神様に加護2人分貰いました

琳太

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2巻

2-3

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「嘘だ、嘘だ、違う、違う、嘘だぁぁ……」
『スキル《回復魔法》がレベルアップしました。レベルアップにより〈エクストラヒール〉が使用可能となりました』

 項垂うなだれている場合じゃない、あきらめるな。〈ハイヒール〉をかけ続けたせいか、スキルレベルが上がった。〈エクストラヒール〉なら、なんとかなるかもしれない。

「〈エクストラヒール〉」
『マスター、《回復魔法》はHPを回復する魔法です。多少の外傷は治りますが、重篤じゅうとく怪我けが、病気、部位欠損などは治りません』

 回復させても出血は止まらないし、徐々にHPが減っていくってことか。なら、怪我けがを治す魔法があればいいのか。

『レベルが上がりました。レベルが上がりました。レベルが上がりました。ジライヤのレベルが上がりました。ジライヤのレベルが上がりました』

 不意にナビゲーターのレベルアップコールがきた。《氷魔法》の効果で、キラーグリズリーの心臓でも凍りついたか?

『ジライヤのレベルが上がりました。ツナデのレベルが上がりました。ツナデのレベルが上がりました。ツナデのレベルが上がりました。ツナデのレベル……上が…………した。ツナデ……レベ……が上…………ま……た。スキル《…………の…………た。……ル……レベ………………』

 レベルアップコールが続く。しかしこのとき、俺はパニクっていたのであまり覚えていないし、確かめようとも思わなかった。
 レベルアップコールの合間、ナビゲーターから欲しい情報のみに意識を向けていた。

『《スキル習得難易度低下》の効果により、新たなスキル《治療魔法》を習得しました。《治療魔法》レベル1では、初級魔法〈キュア〉が使用可能です』

 すぐにその魔法を唱える。

「〈キュア〉」

 ルーナの身体が淡く光り、出血が少し減った。しかし部位欠損などはそのままだ。

「〈キュア〉〈キュア〉〈エクストラヒール〉」

 魔法を連発すると、HPは一時的に回復するも、やはり減少が止まらない。【状態・瀕死ひんし、出血多量、下肢欠損】に変わり、HPが減少し続ける。

『スキル《治療魔法》のレベルが上がりました。マスター、レベル1の〈キュア〉やレベル2の〈ハイキュア〉では、部位欠損や重症は治せません。上位の魔法を使用するには、レベルが不足しています。《治療魔法》で部位欠損を治せるのはレベル6の〈マキシマムキュア〉となります』

 ナビゲーターの言葉に、焦燥感しょうそうかんが増す。
 じゃあ、《魔法構築》で部位欠損を治せる〈マキシマムキュア〉を……

『レベル不足により《魔法構築》で作成できません』

 既存の魔法は、スキルレベルが達していないと扱えない。じゃあ新しい魔法、俺の持つ現代日本の知識を利用して、新しい魔法を考えろ!
 蘇生……は違う、まだ死んでない。他に助ける方法は? 外科手術といっても、失ったものを繋ぎ合わせることはできない。じゃあ、移植……って、どっから持ってくるんだよ。
 組織の培養ばいよう、クローン、SFなんかでよくある治療ポッドみたいな、肉体のができる魔法を作れないのか?

『・・・・スキル《メディカルポッド》を習得しました』
「《メディカルポッド》!!」

 なんでもいい、ルーナを治せるなら。俺はナビゲーターが告げたスキルを発動させる。
 ルーナの身体がまばゆい光に包まれた途端、俺の身体から大量のMPが引き出される感覚があった。最初の《コピー》で味わった感覚を、何十倍にも酷くした感じに、目の前が真っ暗になった。
 意識が途切れる前、ナビゲーターの声がかすかに聞こえた。

『イエ…………スター。《メディ……ポッド……動……た。残存……る組織……構…………す。所…………間………………』

         ◇ ◇ ◇


 ぺろぺろ……
 ペチペチ。

『『……キ』』
『『フブキ』』

 ジライヤとツナデが、俺を呼んでいる……声が、途切れ途切れの、俺の意識を浮上させた。
 寝返りを打とうとするが、身体が動かない。ほおの下に、砂と土と石の感触。
 薄く目を開けるも、よく見えない。

『『フブキ』』

 ぺろり。
 これは、ジライヤが俺の鼻をめているのか。
 ペチペチ。
 ツナデの小さな手が、ほおたたくように触れてくる。俺はいつ寝たんだろう? 地べたで寝てるのか? なんでこんなところで……
 確か、ビッグベア討伐とワイルドボア納品の依頼を受けて、ベルーガに……倒したビッグベアの解体をして……!

