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02 ー he ー
2-1
しおりを挟む出勤時、駅のホームで、今日も黒いコート姿の彼を見かけ、片手を上げる。
「おはよう」
互いによく分からない約束をしてから、初めて会う、朝。
前髪の奥と目が合って、向こうは無言で、ぺこりと頭を下げた。
好きだと告げた相手は、いつも通りの細く無機質な佇まいで、目の前を通り過ぎる。
何人か間を置いて乗車待ちの列に並ぶ。その微妙な距離感。
いつもと同じに見えて、何とはなく、今までとは少し違った新しい人に見える。
名前を教えて貰った時もそんな風に感じた。
いつも黒い格好の、手速いけど身体の弱い作業メンバーが、新しく、自分の中に、名前を持って存在する人となった。
その名前を呼ぶうちに、少しずつ自分の中でその存在感を増して行き、
そして今日からは、好きだ、と言ってしまった、でも、友達だと言われてしまった人、になった(ややこしい)。
その人はいつも通り、電車に乗り込むと離れた奥の場所に立ち、壁にもたれて目を閉じている。
この間は寒い中、長い時間外にいたので少し心配したが、顔色は大丈夫なようだった。
駅に着いて、バスに乗り込む。彼は後部座席の隅に座り、自分は前の方の出口近くに立った。喫煙所仲間が声をかけて来たので、休日の趣味の話なんかを聞きながら建物に到着し、そのままロッカー室まで一緒に歩く。
海は、いつの間にか先に仕事場に入り、モニターを見ながらリストのチェックをしていた。
デスクに着くと、小さな包みがパーテーションの隅に、分からないように3つほど。
手に取ると、お菓子のブランド名が刻印されたリボンや包装紙。
チョコレートだ。
(…ああ)
時期的に思い当たって、少し当たりを見回す。
それらしい人が誰なのかは分からなかった。
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