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夢よ、醒めろと希う

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…それは、悪夢だった。
人類の存亡を掛けた最後の闘い。姫巫女として覚醒した私は君と仲間たちと共に臨んだ。
その災厄……化け物の猛威によって、仲間達の命の灯が消えてゆく。
騎士たちの大半が倒れ、遂にその攻撃の手は、封印の術を唱えていた私の元へも及ぶ。

「っ!!」

しかし、身構えた私の体に痛みは走ることなく、暖かい何かに包まれる。

「そのままっ、……続けろ」

私はその声に安心して、再び術の続きを唱える。
段々と彼の体から熱が失われていくのが分かり、涙で視界が霞んでもそれを唱え続けた。
…結果は、ギリギリで封印に成功し、私達側の勝ちだった。

『ねぇ、勝ったよ?……??誰だっけ』

最期に、目の前の赤く染まってしまった君に勝ったことを伝えようとしたけど…思い出せない。君の事が。それどころか、そこでもう既に人の姿さえ留めていない程にバラバラになった赤黒い人間の死体――きっと仲間だったのであろう――その人達の名前さえも。

『…私は、独りになっちゃったんだね』

心に大きな穴が空いた気がした。急に孤独感に苛まれ、涙が止まらなくなる。
酷い夢だ。君の事を思い出したいのに、思い出せない。死の忘却なんてなければいいのに…!!私は君が大切な人だと思うのに、名前も、話したことも、どういう人だったのかさえも何一つ思い出せない。………苦しい。

『…夢だったら、醒めてよ…』

私はそう、希った。

***

夢を見た気がする…。とても悲しい夢だった。でも、今日は私の騎士に会う日!私はベッドから、飛び起きると同時に、気分を切り替え、着替えた後部屋に向かった。そして、扉を開けると――――――――騎士たちがいた。
彼らは、順に自己紹介をしてくれた。今日からこの人達と共に生きる、姫巫女として。一人一人の名前を声に出しながら確実に憶えてゆく。
そして最後。その人を見た瞬間、私は涙が急に出て止まらなかった。そして名を呼ぶ。前から知っているかのように……。

『○○○――』

自分自身も驚きに目を見張る。
その人も一瞬驚いた後、笑顔で応えた。

「――――――、」

あぁ、この幸せな夢は醒めないで。私はそう希った。
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