7 / 16
第一部 VR花子さんの怪
第六話 クリーチャー集会での出来事の話
しおりを挟む
激しい熱帯魚の話が始まった。
「我が、激しい熱帯魚だ! 我は……いや我らはクリーチャーと呼ばれている。簡単に言えば異形の姿をした者たちだ。
時に我が所属するクリーチャーギルドにて、クリーチャー集会が行われた。それは月に一度の集会だ。
その集会の中、アバターを見せ合いパフォーマンスを披露している時に事は起こった! 我らがクリーチャーギルド本部、クリーチャー宮殿が突然魔界から超魔界へと化した! 素晴らしい! まるで視界ハックされているような悪魔的な光景だ! こんなカオスなギミックを作ってくれたワールド作成者、サテライトゴーレムさんに感謝! ……と、サテライトゴーレムさんを称賛したのだが、サテライトゴーレムさんは『こんなギミック知らない……』と一言もらしたのだよ。
その言葉をただの謙遜だと思った我らは、サテライトゴーレムさんの態度を気にせずこの現象を楽しんでいた。すると、便器の台座に座っていた我らが崇拝する七柱の一人、ベルフェゴール様の像が突然姿を変え、黒髪黒目で闇の雰囲気のある女性のアバターとなり我らの目の前に降臨する事態に発展!
これもまた、素晴らしい演出ではないか!
すると仲間の一人が『VR花子さんだ!』と、この女性アバターを命名した。たしかに、よく見るとそんな姿ともいえよう……これが噂に名高いVR花子さんなのか!
本部内は沸いた! そして我らは決断した! 彼女を我がギルドの仲間とすることを!
……と、フレンド申請とギルド勧誘を試みたわけなのだが、それは叶わなかった。なぜなら、ポインタを合わせてもキャラクターの詳細が表示されず、ワールドのリストを見ても該当キャラは存在しない。存在しないものにはフレンド申請も勧誘もすることはできない……お手上げだ。
……と、なると、このアバターはアバターではない何かということになる。皆、ワールド作成者の方を向いてギミックじゃないかと疑い問いただす。けれど、サテライトゴーレムさんはこのギミックの存在を否定するばかりだ。
だが、本当にVR花子さんはギミックと見ていいのだろうか?
VR花子さんは、手を振れば手を振って返す。表情でほほ笑めば微笑みを返してくれる。握手もしてくれる。エモーションも飛ばしてくれる。どうみても生きているアバターなのだ。なのに存在しないのだ。
なんだかんだ疑問を抱いて数分たった頃、VR花子さんはベルフェゴールの台座へと戻り、手を振って消えた。視界ハックも解けた。ベルフェゴールの像は元の姿に戻った……我はため息をついた……とにかく不思議な事象だったことには間違いない。
これは運営のいたずらか、それとも霊のような何か別の存在なのだったのか……
その後の話になるが、この事象のおかげでサテライトゴーレムさんは相当ショックを受けてしまった。無理もない……想定外だったのだからな。祟られるのが怖いと、しばらく寝込んでしまったとのことだ。
ついで、パソコンを買い替えたらしい。どうやらパソコンのハードの中に脆弱性のあるパーツが使用されていたらしく、ウイルスに感染していたようなのだ。
そんなことがあってから、我らはその事象の原因を一時的に花子ウイルスと呼称し、そのせいにした。けれども、我々はその現象を見ているにもかかわらず、ウイルスの感染はなかった。メタバースの運営にも問い合わせをしたのだが、サテライトゴーレムさんの作成したワールドにウイルス感染は無かったそうだ。
なので、このサテライトゴーレムさんが感染したウイルスがVR花子さんと関係しているかは不明……とだけ言っておこう。本当はサテライトゴーレムさんに直接話をしてもらいたかったのだが、生憎事情が事情なだけに我が話しを持ってきた。以上が我らが経験した事象だ」
激しい熱帯魚の激しい口調での熱弁が終わった。住職が挨拶をする。
「激しい熱帯魚さん、ありがとうございましたぁ! それでは今の話についての視聴者コメントを見てみたいと思います」
──動画のコメントボード──
……
……
VR花子さん勧誘されそうだったんだね。
VR花子さんと愉快な仲間たち。
僕も握手したいです。
花子ウイルス説キター!
