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08 逆鱗の欠片の対価はでっかい魔石
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「これね」
『あぁ、そうだ。ベラ、頼む』
「はいはい」
中庭に戻ると、ルノフェーリが逆鱗の欠片を確認した。
そしてベラは預かっていた小さな魔法袋からルノフェーリが集めてきた逆鱗を取り出した。
指の爪程度の大きさのものが一つだ。
両手にそれぞれ持った二つの欠片を近づけると、それらはゆっくりと溶けあうように動き、そして一つの欠片になった。
聞いていた通りである。
「おぉ……!なんと不思議な」
領主に見えるようにしていたので、彼はその様子を凝視していた。
驚きと恐怖が一周して、身体こそ上手く動かせないが精神的には落ち着いてきたらしい。
『では、礼を』
「了解」
ベラは、背負いから魔石を取り出した。
来る途中に仕留めた、10センチ大のものだ。
「領主様、こちらをお礼として差し上げます。逆鱗ももちろん珍しいものですが、この魔石の方が扱いも容易ですし、飾るには良いかと」
ツルリとオーバル型の大きな魔石はほぼ透明で、光を反射して煌めく。
うっすらと虹色に反射するので、ただの宝石とは違うことがわかる。
「なんと……災害級の魔物ですな。こんな、素晴らしい魔石を何かに使うなんて」
手渡された魔石をじっくりと眺めながら、領主は首を左右に振った。
しかし、それを見たルノフェーリは巨大な頭をこてんとかしげた。
『これくらいの魔石なら、王城の魔法陣にも使えるはずだ。ここのような歴史のある屋敷には、スタンピードから街を守るための大きな魔法陣くらいあると思ったんだが』
それを聞いた領主たちは首をかしげた。
今から二百年ほど前に、レオンジ帝国の三分の一が壊滅するスタンピードが起きた。
隣国のフルーツィーラ王国もかなり大きな被害を被ったし、その影響でほかの国でも魔獣が暴れていたらしい。それは、ベラも町の学校で悲惨な歴史の一つとして習った。
そういった過去を鑑みて、国を超えた冒険者ギルドの役割を増やし、積極的に森の魔獣を狩るようになったのだ。
だから、古い領主館などには防御や結界といった働きのある魔法陣が用意されていることがある。
スタンピードは基本的に大量の魔獣が通り過ぎていくので、街に入らせずに堪えることができれば人民を守ることができる。
当時は、魔石と魔法陣のセットで用意し、その当主貴族が保管・管理していることが多かったらしい。
はたして。
「こんな、地下室がこうなっていたとは」
何とか歩けるようになった領主とともに、ベラは屋敷の地下室にいた。
荷物があれこれ詰め込まれていた部屋の床には、そこそこ大きな魔法陣が刻まれていたのだ。
結論から言えば、ルノフェーリの指摘通りの防御の魔法陣だった。
ただし、ベラは魔法陣を読めないし、領主も、兵士も、誰も理解できなかった。
それを聞いたルノフェーリが、仕方なく人化して魔法陣を確認したのである。
「おぉ、竜が人化できるとは聞いておりましたが、初めてお見受けしまし――っ?」
変身の途中はとても感動しながら見ていた領主だったが、現れたルノフェーリを見て若干残念そうな表情になった。
確かに普通の人とは違う感じがしないでもないが、それでも普通のくたびれた旅人にしか見えないので、期待に添えないのは予想通りである。
「もう。だから誰かの前で人化するのは嫌だったんだよぉ。皆同じような顔になるんだから」
「仕方ないわ。あの威厳もりもり威圧感満載の竜が人になって出てきたのがホンワカ系くたびれ冒険者だったら、特別感ゼロだもの。なんかこう、絶世の美人だったり明らかに生粋のヒト族じゃない何かがあれば少しは納得できたかもしれないけど」
「言い方!納得できないっていう顔も酷い」
「大体、ルノだって人化するときにわざわざ魔力を普通のヒト族並みに抑えてるじゃない。そりゃ擬態が完璧すぎて普通のモブになれるってもんよ」
