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26.呪い破り
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そうして辿り着いたのはクレアの魂の最深部。
真っ白なラクサの花が地面に無数に、敷き詰められるようにに落ちている。その中心では天蓋付きの豪華なベッドの上で横たわるクレアがいた。
寝巻だろうか、いつもの隙を感じさせない程に完璧に整えられたドレス姿ではない彼女にエストは歩み寄りながらも、その姿を新鮮だと思った。
「クレア!!」
「んん――まだ眠い」
「……寝てるだけ、なのか?」
エストは最初、クレアがここに居たことに驚きはしたが、よくよく考えればここは彼女の精神世界だ。
最深部に本人がいても不思議はない。しかしここはクレアの魔力も濃いが、それと同時に目の前の彼女の身体の中からにじみ出す様な呪いの気配も感じる。きっとどうにかして、この目の前にいるクレアから呪いの部分を切り離す必要があるのだろう。再び、彼女に声を掛ける。
「クレア、起きてくれ」
自分の声帯から発される甘い声にエスト自身が驚く。きっとこのクレアを見て予想以上に安心していた。ここに来る前のクレアはどれも苦しみを堪えた様なものばかりだったから――。
「……あと5分って言ってるでしょ、兄様」
初めて知った事だが、どうやらクレアは寝起きが悪いらしい。いつまでも目覚める気配がないクレアの身体を揺すって起こす。若干……本当に若干だが、クリストファーに起こされているのと勘違いされていることが気に食わなくて、揺すった後に軽く鼻をつまんだ。
「俺はクレアの兄貴じゃない。婚約者、だろう?」
「んん゛――ぐるじ……は、え?エスト!?」
「可愛い……」
こんな甘えた姿初めて見たなと思いながらも、そんな抜けている彼女の姿でさえも愛おしく思ってしまう。先程の反応からして、きっとクリストファーにはいつもこの姿を見せているのだろう。それにちょっと許せないな、なんてことを思うが、目が醒めて驚きに目を見張るクレアを見たら、そんな感情はすぐに消し飛んだ。
「な、なんで、エストが私の部屋に!!?――ってここ、私の部屋じゃない!?どこここ??夢?」
「落ち着け、クレア。ここは……そうだな、夢のようなものだ」
きっとこのクレアは直近の記憶がないのだろう。だから自分が呪いを肩代わりして、今現在現実世界では死にかけている事も、ここが精神的な世界であり、自分がエストとクリストファーによって外部から干渉されていることも、どちらも分かっていない。
変に情報を与えて、混乱させるのは良くないだろうと判断して、ここは『夢』であると話を合わせた。
実際、嘘ではない。彼女は今は夢を見ているような状態だ。
「……そう、だよね。だってエストが私の事をこんな瞳で見つめてくるわけがない。だって私は、エストに――」
「俺に、なんだ?」
「き、嫌われて、いるから」
涙に濡れた声だった。事実、クレアは出会ったあの日からずっとそう思い込み続けてきたのだろう。その苦し気に涙を流すように変わった表情を見て、心が痛む。だからそれに反論してしまった。
「それは間違いだ」
「――へ?」
「俺はクレア、お前の事を愛している。本当は出会ったあの日、お前にあんなことを言ってしまったことをずっと後悔していたんだ」
これは精神への干渉であり、夢の様なものだとエスト自身が一番分かっているのに、目の前の愛おしい女性を慰めずにはいられなかった。けれど同時にスッキリした。ずっとこれをクレアに直接言いたかった。この前これを打ち明けたのはルーネストに対してだったが、今は本当のクレアに対してだ。
「……なんて都合の良い夢なんだろう」
「夢――だけど、これは夢じゃない。現実の俺もそう思っているさ」
自分でも矛盾しているなと思うが、これも事実だ。ハンカチなんてものは持ち合わせていないので、指でクレアの涙を拭ってやる。
「ふふ、どっちなのよ。でも私がエストに言って欲しいと思っていた言葉ばかり」
エストのころころと変化する主張と必死そうな表情が面白いのか、今度はくすくすと笑って笑顔を見せる。
(やはりクレアは笑っている表情が一番良い)
涙が引っ込むとクレアが再び話始めた。今度はまるで独り言を言うかのように、ポツリポツリと言葉を零していく。