「ルーナ!!」

 思い出して起き上がろうとした。だが、身体は思うように動かず、途端にくらりと眩暈めまいがした。
 起き上がれずに、そのまま倒れ込む。眩暈めまいが治まるのを待ってから、目だけで周りを見回した。
 どこだここは? さっきまで戦っていた川原じゃない? 森? 木蔭か? いや違う。つるが複雑に絡まり、ドーム状になっているようだ。

『フブキ気絶した。オレ引っ張ってここまで運んだ』

 ジライヤが俺の顔をぺろぺろめる。なんとか右腕を持ち上げ、ジライヤのフサフサの頭をでる。

『ウチが《木魔法》で作った巣や。その周りをジライヤが《風魔法》で守ってくれとる』

 ツナデが胸にしがみついてきた。ようやく眩暈めまいが治まったことで、今度はゆっくりと上半身を起こす。つるや葉の隙間すきまからの光が差し込んでいる。気を失って倒れた俺を、守ってくれたのか。

「ルーナ、ルーナはどうした?」

 ジライヤが俺の足元にあった、大きなバランスボールのようなものを、器用に鼻で押してきた。
 ツナデがそれをポンポンとたたく。

『ルーナはこれ、ちゅうか、こん中や』
「えっと……どういうことだ?」
『わからない。ルーナ光ったと思ったら、コレになった』
『そしたらフブキが倒れたんや』

 俺はバランスボールもどきを《鑑定》した。


 =メディカルポッド〈ルーナ〉
 フブキの固有スキル《メディカルポッド》により作成された治療用ポッド。現在個体名〈ルーナ〉の肉体を残存細胞にて再構成中。終了まであと166時間=


 なんだこれは? 俺はルーナを治したくて《魔法構築》を……あのとき何を考えた? ぼうっとする頭を振り、記憶を手繰たぐり寄せる。
 思い出せ。《治療魔法》のレベルが低すぎて、部位欠損が治せなかった。なら、部位欠損を治す別の方法。そう、SFなんかでよくある、治療用の再生ポッドだ。水槽の中で人が浮いているあれを考えた……
 それを、作ったのか? そんな魔法を? 現代日本の知識をって考えたが、コレはSF、フィクションの部類だぞ。

『イエス、マスター。マスターの知識をベースに構築されました。莫大ばくだいなMPを必要とし、不足MP分をHPより変換したため、マスターの生命活動に支障をきたしました。現状でこのスキルを再度使用することは、マスターの生命に多大な危険が伴うため、使用を控えることを進言いたします』

『生命活動に支障』と言われて、背筋に冷たいものが走った。俺はステータスを表示する。


 名前・フブキ=アマサカ 年齢・17歳 種族・異世界人
 レベル・13 職業・テイマー、冒険者、救命者〔NEW〕
 H P 64235/492240(409600+81920+460+260)
 M P 44238/492108(409600+81920+268+320)
 STR(筋 力)1832(1180+236+276+140)
 DEF(防御力)1976(1300+260+276+140)
 VIT(生命力)2062(1300+260+322+180)
 DEX(器用さ)1692(1060+212+220+200)
 AGI(敏捷性)1430(820+164+276+170)
 MND(精神力)1964(1300+260+184+220)
 INT(知 力)1238(800+160+138+140)
 LUK(幸 運)728(460+92+96+80)

