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3話 キャッチボール前の野球道具説明
しおりを挟む朝食後 【昼飯釣りに行くぞ】とライトに誘わ
れて湖に行き、
2時間弱で俺は16匹、 ライトは2匹の釣果。
5匹はライトが売りに行き、 残りは俺達の食
料だから処理を施す。
途中でレフトが合流し、 レフト主導で調理し
て料理が完成。
計ったようにタイミングピッタリでライト
が帰ってきたのでそのまま昼食。
昼食後、 俺は本日2度目の釣りに出掛けるま
での空き時間の内20~30分を昼寝に使う
事に決め、 自身の体内時計を信じて瞼を閉じ
た。
・・・・・・
【ライト視点】
ライト「らんのおかげで革細工家業は続けら
れそうだ。
あの湖の魚は美味くて高値だが 常時満腹なの
かってくらい食い付き悪くて、 凄腕の釣り師
ですらサジならぬ竿を投げる釣り場。
だってのに らんは簡単にポンポン釣り上げち
まう。
あぁ言うのを魚に愛されてるっつーんだろう
よ」
レフト「1年間毎日通って釣れる日が20日
あるかどうかって言われてる湖なのに凄い
奴だ。
この調子とは言わず、 10日に1度 値の張
る奴を釣り上げてくれたらやっていけるけ
ど、 それだと俺達は死んでるのと変わらない」
ライト「あぁ、 俺達は漁師じゃねぇ革細工職人
だ。
革細工の需要を高めて革細工で食わねぇと革
細工職人を名乗れねぇ」
レフト「頭働かせて案を練って良案を実行し
ては真似されたり、 まったくの良案じゃなか
ったりで成果が出てないのがな・・・」
ライト「クソ魔糸の養分にされねぇ為に、
クソ魔糸では無理な代物で世間に衝撃を与
え、 今の状況をひっくり返す革製品を生み
出さねぇとならねぇ。
無理難題に近ぇが、 コレを超えねぇ事には
何も始まらねぇ」
レフト「今回こそは、 その高い壁を超えない
とな」
ライト「ヨッシャ!気合い入れて考えよう
ぜ!」
俺も兄貴も案を絞り出す為に頭の中であぁだ
こうだと考え始め、 沈黙の時間が流れる。
何かねぇか、 何か妙案や打開策はねぇか。
必死に考え始めて30分を超えた辺りから
秒針を刻む音が やたら大きく聞こえる様に
なって来やがった。
こう言う時の秒針の音は急かされてるみたい
で腹が立って来る。
ライト「だぁーっクソッ!今まで色々見てぇ
モンも見たくねぇモンも見て来てんだから
何か案の1つ閃いても良いだろうに、 何で思
いつかねぇんだ畜生!」
レフト「ん? 今まで色々見てきた?
それだ!それ! 俺達が見て来てない物を見て
考えれば良い!」
見て来て無ぇモンを見て考えるって何言って
んだ?
発想の転換にしてはヤケクソが過ぎるだろ。
・・・そうか、 考え過ぎて頭おかしくなっちま
ったのか。
取り敢えず1発殴れば正気に戻るか?
レフト「狂人を見る様な目で俺を見るのはや
めろ、 それと拳を収めろ」
ライト「見てねぇモノを見ろってイかれてる
ぜ、 どうやれってんだ?」
レフト「異世界からの迷い人が居るだろ、 何か
打開策になる切っ掛けの品を持ってないか見
せて貰おう」
ライト「おおっ!! なんか色々ごちゃごちゃ
持ってたからな!なんか1つ2つありそう
だ!」
・・・・・・
【視点らん】
【ドンッ!!!】
穹窿「ほわっしゃ!!!」
いきなりバカデカイ音で夢の世界から連れ
戻され、 驚いて音の震源地であるドアを見る
とライトとレフトが立っていた。
って俺立ち上がってる!跳ね起きしたのか!