自我を持ったウイルス発生?
……
……
では、検証に移ることにする。
VR花子さんが現れた時の視界ハックのような事象……これは自分も経験済みだ。
ベルフェゴールの像……一応ここでもトイレが関係しているといっていいだろう。
そして、ワールド作成者のパソコンのウイルス感染。VR花子さん自体がウイルスだったとすれば、サテライトゴーレムのパソコンにもぐりこみ、いろいろと操作をしていたという可能性も出てくる。だが、それはあくまで可能性の一つだ。
メタバースの運営側を疑うのもわかる気がすが……これは今のところこの件に限る事象だろう。
今のところ事象の起こっているメタバースは3か所。
まず、VRメタバース。ここはほぼ全世界が利用している老舗のメタバースだ。
次にメタバースJPは日本生まれのメタバース。日本人が多く、いまイベントをしているメタバースもこのメタバースJPだ。
そしてメタバースクラフト。ここは最近日本語対応したばかりの海外のメタバース。
この3つのメタバースがグルになってVR花子さんの事象を起こしているなら話は別だ。けれど、この3か所のメタバース陣営は協力関係にないのでそれはありえない。
逆に言えば、この3か所の共通事項がわかれば、VR花子さんという事象の解明も進展するのかもしれないのだけど……それをすると沼にハマる危険性があるので今は話の検証だけに留めておくことにした。
コメントが流れ終え、住職と激しい熱帯魚が会話する。
「VR花子さんをギルドに勧誘できなかったのは残念です。それにしても、災難でしたねぇ~ウイルス感染は気を付けないとねぇ」
「もちろん、機会があればまた勧誘する。今度はちゃんとVR花子さんの椅子も用意しよう。その為にも、サテライトゴーレムさんには早く復帰してほしいところだ」
「それではろうそくの火をお願いしまぁす」
激しい熱帯魚は住職にそういわれるとろうそくを吹く動作をする。ろうそくの火がまた一つ消えた。
「我が、激しい熱帯魚だ! 我は……いや我らはクリーチャーと呼ばれている。簡単に言えば異形の姿をした者たちだ。
時に我が所属するクリーチャーギルドにて、クリーチャー集会が行われた。それは月に一度の集会だ。
その集会の中、アバターを見せ合いパフォーマンスを披露している時に事は起こった! 我らがクリーチャーギルド本部、クリーチャー宮殿が突然魔界から超魔界へと化した! 素晴らしい! まるで視界ハックされているような悪魔的な光景だ! こんなカオスなギミックを作ってくれたワールド作成者、サテライトゴーレムさんに感謝! ……と、サテライトゴーレムさんを称賛したのだが、サテライトゴーレムさんは『こんなギミック知らない……』と一言もらしたのだよ。
その言葉をただの謙遜だと思った我らは、サテライトゴーレムさんの態度を気にせずこの現象を楽しんでいた。すると、便器の台座に座っていた我らが崇拝する七柱の一人、ベルフェゴール様の像が突然姿を変え、黒髪黒目で闇の雰囲気のある女性のアバターとなり我らの目の前に降臨する事態に発展!
これもまた、素晴らしい演出ではないか!
すると仲間の一人が『VR花子さんだ!』と、この女性アバターを命名した。たしかに、よく見るとそんな姿ともいえよう……これが噂に名高いVR花子さんなのか!
本部内は沸いた! そして我らは決断した! 彼女を我がギルドの仲間とすることを!
……と、フレンド申請とギルド勧誘を試みたわけなのだが、それは叶わなかった。なぜなら、ポインタを合わせてもキャラクターの詳細が表示されず、ワールドのリストを見ても該当キャラは存在しない。存在しないものにはフレンド申請も勧誘もすることはできない……お手上げだ。
……と、なると、このアバターはアバターではない何かということになる。皆、ワールド作成者の方を向いてギミックじゃないかと疑い問いただす。けれど、サテライトゴーレムさんはこのギミックの存在を否定するばかりだ。
だが、本当にVR花子さんはギミックと見ていいのだろうか?
