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18.(オーランド視点)
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俺は完璧でなければならなかった。それは俺の願いであり、希望、そして一種の強迫観念のような強さの信念だった。
学院に入学して以来、魔法、剣術、学問、すべてに於いて一切の妥協を許さなかった。
公爵家の嫡男として、それは当然の義務だったが――俺にとってはそれ以上に重要な理由があった。
リーシャの婚約者として、完璧でありたかった。
あの日、彼女に出会い、婚約を手に入れた瞬間から、俺は「彼女にふさわしい男」になることを誓った。リーシャが完璧な女性だったから。
彼女の隣に並んでも見劣りしない、彼女が恥ずかしくない存在になる。だからこそ全てで1番を取った。そして全ての頂点に君臨するために、ここで学べる全てを極めると決めた。
結果、俺は学院の中でも飛び抜けた存在になった。
誰もが俺を「理想の貴公子」だと崇め、学院の最高位である生徒会長の座に就くのも時間の問題ではなかった。
当然のように、俺には常に女たちの視線が注がれていた。これがモテているということなのだろう。リーシャ以外からの好意など、どうでもいいし、興味すらもわかないが。
しかし厄介なのが、教室でも廊下でも、訓練場でも食堂でも――どこにいても、俺に近づいてきて声を掛けてくる女がいる。
「オーランド様、もしよろしければご一緒にカフェにでも……」
「オーランド様ぁ、この問題、少し教えていただけませんかぁ?」
「好きです!婚約者がいることは知っています!!私は絶対にその人を超えて見せる、貴方に後悔はさせないので、私と婚約してください!!!」
「この後お時間があれば、お茶でも――」
週に何度も、いや、ほぼ毎日のように俺へ向けられる告白や誘い。
婚約者がいると知っているはずなのに、しつこく言い寄ってくる醜悪な女たち。
反吐が出るほど気持ちが悪かった。
何故こんなにも他人のものである俺に色目を使おうとして、わざわざ2人きりになろうとしてくるのだろうか。醜悪かつ理解し難かった。
けれどこれだけは分かる。彼女たちが何を見ているのか……だ。それだけは俺には分かっていた。
彼女たちは俺の家柄とこの成績優秀であるという高い能力、立場に魅了されているだけだ。中身なんて見ていないだろう。だって彼女達には中身なんて見せた覚えがない。
そんな薄っぺらい感情で俺に近づいてくる女たちを、俺は心の底から軽蔑していた。
――だが、その一方で。
俺は、他人から関心を集める自分に誇りを持っていた。
「オーランド様は学院の中で最も優れた方です」
「どんな女性も、オーランド様に憧れているんですよ」
そんな言葉を耳にする度に俺は確信していた。
この俺こそが、リーシャにとって最もふさわしい男なのだ、と。
彼女は、俺の婚約者だ。他の誰のものでもない、俺のものだ。
だからこそ、俺は「誰よりも完璧でなければならない」。誰よりも優れ、誰よりも強く、誰よりも尊敬される存在であり続けるべきだ。
俺は、リーシャの隣に居るために努力しているのだから。
それらを証明するため、俺は全力で学院生活を過ごした。リーシャが入学してからも、俺は常に「理想の婚約者」であろうと努めたのだ。
彼女の前では、堂々とした振る舞いを。
常に冷静沈着で、誰よりも優雅な人間であることを。
生徒会長として、周囲から完璧な男と認められることを。
そうすれば、彼女もきっと、俺を尊敬し、惹かれ続けるだろうと――信じていた。
しかし俺はその『異変』に気付けなかった。
そんな完璧に近い日々を送っていたある日、俺は生徒会室で書類整理をしていた。
そこに、副会長であり友人のグレン=シュタイナーが、神妙な顔をして俺の前に座った。
「……オーランド、ちょっと話があるんだけど」
グレンは侯爵家の次男で、俺とは幼い頃からの付き合いだ。性格は根っから明るく、社交的で、根本的に根暗なタイプの俺とは正反対の気質を持っている。
生徒会でもムードメーカー的存在で、いつも場を和ませるのが得意な男だった。
だが――今日の彼は、珍しく真剣でどこか気まずいような顔をしていた。
「何の話だ?」
「その……言いづらいんだけど、お前の婚約者――リーシャ嬢がさ、最近、女生徒たちから嫌がらせを受けてるのを見ちゃって……」
俺は、一瞬理解が追いつかなかった。
「……どういうことだ?」
「いや、俺も偶然見たんだけどさ……リーシャ嬢が、何人かの女に囲まれて、かなりキツイこと言われてた」
グレンは難しい顔をしながら続ける。
「『あんたみたいな冷たい女はオーランド様に不釣り合いよ!』とか、『貴女が彼の足を引っ張っている』、『さっさと婚約を解消しなさい!オーランド様を縛り付けないで!!』とか……他にも色々。ついさっき見かけて、心配だったから暫く見てたんだけど、あの女子生徒たちの態度からして、どうもかなり前から続いてたっぽいんだよな」
俺の中で、何かが軋む音がした。
リーシャが――いじめられていた?この俺の、婚約者が?