【加護スキル】《アイテムボックス(時間停止)LV2》《パラメーター加算LV1→2》
【称号スキル】《言語理解LV4》《取得経験値補正LV1→2》《使用MP減少LV2》《スキル習得難易度低下LVMAX》《取得経験値シェアLVMAX》《従魔パラメーター加算LV1→2》《生命スキル補正〔NEW〕LVMAX》
【職業スキル】《従魔契約LV2→3》《意思疎通LV2→3》
【生命スキル】《メディカルポッド〔NEW〕LV1》《回復術〔NEW〕LV3》《治療術〔NEW〕LV2》《蘇生術〔NEW〕LV0》
【補助スキル】《アクティブマップLV1→2》《鑑定LV7》《気配察知LV1》《気配隠蔽LV1→2》《追跡者の眼〔NEW〕LV1》《縮地〔NEW〕LV1》
【技工スキル】《細工LV2》《家事LV2》《解体LV2》《錬金術LV2》
【武術スキル】《槍術LV3》《棒術LV1》《格闘術LV2》《短剣術LV1》《双剣術LV1》《長剣術LV1→2》
【魔法スキル】《属性魔法〔NEW〕LV6》《氷魔法LV4→5》《雷魔法LV4》《木魔法〔NEW〕LV1》《魔力操作LV3》《魔法構築LV4→5》《魔力感知LV1→2》
【耐性スキル】《麻痺まひ耐性〔NEW〕LV1》《物理耐性〔NEW〕LV1》
【ユニークスキル】《ナビゲーターLV2→3》《コピーLV3》《ギフト〔NEW〕LV1》
【加護】《異世界神の加護×2》
【称号】《異世界より召喚されし者》《落とされた者》《ジライヤの主》《ツナデの主》《生命の天秤を揺らす者〔NEW〕》

 ビッグベア戦の後、俺のレベルは13だった。ルーナを助けようとしていたとき、レベルアップコールがあったことは覚えている。少なくとも3レベルくらいアップして、本来なら16くらいなはず。
 なのに、レベルが元のままってことは、3レベルも下がったのか? それに、MPだけじゃなくHPまで減っている。キラーグリズリーの攻撃を食らったが、ここまでHPが下がるほどではなかったと思う。ルーナの命を繋ぐために、俺の命を代償にしたということか?

『不足MPを補填ほてんするために、HP変換を使用しましたが、それでも不足したことと、マスターの救命のために、レベルダウンによる緊急回避措置を施行しました』

 不足MPを、HPやレベルで補えるのか?

『通常は不可能です。ナビゲーターの機能から■■■■へのアクセス権を流用した、いわゆる裏技です。■■■■の管理者により、再度の使用は不能となりました』

 ああ、ナビゲーターに助けられたのか、サンキューな。ナビゲーターは、俺が望んだ以上の機能を持ったスキルだった。〝神〟様にも感謝だ。
 とりあえず、このままMPが回復するまでおとなしくしているか。
 でも、MPの回復が遅い気がする。

『イエス、マスター。《メディカルポッド》に毎分600MPを使用しています』

 今のMP回復量が五分で約5000なんで、実質五分で2000くらいしか回復しないってことか。この状態があと一週間ほど続くなら、大量にMPを消費しないよう気をつけないとな。
 とはいえ、今でも五桁はある。種族レベルが10の頃のマックス値に近いし、そのときでも枯渇こかつするほど使ったことはないから大丈夫かな。
 当面の問題は……ないよな。
 ホッとしたせいか、脱力感が押し寄せ、頭がふらつく。

「ジライヤ、ツナデ。ちょっと寝ていいか」
『うん、見張りちゃんとしとくよって』
『休んで、フブキ』
「……ああ、悪い、たの、む」

 ステータス表示で色々増えたものを確認したいところではあるが、身体のだるさ、疲労感に眠気が加わり、もう限界だ。


 ――崩れるように倒れ込んだフブキに、ジライヤとツナデはそっと寄り添った。


         ◇ ◇ ◇


 ……腹が減ったな。
 空腹で目が覚めた。しかしあたりは暗く、木の葉の隙間すきまから差し込む光はすでにない。日が沈んだのだろう。
 俺が目覚めたことで、寄り添っていたジライヤとツナデも、起き上がる気配がした。

「いててて……」

 川原の石の上で眠ったせいで、身体中が痛い。
 小さな〈ライトボール〉を頭上に浮かべ、視界を確保する。
 肩をみつつ、自分のステータスを確認する。少しHPは回復しているが、一応自分に〈エクストラヒール〉と〈キュア〉をかけた。
 キラーグリズリーとの戦闘は昼過ぎだった。そのあと気を失って、一度目を覚ましたのは何時頃だったのだろうか? MPの回復量からみて、あれから四時間ほど眠っていたと思われる。
 そっと起き上がると、前回のようなふらつきも眩暈めまいもない。川原で寝た痛みも、先ほどの魔法でなくなった。
 腕をぐるぐる回しながら肩をほぐす。寝る前に考えていたことを確認するか。
 膝に載ってきたジライヤと、しがみついてきたツナデをでながらナビゲーターに確認する。