VR花子さんは、手を振れば手を振って返す。表情でほほ笑めば微笑みを返してくれる。握手もしてくれる。エモーションも飛ばしてくれる。どうみても生きているアバターなのだ。なのに存在しないのだ。
なんだかんだ疑問を抱いて数分たった頃、VR花子さんはベルフェゴールの台座へと戻り、手を振って消えた。視界ハックも解けた。ベルフェゴールの像は元の姿に戻った……我はため息をついた……とにかく不思議な事象だったことには間違いない。
これは運営のいたずらか、それとも霊のような何か別の存在なのだったのか……
その後の話になるが、この事象のおかげでサテライトゴーレムさんは相当ショックを受けてしまった。無理もない……想定外だったのだからな。祟られるのが怖いと、しばらく寝込んでしまったとのことだ。
ついで、パソコンを買い替えたらしい。どうやらパソコンのハードの中に脆弱性のあるパーツが使用されていたらしく、ウイルスに感染していたようなのだ。
そんなことがあってから、我らはその事象の原因を一時的に花子ウイルスと呼称し、そのせいにした。けれども、我々はその現象を見ているにもかかわらず、ウイルスの感染はなかった。メタバースの運営にも問い合わせをしたのだが、サテライトゴーレムさんの作成したワールドにウイルス感染は無かったそうだ。
なので、このサテライトゴーレムさんが感染したウイルスがVR花子さんと関係しているかは不明……とだけ言っておこう。本当はサテライトゴーレムさんに直接話をしてもらいたかったのだが、生憎事情が事情なだけに我が話しを持ってきた。以上が我らが経験した事象だ」
激しい熱帯魚の激しい口調での熱弁が終わった。住職が挨拶をする。
「激しい熱帯魚さん、ありがとうございましたぁ! それでは今の話についての視聴者コメントを見てみたいと思います」
──動画のコメントボード──
……
……
VR花子さん勧誘されそうだったんだね。
VR花子さんと愉快な仲間たち。
僕も握手したいです。
花子ウイルス説キター!
自我を持ったウイルス発生?
……
……
では、検証に移ることにする。
VR花子さんが現れた時の視界ハックのような事象……これは自分も経験済みだ。
ベルフェゴールの像……一応ここでもトイレが関係しているといっていいだろう。
そして、ワールド作成者のパソコンのウイルス感染。VR花子さん自体がウイルスだったとすれば、サテライトゴーレムのパソコンにもぐりこみ、いろいろと操作をしていたという可能性も出てくる。だが、それはあくまで可能性の一つだ。
メタバースの運営側を疑うのもわかる気がすが……これは今のところこの件に限る事象だろう。
今のところ事象の起こっているメタバースは3か所。
まず、VRメタバース。ここはほぼ全世界が利用している老舗のメタバースだ。
次にメタバースJPは日本生まれのメタバース。日本人が多く、いまイベントをしているメタバースもこのメタバースJPだ。
そしてメタバースクラフト。ここは最近日本語対応したばかりの海外のメタバース。
この3つのメタバースがグルになってVR花子さんの事象を起こしているなら話は別だ。けれど、この3か所のメタバース陣営は協力関係にないのでそれはありえない。
逆に言えば、この3か所の共通事項がわかれば、VR花子さんという事象の解明も進展するのかもしれないのだけど……それをすると沼にハマる危険性があるので今は話の検証だけに留めておくことにした。
コメントが流れ終え、住職と激しい熱帯魚が会話する。
「VR花子さんをギルドに勧誘できなかったのは残念です。それにしても、災難でしたねぇ~ウイルス感染は気を付けないとねぇ」
「もちろん、機会があればまた勧誘する。今度はちゃんとVR花子さんの椅子も用意しよう。その為にも、サテライトゴーレムさんには早く復帰してほしいところだ」
「それではろうそくの火をお願いしまぁす」
激しい熱帯魚は住職にそういわれるとろうそくを吹く動作をする。ろうそくの火がまた一つ消えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる