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19.心残り
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あれから――結局妥協に妥協を重ね、二人でいる時だけはルーネストもエストの事を様付けで呼ばなくなり、エストもルーネストのことを『ルネ』と愛称で呼ぶようになった。
そしてそれと同時にエストは色々な事を話してくれた。クレアだった時に既に知っていた話もあれば、初めて知った話もあった。
話の内容としては例えば昔の話……幼少期の話やエストの兄が生きていた頃の思い出、自分の過去、マルタやセーレと出会った当時の話、そして好きな食べ物だったり、二人共本を読むのが好きだということで本のお勧めもされた。
婚約者として接していた時から知ってはいたが、相変わらずエストは博識であり、ルーネストが知らない様々な事象を面白く且つ分かりやすく語り聞かせてくれる。彼と過ごす時間は瞬く間に通り過ぎていくのだった。
時々会話の延長線上でルネのことについて聞かれることもあった。その時は困り、罪悪感を感じながらも誤魔化しもしたが、概ね彼らはまるで古くからの友人のように気軽に話せる良い関係を築き始めていた。
しかしクレアについての話題が出たことは一度もなかった。『やはり自分は話すほどの価値もない、その程度の存在だったんだな……』という諦めを感じると共に、どこか安心もしていた。
ルーネストの姿を取っていても、エストに対して感じる感情はクレアの時と同じ。複雑なモノであることは変わりない。
***
そんなある日。王都での滞在日程が残り半分を切った辺りだ。その日は久しぶりにマルタが休みでありので、この日の看病は交代するとルーネストに提案してくれた。その言葉に甘え、エストの看病は彼女に任せたは良いが、特に疲れも感じていなく、変質薬のストックも十分に作ってある。要はやることがない。
それに加えて、一つ最近気になることがあった。王宮がなんだかざわついている気がするのだ。
これは長年この王宮に通っていたクレアの感覚があるからこそ分かる事だった。言葉で言い表せないが、不穏な気配がした。それも無意識の内に不安を煽り、今日は何となく一人でいたくなかったのだ。
そういう経緯もあり、ルーネストは久しぶりにケントの元に顔を出していた。すると忙しなく仕事をこなしていた彼に丁度良いと軽い書類仕事を任されたのだった。
分厚い本と書類に同時に目を通しながら、ケントが話しかけてくる。
「ところで、ルーネスト。君とエスト様は昔からの知り合いかなにかなのかい?」
「え――」
「なんか妙に親し気だし、ちょっと気になってね」
「いえ、あの施術の日が初対面でしたが?」
何気ない会話から入り、急に振られた、まさに寝耳に水な話題だった。しかし驚いたのをひた隠し、ルーネストとしての設定上で会話を返した……のだが。
「……施術の時、辛うじて聞き取れる程度の声だったけど『エスト、私は――貴方を傷つけない。絶対に守って見せるから……』って聞こえ気がしたんだけど?」
「その、あの時は必死だったので、エスト様の名前を呼び捨てにしてしまったのかもしれません。妙な言動をとってしまい、申し訳ありません」
心当たりがあり過ぎた。あの時は必死だったのもあり、小さな呟きに近かったとはいえ、思わず口から出ていた言葉だ。あまりにも予想外の事が起きて、動揺していたのもあり、聞かれているなんてことは考えてすらいなかった。今更ながら、自分の軽率な行動を呪う。
返したのは苦しい言い訳だった。それはクレア自身が誰よりも一番分かっていた。
「クレア=ミア=レンドーレ」
「――エスト様の元婚約者の方ですね。その方がどうかしましたか?」
急に出たその名前に思わず息を呑む。頭が完全に真っ白になり、言葉に詰まりそうになるが、口だけは、バレたくないという一心でなんとか動かした。
「いや、王都に来てから、喰花病について改めて資料を読む機会があったのだけど、その時に彼女の写真を見たんだ。……思い出してみると君の以前の容姿と同じだなって思ってしまってね」
「っ気のせいではないでしょうか」
「それに君が僕達の診療所に来た時期と彼女が亡くなったとされる時期――あんなにも近い時期なのはなんでだろうね。ごく近い時期に消えた筈の人間とそっくりな人が別の場所に現れるなんて、不思議だね」
しかし先程からのこの動揺が既にケントにとっての答えになってしまっていたらしい。クスリと微笑まれる。