「普通のモブとは」
そうして一通り漫才を繰り広げてから地下室へもう一度向かったのである。
二人の気の抜けたやり取りのおかげで、領主は完全に立ち直った。
魔石を使って魔法陣を起動させる方法については、一応領主一族に伝わっていた。
ルノフェーリも一緒に確認し、その方法が間違っていないこともわかった。
「魔力の補充は、ここに魔石を置いておくだけでいいと」
「そう。こっちの小さい魔法陣が、ゆっくりとだけど空中から魔力を集めて魔石に補充してくれる。大きい方魔法陣のここに、魔力を補充した魔石を置いて領主が許可を出すと、魔獣を弾く結界が発動する。街の最終防衛用だから、地下室に入るためにはいくつも鍵が必要になってるんだと思う」
「確かに、なぜ地下の倉庫程度に幾重にも扉があるのかと思っておりましたが」
ここに来るまでに、カギ付きの扉が3つもあったのだ。
すべて別のカギだったうえ、そのカギの所有者もバラバラだった。
そういうものとしてカギの管理方法は踏襲していたようだが、面倒な管理もすべてはこの地下室を守るためなのだろう。
「魔石の魔力容量によって結界を継続できる時間は変わる。この魔石に魔力をいっぱいまで溜めていれば、一週間は保てるはずだ」
「一週間!それだけ籠城することができれば」
「ああ、スタンピードからは街を守れるだろうな」
魔石を見て、魔法陣を見て、感動に打ち震える領主はルノフェーリに向かって土下座した。
護衛としてついてきた兵士たちも、領主にならって土下座である。
「竜様!ありがとうございます!!国宝級の魔石をくださっただけでなく、失われた知識まで授けていただけるとは。逆鱗をお持ちいただくだけでは足りません。何かお礼をさせていただきたい」
人型のルノフェーリに残念そうな表情を隠せなかった領主は、コロリと態度を変えた。
「えぇっ?そ、そんな。逆鱗を取り戻せただけで十分だと」
「あ!それなら領主様、ほかに逆鱗を持っているという人を知りませんか?貴族の噂はさすがにあまり聞こえてこなくて」
わたわたするルノフェーリの前に出たベラは、領主に要求を伝えた。
「ベ、ベラ。確かにそれは知りたいけど、調べるとなったら大変だよ」
「そう?だったら、国内だけでいいですよ。領主様のつてを辿ってちょっと聞いてもらえたら」
「むしろ大陸中の情報を集めさせるつもりだったの?!」
「ワンチャンいけるかなって」
「鬼畜な要求」
領主はベラの要求を快諾してくれ、数日待ってほしいと言った。
ある程度噂は知っているが、確実なものではないという。
だから、保有しているかどうかを聞いてくれるらしい。
「その間は、ぜひこのブッドラ公爵領でお過ごしください。竜様のご経験には及ばないかもしれませんが、精いっぱいおもてなしいたしますゆえ」
「滞在させてもらえるならありがたいな」
領主の提案に、ルノフェーリはにこりと笑った。
ベラは特に気にしていなかったが、ここは公爵領で、目の前の領主はブッドラ公爵だったらしい。
「もちろんですとも!この領都にはそれなりに娯楽施設もございます。観劇も買い物も、帝都に並ぶと自負しておりますので、きっとお楽しみいただけます」
大きな街だと思っていたが、領都だったとは。
「買い足したいものがあったので助かります。ついでに、ここから北にある森に入って魔獣を狩ってきてもいいですか?あっちって、公爵領になるんですかね?」
「ついでとは」
ベラが聞くと、ルノフェーリがツッコんだ。
ツッコミも慣れてきたらしい。
領主あらためブッドラ公爵は一瞬驚きに目を見開いてからうなずいた。
「北の森ですか。少し距離はありますが、確かに竜様であればひとっ飛びですな。北の森は公爵領として冒険者ギルドと我が領の魔獣討伐部隊とで常に魔獣を減らしている場所です。行かれるなら、冒険者ギルドにも連絡しておきましょう」
「あー。えっと、奥の方に行く予定なので通達は……いるかなぁ?」
「いらない気がするけど。あ、でも奥地で暴れたら浅いところの魔獣がビビって逃げちゃうかもしれないわね」
「確かに逃げるね」
