異世界転移野球布教活動

ニーニー・エルボー

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5話後半 借金理由と野球布教に向けて

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穹窿「それで研究ってのは? グラブ・ミット

の解体とかだったら断るぞ」



 
ライト「あの未知の芸術作品を解体するなん

ざ畏れ多くて無理だ。  

グラブ・ミットの作り方はわかるか?構造で

も良い」




穹窿「流石に・・・あっ!!」




そうだそうだ!スクールバッグに良い物が

入ってる!

嬉しさそのままに立ち上がったから2人は

驚いたけど気にしない!


スクールバッグから1冊の本を持ってきて

差し出すとライトが受け取った。




穹窿「グラブが出来るまでと硬球が出来るま

でが写真付きで書かれている本だ」




何故この様な本を持っているかと言うと、

あの日運動部の貴重な昼休みに図書員の人

から手伝いを頼まれ、 図書室で本の整理中

にこの本を見つけ 【前に動画で見た事はあ

るけど、 本は無いし読んでみるか】と何気な

く借りてきたからだ。


何気ない行動で持っていた本が異世界で重要

な資料になるなんて、 なんて幸運だ!


あの時の俺ナイス判断!



元の世界に戻れなかったら学校の私物を借り

パクになるけど・・・不可抗力だから! 不可抗

力だから仕方ない!返したいけど俺自身が帰

れそうにないんだから仕方ない!





ライト「昼間見た時は気にも留まらなかった

が、 今は伝説のお宝に見えるぜ。

さてと・・・・・ デカイ機械使ってるな、 何して

んだコレ?」





2対1で対面する様に座っていたけど、 空

いているライトの右隣に椅子毎移動して本

を覗き込む。





穹窿「無駄の無い様に切る所の形を取って

るって」




ライト「この機械でか、 この画だと形の大きさ

がわからねぇから現物見ながら手探りでやる

しかねぇな」




レフト「この画は何かで突き刺しているが針

か?」




穹窿「ウォーターカッターって言って水を圧

縮して細い穴から噴出して革を切ってる。

ナイフとかだと革が硬くて上手く切れないか

らだって」




レフト「魔法攻撃で水を圧縮して飛ばす魔法

があるから想像出来る」




ライト「俺達用の参考本から作る必要がある

な、 そんで異世界の文字だから通訳が必要

だ。 

文字は俺が書くから通訳頼む」




穹窿「良いけど、 俺は裁縫とか からっきしで

書いてある意図と違う捉え方をするかも知

れないから、 そこの修正は頼むぞ?」




ライト「任せろ、 作業工程で気づく」




穹窿「今からやる?」




ライト「いや、 明日の朝からだ。 

俺達は徹夜なんかザラで気が付いたら三日三

晩ぶっ続けで作業していたとか良くあるから

よ、

今から始まるとテメェさんは暫く寝られねぇ

ぞ?」





三日三晩!?  人類の不眠最長記録は11日

と少しとは言え、 如何して作業出来るんだ?

眠くならないのか?


徹夜どころか日を跨いで床についた事の無い

俺から見たら人間離れした所業だ。





穹窿「無理! 明日の朝からでヨロシク!」




ライト「あぁ」




レフト「・・・なるほど、 だから膨らんでるのに

綿みたいな感触がしないのか! 」




ライト「芯を入れてるからこうなってるのか、

なるほどな」




穹窿「因みに何から作る予定日なんだ?」




ライト「2人で決めてある、 投手用からだ。

野球は投手から始まるのだから投手用から

始めるのが筋だろうってのと、 他の守備位置

にも応用が効きそうって理由だ」




穹窿「良いねぇ! 特に理由が最高!

その野球の開始は投手からだからってのが

乙で良い!」




ライト「だろ?始まりが肝心って奴で選んだ」




穹窿「野球の勝敗は投手で7割決まるって言

われる大切な守備位置。 

その中でも先発投手の出来が試合に直結する

事が多い。

その通りで始まりが肝心なんだよ」




ライト「興奮し過ぎだ、 少し落ち着けw


・・・ん? おいおいっ!マジか!硬球にも革が

使われてるのか!!」




レフト「なに!?」




穹窿「うん、 牛革」




ライト「中に丸いモン入れて紐で何層かに巻

いて何かの層の上に革か。

グラブ・ミットより完成させるのは格段に簡

単だな」




レフト「白いのは鞣しか、 木から作られてい

ると思い込んでしまっていた・・・ 

見抜けなかったのは悔しいが、 革だと知れた

嬉しさが勝ってるから良しとしよう」




ライト「・・・この機械で壁にぶつけたり、 地面

に2球並べて落としてんのは何やってん

だ?」




穹窿「反発係数計ってる。 跳ねなさ過ぎると

飛ばなさ過ぎるし、 跳ね過ぎると飛び過ぎる

から規定に沿っているか調べてる」




ライト「形さえ良けりゃ良いってわけじゃ

ねぇのが凝っていて良いじゃねぇか」





反発係数は特注のピッチングマシンから

秒速30~70メートルまでの6段階に

分けて発射し、 1球ずつ2メートル先の

鉄板に当たる際の球速と跳ね返った速度

をセンサーで測定する。

0・4034~0・4234と規定されて

いる統一球の反発係数は、 秒速75メー

トルで発射して跳ね返った際の数値が基

準とされている。



と本に書かれているけど、 こっちの測定技

術ってどの程度なんだ?


この問題はわからないから一先ず保留だな。





レフト「見ていくと知らない単位だらけだ、

細かく計算されているな」




ライト「何て読むんだ?」




穹窿「センチとミリ」




ライト「センチとミリか」





実物を見せた方が正確に説明しやすいので、

スクールバッグから製図セットを取り出し

て持ってきた。


因みに製図セットを持ち歩いてるけどウチ

の高校の授業では使わないぞ?


