異世界転移野球布教活動

ニーニー・エルボー

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8話 前進

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ライト「ヨシッ!! 俺の為のファーストミッ

ト第1号が遂に完成したぜ!」




穹窿「おめでとう!」




レフト「格好良いのが出来たな」




ライト「ありがとよ!色々迷ったが出来た奴

を見ると迷ったが甲斐があったぜ」





ライトのファーストミットはキャメルカラ

ーでシングルポストのダブルバー。


初めは日本で多い2ピースウェブを採用す

るつもりだったんだけど、 ゴロの捕球感が物

足りないと採用を見送った。





ライト「俺の手に合わせたのもあるが、 やっ

ぱり左投げ用ファーストミットの方がしっ

くり来るぜ」




穹窿「利き腕だもんな」





今話した通りライトは本来左利きの左投げ。


今まで左投げ用を製作せずに右投げ用を使

っていたのは

【見本が右投げ用だから先ずは右投げ用か

ら作れる様になろう】って2人の方針の関

係だ。

その方針を打ち出したのはライトだけど、 

製作していく内に左投げ用が欲しいって気

持ちが強まり続け、

先日、 各守備位置の右投げ用グラブ・ミット

製作が一通り完了すると 興奮気味に左投げ

用ファーストミット製作に取り掛かり 今に

至る。



因みにレフトは右利き右投げ専門だ。





ライト「キャッチボールしようぜ!」




レフト「やろう、 俺も俺用キャッチャーミッ

トの使用感を確認したい」




・・・移動&キャッチボール・・・




ライト「やっぱよぉ! ファーストミットは最

高だぜ!」





現在キャッチボールを終えて3人で集まっ

た所。


ライトはキャッチボール中は ずっと使用感

について絶賛の言葉を並べ、

キャッチボールが終わってからはファース

トミットを様々な角度から眺めてフォルム

を堪能しながら絶賛している。


一方レフトは





レフト「捕れた時の感触は良いんだけど捕

球しにくい」





キャッチャーミットのポケットに軽く裏拳

をしながら困り顔。

レフトは横型キャッチャーミットを製作した

んだけど、 横型に多いポケットが浅めの構造

に苦戦していた。





穹窿「横型は使いながらポケットの深さを

作っていくモノだからな」




レフト「そうか、 それなら微調整しながらポ

ケットを作っていく」




ライト「らんのキャッチャーミットが捕りや

すいのはポケットが出来ていたからか」




穹窿「うん」




ライト「横型を選んだ理由はなんだ?」




穹窿「両方持ってるぞ、 その日持っていたの

が横型だった」




ライト「両方作ってるのか、 理由は?」




穹窿「投手が低く構えて欲しい人か気にしな

い人か、 投手が速い縦変化球を持ってるかど

うか、 投手が横型が良いか気にしない人かで

使い分けてる」




ライト「器用だな、 器用だよな?」




穹窿「うん、 俺以外にやってる人は見た事無

い」




レフト「俺も行く行くは横型と縦型両方使い

熟したい。

そうする事でキャッチャーミット製作の幅

が広がる」




穹窿「健闘を祈る。 ん?」





羽ばたき音がして見上げると、 鳥が此方に向

かって飛んできていた。

レフトがOK型の指笛を吹きながら腕を曲げ

ると鳥はレフトの腕に着地。

鳥の足に着けられている小さな筒から紙を

取り出し、 魔力を流すと紙はバッと30㎝程

の長方形に変化した。





レフト「シームからだ」





ライトは【スペース】から豆の入った布袋

を取り出し、布袋から豆を2粒取り出すと爪

先でパキッと割り中の実を鳥に与えた。


今与えた実は人も食べられる。

味は ほんのりとした後を引くエグミがある

だけで美味しくない。

ただ栄養豊富で調子が悪い時に食べると回

復が早くなるそうだ。





レフト「納得いくバットが出来たから来い

って」




ライト「おっ! 相変わらず仕事早ぇな! 行

こうぜ!」





と言うわけでシームの工場へ出発!


途中で【あれ?伝書鳥は何処行った?】と

周囲を見渡すと伝書鳥はちゃっかり俺の乗る

革絨毯に乗って羽繕いしていた。


可愛いから撫でたいけど人様のペットだから

と我慢した俺を誰か褒めて欲しい。



工場に着くと鳥は建物の中へと飛び去った。





【ガンッ!!】




???「くぁーっ!! 芯外した!!」




???「次だ次だ!」



???「行ったれ行ったれぇい!!」





降りて直ぐに打球音と悔しがる声、 盛り上

がる人達の声が聞こえて来たので其方に向

かう。



おっ!どう打ってるのかと思ったらトスバ

ッティングだ!