ルノフェーリがまともに受け止めたので、ツッコミが不在となった。
冒険者ギルドには、明日明後日、場合によっては魔獣が少なくなるかもしれないが、すぐに戻ると通達してもらうことにした。
『あぁ、そうだ。ベラ、頼む』
「はいはい」
中庭に戻ると、ルノフェーリが逆鱗の欠片を確認した。
そしてベラは預かっていた小さな魔法袋からルノフェーリが集めてきた逆鱗を取り出した。
指の爪程度の大きさのものが一つだ。
両手にそれぞれ持った二つの欠片を近づけると、それらはゆっくりと溶けあうように動き、そして一つの欠片になった。
聞いていた通りである。
「おぉ……!なんと不思議な」
領主に見えるようにしていたので、彼はその様子を凝視していた。
驚きと恐怖が一周して、身体こそ上手く動かせないが精神的には落ち着いてきたらしい。
『では、礼を』
「了解」
ベラは、背負いから魔石を取り出した。
来る途中に仕留めた、10センチ大のものだ。
「領主様、こちらをお礼として差し上げます。逆鱗ももちろん珍しいものですが、この魔石の方が扱いも容易ですし、飾るには良いかと」
ツルリとオーバル型の大きな魔石はほぼ透明で、光を反射して煌めく。
うっすらと虹色に反射するので、ただの宝石とは違うことがわかる。
「なんと……災害級の魔物ですな。こんな、素晴らしい魔石を何かに使うなんて」
手渡された魔石をじっくりと眺めながら、領主は首を左右に振った。
しかし、それを見たルノフェーリは巨大な頭をこてんとかしげた。
『これくらいの魔石なら、王城の魔法陣にも使えるはずだ。ここのような歴史のある屋敷には、スタンピードから街を守るための大きな魔法陣くらいあると思ったんだが』
それを聞いた領主たちは首をかしげた。
今から二百年ほど前に、レオンジ帝国の三分の一が壊滅するスタンピードが起きた。
隣国のフルーツィーラ王国もかなり大きな被害を被ったし、その影響でほかの国でも魔獣が暴れていたらしい。それは、ベラも町の学校で悲惨な歴史の一つとして習った。
そういった過去を鑑みて、国を超えた冒険者ギルドの役割を増やし、積極的に森の魔獣を狩るようになったのだ。
だから、古い領主館などには防御や結界といった働きのある魔法陣が用意されていることがある。
スタンピードは基本的に大量の魔獣が通り過ぎていくので、街に入らせずに堪えることができれば人民を守ることができる。
当時は、魔石と魔法陣のセットで用意し、その当主貴族が保管・管理していることが多かったらしい。
はたして。
「こんな、地下室がこうなっていたとは」
何とか歩けるようになった領主とともに、ベラは屋敷の地下室にいた。
荷物があれこれ詰め込まれていた部屋の床には、そこそこ大きな魔法陣が刻まれていたのだ。
結論から言えば、ルノフェーリの指摘通りの防御の魔法陣だった。
ただし、ベラは魔法陣を読めないし、領主も、兵士も、誰も理解できなかった。
それを聞いたルノフェーリが、仕方なく人化して魔法陣を確認したのである。
「おぉ、竜が人化できるとは聞いておりましたが、初めてお見受けしまし――っ?」
変身の途中はとても感動しながら見ていた領主だったが、現れたルノフェーリを見て若干残念そうな表情になった。
確かに普通の人とは違う感じがしないでもないが、それでも普通のくたびれた旅人にしか見えないので、期待に添えないのは予想通りである。
「もう。だから誰かの前で人化するのは嫌だったんだよぉ。皆同じような顔になるんだから」
「仕方ないわ。あの威厳もりもり威圧感満載の竜が人になって出てきたのがホンワカ系くたびれ冒険者だったら、特別感ゼロだもの。なんかこう、絶世の美人だったり明らかに生粋のヒト族じゃない何かがあれば少しは納得できたかもしれないけど」
「言い方!納得できないっていう顔も酷い」
「大体、ルノだって人化するときにわざわざ魔力を普通のヒト族並みに抑えてるじゃない。そりゃ擬態が完璧すぎて普通のモブになれるってもんよ」
「普通のモブとは」
そうして一通り漫才を繰り広げてから地下室へもう一度向かったのである。
