私の片思い中の勇者が妹にプロポーズするみたいなので、諦めて逃亡したいと思います 【完結済み】

皇 翼

文字の大きさ
16 / 34

15(ユリウス視点2)

しおりを挟む
「ディアンサ=サウスナディアと結婚しろ」

玉座の間にて跪いていた俺に掛けられたのはそんな言葉だった。その言葉に自身の耳を疑う。今、父上は”結婚”と言ったか?

今迄あんなにも俺に対して関心もなく、第一王子のスペアとしか扱ってこなかった彼が。俺を魔王討伐のパーティの勇者として死地に放り込んだ彼が――。

ふざけるな!

俺には既に心に決めた相手がいるんだ。まだ指輪は渡していないが……彼女が承認してくれるかも分からないが、俺は彼女の事しか見えないくらいに好きなのだ。
それなのに急にディアンサ=サウスナディア……隣国の女帝と結婚しろだと?父上の話は虫が良いにも程があった。彼の言動に反吐が出る。

「お断りします」
「……ユリウス、貴様今何と言った?」
「だから、お断りします。耄碌して頭だけでなく耳まで悪くなられたのですか?父上」

父上は唖然としている。確かに今まで……旅に出る前の俺だったらこんなことを言うなどありえなかっただろう。でも、俺はもう操り人形ではないのだ。俺はフェリシアや仲間のお陰で変わった……変わることができたんだ。

「魔王討伐という役目はきちんと果たしました。これ以上俺に役目を押し付けないで頂きたい」
「お前には王子として国を支えようという心はないのか!!?」
「ありません。逆に今まで俺を1人の王子として扱ってきたのですか?第一王子のスペアとしてではなく?」

明らかに怒りを示す父上にきっぱりと反論する。今まで恐ろしいと思っていた父上はこんなことで怒りを示すとても小さく、愚かしい存在に見えた。だからどんなに彼が凄んで来たとしても現実を冷静に見つめることができる。

サウスナディアといえば、女性優位の国で皇帝も女だ。基本的に男性は奴隷のように扱われていて、一妻多夫制。女帝にも既に沢山の夫がいるらしい。そこに新たに夫として入ったら地獄……家畜のように扱われる生活が待っている。
しかしそれに対しては誰も文句を言えない。それだけサウスナディアが権力のある国だからだ。

しかし今現在はイースディールはサウスナディアとは友好的な関係を築いているし、貿易も上手くいっている。
だとしたら考えられるのは……最近高まってきている俺を次の王にと持ち上げる声とあとはサウスナディアへ俺が行った時の相手側からの報酬と言ったところか。父上は俺を体の良い厄介払いとして、サウスナディアに売り払おうとしているらしい。
俺はこの人にはもう為す術がないほどに嫌われているようだ。

しかし、それもそうだとすぐに納得する。元々、第2王子と言っても俺は彼が城に来ていた踊り子に手を出して出来た不義の子供だ。

「俺には既に心に決めた相手がいるので」
「それはあのパーティの聖女か?」

少し、父上の態度が和らぐ。聖女との結婚だったら国に聖女という神聖な存在を留めて置けて、俺はその伴侶として”権力の偏りをなくすため”などと言って司祭の役でも押し付ければいい。一石二鳥だと思ったのかもしれない。

けれど違う。俺の想い人は彼女じゃない。

「いいえ。聖女……イリスの姉であるフェリシアです」
「ハッ!あの女か。……許さんぞ。聖女ならともかくただの伯爵令嬢との結婚など、王として許さん」

先程のサウスナディアの女帝との婚約を断ったときよりも更に怒りを滲ませて、反論してくる。

「許さなくても結構です。勝手にするので」

今まで俺は何一つとして自分のことを決めることを許されなかった。
称賛なんていらない。報奨も褒め言葉もどれも俺には必要じゃないんだ。その代わりと言っては何だが……あの闘いを勝利し生き残ったのだから、これからは自由に生きさせて欲しい。

そのまま唖然とする父上を置いて、玉座の間を出た。
に会いに行く事を決意しながら。



****************
簡単な補足解説:
①サウスナディアについて
サウスナディアは女性優位の国であり、女帝はかなりの男好き。中でも美しい男や価値のある男を夫として寄越した国にはかなりの額の報奨金を渡すほど。

②王からのユリウスへの扱について
不義の子供ということもあり、かなり嫌われているのに加えて、厄介払いをしたいと思っている。しかし勇者として生きて帰ってきてしまったので、王族から追放ということもできないためにサウスナディアに送り付けるという無理矢理なことをしようとした。サウスナディアへは外交を円滑にするため等と言おうとしていた感じの設定です。(かな~りユリウス不憫)
(勇者についての詳細はこの後のお話で出てきます。)
基本的な価値基準としては 勇者<<<<<聖女 という感じになっている(この辺の理由も後々)。
しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。 時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。 「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」 「ほう?」 これは、ルリアと義理の家族の物語。 ※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。 ※同じ話を別視点でしている場合があります。

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください

楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。 ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。 ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……! 「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」 「エリサ、愛してる!」 ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています

高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。 そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。 最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。 何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。 優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。 なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。 普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。 それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。 そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。

処理中です...