「私ね、ずっと直接エストに言うのが怖かった。でも夢だから、少しだけ素直になっても良いよね。私はずっとエストが好き。今よりももっと嫌われるのが怖くて、ずっと言えなかったけど、貴方と一緒に過ごす内に好きになってた」
幸せそうな微笑みだ。流石兄妹というべきか、先程のクリストファーが見せた微笑みに近い気がする。
「でも私と一緒にいてなんて……言えない。私にはそんな資格がないんだもの。姉様が死んでいくのを黙って見ていることしか出来なかったくせに、醜い容姿のくせに、こんな許されない感情を持つなんて――」
「それは――」
「黙って、聞いて!!」
クレアの内側からドロドロとした黒い液体のようなものが流れ出てくる。最初に比べて一気に呪いの気配が強くなっている。反論しようとすると、クレアがそれを叫ぶように静止した。
「本当はずっと一緒にいたかった……貴方に私を好きになって欲しかった。でも、自信がないの。貴方の隣に居るということを私自身が許せない」
先程まで純白のネグリジェとは打って変わって、服も真っ黒なドレスに変質していた。地面に無数に広がっていたラクサの花たちもクレアの全身から漏れだした黒い液体によって、漆黒に染まっている。
呪いや黒魔法といった悪いモノは心の弱く、柔らかい部分を好んで浸食して、その中心に我が物顔で巣食う。きっとこれはクリストファーが言っていたクレアが隠しいと思っていた心。けれどそれと同時にエストには見て欲しいと心の底では思っていた感情だった。
「私なんかが幸せになって良いはずがない!」
「待て、クレア!!」
「醜い私を――見ないでっ!!!!」
段々とクレアの身体の内側、背中の部分から漆黒の花が生えてくる。それは皮肉にも、彼女の姉から生えてきていた花と全く同じ形状のものだった。
ココロに、魂に巣食う呪い。
クレアは花から蔦を伸ばして此方を攻撃してくる。それらを魔法で撃ち落とす。魔法の感覚は現実世界と大差なかったのもあり、ポンポンと放つことが出来た。エストが魔法で撃ち落とし、軌道を逸らした攻撃は地面の花を突き破って、大きな穴を穿つ。
その威力にヒヤリとしながらもエストは思考する。あの花はきっとクレアが身代わりになった呪いの【核】だ。
呪いの核に遭遇したら、これをぶつけて消せと事前に渡されていたものを懐から取り出す。クリストファーが生成したという高濃度の聖魔法を込めた『聖水』。
「これでも喰らえっ!!」
恨むべきその花に大きく振りかぶって、ぶちまけた……のだが。
「はは、無傷、とか……嘘だろう?」
花は一瞬煙を上げただけで、すぐにまた攻撃を仕掛けて来た。
仕方なく魔法攻撃を仕掛ける。しかしそれも無意味だという事がすぐに察することが出来た。なにせ先程から何度も花本体に攻撃を仕掛けはしているが、全くの効いている気配がないのだ。確かに花本体の攻撃の手は鈍りはするが、それ以上の進展はない。どれだけ強い魔法を放っても、花はおろか蔦にも傷一つつけることすら叶わないのだった。
エストは確信する。この呪いを断ち切るための決め手がない。
「せめて、アレがあれば……」
しかし、そう脳内で鮮明に思い浮かべた瞬間、手には愛用している刀剣が握られていた。これは王家に伝わる剣。かつてこの国を打ち立てた王が使っていたとされる『命、魔法、運命、何もかもを断ち切ることが出来る』という逸話が残る伝説の剣だ。
剣には特殊な魔法がコーティングされており、どんな高火力の魔法を流しても、砕けることなく振るうことが出来る。エストの愛用している剣だった。
それで攻撃してきた蔦を断ち切る。今度はそれを切り落とすことに成功した。形勢逆転だ。伸ばしてくる蔦を片っ端から叩き斬り、花に急接近する。
「痛い……苦しいよ、助けて――エスト」
瞳から真っ黒な涙を流しながら、クレアが苦し気な声を上げた。それに心を痛めながらも、エストはクレアに声を掛ける。
「大丈夫だ。今、お前の苦しみの元を断ち切る!」
焔を纏った剣が彼女の頭上にあった花の本体を切り裂いた――。
花が光の粒になって、溶けていく。今まで見た事が無い程に神秘的で、美しい光景。しかしそれに見惚れてられるのも一瞬だった。花から解き放たれ、身体から力が抜けたように崩れ落ちるクレアを抱きとめる。
「クレア!!」
「エスト……ありがとう」
苦しみから救われ、笑顔を取り戻した彼女は花と同じ様に光の泡となって、大気に溶けたのだった。