二人の気の抜けたやり取りのおかげで、領主は完全に立ち直った。
魔石を使って魔法陣を起動させる方法については、一応領主一族に伝わっていた。
ルノフェーリも一緒に確認し、その方法が間違っていないこともわかった。
「魔力の補充は、ここに魔石を置いておくだけでいいと」
「そう。こっちの小さい魔法陣が、ゆっくりとだけど空中から魔力を集めて魔石に補充してくれる。大きい方魔法陣のここに、魔力を補充した魔石を置いて領主が許可を出すと、魔獣を弾く結界が発動する。街の最終防衛用だから、地下室に入るためにはいくつも鍵が必要になってるんだと思う」
「確かに、なぜ地下の倉庫程度に幾重にも扉があるのかと思っておりましたが」
ここに来るまでに、カギ付きの扉が3つもあったのだ。
すべて別のカギだったうえ、そのカギの所有者もバラバラだった。
そういうものとしてカギの管理方法は踏襲していたようだが、面倒な管理もすべてはこの地下室を守るためなのだろう。
「魔石の魔力容量によって結界を継続できる時間は変わる。この魔石に魔力をいっぱいまで溜めていれば、一週間は保てるはずだ」
「一週間!それだけ籠城することができれば」
「ああ、スタンピードからは街を守れるだろうな」
魔石を見て、魔法陣を見て、感動に打ち震える領主はルノフェーリに向かって土下座した。
護衛としてついてきた兵士たちも、領主にならって土下座である。
「竜様!ありがとうございます!!国宝級の魔石をくださっただけでなく、失われた知識まで授けていただけるとは。逆鱗をお持ちいただくだけでは足りません。何かお礼をさせていただきたい」
人型のルノフェーリに残念そうな表情を隠せなかった領主は、コロリと態度を変えた。
「えぇっ?そ、そんな。逆鱗を取り戻せただけで十分だと」
「あ!それなら領主様、ほかに逆鱗を持っているという人を知りませんか?貴族の噂はさすがにあまり聞こえてこなくて」
わたわたするルノフェーリの前に出たベラは、領主に要求を伝えた。
「ベ、ベラ。確かにそれは知りたいけど、調べるとなったら大変だよ」
「そう?だったら、国内だけでいいですよ。領主様のつてを辿ってちょっと聞いてもらえたら」
「むしろ大陸中の情報を集めさせるつもりだったの?!」
「ワンチャンいけるかなって」
「鬼畜な要求」
領主はベラの要求を快諾してくれ、数日待ってほしいと言った。
ある程度噂は知っているが、確実なものではないという。
だから、保有しているかどうかを聞いてくれるらしい。
「その間は、ぜひこのブッドラ公爵領でお過ごしください。竜様のご経験には及ばないかもしれませんが、精いっぱいおもてなしいたしますゆえ」
「滞在させてもらえるならありがたいな」
領主の提案に、ルノフェーリはにこりと笑った。
ベラは特に気にしていなかったが、ここは公爵領で、目の前の領主はブッドラ公爵だったらしい。
「もちろんですとも!この領都にはそれなりに娯楽施設もございます。観劇も買い物も、帝都に並ぶと自負しておりますので、きっとお楽しみいただけます」
大きな街だと思っていたが、領都だったとは。
「買い足したいものがあったので助かります。ついでに、ここから北にある森に入って魔獣を狩ってきてもいいですか?あっちって、公爵領になるんですかね?」
「ついでとは」
ベラが聞くと、ルノフェーリがツッコんだ。
ツッコミも慣れてきたらしい。
領主あらためブッドラ公爵は一瞬驚きに目を見開いてからうなずいた。
「北の森ですか。少し距離はありますが、確かに竜様であればひとっ飛びですな。北の森は公爵領として冒険者ギルドと我が領の魔獣討伐部隊とで常に魔獣を減らしている場所です。行かれるなら、冒険者ギルドにも連絡しておきましょう」
「あー。えっと、奥の方に行く予定なので通達は……いるかなぁ?」
「いらない気がするけど。あ、でも奥地で暴れたら浅いところの魔獣がビビって逃げちゃうかもしれないわね」
「確かに逃げるね」
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