ケントは頭も良ければ、勘も良い。それに厄介なことに自分の好奇心には素直なタイプだ。少しでも気になることがあれば、徹底的に調べる。
これも彼が医者として優秀な所以の一つだろう。
クレアの写真は家族に頼んで、その殆どを消してもらった筈だった。今残っているのは消しきれなかった幼少期のものと、屋敷に残っている分くらいだ。
王都といえど、出回っている資料に顔写真などついている筈がない。だから彼の『喰花病についての資料を~』の下りは確実に嘘だ。きっと彼が調べたのは『クレア=ミア=レンドーレ』についてだろう。それも彼のコネを全て注いで調べたに違いない。
小さな部分から疑問を持ち、点と点を繋いだのだ。これだけ証拠が揃ってしまえば、言い逃れ出来る自信はなかった。
「ああ。ごめんよ、ルネ……いや、正確にはクレアか。別にこの事実を利用したり、言いふらしたり、ましてや君を脅したりなんてことは考えてないんだ。僕は疑問に思ったことを調べただけだ。それで僕の予測が事実だったことを確認出来た時点で、満足さ。もうこの事象については興味がない。君が望むのであれば、その事実を隠すことも手伝うよ」
「……本当に誰にも言わないで、もらえますか?」
「勿論。でも一つだけ聞かせてくれ。君は本当にこのままで良いの?」
「なんで、そんなこと聞くんですか?」
「なんとなく。君も後悔しているんじゃないかと思ったから……僕も同じだし」
何処か遠くを見つめるように話すケント。そんな言葉を聞いて、何故かマルタの事を思い出した。彼の瞳がマルタを見つめていたソレと酷似しているような気がしたのだ。
もしかしたら、ケントも何かしら後悔を残し続けているのかもしれない。そんな事が頭の中で過っていった。
「真実を言うにしろ、隠すにしろ、僕は君に味方するよ……僕と近い所があるせいかな、案外君の事は気に入っているんだ。でも僕みたいに後悔だけはしないようにね」
「……ありがとうございます」
正直どうすれば良いのかなんて今のクレアには分からない。自分がこの後どのような行動をとるのか……それも見当もつかない。
しかし、ケントのこの言葉は確かにクレアの心の奥底に突き刺さったのだった――。
******
あとがき:
すっごい久しぶりに更新です(;´Д`)
実は5話くらいストックあったのですが、ちょっと予定がゴタゴタしてしまいまして……。この後順次文章推敲→公開していきますね!!それまで少々お待ちいただけると嬉しいです(`・ω・´)
そしてそれと同時にエストは色々な事を話してくれた。クレアだった時に既に知っていた話もあれば、初めて知った話もあった。
話の内容としては例えば昔の話……幼少期の話やエストの兄が生きていた頃の思い出、自分の過去、マルタやセーレと出会った当時の話、そして好きな食べ物だったり、二人共本を読むのが好きだということで本のお勧めもされた。
婚約者として接していた時から知ってはいたが、相変わらずエストは博識であり、ルーネストが知らない様々な事象を面白く且つ分かりやすく語り聞かせてくれる。彼と過ごす時間は瞬く間に通り過ぎていくのだった。
時々会話の延長線上でルネのことについて聞かれることもあった。その時は困り、罪悪感を感じながらも誤魔化しもしたが、概ね彼らはまるで古くからの友人のように気軽に話せる良い関係を築き始めていた。
しかしクレアについての話題が出たことは一度もなかった。『やはり自分は話すほどの価値もない、その程度の存在だったんだな……』という諦めを感じると共に、どこか安心もしていた。
ルーネストの姿を取っていても、エストに対して感じる感情はクレアの時と同じ。複雑なモノであることは変わりない。
***
そんなある日。王都での滞在日程が残り半分を切った辺りだ。その日は久しぶりにマルタが休みでありので、この日の看病は交代するとルーネストに提案してくれた。その言葉に甘え、エストの看病は彼女に任せたは良いが、特に疲れも感じていなく、変質薬のストックも十分に作ってある。要はやることがない。
それに加えて、一つ最近気になることがあった。王宮がなんだかざわついている気がするのだ。
これは長年この王宮に通っていたクレアの感覚があるからこそ分かる事だった。言葉で言い表せないが、不穏な気配がした。それも無意識の内に不安を煽り、今日は何となく一人でいたくなかったのだ。
そういう経緯もあり、ルーネストは久しぶりにケントの元に顔を出していた。すると忙しなく仕事をこなしていた彼に丁度良いと軽い書類仕事を任されたのだった。