あとがき:
今日中に完結させようと思っているとは書きましたが、無理しない範囲で頑張りますorz
真っ白なラクサの花が地面に無数に、敷き詰められるようにに落ちている。その中心では天蓋付きの豪華なベッドの上で横たわるクレアがいた。
寝巻だろうか、いつもの隙を感じさせない程に完璧に整えられたドレス姿ではない彼女にエストは歩み寄りながらも、その姿を新鮮だと思った。
「クレア!!」
「んん――まだ眠い」
「……寝てるだけ、なのか?」
エストは最初、クレアがここに居たことに驚きはしたが、よくよく考えればここは彼女の精神世界だ。
最深部に本人がいても不思議はない。しかしここはクレアの魔力も濃いが、それと同時に目の前の彼女の身体の中からにじみ出す様な呪いの気配も感じる。きっとどうにかして、この目の前にいるクレアから呪いの部分を切り離す必要があるのだろう。再び、彼女に声を掛ける。
「クレア、起きてくれ」
自分の声帯から発される甘い声にエスト自身が驚く。きっとこのクレアを見て予想以上に安心していた。ここに来る前のクレアはどれも苦しみを堪えた様なものばかりだったから――。
「……あと5分って言ってるでしょ、兄様」
初めて知った事だが、どうやらクレアは寝起きが悪いらしい。いつまでも目覚める気配がないクレアの身体を揺すって起こす。若干……本当に若干だが、クリストファーに起こされているのと勘違いされていることが気に食わなくて、揺すった後に軽く鼻をつまんだ。
「俺はクレアの兄貴じゃない。婚約者、だろう?」
「んん゛――ぐるじ……は、え?エスト!?」
「可愛い……」
こんな甘えた姿初めて見たなと思いながらも、そんな抜けている彼女の姿でさえも愛おしく思ってしまう。先程の反応からして、きっとクリストファーにはいつもこの姿を見せているのだろう。それにちょっと許せないな、なんてことを思うが、目が醒めて驚きに目を見張るクレアを見たら、そんな感情はすぐに消し飛んだ。
「な、なんで、エストが私の部屋に!!?――ってここ、私の部屋じゃない!?どこここ??夢?」
「落ち着け、クレア。ここは……そうだな、夢のようなものだ」
きっとこのクレアは直近の記憶がないのだろう。だから自分が呪いを肩代わりして、今現在現実世界では死にかけている事も、ここが精神的な世界であり、自分がエストとクリストファーによって外部から干渉されていることも、どちらも分かっていない。
変に情報を与えて、混乱させるのは良くないだろうと判断して、ここは『夢』であると話を合わせた。
実際、嘘ではない。彼女は今は夢を見ているような状態だ。
「……そう、だよね。だってエストが私の事をこんな瞳で見つめてくるわけがない。だって私は、エストに――」
「俺に、なんだ?」
「き、嫌われて、いるから」
涙に濡れた声だった。事実、クレアは出会ったあの日からずっとそう思い込み続けてきたのだろう。その苦し気に涙を流すように変わった表情を見て、心が痛む。だからそれに反論してしまった。
「それは間違いだ」
「――へ?」
「俺はクレア、お前の事を愛している。本当は出会ったあの日、お前にあんなことを言ってしまったことをずっと後悔していたんだ」
これは精神への干渉であり、夢の様なものだとエスト自身が一番分かっているのに、目の前の愛おしい女性を慰めずにはいられなかった。けれど同時にスッキリした。ずっとこれをクレアに直接言いたかった。この前これを打ち明けたのはルーネストに対してだったが、今は本当のクレアに対してだ。
「……なんて都合の良い夢なんだろう」
「夢――だけど、これは夢じゃない。現実の俺もそう思っているさ」
自分でも矛盾しているなと思うが、これも事実だ。ハンカチなんてものは持ち合わせていないので、指でクレアの涙を拭ってやる。
「ふふ、どっちなのよ。でも私がエストに言って欲しいと思っていた言葉ばかり」
エストのころころと変化する主張と必死そうな表情が面白いのか、今度はくすくすと笑って笑顔を見せる。
(やはりクレアは笑っている表情が一番良い)
涙が引っ込むとクレアが再び話始めた。今度はまるで独り言を言うかのように、ポツリポツリと言葉を零していく。
「私ね、ずっと直接エストに言うのが怖かった。でも夢だから、少しだけ素直になっても良いよね。私はずっとエストが好き。今よりももっと嫌われるのが怖くて、ずっと言えなかったけど、貴方と一緒に過ごす内に好きになってた」
