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第二章 外堀はこうして埋められる
ホクホクじゃがバター出来ましたっ
しおりを挟むさて、皆様お待ちかね!
蒸してたジャガイモが出来上がりましたよ!
ナナトが準備してくれた器に、蒸したジャガイモを4つずつ乗せていきます。
小ぶりなジャガイモがころりと器の中で転がりました。
切れ目から綺麗にぱっくり割れ皮がぺろんっとなっていて、間伐材の串を刺してもすんなり入るので、中まで問題なく火が通っていますね。
器に盛ってバターを乗せれば、見慣れたフォルムに懐かしい気持ちになります。
単にジャガイモを蒸してバターを乗せただけの料理……だけど、とても美味しくて、兄と夏の縁日では毎回のように買って、他のものも食べたいからという理由から、半分こして食べたことを思い出しました。
思い出の味の1つですね。
器に盛り付けられた蒸しジャガイモは4つあり、2つずつ味が違う物にしてみました。
1つはバター、もう1つにはマヨネーズ。
どちらの味にも、塩コショウをふりかけたあと配っていきます。
ナナトが準備してくれた器と串を手に、黒騎士様たちマールマヨだけでも美味かったのに!とむせび泣きそうな勢いですが……じゃがバターを食べ、じゃがマヨを食べ、こっちがいい、あっちがいいと再び騒ぎ出してしまいました。
賑やかですし、元気があって良いです。
まるで男子高校生のノリですが、見ていて微笑ましくなります。
「ジャガイモ1つで、沢山調理法があるにゃ」
「あの笑顔の為に、料理って作るんですよね……」
「だからこそ、こんなに美味しい料理ができるんですにゃ」
ぱくんっとじゃがバターを食べたナナトは、バターのほうが好みのようで、追加のバターを要求してきました。
全く、困ったキャットシーもいたものです。
「じゅわぁと溶けるバターの風味がなんともいえませんにゃ」
「確かに、これも素朴だけどほくほくして甘みがあって美味しいね」
ロン兄様もバターが良いみたい。
黒騎士様たちは、マヨネーズ派の方が多い様子です。
幸せそうに頬張って、楽しそうにしている姿は心が和みますね。
リュート様やチェリシュにも食べて欲しいのですが……あちらで真剣に会議をしているようですから、邪魔はできません。
チラリとリュート様たちの方を見ると、先程の難しい表情とは打って変わり、テオ兄様も愛の女神様も驚いた様子で、何か思いついたらしいリュート様の話を聞いているようでした。
ただ、チェリシュはマイペースに、マールマヨを食べています。
相変わらず、一口で頬張ろうと頑張っているようで、口元がベタベタになっていましたが、リュート様は、そちらに視線をやってもいないのにわかっているのか、すぐにチェリシュの手と口元を拭い、そのあと紙に何かを書き記して、お二人に説明しているようです。
素早い……さすがは、パパですね。
そんなお姿も凛々しいと感じてしまう私は……色々とマズイでしょうか。
だ、だって……難しいお話をしているのでしょうか、目はキリッとテオ兄様と愛の女神様を見据えているのに、手元は愛娘ポジションに収まっているチェリシュの相手をしているのですよ?
これも、いわゆるギャップ萌え……なんて言いません?
リュート様はきっと良いお父様になりますね。
絶対、娘はファザコンです。
間違いありません。
「これで打ち止めかな?」
「はい、皆様お腹いっぱいになりましたでしょうか。まだ足りないと言われたら、ベリリくらいしかなくて……」
「大丈夫、みんな満足したみたいだよ。ルナちゃん、お疲れ様」
「いえ、これくらい大丈夫です」
とは言え、ずっと料理を作っていた割には、あまり疲れていないような?
スキル補正って色々あるのでしょうか。
あとで、リュート様に確認してみましょう。
「マールも、漁師たちが食材として認識すれば、討伐よりも確実だって思ったんだね」
本当にさり気なくロン兄様がたずねてきました。
どこか真剣な色を宿した声でしたので、多分ですが……誤魔化さないで、素直に考えていたことを話して欲しいとのことなのでしょう。
「魔物討伐と考えたら黒の騎士団の方々が出向くことになるのでしょうが、討伐するには準備が必要で、手間も時間もかかります」
「そうだね、数が多いから大掛かりな討伐になると思う。正直、海の魔物を相手にすることが少ないから、何を準備していったらいいか悩んでいるところだよ」
えっと……いいのですか?
それは、黒の騎士団の内情ですよね。
まあ、だからこそ片目を瞑って声を潜めて話していらっしゃるのでしょうが……ナナトもいますけど大丈夫ですか?
そのナナトが「誰もがわかってることだにゃ」と言いましたので、隠しておきたいけど周知の事実ということなのですね。
「魔物と考えたら黒の騎士団に任せるしかありませんが、食材と考えたら話は別です。いつもそこで生活している海の専門家にお任せできれば、収入源として毎日捕獲してくださいますから、確実に数を減らすことが出来るのではないかと……」
「色々考えてくれたんだね、ありがとう。結果、海の厄介者を無駄にしないで食べちゃおうっていうところが、凄い発想だと思ったけどルナちゃんらしいというべきかな」
頭を撫でて褒められていますが、それほど大したことをしたような気持ちにはなれませんし、食いしん坊だと言われた気分です。
日本人の感覚としてはおかしくない……ですよね?多分。
日本ではこういう場合、食品加工ができないかと研究しているようなニュースが流れていたりするのを、おぼろげではありますが覚えています。
捕獲したマール全てを食品にすることは難しいでしょうが、それでも食べることが出来るのなら、それに越したことはありません。
品質管理が出来るようですし、アイテムボックスや冷凍技術をフル活用すれば、加工食品なども作ることが出来るでしょう。
海老団子や、海老餃子など……ダメでしょうか?
「そういえば、あのマールはすごく硬いのによくさばけたね」
「え?いえ……頭は凍りついてましたから少し硬かったですけど、薄い殻でしたよ?……えーと、こんな感じです」
残っていた殻をロン兄様に渡してみると、彼は受け取ったマールの殻を何度もひっくり返して見ている。
その殻を見ていたナナトは、何故ロン兄様が悩んでいるのかわかったのか耳をピンッと立てて笑う。
「マールの殻が軟化してるですにゃ?」
「そう。ソレだよ。キャットシー族では当たり前のこと?」
「マールは、生きている時、魔力で殻を硬化させてますにゃ。ただ……ここまで軟化したのははじめて見ましたにゃ……」
ロン兄様の手にあるマールの殻を触りながら、ナナトも首を傾げます。
もしかして……氷締めをしたからでしょうか。
リュート様の氷魔法は強力でしたから、そのまま死んでしまった恐れがありますが、冬眠状態まで持っていくほどの氷の中に放り込めば、この子達、無効化できるんじゃ……
むしろ……冬眠するんでしょうか……謎です。
これは、リュート様に相談の上で実験が必要でしょう。
「器の返却に来ました。お料理美味しかったです。ありがとうございました」
ペコリと頭をさげてくださる黒騎士様に、私も反射的に「お粗末さまでした」と言って頭を下げると、不思議そうな顔をされてしまいました。
さ、さすがにこれはマズかったと慌てて口を開く。
「いえ、えっと……簡単なお料理でしたが、お口に合ったようで良かったです」
「あ、アレで簡単……ですか」
ナナトが持つ殻をチラリと見て苦笑する黒騎士様の言いたいことがわかったのか、ロン兄様も「だよね」と苦笑していらっしゃいます。
えっと……ま、マールは別です、マールは!
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