」
『あらぁ。もしかしてキャットファイト始まっちゃう?』
女性は、重そうな胸を強調するように腕を組んだ。
きっと肩がこるだろう。
しかし、ピヒラを下げるような言い方はいただけない。
むっとしたらしいピヒラは、返事をせずにちらりとトールヴァルドを見上げた。
トールヴァルドは、安心させるつもりでうなずいた。
「別にいらないぞ。俺は魔法が全部使えるし、ピヒラだって魔法はものすごく使えるうえに、大剣の天才なんだ。あ、もしかして、俺よりも魔法を使えるのか?」
「えっ。ま、魔法をそんなに使えるんですか?あ、でも私、治療なら骨折とか切り傷なんかは三十分もかからずに治せます!魔法のガードも使えます!このあたりの魔物の突進くらいなら跳ね返せます!」
『ほうほう。魔法はまあまあってとこね。ガードは役に立つかもねぇ』
「それならピヒラの方が治療魔法を使えるし、魔法のガード?はあんまり役に立たないだろうからいらないかな」
戦闘とは全く関係のないところで木の枝にひっかけて腕を切ったトールヴァルドのケガを、ピヒラは数秒で治してくれたのだ。
ついでにトールヴァルドも治療のイメージを教わった。
そしてこのあたりの魔物は、大きくて二メートルほどの大きさだ。
もっと魔の森に近づけば三メートルの魔物でも雑魚扱いとなる。
やっぱり、必要性を感じなかった。
「え?あ、でもその、女性の手があった方がいいとか」
「なんでだ?男でも女でも、手伝ってもらわないといけないことなんてない。すまんが、目的地は魔の森の先なんだ。複数の魔物と一人で戦えない足手まといはいらない」
立っているだけだが、女性は体幹も甘いし隙だらけだ。
サポートや治療専門ということは戦えないのだろう。
サポートしかしない者を守って戦うなんて手間が増えるだけである。
対してピヒラはいつでも周りを見ているし、一体多数での戦いもお手の物。
主力にもサポートにもなれる。
比べるべくもない。
「でも、私」
「俺はピヒラだけでいい。ほかをあたってくれ。行こうか、ピヒラ。荷物の確認をしたい」
ひょい、と横を見ると、ピヒラは頬を赤くして視線が遠くになっていた。
「そそっそ、そうね!行きましょうかっ!」
『ちょっとちょっとぉ!なんでトールヴァルドが自分でハーレムキャンセルしてんのよ!勇者がハーレムなんて常識でしょうがっ!!可愛い女の子侍らせなさいよ!』
魔法剣(待機)が何を言っているのかわからない。
「じゃあ、そういうことで。あぁ、このあたりだけで活動するなら実力的に問題はないだろうから、ほかのパーティに入ったらいいんじゃないか?」
『しかも追撃!待って、再起不能にはなってないでしょうね?!』
女性はガクリと首を垂れた。
実力を指摘された程度で再起不能になるなら、冒険者でいない方がいいと思う。
トールヴァルドは彼女に見向きもせず、若干動きがかくかくしているピヒラの背中を押して歩き始めた。
店ごとに取り扱う商品が違うので、近くにあるのはありがたい。
雑貨類を扱う店でコットと簡易コンロ、テントを買い、食料品店で保存食材を何種類か手に入れた。
鍛冶の店でトールヴァルドの長剣の手入れを頼み、ピヒラと一緒に鍋と鉄板を選んだ。
「ピヒラは、買い物するときにあまり悩まないんだな」
どちらがいいか考えはするが、店員やトールヴァルドの意見を聞いてサクサク決めていた。
『確かに、ささっとピックアップして比べて選んでたわね』
「そうかな?でも普段使う物なら、使いやすいかどうかで選ぶから悩むところなくない?あ、でもあたしはおしゃれするための服もあんまり悩まないかも。着たいものを選ぶから」
『あら意外。皮鎧はともかく、小物はすごくかわいいのを選んでるからもっと悩むタイプかと思ってたわ』
確かに、ピヒラは髪留めや小物類も毎日きちんとつけている。
「俺としては助かる。どっちがいいか聞かれてもよくわからないからな。ピヒラみたいに、スープ中心の作り置きでもいいか、とかそういう質問なら答えやすいんだが」
「うふふ。トールヴァルドは具体的にどうか聞かれる方がいいのね。あたしは色々聞かれるよりも任される方が楽かな。あたしたちって、色々と相性がいいのね」
『ピヒラちゃんのおかげで旅が快適になるわよぉ。トールヴァルドはもっとピヒラちゃんに感謝した方がいいわ!』
「助かってるが、俺が頼ってる部分が多くないか?」
「そうかな?移動はシュネルに乗せてもらってるし、今回の買い物だってほとんどトールヴァルドがお金を出してるじゃない。提案したりご飯作ったりするくらいは普通じゃない?持ちつ持たれつだよ」
『ピヒラちゃんいい子!』
トールヴァルドとピヒラは、店を出た。
『じゃあ次はどこに』