授業で使わない道具を如何して態々持ち歩

いているかと言うと、 

上手く行ってない時に見返すと最重要なの

は内容なのに、 2番目3番目の事が気にな

って頭に入らない・・・。


そう言う時って いつにも増して集中力が

欠如していて、 文字の歪みや大きさが気

になって修正し始めてしまう。


だから、 そんな自分の性格を考慮して 前

以て道具を使って丁寧に書いてる。





穹窿「ここまでが1㎝で小さいメモリが1㎜。

10㎝が10個並んだら100㎝だけど1m

って単位にもなる」




レフト「ほぉ・・・、 デカイ物を造る時はmの方

がわかりやすいな」




ライト「おっ! 此奴は面白ぇ!形状的に中で

巻いてあるな」




穹窿「メジャーって言うんだ、 俺達の言語だ

と巻尺」




ライト「ん?それどう言う意味だ?」




穹窿「メジャーは他所の国の言葉、 でもメジ

ャーの方が定着してる」




ライト「そうか、 この㎝とかも外国か?」




穹窿「うん、 他にもあるけど多くの国で使わ

れる単位。

性格で細かいから色んな物作りに使われて

る」




レフト「この㎜や㎝やmだけでも国を変える。

ここまで細かく正確な単位はこの国、 否、 こ

の世界には無い」




穹窿「この国の単位ってどんなの?」




レフト「エランスとピージャ。 でも長らくした

ら変わる」




穹窿「変わる?単位が?なんで?」




レフト「エランスは国王陛下の拳の大きさ、 

ピージャは国王陛下の足の大きさだからだ」




穹窿「身体尺!? それ単位としてどうなん

だ?」




レフト「どうと言われても普通だから何と

も思ってない」




ライト「他の国でも同じ事やってるし、 特別

珍しい事じゃねぇぞ?」




穹窿「そうなんだ」





身体尺が普通となると精密機器は期待出来な

い。

反発係数とかは同じ高さから落として目視

での確認になりそうだ。





ライト「㎝やmって名前があるのに学者に勝

手に命名されたら癪だし、 作り始めたら国に

単位として報告しておくぜ」




レフト「これとこれは?」




穹窿「分度器とコンパス、 角度を測るのと図

形を書く時に使う。 

コンパスの方はかなり簡易的な物だ」




レフト「歪みの矯正に便利だな、 これから

職人業に必要不可欠なモノになる」




穹窿「俺から見ればエランスとピージャ

って大雑把な計り方に思えるんだけど、 革細

工とか建物とかどうやって作ってるんだ?」




ライト「それぞれの職人の所に独自の測定

器があるぜ」




穹窿「さっきレフトが言ったのは、 統一され

た細かい単位が無いって意味だったのか」




ライト「あぁ、 殆どの親方や その親方の下で

腕を磨いた中級者以上の奴は感覚で覚えてる

から いちいち計ったりしねぇけどな」




穹窿「殆ど感覚だけでやってるのかよ!!?」




レフト「寧ろ、 いつまでも測定器を使ってると

【そこの所を感じ取れない奴はいつまで経っ

ても1人前の職人になれない】ってドヤさ

れるぞ」





職人とはって考えや伝統があるんだろうけ

ど、 建物は可能な限り安全性と正確性取ろ

うよ・・・。



・・・! 闘技場含めて建物の強度大丈夫か!?

大丈夫じゃないよな!?

ヨシッ!建物内に居る時に地震が起きたら

揺れが収まるのを待って、 収まった瞬間外に

猛ダッシュで避難だ!





ライト「作ってる物を物真似すりゃ良いって

話じゃねぇ、 師匠の技術毎学んで自分のモン

にするのが修行だ。  

そんで師匠の弟子としてじゃなく1人の職

人として食える様になって初めて1人前」




レフト「おいおい大切な事を抜かすな。

師匠の技術を学んで自分のモノにして、 そ

して師匠の想いを感じ理解してこそ師匠の

技を受け継いだ1人前の職人だ。

想いを感じ取れない奴はただの猿真似野郎

でしかない」





伝統の技と心を受け継ぐって奴だな。

前居た世界では絶滅寸前の根性論と精神論

を全面に出す指導にはギャップを感じるけ

ど、 

俺が職人の世界に飛び込むわけじゃないし、 

彼等の世界ではそう言うモノとして尊重し

よう。




それはそれとして、 2人の師匠への感謝と

尊敬の隠った目を見ると 師弟関係って言

葉では足りない、 深く強い 決して切れる事

の無い絆で結ばれているのがわかる。


前居た世界では難しくなった、 仕事関係以

上に踏み入った関係が築けるのが この世界

の良さなんだろうな。





穹窿「深い話だ」




ライト「根性無ぇ奴が職人になるのは不可能

だ、 才能だけで何とかなる程 優しい世界

じゃねぇ。


っと、 そろそろテメェさん寝かせねぇとな! 

明日から野球道具作製の為、 そっちの世界の

単位やら何やらを理解する為に質問攻めする

からよ」




レフト「明日から忙しくなる!嬉しい限り

だ!」




穹窿「俺は作製が始まったら家事位しか出来

ないけど、 野球道具作りよろしくな!!」




ライト・レフト「おぅ!ヨロシク!!」





この日、 たった3人でルーボスーベに野球を

布教する事が決まった。


2人は革細工の復活を目指して、

俺が目指すのは

キャッチボールをする親子、 野球バッグを持

ってチームメイトと駆けていく子ども、 野球

談義をする大人。

そんな何気ない日常の風景に野球が溶け込

んだ世界。


明日から野球の為に頑張るぞ!!


では、 お休みなさい。  ・・・Zzz。
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