トス役は3m程の長方形の木材で作られ

た枠組みの間に細かい網を張った防球ネッ

トの端を掴み 半身を乗り出しながらトスを

上げ、

打者は木材で3m四方の枠組みに細かめの

網を張り付けた打撃用ネットに向かい打ち

込んでいる。





シーム「おぅ!来たか!  どーよ!凄ぇだ

ろ! 試し打ちしてる画を見て作ってみたん

だ!」




ライト「良いじゃん良いじゃん良いじゃねぇ

か!!

後で俺にもやらせてくれよ?」




シーム「おぅよ!」





穹窿「ビックリした! 試し打ちする為に防球

網まで作るなんて!」




シーム「感触確かめる為に必要でな!

色んな奴の感触聞く為に打たせたらあんな

感じでよ?

今じゃ昼休憩や仕事終わりに誰かしら打って

る状態だ」




穹窿「だから6つも防球網があるのか。


正面からの優しい下投げは練習で良くや

ってた、 懐かしいなぁ」




日常の何気ない光景だったトス打撃を見て

ノスタルジックな気持ちになるなんて、

元居た世界では思いもしなかったな。





レフト「アレは楓か?」




シーム「おぅよ! 教本に書いてあった通り板

目の方が打感が良い。

その事を教えずに若い奴等に打たせてみた

んだが、 【板目が断然良い】って皆口を揃え

てな?

木の感触を覚えてきてくれて嬉しいのなん

のw」




レフト「職人の卵が育ってるな」




シーム「使って貰いてぇバットは事務所にあ

るんだ、 取ってくるから待ってろ」





シームは楽しさが抑えきれない子どものよ

うにウッキウキで歩いていった。





ライト「ありゃあ自信作だな」




レフト「お披露目したくて堪らねぇって体か

ら溢れてる」




ライト「こっから見てバットの出来はどう

だ?」




穹窿「良い音出てるなぁ、 くらいしかわから

ない」
 



ライト「そうか、 そりゃあそうだよなw」





シームのお弟子さん達のトス打撃を眺める

事 約3分、 シームが戻ってきた。





シーム「待たせたな! 此奴が今の所の自信

作だぜ!」





持ってきたバットは艶やかで太陽の光を反

射して眩く輝いている。


何か塗ってあるのか?





穹窿「この光沢何か塗ってるのか?」




シーム「いや?磨いただけだぜ?」




穹窿「光ってるからさ。 

これは美しい!聖剣の輝きだ!」




シーム「おっ! !聖剣とは言ってくれるじゃ

ねぇか!」




レフト「何も巻いてないけど滑らないか?」




シーム「滑る、 だから俺達は作業用手袋つけ

て振ってる」




ライト「テメェさんのバットには何が巻いて

あるんだ?」




穹窿「テープって化学繊維になるかな。 

この1つ前のグリップテープは牛の皮革

だった」




ライト「ほぉ! 何で変えた?」




穹窿「同じの買おうとしたら生産・販売辞め

てた」




ライト「そうか、 そりゃあ残念な話だ。 


俺達の仕事が増えたな?」




レフト「うん、 接着剤は俺達で調合しても良

いけど、 ここはラミーに頼みに行こう」




ライト「うげぇ・・・」





仕事が増えてニヤッとしていたライトの顔

が絵に描いたような苦虫を噛み潰したよう

な顔に急変。


好き嫌いが表情に出やすいタイプだけど、 

ここまで変わるなんてその人と何かあるの

か?





穹窿「何かあったのか?」




ライト「彼奴の工房付近は空気がネチョネチ

ョしてんだよ。

ったく今から足が重くなっちまうぜ」





ネチョネチョ?

風通しが悪くて臭いが隠ってるって意味

か?


気になったけど、 今から久しぶりの打ち込み

をするから別に良いや。





シーム「さて! じゃあ打って確かめて貰う

か!」





本当はダメだけど簡単にストレッチして2人

が製作した革手袋を装着。

本来の用途は守備手だけど多分大丈夫だろ

う。


ストレッチ中に人が集まり、  結構な数のお

弟子さんが俺達を囲んでいる。


経験者の打撃を見たいんだな? ではご期待

に応えてみせましょう!





ライト「さぁて!お手並み拝見といこう

か!」




レフト「期待してるぞ」




穹窿「任せろ」





ここは安定をとって より芯で捉える自信の

ある左で打つ。

久しぶりだから思い切り打ちたいけど、

このバットは重量感があるからフルスイン

グはせず コンパクトに芯で叩くだけに留め

る。



トスを上げてくれるのはお弟子さん、 何度か

トスの軌道と速度を確認して準備OK!