思わず拳を強く握りしめた。
「……なぜ、止めなかった?いや、違うな、止めてたらもっと厄介なことに。なんで俺は今まで気づかなかったんだ」
「あまりに唐突すぎて、俺もどうすればいいか分からなくてさ。それに変に割って入ると、証拠を隠したりされそうで……というかお前、相談とかされてなかったのか?」
「……されてなかった」
言葉が喉に詰まる。
俺は常にリーシャを意識していた。
彼女に見られていることを前提に、すべての行動を決めていた。
完璧であろうとし、理想の婚約者であり続けようとしていた。
だが――
彼女の苦しみに、俺はまったく気づけていなかった。
学院に入学して以来、魔法、剣術、学問、すべてに於いて一切の妥協を許さなかった。
公爵家の嫡男として、それは当然の義務だったが――俺にとってはそれ以上に重要な理由があった。
リーシャの婚約者として、完璧でありたかった。
あの日、彼女に出会い、婚約を手に入れた瞬間から、俺は「彼女にふさわしい男」になることを誓った。リーシャが完璧な女性だったから。
彼女の隣に並んでも見劣りしない、彼女が恥ずかしくない存在になる。だからこそ全てで1番を取った。そして全ての頂点に君臨するために、ここで学べる全てを極めると決めた。
結果、俺は学院の中でも飛び抜けた存在になった。
誰もが俺を「理想の貴公子」だと崇め、学院の最高位である生徒会長の座に就くのも時間の問題ではなかった。
当然のように、俺には常に女たちの視線が注がれていた。これがモテているということなのだろう。リーシャ以外からの好意など、どうでもいいし、興味すらもわかないが。
しかし厄介なのが、教室でも廊下でも、訓練場でも食堂でも――どこにいても、俺に近づいてきて声を掛けてくる女がいる。
「オーランド様、もしよろしければご一緒にカフェにでも……」
「オーランド様ぁ、この問題、少し教えていただけませんかぁ?」
「好きです!婚約者がいることは知っています!!私は絶対にその人を超えて見せる、貴方に後悔はさせないので、私と婚約してください!!!」
「この後お時間があれば、お茶でも――」
週に何度も、いや、ほぼ毎日のように俺へ向けられる告白や誘い。
婚約者がいると知っているはずなのに、しつこく言い寄ってくる醜悪な女たち。
反吐が出るほど気持ちが悪かった。
何故こんなにも他人のものである俺に色目を使おうとして、わざわざ2人きりになろうとしてくるのだろうか。醜悪かつ理解し難かった。
けれどこれだけは分かる。彼女たちが何を見ているのか……だ。それだけは俺には分かっていた。
彼女たちは俺の家柄とこの成績優秀であるという高い能力、立場に魅了されているだけだ。中身なんて見ていないだろう。だって彼女達には中身なんて見せた覚えがない。
そんな薄っぺらい感情で俺に近づいてくる女たちを、俺は心の底から軽蔑していた。
――だが、その一方で。
俺は、他人から関心を集める自分に誇りを持っていた。
「オーランド様は学院の中で最も優れた方です」
「どんな女性も、オーランド様に憧れているんですよ」
そんな言葉を耳にする度に俺は確信していた。
この俺こそが、リーシャにとって最もふさわしい男なのだ、と。
彼女は、俺の婚約者だ。他の誰のものでもない、俺のものだ。
だからこそ、俺は「誰よりも完璧でなければならない」。誰よりも優れ、誰よりも強く、誰よりも尊敬される存在であり続けるべきだ。
俺は、リーシャの隣に居るために努力しているのだから。
それらを証明するため、俺は全力で学院生活を過ごした。リーシャが入学してからも、俺は常に「理想の婚約者」であろうと努めたのだ。
彼女の前では、堂々とした振る舞いを。
常に冷静沈着で、誰よりも優雅な人間であることを。
生徒会長として、周囲から完璧な男と認められることを。
そうすれば、彼女もきっと、俺を尊敬し、惹かれ続けるだろうと――信じていた。
しかし俺はその『異変』に気付けなかった。
そんな完璧に近い日々を送っていたある日、俺は生徒会室で書類整理をしていた。
そこに、副会長であり友人のグレン=シュタイナーが、神妙な顔をして俺の前に座った。
「……オーランド、ちょっと話があるんだけど」
グレンは侯爵家の次男で、俺とは幼い頃からの付き合いだ。性格は根っから明るく、社交的で、根本的に根暗なタイプの俺とは正反対の気質を持っている。
生徒会でもムードメーカー的存在で、いつも場を和ませるのが得意な男だった。
だが――今日の彼は、珍しく真剣でどこか気まずいような顔をしていた。
「何の話だ?」
「その……言いづらいんだけど、お前の婚約者――リーシャ嬢がさ、最近、女生徒たちから嫌がらせを受けてるのを見ちゃって……」
俺は、一瞬理解が追いつかなかった。
「……どういうことだ?」
「いや、俺も偶然見たんだけどさ……リーシャ嬢が、何人かの女に囲まれて、かなりキツイこと言われてた」
グレンは難しい顔をしながら続ける。
「『あんたみたいな冷たい女はオーランド様に不釣り合いよ!』とか、『貴女が彼の足を引っ張っている』、『さっさと婚約を解消しなさい!オーランド様を縛り付けないで!!』とか……他にも色々。ついさっき見かけて、心配だったから暫く見てたんだけど、あの女子生徒たちの態度からして、どうもかなり前から続いてたっぽいんだよな」
俺の中で、何かが軋む音がした。
リーシャが――いじめられていた?この俺の、婚約者が?
思わず拳を強く握りしめた。
「……なぜ、止めなかった?いや、違うな、止めてたらもっと厄介なことに。なんで俺は今まで気づかなかったんだ」
「あまりに唐突すぎて、俺もどうすればいいか分からなくてさ。それに変に割って入ると、証拠を隠したりされそうで……というかお前、相談とかされてなかったのか?」
「……されてなかった」
言葉が喉に詰まる。
俺は常にリーシャを意識していた。
彼女に見られていることを前提に、すべての行動を決めていた。
完璧であろうとし、理想の婚約者であり続けようとしていた。
だが――
彼女の苦しみに、俺はまったく気づけていなかった。
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