「増えた職業の〝救命者〟って何?」
『イエス、マスター。治療師、治癒術師の上位職業になります。【称号】の《生命いのちの天秤を揺らすもの》とともに、自身の生命力を他者に与え、救命したことで得ました』

 自分の命を削ったことで得たってわけか。生命の天秤を揺らすって、ヤバそうな名前だな。

『新たな【称号】により、【ユニークスキル】の《ギフト》、【称号スキル】の《生命スキル補正》、【生命スキル】の《回復術》《治療術》《蘇生術》を習得。【魔法スキル】の《回復魔法》《治療魔法》はそれぞれ《回復術》と《治療術》に統合されました。また、《メディカルポッド》は【生命スキル】に分類されました』

 新しい【称号】のおかげで色々スキルが増えたようだ。

「回復系以外にも【魔法スキル】からなくなっているものがあるんだが」
『イエス、マスター。《光魔法》《闇魔法》《四属性魔法》が統合され《属性魔法》となりました』

 統合されたのか。《六属性魔法》じゃなくて《属性魔法》なんだな。最後は《ギフト》か。

『《ギフト》は、レベル1では、自身のHP、MPを他者に与えることができます。ただしスキルレベルが低いほど、贈与効率が悪く、相手に1のHP、もしくはMPを与えるには、マスターのHP、もしくはMPを1000必要とします』

 効率わるっ。《回復魔法》かけたほうがよくね? でもMPは無理か。そういえば、前にジライヤに《魔力操作》で指先に集めた魔力を魔素としてあげたよな。そのときは、MPの総量を超えて増えていた。

『MPの自然回復は、環境に漂う魔素を吸収することで行います。魔素が豊富な場所では、若干回復率が上昇しますが、個々の吸収力によるところがあります。マスターは《回復術》のレベルアップで、魔素吸収力アップ効果のある〈マジックリジェネレーション〉が使用可能になります』

 そんな魔法あるんだ。ポーション類を購入したことはないけど、MPを回復させるマジックポーションとかもあるんだよな。確か、マリク草がマジックポーションの材料だった。
 あっ、ジライヤたちもキラーグリズリー戦でレベルアップしていたはずだ。随分コールが長かったし。ジライヤから確認するか。


 名前・ジライヤ 年齢・0歳 種族・ハイブラックウルフ
 レベル・9→14 職業・フブキの従魔
 H P 2530/2530(2300+230)
 M P 2004/2024(1840+184)
 STR(筋 力)1518(1380+138)
 DEF(防御力)1518(1380+138)
 VIT(生命力)1771(1610+161)
 DEX(器用さ)1210(1100+110)
 AGI(敏捷性)1518(1380+138)
 MND(精神力)1012(920+92)
 INT(知 力)759(690+69)
 LUK(幸 運)528(480+48)

【称号スキル】《言語理解LV2》《パラメーター加算LV1》《取得経験値補正LV1》
【職業スキル】《意思疎通LV2》《取得経験値シェアLVMAX》
【補助スキル】《咆哮LV4→5》《瞬脚LV5》《突進LV2→3》《空中回避LV2→3》
【戦闘スキル】《爪の一撃LV5》《噛みつきLV5→6》
【魔法スキル】《風魔法LV4→5》《地魔法LV1→2》
【称号】《異世界より召喚されし者フブキの従魔》

 ビッグベア戦の後、レベル11だったから、キラーグリズリーだけで3レベルも上がってる。ランク上のモンスターと戦うのは、それくらい大変だってことだよな。ツナデはどうだろう。


 名前・ツナデ 年齢・0歳 種族・リトルマンキーの特異体
 レベル・1→11 職業・フブキの従魔
 H P 1430/1430(1300+130)
 M P 1220/1760(1600+160)
 STR(筋 力)770(700+70)
 DEF(防御力)770(700+70)
 VIT(生命力)990(900+90)
 DEX(器用さ)1100(1000+100)
 AGI(敏捷性)935(850+85)
 MND(精神力)1210(1100+110)
 INT(知 力)770(700+70)
 LUK(幸 運)440(400+40)

【称号スキル】《言語理解LV2》《パラメーター加算LV1》《取得経験値補正LV1》
【職業スキル】《意思疎通LV2》《取得経験値シェアLVMAX》
【補助スキル】《木登りLV4→5》《跳躍LV4》《巻きつきLV1→2》
【戦闘スキル】《引っきLV3》《噛みつきLV3》
【魔法スキル】《木魔法LV4→5》《水魔法LV2》《地魔法LV2》《風魔法LV1→2》
【称号】《異世界より召喚されし者フブキの従魔》