ライト「悪ぃ! 蝋塗って扉の滑り良くしてお
いたの忘れてたぜw」
レフト「俺も驚いた・・・」
穹窿「釣りの時間?」
もしかして寝過ごした!!?
昼寝は寝過ぎると夜の睡眠に悪影響を及ぼ
すのに!
って俺のバカ!そうじゃないだろ!?
居候の身で寝坊とか洒落にならない!!
ライト「そりゃまだ後だ、 テメェさんの荷物見
せてくれ」
穹窿「良いけど、 いきなりだな?」
ライト「まぁな」
寝坊じゃなくて良かったと安堵しながら
立ち上がり、 スクールバッグ1つと野球部用
のバッグ2つを取り、 部屋の真ん中に置いて
スクールバッグの方から開く。
考えてみたら異世界から来た人が何持って
るかが気になるのは自然な事だ。
レフト「どうなっている? 留め具で開け閉
めならわかるが、 何故滑らせて開く? それ
閉まるのか?」
穹窿「閉まるよ」
もう一度チャックをジーッと引いて閉じて
見せるとレフトはバッグを持ち上げチャック
をジーッと見つめる。
珍しいって事はチャックやジッパー系統の物
はこの世界に無いのか。
ライト「兄貴よ? 気になるのはわかるがそれ
はどう見ても鉄細工だぜ?」
レフト「あ、 うん」
チャック1つでこんなに興味津々になると
は思わなかった、 でも改めて考えるとチャ
ックって不思議だ。
俺もチャックの構造が気になり始めたけど、
チャックは置いといてカバンの中身を出して
行く。
ライト「本? だよな?」
穹窿「教科書だからな」
ライト「変わった手触りに知らねぇ文字だ。
なんて書いてある?意味は?」
穹窿「国語、 話を読んで作者の意図を読みと
り語学を勉強する教科書」
ライト「文学者の育成でもすんのか?」
穹窿「俺の国での一般教養」
ライト「はぁ・・・」
レフト「・・・この小物入れの手触り不思議だ、
何とも言えない手触りをしている」
穹窿「エナメルって言って・・・確か革に色々し
て樹脂を塗って作るらしい、 気になって調べ
たけどけどよくわからなかった」
レフト「惜しい」
ボールペンやら何やらを見て使って楽しんで
貰った後に、
真打ちである俺の宝物の詰まったバッグを
オープン!
ライト「袋ばっかだな」
穹窿「まぁな!」
どれから行こうか? やっぱりここは投手
用から行こう!
穹窿「ドゥルルルルル・・・ジャーン!!」
口頭ドラムロールしながら取り出したけど
2人の反応は
【ナニソレ?】
とイマイチ。
用途がわからないとその反応になるのも無理
は無いか。
型付けベルトと中に入れておいた硬球を出し
て左手に嵌める。
その何気ない動作でハッと気付いた。
穹窿「こっち来てからバッグに仕舞いっぱな
しじゃん・・・」
いつもお世話になっている野球道具を放置
するなんて 俺は何をやってるんだ。
想定外の事態に巻き込まれたからなんて言
い訳にもならない。
本当に申し訳ない。
ライト「手袋じゃねぇよな?」
穹窿「これは投手用グローブまたはグラブ」
ライト「投手?」
穹窿「これは野球って競技の投手って守備位
置をする人が付けるグラブだ」
ライト「ヤキュー? 知らねぇな」
穹窿「細かい規定は沢山あるんだけど、 この球
を守備側が投げて 攻撃が打って走って得点を
競う競技だ」
ライトは硬球を掴むと手触りを確かめてから
観察を開始。
レフト「・・・そのグラブは・・・革か?」
穹窿「うん、 牛革。 確か教科書に写真が・・・・・・
あったあった!コレ、 この動物」
レフト「俺達が知ってるのよりも穏やかそ
うだ。
でも牛なら心の底からありがたい!手が出
せない動物じゃない」
ライト「案の1つは生まれたな!」
穹窿「?」
レフト「そのグラブ貸してくれ」
穹窿「良いぞ、 ただあんまり乱暴にしないで
くれよ?型が崩れるから」
