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03 ー slowly ー
12-5
しおりを挟む午後は久々の内勤仕事を片付け、帰りに地元の駅で海と待ち合わせ、居眠りの事を謝って、礼を言った。
それから一緒に食事をしながら、休暇の予定をもう一度、打ち合わせをしようと誘ってみた。
案の定、海は大して乗っては来ない。
「出掛けるって、どこに」
「どこでもいいよ。何日かあるから、遠出してもいいし、近場でも、泊りがけでもいいな」
おそらくそういった経験の無さそうな人に、色々やらせてあげたい。どういう反応をするんだろうっていう楽しみもこっちにはあるし。
「キャンプとかどう?先週挨拶周りした支所の近くに、大きめの自然公園があったよ。静かで、広くて、人が少なくて、君にはいいんじゃないかな」
「キャンプって、何するんだ」
「何って……野外で泊まったり、飯作って食ったり。外で、寝袋で寝るのも楽しいよ」
「何で行くの」
「え?何でって」
「あんた、疲れてるんだろう」
「今日の話じゃなく、休みの話だよ、せっかくの」
「せっかくの休みは、休めばいいだろう」
「そりゃそうだけど……まとまった休みは、普段出来ない事をしようよ」
「まとまって休めるだろ」
「……」
「外で食べるのは、そこの公園で前に一回やったし、外で寝るなんて、余計、疲れるだろう」
海は凄く普通の顔で凄く普通にそんな事言ってて、
……駄目だ、話になんない。
一回やったし、って、何だ。少し考えて思いつく。
もしかして、あの立ってプリン食べたのを数に入れるのか。それはまた違うでしょ。
というか……
「あんたは、休めばいい」
「……」
……そうなんだよな……。
コイツは、僕の事を思って、労って、この言い方なんだよな……。
「あんた、今日、凄ぇ良く寝てたから、休みはたくさん休めよ」
そう言って、ちょっと笑うんだ。
「あ、ああ……」
昼間のこと、笑っている。
それで、ああ、ベッタリもたれて眠ってしまった事はそんなに怒ってないのか……と、ホッとしてしまって、「そうだな」とか言って、頷いてしまって……
それで、
じゃあ休み明けにまた、なんて言って、レストランの前で別れた。
うー。
疲れてるなんて言わなきゃ良かった……。
結局、この休暇は、一緒に出かける事もなく、僕は丸一日言われた通り爆睡して。
翌日は別な仲間にオートキャンプに誘われて、まるで予定通りだったみたいにキャンプをしてきた。
友人の子供と遊んだり、一緒に来てた大きな犬と一緒に寝たりして、楽しかった。
犬くささを味わいながら、その身体に寄り掛かって、屋上でうたた寝した時のことを思った。
どんな感じだったんだろう。
眠っていたので、全然覚えていない。
これがアイツだったら、こんなかなぁと、多少ごつごつした手触りを感じつつ、想像しつつ、ぎゅうと抱きしめてみた。その結果、犬とはとても仲良くなって、寝袋にがっつり臭い付けまでされてしまった。
そんな休暇だった。
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