幸せそうな微笑みだ。流石兄妹というべきか、先程のクリストファーが見せた微笑みに近い気がする。
「でも私と一緒にいてなんて……言えない。私にはそんな資格がないんだもの。姉様が死んでいくのを黙って見ていることしか出来なかったくせに、醜い容姿のくせに、こんな許されない感情を持つなんて――」
「それは――」
「黙って、聞いて!!」
クレアの内側からドロドロとした黒い液体のようなものが流れ出てくる。最初に比べて一気に呪いの気配が強くなっている。反論しようとすると、クレアがそれを叫ぶように静止した。
「本当はずっと一緒にいたかった……貴方に私を好きになって欲しかった。でも、自信がないの。貴方の隣に居るということを私自身が許せない」
先程まで純白のネグリジェとは打って変わって、服も真っ黒なドレスに変質していた。地面に無数に広がっていたラクサの花たちもクレアの全身から漏れだした黒い液体によって、漆黒に染まっている。
呪いや黒魔法といった悪いモノは心の弱く、柔らかい部分を好んで浸食して、その中心に我が物顔で巣食う。きっとこれはクリストファーが言っていたクレアが隠しいと思っていた心。けれどそれと同時にエストには見て欲しいと心の底では思っていた感情だった。
「私なんかが幸せになって良いはずがない!」
「待て、クレア!!」
「醜い私を――見ないでっ!!!!」
段々とクレアの身体の内側、背中の部分から漆黒の花が生えてくる。それは皮肉にも、彼女の姉から生えてきていた花と全く同じ形状のものだった。
ココロに、魂に巣食う呪い。
クレアは花から蔦を伸ばして此方を攻撃してくる。それらを魔法で撃ち落とす。魔法の感覚は現実世界と大差なかったのもあり、ポンポンと放つことが出来た。エストが魔法で撃ち落とし、軌道を逸らした攻撃は地面の花を突き破って、大きな穴を穿つ。
その威力にヒヤリとしながらもエストは思考する。あの花はきっとクレアが身代わりになった呪いの【核】だ。
呪いの核に遭遇したら、これをぶつけて消せと事前に渡されていたものを懐から取り出す。クリストファーが生成したという高濃度の聖魔法を込めた『聖水』。
「これでも喰らえっ!!」
恨むべきその花に大きく振りかぶって、ぶちまけた……のだが。
「はは、無傷、とか……嘘だろう?」
花は一瞬煙を上げただけで、すぐにまた攻撃を仕掛けて来た。
仕方なく魔法攻撃を仕掛ける。しかしそれも無意味だという事がすぐに察することが出来た。なにせ先程から何度も花本体に攻撃を仕掛けはしているが、全くの効いている気配がないのだ。確かに花本体の攻撃の手は鈍りはするが、それ以上の進展はない。どれだけ強い魔法を放っても、花はおろか蔦にも傷一つつけることすら叶わないのだった。
エストは確信する。この呪いを断ち切るための決め手がない。
「せめて、アレがあれば……」
しかし、そう脳内で鮮明に思い浮かべた瞬間、手には愛用している刀剣が握られていた。これは王家に伝わる剣。かつてこの国を打ち立てた王が使っていたとされる『命、魔法、運命、何もかもを断ち切ることが出来る』という逸話が残る伝説の剣だ。
剣には特殊な魔法がコーティングされており、どんな高火力の魔法を流しても、砕けることなく振るうことが出来る。エストの愛用している剣だった。
それで攻撃してきた蔦を断ち切る。今度はそれを切り落とすことに成功した。形勢逆転だ。伸ばしてくる蔦を片っ端から叩き斬り、花に急接近する。
「痛い……苦しいよ、助けて――エスト」
瞳から真っ黒な涙を流しながら、クレアが苦し気な声を上げた。それに心を痛めながらも、エストはクレアに声を掛ける。
「大丈夫だ。今、お前の苦しみの元を断ち切る!」
焔を纏った剣が彼女の頭上にあった花の本体を切り裂いた――。
花が光の粒になって、溶けていく。今まで見た事が無い程に神秘的で、美しい光景。しかしそれに見惚れてられるのも一瞬だった。花から解き放たれ、身体から力が抜けたように崩れ落ちるクレアを抱きとめる。
「クレア!!」
「エスト……ありがとう」
苦しみから救われ、笑顔を取り戻した彼女は花と同じ様に光の泡となって、大気に溶けたのだった。
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