レフト「革製品を乱暴に扱うなど俺には出
来ん。
・・・・・・芸術の一言に尽きる。
この形状に手に吸い付く感触、 革の香りと革
の良さを凝縮した1品を生み出せるのは名の
ある革職人に違いない」
ライト「この刺繍以外は革だけで作ってある。
ん? 中身はなんか入ってるがそこは良いか。
俺はこの縫い目の革紐が気に入ったぜ」
穹窿「職人さんには違いないだろうけど普通
の野球用品店で買ったから、 そんなに珍しい
物ではないぞ?」
ライト・レフト「なにっ!!?」
2人は目を見開いた後グラブを注意深く、
それこそグラブに毛繕いする様に観察し始
めたので彼方此方触っているけど、
手つきがとても優しく、 グラブに愛情と敬意
を持って触れているのがわかるから安心して
見ていられる。
ライト「見れば見る程、 極上品だ」
レフト「工芸品と言っても通用する代物だ」
穹窿「次は・・・ファーストミットにしよう」
ライト「おぉ!此奴は!此奴は良い! 此奴は
カッケェ!!」
取り出すや否やライトは目を輝かせながら
ファーストミットを持ち、 様々な角度で眺め
始めた。
ここまで好反応を示してくれると自分が褒め
られてるみたいに嬉しい。
レフト「守備位置によって形状が異なるのか」
穹窿「うん、 野球は外野手3人内野手4人投手
1人捕手1人の9人守備で 捕手と一塁手はミ
ットを使って残りの7人はグラブなんだけ
ど、
外野手用グラブと、 内野手の三塁手用グラブ
と遊撃手用グラブと二塁手用グラブがある
んだ」
気にせずに1つのグラブで彼方此方守る人も
居るけど、 俺は守備位置毎に代えたい派だか
ら細かく分けて説明させて貰う。
レフト「つまりグラブは5種類あるのか」
ライト「堪らねぇ! ふおぉーっ!良いね良い
ね!」
まさに歓喜乱舞してくれるのは嬉しいんだ
けど、 俺の説明聞いてくれると嬉しいな。
レフト「・・・もう一つのミットを見せてくれ」
穹窿「よし来た! ミットもだけど捕手は特殊
な守備位置でな?」
捕手用のバッグを持ってきて野球バッグの
横に置いて宝物達を取り出す。
穹窿「捕手だけはマスクやプロテクターを着
けて守備をするんだ」
レフト「知らない素材だ、 これは?」
穹窿「プラスチックって科学物質」
レフト「不思議な物質で出来ているのか」
ライト「プロテクターってのは防具の事か?」
穹窿「うん」
そうそう!ルーボスーベでは英語関係の言葉
があまり通じない。
だから出来るだけ日本語訳にして話す必要が
ある。
レフト「このミットの名前は?」
穹窿「キャッチャーミット。 捕手は投手が投
げた球を捕球したり止めたりするのが主な仕
事だ」
レフト「なるほど、 つまりファーストミットと
キャッチャーミットは守備位置の役割に適し
た形状になっているのか」
穹窿「正解!」
ライト「キャッチャーミットは捕りにくそう
だな」
穹窿「癖が強いけどキャッチャーミット程 綺
麗に捕った時の快感を得られるグラブやミッ
トは無い」
ライト「其奴は是非とも拝みてぇ、 釣りに行く
前に見せてくれよ?」
穹窿「喜んで! 後でキャッチボールしよう!」
ライト「この球の投げあいをするんだな?」
穹窿「そう! キャッチボールだけでも楽しい
んだ♪」
野球の事を考えられる、 野球が出来る環境が
あるってとても幸福な事なんだと痛感してる
からキャッチボール1つだけで高揚感が止
まらない!
でも!先ずは2人に野球の基本であるキャッ
チボールを楽しんで貰うのが優先!
キャッチボールは相手が居るから出来るんだ
と自分に言い聞かせながら楽しむぞ!
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