「あの!あなたが王都からきた勇者様ですかっ?!」
魔法剣(待機)の言葉をぶった切り、話しかけてきたのは一人の女性だ。
白いローブを着ているので、サポートや治療がメインの魔法使いなのだろう。
「えっ?」
「あぁ、そうだが」
トールヴァルドの後ろで、ピヒラが驚きの声を上げていた。
そういえば、彼女にはそのあたりを説明していなかったかもしれない。
目の前の魔法使いは、ピヒラよりも少し背が低く、広がった茶色い髪の女性だった。
「やっぱり!噂は聞いています。長剣と魔法の杖を持っていて、金髪に青い目で身体を作りこんだカッコいい人だって。絶対あなただと思ったんです!」
「そうか」
ピヒラは、トールヴァルドの背中から動いていない。
女性は、トールヴァルドを下から覗き込むようにしながら一歩近づいて言った。
「私、治療魔法が得意です!絶対お役に立てるので、仲間に入れてくれませんか?」
何の用事かと思ったら、自分の売り込みだったらしい。
『まぁ可愛い子じゃない。ちょっとあざとさが前面に出てるけど、これはこれでありよね』
「あたしたちは、二人で十分よ!」
どう断ろうかと思っていたら、ピヒラが後ろから出てきてトールヴァルドの横に並んだ。
通行の邪魔をされたからか、ぷりぷり怒っている。
「あなたは?」
「トールヴァルドのパーティメンバーのピヒラよ。二人で十分バランスが取れてるし、サポートも治療もいらないわ」
腕を組んでそう言ったピヒラは、女性を睨むようにしていた。
女性は、ピヒラの背中にある大剣をちらりと見た。
「ピヒラさん?は、その大剣を使うんでしょ?だったら、やっぱりサポートはいる方がいいですよ!その点、私なら専門でサポートできますから。勇者様、いかがですか?お仲間が力技の大剣使いさんだけでは、連携に不安があるでしょうし」
『あらぁ。もしかしてキャットファイト始まっちゃう?』
女性は、重そうな胸を強調するように腕を組んだ。
きっと肩がこるだろう。
しかし、ピヒラを下げるような言い方はいただけない。
むっとしたらしいピヒラは、返事をせずにちらりとトールヴァルドを見上げた。
トールヴァルドは、安心させるつもりでうなずいた。
「別にいらないぞ。俺は魔法が全部使えるし、ピヒラだって魔法はものすごく使えるうえに、大剣の天才なんだ。あ、もしかして、俺よりも魔法を使えるのか?」
「えっ。ま、魔法をそんなに使えるんですか?あ、でも私、治療なら骨折とか切り傷なんかは三十分もかからずに治せます!魔法のガードも使えます!このあたりの魔物の突進くらいなら跳ね返せます!」
『ほうほう。魔法はまあまあってとこね。ガードは役に立つかもねぇ』
「それならピヒラの方が治療魔法を使えるし、魔法のガード?はあんまり役に立たないだろうからいらないかな」
戦闘とは全く関係のないところで木の枝にひっかけて腕を切ったトールヴァルドのケガを、ピヒラは数秒で治してくれたのだ。
ついでにトールヴァルドも治療のイメージを教わった。
そしてこのあたりの魔物は、大きくて二メートルほどの大きさだ。
もっと魔の森に近づけば三メートルの魔物でも雑魚扱いとなる。
やっぱり、必要性を感じなかった。
「え?あ、でもその、女性の手があった方がいいとか」
「なんでだ?男でも女でも、手伝ってもらわないといけないことなんてない。すまんが、目的地は魔の森の先なんだ。複数の魔物と一人で戦えない足手まといはいらない」
立っているだけだが、女性は体幹も甘いし隙だらけだ。
サポートや治療専門ということは戦えないのだろう。
サポートしかしない者を守って戦うなんて手間が増えるだけである。
対してピヒラはいつでも周りを見ているし、一体多数での戦いもお手の物。
主力にもサポートにもなれる。
比べるべくもない。
「でも、私」
「俺はピヒラだけでいい。ほかをあたってくれ。行こうか、ピヒラ。荷物の確認をしたい」
ひょい、と横を見ると、ピヒラは頬を赤くして視線が遠くになっていた。
「そそっそ、そうね!行きましょうかっ!」
『ちょっとちょっとぉ!なんでトールヴァルドが自分でハーレムキャンセルしてんのよ!勇者がハーレムなんて常識でしょうがっ!!可愛い女の子侍らせなさいよ!』
魔法剣(待機)が何を言っているのかわからない。
「じゃあ、そういうことで。あぁ、このあたりだけで活動するなら実力的に問題はないだろうから、ほかのパーティに入ったらいいんじゃないか?」
『しかも追撃!待って、再起不能にはなってないでしょうね?!』
女性はガクリと首を垂れた。
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