分厚い本と書類に同時に目を通しながら、ケントが話しかけてくる。
「ところで、ルーネスト。君とエスト様は昔からの知り合いかなにかなのかい?」
「え――」
「なんか妙に親し気だし、ちょっと気になってね」
「いえ、あの施術の日が初対面でしたが?」
何気ない会話から入り、急に振られた、まさに寝耳に水な話題だった。しかし驚いたのをひた隠し、ルーネストとしての設定上で会話を返した……のだが。
「……施術の時、辛うじて聞き取れる程度の声だったけど『エスト、私は――貴方を傷つけない。絶対に守って見せるから……』って聞こえ気がしたんだけど?」
「その、あの時は必死だったので、エスト様の名前を呼び捨てにしてしまったのかもしれません。妙な言動をとってしまい、申し訳ありません」
心当たりがあり過ぎた。あの時は必死だったのもあり、小さな呟きに近かったとはいえ、思わず口から出ていた言葉だ。あまりにも予想外の事が起きて、動揺していたのもあり、聞かれているなんてことは考えてすらいなかった。今更ながら、自分の軽率な行動を呪う。
返したのは苦しい言い訳だった。それはクレア自身が誰よりも一番分かっていた。
「クレア=ミア=レンドーレ」
「――エスト様の元婚約者の方ですね。その方がどうかしましたか?」
急に出たその名前に思わず息を呑む。頭が完全に真っ白になり、言葉に詰まりそうになるが、口だけは、バレたくないという一心でなんとか動かした。
「いや、王都に来てから、喰花病について改めて資料を読む機会があったのだけど、その時に彼女の写真を見たんだ。……思い出してみると君の以前の容姿と同じだなって思ってしまってね」
「っ気のせいではないでしょうか」
「それに君が僕達の診療所に来た時期と彼女が亡くなったとされる時期――あんなにも近い時期なのはなんでだろうね。ごく近い時期に消えた筈の人間とそっくりな人が別の場所に現れるなんて、不思議だね」
しかし先程からのこの動揺が既にケントにとっての答えになってしまっていたらしい。クスリと微笑まれる。
ケントは頭も良ければ、勘も良い。それに厄介なことに自分の好奇心には素直なタイプだ。少しでも気になることがあれば、徹底的に調べる。
これも彼が医者として優秀な所以の一つだろう。
クレアの写真は家族に頼んで、その殆どを消してもらった筈だった。今残っているのは消しきれなかった幼少期のものと、屋敷に残っている分くらいだ。
王都といえど、出回っている資料に顔写真などついている筈がない。だから彼の『喰花病についての資料を~』の下りは確実に嘘だ。きっと彼が調べたのは『クレア=ミア=レンドーレ』についてだろう。それも彼のコネを全て注いで調べたに違いない。
小さな部分から疑問を持ち、点と点を繋いだのだ。これだけ証拠が揃ってしまえば、言い逃れ出来る自信はなかった。
「ああ。ごめんよ、ルネ……いや、正確にはクレアか。別にこの事実を利用したり、言いふらしたり、ましてや君を脅したりなんてことは考えてないんだ。僕は疑問に思ったことを調べただけだ。それで僕の予測が事実だったことを確認出来た時点で、満足さ。もうこの事象については興味がない。君が望むのであれば、その事実を隠すことも手伝うよ」
「……本当に誰にも言わないで、もらえますか?」
「勿論。でも一つだけ聞かせてくれ。君は本当にこのままで良いの?」
「なんで、そんなこと聞くんですか?」
「なんとなく。君も後悔しているんじゃないかと思ったから……僕も同じだし」
何処か遠くを見つめるように話すケント。そんな言葉を聞いて、何故かマルタの事を思い出した。彼の瞳がマルタを見つめていたソレと酷似しているような気がしたのだ。
もしかしたら、ケントも何かしら後悔を残し続けているのかもしれない。そんな事が頭の中で過っていった。
「真実を言うにしろ、隠すにしろ、僕は君に味方するよ……僕と近い所があるせいかな、案外君の事は気に入っているんだ。でも僕みたいに後悔だけはしないようにね」
「……ありがとうございます」
正直どうすれば良いのかなんて今のクレアには分からない。自分がこの後どのような行動をとるのか……それも見当もつかない。
しかし、ケントのこの言葉は確かにクレアの心の奥底に突き刺さったのだった――。
******
あとがき:
すっごい久しぶりに更新です(;´Д`)
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