 元のレベルが低かったせいもあるが、キラーグリズリー一体で5レベルも上がっている。

「ツナデはなんともないか?」
『うん、ウチは元気やで』
「そっか」

 急激なレベルアップによる不調はないようで、安心した
 外は真っ暗で、空には星がまたたいているのが、つる隙間すきまから見えた。今何時くらいなんだろう? つるドームは高さがないので、って外に出てから、身体を伸ばす。
 キラーグリズリーを閉じ込めた穴から突き出ている氷山は、三分の一ほどになっていたが、まだ溶けきっていない。
《氷魔法》による物理攻撃なら、きっと倒せなかった。〈フリージング〉で注ぎ込んだ川の水ごと凍らせたから、キラーグリズリーも凍って(思うに、血液とかも凍ったんじゃないかと)倒せたんだろうな。
 今は解体とかする気力がない。それより腹が減ったんで、飯にしよう。
 俺は《アイテムボックス》に入れていた、お袋の弁当を出す。
 ジライヤにはビッグベアの肉、ツナデにはビタンの実とふかしテトポを渡した。
 一時期は食べ飽きた気がしたが、しばらくぶりに食うお袋の弁当は凄く美味うまく感じられて、なんだか涙が出てきた。
 ジライヤが俺にピッタリとくっついてきて、太ももに頭を載せる。なんだかまた大きくなった気がする。
 ツナデは反対の太ももに座って、頭を俺の腹に擦りつけてきた。
 俺、今二人に慰められてるなあ、なんて思いながら弁当をき込む。

「やっぱりお袋の卵焼きうめえな、ちょっとしょっぱいけど」

 弁当はあっという間にからになった。
 その日はそのままツナデの作ったつるの家(?)に結界石を置いて寝ることにした。
 身体のだるさが抜けなくて、村まで戻る気力がない。

『ウチがやるよってそれ貸して』

 と、ツナデが結界石に魔力を流していた。そんなことまでできるようになったんだ。
《メディカルポッド》を奥にやり、ごそごそとキャンプシートとシェラフを取り出して潜り込む。
 ツナデも中に潜り込んできて、ジライヤは横にピッタリとくっついてきた。
 瞼を閉じるとすぐに眠気がやってきた。


         ◇ ◇ ◇


 胸元でゴソゴソ動く気配で目が覚める。

『あ、起こしてしもた?』
「いや、十分寝たよ。ありがとな、ツナデもジライヤも」

 ツナデの頭をで、ジライヤの耳の後ろをいてやると、目を細めて気持ち良さそうにする。
 つるの家を出て川で顔を洗う。水が冷たくて気持ちがいい。
 顔をタオルできつつ、ステータスでMPを確認する。
 ようやく30万ほどまで回復している。
 これなら問題ないと思う。
 片付けて村に戻ろう。昨日の夕食はワイルドボアの内臓煮込みを食べさせてもらう約束だったのに、帰れなかったな。
 つるの家に戻ろうとしたとき、昨日の血の跡がないことに気がついた。
 よくわからないが、この川原に浄化作用でもあるのか?
 ルーナが倒れていた場所には、ルーナが身につけていた服や装備、ギルドカードが落ちていた。
 俺はそれらを拾い集め、川で汚れを洗い流す。服に〈ドライ〉をかけ、剣やポーチを包んで一纏ひとまとめにして麻袋に詰めてから《アイテムボックス》に収納した。
 次にキラーグリズリーのところへ行く。氷は溶けているようだ。穴から引き上げようにも、さすがに一トンを軽く超えていそうで、俺のステータス値をもってしても、素手で引き上げるのは無理だ。穴に手を突っ込んでそのまま《アイテムボックス》に収容する。

「村に戻るにしても、どうやってポッドを運ぶか?」

《メディカルポッド》を持ってみたが、五十キロはない。とはいえ、直径一メートルちょっとのまんじゅう型なので、手で持つのは難しい。

「袋に入れて背負うか」

 思案していると、ツナデが俺の肩に登ってきた。

『ウチに任しとき』

 そう言うと、つるの家がシュルシュルとほどけて、《メディカルポッド》に巻きつき、背負いかごになった。


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