穹窿「ヨッシャ!  お願シャス!」




【シュッ!】




【ズカンッ!!】




全員「おぉーっ!!!」





木製バット特有の乾いた音色が響くと、

周囲の人達は花火の様な表情を咲かせ、 花

火の炸裂音の様な驚嘆の溜め息をついた。



これだ!このリアクションが欲しかったん

だ!


求めていたリアクションに気分が良くなり

そのまま快音を連発。


スイングを重ねる毎にキレを増していく

のが自分でもわかり、 ずっと打っていたか

ったけど バットの感触を確かめるのが目的

のトス打撃だから15球打った所で切り上

げ、

トスを上げてくれたお弟子さんにお礼を言

ってからシームの元へ。





穹窿「打感凄く良いよ、 特に弾く感触が良い」




シーム「だろ? そうだろう? 俺もそこを評

価して呼んだんだ」




ライト「反発具合はどうだ?」




穹窿「簡単に弾くから鰐革を厚くした方が

良い」




ライト「わかった」




シーム「バットについて他には?」




穹窿「ちょっと重いかな」





振った感じ1200g のマスコットバット

と似た重量感がある。

もう少し軽い1000g の感触だったら2球

目からフルスイングで打ち込んで、 もっと皆

を湧かせられたんだけどなぁ。





シーム「重さはもう少し待ってくれ、 バット

の為の秤を今作ってんだ」




穹窿「うん、 急なお願いなのに色々助かるよ、

ありがとう」



シーム「良いって事よ!  他には?」




穹窿「他に・・・・・・! 後1つだけある」




シーム「おぅ、 言ってくれ」




穹窿「板目と柾目をわかる様に印が欲しい」




シーム「教本に理由書いてあったな。  で?ど

んな印にするんだ?」




穹窿「出来るならだけど、 ここの工場で作ら

れたってわかる印が良い」




シーム「其奴は俺も助かる。 どんな印を希望

してるんだ?」




穹窿「それは製造元に任せるよ」





一瞬にして辺りが静まり返り、 聞こえるの

は何処から聞こえてきてるのかわからない

鳥の囀りのみ。


何故沈黙?ダメな奴だったか? ダメな理由

はなんだ?





シーム「良いのか!!? 本当に良いのか!

!?」




穹窿「うぉう!?ビックリした!!」





静寂を引き裂く大声を出しながら巨体が瞬

間移動して来て、 ゴツゴツした手の平で両肩

を上から押すように掴まれた。


興奮しても加減は忘れず、 痛みが無いのは

非常に助かる。





穹窿「勿論、 作ってるのはシームの所だ」




シーム「だが俺は らんの持ってきた完成品と

作り方を見て真似ただけだ。 

好きな印にしても誰も文句言わねぇぞ?」




穹窿「持ってただけだよ」




ライト「こっちでは案を持ち込んだテメェさ

んのモンってこった」




穹窿「説明助かるよ。 


それを聞いても、 製造元の印が良いって気持

ちは変わらない」




シーム「お前は本当に良い奴だ!! ヨッシ

ャ!

そうと決まれば印考えねぇとな!!」




穹窿「好きな印にして良いって数に限りは

無いのか?」




ライト「俺も詳しくはねぇが、 ルーボスーベ

国内で生産された野菜・果実は 別々の農家に

依頼を出しても1つだけ、 

馬車とかのデカイ奴の部品は別々で良いと

かだ」




穹窿「何となくわかった」




シーム「教本に明記されてる事 意外に何かあ

るか?」




穹窿「無いよ。 竹バットは注文して俺の名前

を入れて貰った奴だから参考になると思う」




シーム「おぅ!」




ライト「グラブの方も良いのか?」




穹窿「勿論」




ライト「ヨッシャ! こっちも印を考えねぇ

とな!」




レフト「うん! らんの所の色んな印を見な

がら考えよう」




シーム「おっ!其奴は俺も見させて貰うぜ! 

基準作りやすいからよ!」





この後ライトとレフトも打ってから、 

シームの事務所でPDFから書き写しておいた

様々なメーカーのシンボル・ロゴマークを見

せて、 書いてある文字の意味や知ってる範囲

でマークの意味を教えながらマークを作り

をサポート。


参考にしたいマークが多すぎて その日の内

にマークデザインは決まらず、

後はそれぞれで作ろうって解散となった。



レフトとライトは数日掛けてマークの添削

を行い、 デ〇ントのマークの左右の棒を矢印

を変えて5本にしたデザインに決定。



一方シームの所は良案を求め、 

勤めてる人達の中から案を集めてトーナメ

ント投票で絞っていき、 大接戦の末にアン〇

ーアー〇ーをモチーフにしたマークに決ま

ったそうだ。

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