私の片思い中の勇者が妹にプロポーズするみたいなので、諦めて逃亡したいと思います 【完結済み】

皇 翼

文字の大きさ
21 / 34

20(ユリウス視点7)

しおりを挟む
私事ですが、リアルが落ち着いてきたので順次作品の更新を再開していきます。更新待っていた方などがいらしたら申し訳ないです。今後は書け次第アップロードしていこうと思っているので、短い話が混ざってしまう可能性が高いです。

***************

あの後――ディラン達と会った城門前からは、どうやって帰って来たか分からない。
けれどいつの間にか自身の執務室にいて、日が落ち切った暗闇の中でフェリシアに渡す筈だった指輪を見つめていた。

その指輪は闇の中、一条の月の光を浴びながらフェリシアの美しいストロベリーブロンドの髪の毛に近いピンク色に変化する。昼の太陽の光の中では彼女の瞳の色、夜の月の光が当たれば桃色に変化するこの指輪。
散々拘りに拘って作ったというのに今はこの変化する色を見つめるだけで、心が痛む。

この指輪と同じ様に、俺の心も彼女への感情も無駄なものだったのかと思うと心がきしむように痛む。けれど打ち捨てることもできなくて……。
そんなことを思考していると、部屋にノックの音が響いた。
来客の予定はなかった筈だと思い、警戒しながらもドアノブを回す。するとそこにいたのは――――。

「イリス……それにロジー」

魔王討伐パーティメンバーの内の二人が満面の笑みで扉の前に立っていた。

「あんなに協力してやった私達に報告に来ないだなんて、水臭い人ですね。だから此方から来ちゃいましたが」
「そうですよ。フェリシアさんに近づく僕をディランと一緒に大人げなくもあんなに牽制しておいて――」
「貴方は近付きすぎなのよ。子供のくせに姉様に近づこうだなんて、生意気ですわ」
「僕は子供じゃないです!……顔がちょっと童顔なだけだ!!」

この二人は相変わらずだ。俺が失恋して失意のどん底にいたとしても、変わらず喧嘩をしている。しかしここまで言い争ってようやく俺からのいつもの仲裁が入らないことに気づいたらしく、やっとこちらを見ると二人は絶句した。

***

「……それで?あんなにも後押ししてあげたのに、姉様に気持ちを伝えられずおめおめと逃げ帰ってきた……とかではないですよね?」

部屋に入って早々に真っ暗だと文句を言い、明かりをつけさせずかずかと俺の部屋に押し入り、お茶を淹れさせながらも自分たちはソファでくつろぐ。俺は相変わらずの図々しさを隠そうともしないこの年下二人に問い詰められていた。

「僕も涙を呑んで貴方を応援してあげたというのにまさか……ねぇ?」

二人の視線が痛い。確かに俺はフェリシアに気持ちを伝えずに逃げ帰ってきた。けれど俺は彼らの関係があんなことになっているとは予想していなかったのだ。

「……フェリシアとディランが、両想いになっていたんだ」
「「は……?」」

珍しく二人が口をあんぐりと空けて、間抜けた面を晒す。

それを視界の端にいれながら、俺は事情を話した。

「……それ本当にフェリシアさんだったんですか?ディランがいつも通り女を連れ込んでいただけでは?あの万年発情期が」
「それ以前にディランが告白しただなんて確証があるのですか?あの万年ヘタレ男……あの人、貴方の数十倍ヘタレていますよ?」

ディランが酷い言われ様だが、今はそんなことはどうでもいい。

「俺がフェリシアを見間違えるわけがないだろう……告白したかどうかの確証はないが、なんだか親密そうな感じになっていたんだ」

「それは貴方の主観でしょう!?はあ――」

イリスは呆れたとでも言いたげに長い髪をかき上げ、大きな溜息を吐く。そうして一息吐いた後に言った。

「今はディランの事はとにかく。私の目から見ても、姉様は貴方の事がそういう意味で好きだと認識しています」
「そうですね。だから僕も諦めましたし」

珍しくイリスは俺を勇気づけるようなことを言ってくるが、ロジーはいつまでも”諦めた ”の部分を強調してくる。相変わらずムカつく子供だ。

「俺も彼女から俺に対する感情は悪いものではなかった……むしろいいものだと思っていた。だが――」

見てしまったんだ。あの親密そうな二人の姿を――。それが俺のなけなしの自信を蝕む。

「仮に姉様がディランと結ばれようとしているとして、貴方の想いはそれくらいで諦めるほどに弱いものだったのですか?」
「ユリウスさん、貴方には失望しました。貴方がフェリシアさんを諦めるというなら、ディランから僕が彼女を奪い去ってきますが?」

二人が俺の感情を否定するように言葉を重ねる。確かにもう、彼女の感情に対する自信はない。しかし――

「そんなわけないだろう!俺は彼女を何を賭してでも欲しいと思っているし、ロジーにもディランにも譲ったりなんかしない!!」

間髪を容れずにそう叫んでいた。確かにディランとピッタリとくっついて親密そうなフェリシアを見て傷ついたし、宝物が手からすり抜けていくような恐怖も感じた。でも、もうこの気持ちは引き返せない所まで来ているんだ。例えディランとフェリシアが両想いになっていたとしても、このまま引き返せない……否、引き返したくなどない。

「俺はフェリシアを諦めない」

そこまで言って、自分の言葉が心の奥底に馴染むように落ちた。

「そうですよ、それでいいんです」
「最初からそう言ってください。年上の癖に年下に迷惑かけないでください」

揶揄うように言いながら、二人は紅茶を軽く口に含む。よく見ると二人の額には汗が滲んでいた。彼らは俺の気持ちを全て分かって、敢えて煽っていたのかもしれない。
口から笑みが零れる。俺も素直じゃないと思うが、この二人も大概素直じゃない。

「ま。当たって砕けろってやつじゃないですか?」
「そうですよ。砕けて帰ってきても、貴方は諦めないのでしょう?それくらいじゃなければ私は貴方の応援なんてしませんし」
「ああ、俺は諦めないよ。今度こそ自分の気持ちをフェリシアに伝える」

そう新たに決意を固めて、明日への計画を頭の中で練り始めた。

*************

簡易的な設定:
ロジー=フルーレ(18)
・本人も気にしているが、童顔。(同い年と並ぶと分かりやすい)
・名前からも分かるが、ダリアの子供。
・密偵兼薬師。(戦闘時は銃を使用)
・母親に似たのか、ダリアには体型も顔もあまり似ていない。
・白銀の髪に白銀の瞳。真っ白。雪と同化する。見た目は童顔のせいか可愛い系。
・腹黒弟系キャラ。
・実は隠しキャラ√だったりする。


ここでユリウス視点は一旦終了です(ダレたくないので)。次回からはフェリシア視点に戻ります。
しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。 時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。 「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」 「ほう?」 これは、ルリアと義理の家族の物語。 ※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。 ※同じ話を別視点でしている場合があります。

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください

楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。 ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。 ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……! 「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」 「エリサ、愛してる!」 ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています

高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。 そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。 最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。 何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。 優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。 なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。 普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。 それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。 そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。

処理中です...