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お互い武器を手に持ち、視線が交わった瞬間に戦闘が始まった。
先手必勝!槍を、こちらに向かってくるカインの顔面をめがけて全力で投擲する。
「っ!」
生成した近距離武器を急に投げるとは思っていなかったのだろう。これには流石に驚いたのか、走ってきていた歩みを止め、彼が剣でそれを弾いた。
その時間を利用して更に距離を取り、同時に生成していた氷の弓で矢を射る。しかしこれはただの矢ではない。風魔法で何倍にも威力を増強した上で、とある仕掛けを矢に施した物だ。
それにすぐに気づいたのだろう。カインは今度は矢を受けるのではなく、避ける。最初の罠が不発に終わってしまったな、なんて少しだけ残念に思う。カインは戦闘に関しては相変わらず無駄に勘が良い。
避けられた方の矢は地面に突き刺さり、その周囲一帯が一瞬にして氷漬けになった。そう、これは矢に触れたものを全て凍てつかせる魔法が籠もった弓矢なのだ。何も考えずに受けたりなどすれば、どんな熟練者でも確実に足を止めざるを得ない。創り出して、実践した時には、叔父さんにも珍しく褒められた魔法だった。
一発目が失敗したからと言って、ここで隙を与えるわけにはいかない。風魔法を身体に纏わせて浮き上がることで場所を移動して、カインと距離を取りながらも、更に4本目、5本目と続けて同じ仕掛けを施した矢を射続ける。
先程まではわいわいと騒がしかったが、もう観客の声なんて聞こえない。誰しもが私達の本気の意志の貫き合いを、息を呑んで見ていることが分かった。
「……確かに、君は『文』コースに行くほど弱くもないようだ。だが――」
「っあぶな!!」
カインが地面に突き刺した剣が漆黒の炎を纏う。それと同時に、そこから地面に伝わっていき、闘技場のフィールド全体が炎に包まれた。空中にまで炎と熱気が伝わってくる。
咄嗟に自身の周囲を氷で覆ったからこそ怪我はなかったが、何の対策もしなかったら足を軽く焼かれていただろう。危なかった。今は、それだけカインが本気ということだ。
そこからは防戦一方。身体に纏う氷魔法を維持しながらも、何度も場所を移動し、カインが放ち続ける黒炎を氷で弾き、彼が近づいて来た時は氷を投擲することで退ける。
「ナーシャ、いい加減諦めてくれないか?」
「絶対に嫌!!それなら貴方が諦めなさい!!!」
「そうか、残念だ。大丈夫だ、両手足が焼けたとしても、俺が婚約者として責任を取るさ」
「だから!婚約者なんかじゃ!ないっ!!」
婚約者にしようとしているカインの発言を否定しながらも、カインにの発言に突っ込む。
絶対にヴォルフクリンゲでこれから学ぶことより、貴方と戦っている今の方が危険だと思うんですけど!!相変わらず、この男はどこか発言がぶっ飛んでいる。
そして同時にどちらも黙ったと思えば、彼が『終わりにしよう』と宣言をした。
そこから一気にカインの魔力が膨れ上がっていく気配を感じる。私はそれに絶望――なんてすることなく、むしろ心の底から湧き上がってくる嬉しさから笑顔を浮かべた。遂にカインが本気になったのだ。きっとお得意の大魔法を放ってくるだろう。過去の私が何度も苦渋を飲まされたあの魔法。兵を焼き払い、私に酷い怪我を負わせたあの魔法。
しかし、貴方が知らないであろうこと。私は前回の生ではルナフルールにいたのである。そこでは魔法式や魔道具作成と言ったものを重点的に学ぶ。たとえ魔法の威力や体術、剣術で貴方に今は負けていたとしても、私にはまだコレがある。
カインが剣を構えた瞬間、周囲の氷を火傷しないギリギリまで薄くして、彼に大魔法を発動するための弓を構えた――。
先手必勝!槍を、こちらに向かってくるカインの顔面をめがけて全力で投擲する。
「っ!」
生成した近距離武器を急に投げるとは思っていなかったのだろう。これには流石に驚いたのか、走ってきていた歩みを止め、彼が剣でそれを弾いた。
その時間を利用して更に距離を取り、同時に生成していた氷の弓で矢を射る。しかしこれはただの矢ではない。風魔法で何倍にも威力を増強した上で、とある仕掛けを矢に施した物だ。
それにすぐに気づいたのだろう。カインは今度は矢を受けるのではなく、避ける。最初の罠が不発に終わってしまったな、なんて少しだけ残念に思う。カインは戦闘に関しては相変わらず無駄に勘が良い。
避けられた方の矢は地面に突き刺さり、その周囲一帯が一瞬にして氷漬けになった。そう、これは矢に触れたものを全て凍てつかせる魔法が籠もった弓矢なのだ。何も考えずに受けたりなどすれば、どんな熟練者でも確実に足を止めざるを得ない。創り出して、実践した時には、叔父さんにも珍しく褒められた魔法だった。
一発目が失敗したからと言って、ここで隙を与えるわけにはいかない。風魔法を身体に纏わせて浮き上がることで場所を移動して、カインと距離を取りながらも、更に4本目、5本目と続けて同じ仕掛けを施した矢を射続ける。
先程まではわいわいと騒がしかったが、もう観客の声なんて聞こえない。誰しもが私達の本気の意志の貫き合いを、息を呑んで見ていることが分かった。
「……確かに、君は『文』コースに行くほど弱くもないようだ。だが――」
「っあぶな!!」
カインが地面に突き刺した剣が漆黒の炎を纏う。それと同時に、そこから地面に伝わっていき、闘技場のフィールド全体が炎に包まれた。空中にまで炎と熱気が伝わってくる。
咄嗟に自身の周囲を氷で覆ったからこそ怪我はなかったが、何の対策もしなかったら足を軽く焼かれていただろう。危なかった。今は、それだけカインが本気ということだ。
そこからは防戦一方。身体に纏う氷魔法を維持しながらも、何度も場所を移動し、カインが放ち続ける黒炎を氷で弾き、彼が近づいて来た時は氷を投擲することで退ける。
「ナーシャ、いい加減諦めてくれないか?」
「絶対に嫌!!それなら貴方が諦めなさい!!!」
「そうか、残念だ。大丈夫だ、両手足が焼けたとしても、俺が婚約者として責任を取るさ」
「だから!婚約者なんかじゃ!ないっ!!」
婚約者にしようとしているカインの発言を否定しながらも、カインにの発言に突っ込む。
絶対にヴォルフクリンゲでこれから学ぶことより、貴方と戦っている今の方が危険だと思うんですけど!!相変わらず、この男はどこか発言がぶっ飛んでいる。
そして同時にどちらも黙ったと思えば、彼が『終わりにしよう』と宣言をした。
そこから一気にカインの魔力が膨れ上がっていく気配を感じる。私はそれに絶望――なんてすることなく、むしろ心の底から湧き上がってくる嬉しさから笑顔を浮かべた。遂にカインが本気になったのだ。きっとお得意の大魔法を放ってくるだろう。過去の私が何度も苦渋を飲まされたあの魔法。兵を焼き払い、私に酷い怪我を負わせたあの魔法。
しかし、貴方が知らないであろうこと。私は前回の生ではルナフルールにいたのである。そこでは魔法式や魔道具作成と言ったものを重点的に学ぶ。たとえ魔法の威力や体術、剣術で貴方に今は負けていたとしても、私にはまだコレがある。
カインが剣を構えた瞬間、周囲の氷を火傷しないギリギリまで薄くして、彼に大魔法を発動するための弓を構えた――。
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