VR花子さんの怪

マイきぃ

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第一部 VR花子さんの怪

第六話 クリーチャー集会での出来事の話

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 激しい熱帯魚の話が始まった。

「我が、激しい熱帯魚だ! 我は……いや我らはクリーチャーと呼ばれている。簡単に言えば異形の姿をした者たちだ。
 時に我が所属するクリーチャーギルドにて、クリーチャー集会が行われた。それは月に一度の集会だ。

 その集会の中、アバターを見せ合いパフォーマンスを披露している時に事は起こった! 我らがクリーチャーギルド本部、クリーチャー宮殿が突然魔界から超魔界へと化した! 素晴らしい! まるで視界ハックされているような悪魔的な光景だ! こんなカオスなギミックを作ってくれたワールド作成者、サテライトゴーレムさんに感謝! ……と、サテライトゴーレムさんを称賛したのだが、サテライトゴーレムさんは『こんなギミック知らない……』と一言もらしたのだよ。

 その言葉をただの謙遜だと思った我らは、サテライトゴーレムさんの態度を気にせずこの現象を楽しんでいた。すると、便器の台座に座っていた我らが崇拝する七柱の一人、ベルフェゴール様の像が突然姿を変え、黒髪黒目で闇の雰囲気のある女性のアバターとなり我らの目の前に降臨する事態に発展!
 これもまた、素晴らしい演出ではないか!

 すると仲間の一人が『VR花子さんだ!』と、この女性アバターを命名した。たしかに、よく見るとそんな姿ともいえよう……これが噂に名高いVR花子さんなのか!

 本部内は沸いた! そして我らは決断した! 彼女を我がギルドの仲間とすることを!

 ……と、フレンド申請とギルド勧誘を試みたわけなのだが、それは叶わなかった。なぜなら、ポインタを合わせてもキャラクターの詳細が表示されず、ワールドのリストを見ても該当キャラは存在しない。存在しないものにはフレンド申請も勧誘もすることはできない……お手上げだ。
 ……と、なると、このアバターはアバターではない何かということになる。皆、ワールド作成者の方を向いてギミックじゃないかと疑い問いただす。けれど、サテライトゴーレムさんはこのギミックの存在を否定するばかりだ。

 だが、本当にVR花子さんはギミックと見ていいのだろうか?

 VR花子さんは、手を振れば手を振って返す。表情でほほ笑めば微笑みを返してくれる。握手もしてくれる。エモーションも飛ばしてくれる。どうみても生きているアバターなのだ。なのに存在しないのだ。

 なんだかんだ疑問を抱いて数分たった頃、VR花子さんはベルフェゴールの台座へと戻り、手を振って消えた。視界ハックも解けた。ベルフェゴールの像は元の姿に戻った……我はため息をついた……とにかく不思議な事象だったことには間違いない。

 これは運営のいたずらか、それとも霊のような何か別の存在なのだったのか……

 その後の話になるが、この事象のおかげでサテライトゴーレムさんは相当ショックを受けてしまった。無理もない……想定外だったのだからな。祟られるのが怖いと、しばらく寝込んでしまったとのことだ。
 ついで、パソコンを買い替えたらしい。どうやらパソコンのハードの中に脆弱性のあるパーツが使用されていたらしく、ウイルスに感染していたようなのだ。

 そんなことがあってから、我らはその事象の原因を一時的に花子ウイルスと呼称し、そのせいにした。けれども、我々はその現象を見ているにもかかわらず、ウイルスの感染はなかった。メタバースの運営にも問い合わせをしたのだが、サテライトゴーレムさんの作成したワールドにウイルス感染は無かったそうだ。
 なので、このサテライトゴーレムさんが感染したウイルスがVR花子さんと関係しているかは不明……とだけ言っておこう。本当はサテライトゴーレムさんに直接話をしてもらいたかったのだが、生憎事情が事情なだけに我が話しを持ってきた。以上が我らが経験した事象だ」


 激しい熱帯魚の激しい口調での熱弁が終わった。住職が挨拶をする。

「激しい熱帯魚さん、ありがとうございましたぁ! それでは今の話についての視聴者コメントを見てみたいと思います」


──動画のコメントボード──

……
……
VR花子さん勧誘されそうだったんだね。
VR花子さんと愉快な仲間たち。
僕も握手したいです。
花子ウイルス説キター!
自我を持ったウイルス発生?
……
……


 では、検証に移ることにする。

 VR花子さんが現れた時の視界ハックのような事象……これは自分も経験済みだ。
 ベルフェゴールの像……一応ここでもトイレが関係しているといっていいだろう。
 そして、ワールド作成者のパソコンのウイルス感染。VR花子さん自体がウイルスだったとすれば、サテライトゴーレムのパソコンにもぐりこみ、いろいろと操作をしていたという可能性も出てくる。だが、それはあくまで可能性の一つだ。
 メタバースの運営側を疑うのもわかる気がすが……これは今のところこの件に限る事象だろう。

 今のところ事象の起こっているメタバースは3か所。
 まず、VRメタバース。ここはほぼ全世界が利用している老舗のメタバースだ。
 次にメタバースJPは日本生まれのメタバース。日本人が多く、いまイベントをしているメタバースもこのメタバースJPだ。
 そしてメタバースクラフト。ここは最近日本語対応したばかりの海外のメタバース。
 この3つのメタバースがグルになってVR花子さんの事象を起こしているなら話は別だ。けれど、この3か所のメタバース陣営は協力関係にないのでそれはありえない。

 逆に言えば、この3か所の共通事項がわかれば、VR花子さんという事象の解明も進展するのかもしれないのだけど……それをすると沼にハマる危険性があるので今は話の検証だけに留めておくことにした。


 コメントが流れ終え、住職と激しい熱帯魚が会話する。

「VR花子さんをギルドに勧誘できなかったのは残念です。それにしても、災難でしたねぇ~ウイルス感染は気を付けないとねぇ」
「もちろん、機会があればまた勧誘する。今度はちゃんとVR花子さんの椅子も用意しよう。その為にも、サテライトゴーレムさんには早く復帰してほしいところだ」
「それではろうそくの火をお願いしまぁす」

 激しい熱帯魚は住職にそういわれるとろうそくを吹く動作をする。ろうそくの火がまた一つ消えた。
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