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第34話 白光隊《ルミナスホワイト》
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整然と並ぶ魔法少女たち――エクリプスたちが、広いホールに静かに整列していた。
光を反射する装束、鋭く研ぎ澄まされた視線、
そして少しの緊張。
周囲を見回していたのは、カレンだった。
彼女は深く息を吸い、
はっきりとした声で命じる。
「全員、整列!」
その一言に、靴音が一斉にホールへと響いた。
「本日をもって、私――カレン・シュナイダーは、№10を退任する!」
言葉の間に、重たい静寂が落ちる。
「そして……後任として、この者を任命する。
真壁しずく、前へ」
静かに前へ出た少女の顔には、
凛とした光が宿っていた。
「本日より、№10を拝命いたしました。
真壁しずくです」
声は少し震えていたが、
それ以上に確かな意志がこもっていた。
「これまで私は、
多くの方々に助けていただきました。だから今度は私が、誰かを守れる存在になりたい。 そして……皆さんと同じ仲間として、共に戦っていきたいと願っています」
彼女は深く頭を下げ、続ける。
「まだ至らないところも多いかもしれませんが、どうかよろしくお願いします!」
次の瞬間――。
整列していた魔法少女たちが、敬礼を揃える。
空気が震えた。
その瞬間、誰もがこの新たな幕開けを、
確かに感じていた。
――だが、その緊張を裂くように、
ホールの扉が開いた。
「申し訳ありません! 遅れましたっ!」
しずくが顔を上げると、
そこには荷物を抱えて、
息を切らしたアヤメの姿があった。
「……あ、アヤメちゃん!? なんでここに……!?」
――昨日の夜。リサの部屋。
「――リサ様に、伝えたいことがあります」
アヤメの声には、
いつもの冷静さとは違う熱が宿っていた。
言葉を探すように視線を泳がせ、
それでも一歩、前に出る。
リサは椅子から立ち上がり、
いつもの調子で軽く首を傾げた。
「……何だ。言ってみろ」
一拍の間。
アヤメは深く息を吸い込み、
声を震わせながら口を開いた。
「私は、しずく様の部隊に異動したいと考えておりますっ!!」
部屋の空気が、静かに凍った。
リサの瞳が鋭く細まる。
「……本気か?」
「はい」
アヤメは深く頭を下げたまま、
強い調子で答えた。
「も、申し訳ありません!
とても失礼なことを言っているのは承知しています。
リサ様には、入隊当初から目をかけていただいて
……本当に、感謝しかありません」
アヤメは、感情を見せない少女だった。
淡々と任務をこなし、冷静沈着で、
時に機械的とすら言われたこともあった。
「でも――私は、しずく様と出会ってから……少しずつ変わっていったんです」
その瞳が潤む。
「しずく様は、私の心に……水を注いでくれました。
静かで、あたたかくて、強い……。
その光に照らされて、私は初めて、人と笑い合うことを覚えたんです」
アヤメの声が震える。
「しずく様がナンバーズに選ばれたと聞いたときは、嬉しかったです。
でも……同時に、ものすごく寂しかった。
この人と、もう並んで歩けなくなるのかって、そう思ってしまったんです」
拳を握りしめたまま、彼女は頭を深く下げた。
「こんな時代です。 いつ、誰がいなくなるか分からない。
だから私は……あの人と一緒にいたいんです。
ただ、守られる存在じゃなく、共に戦う仲間として。
どうか……リサ様……」
涙を浮かべながら、静かに頭を下げる。
「……お願い致します。
私を、しずく様の隊への異動許可をっ……。」
リサはゆっくりと立ち上がり、
歩み寄って――アヤメの頭をぽん、と優しく叩いた。
「もういい。分かった」
その手に、アヤメの肩の力がふっと抜けた。
リサは小さく笑って言う。
「最初、お前の頭を叩いたときはな……
申し訳ありませんが、触らないでくださいって、真顔で言われたもんだ」
アヤメはしゃくり上げながら、涙の中で笑った。
「うぅ……むかしの話は、しないでくださいよぉ……」
その顔には、確かに変わった少女の姿があった。
リサは静かに頷いた。
「アヤメ……しずくを、頼んだぞ」
「……はい。 ありがとうございましたっ…。」
――
「……あ、アヤメちゃん!? なんでここに……!?」
ホールの中央で、
アヤメは大きく息を整えると、静かに口を開いた。
「本日付けで……№10隊に異動となりました。三条アヤメです!」
異動書類を掲げ、力強く一礼する。
「皆さま、どうぞよろしくお願いします!」
カレンが隣で、穏やかに笑った。
「ふふっ……しずく。いい仲間を持ったな」
しずくは、こみ上げるものを堪えながら、
優しく微笑んだ。
その瞳の奥に、強く、揺るがぬ光が灯っていた。
カレンが軽く手を上げ、声を通した。
「さて、皆に自己紹介も終わったところで、部隊編成に移ろう――。」
その声に、少女たちの視線が再び並び直した。
「副官は、私――カレン・シュナイダーが担当する。
エクリプス隊長は――アヤメ、君だ」
「はい!」
と、アヤメが力強く返事をした。
カレンは微笑んで続ける。
「そして――こちらが、カレン隊の副官だった、リリアです」
その時、緑の髪を軽く揺らす少女が前に出た。
彼女は忍者のような軽装の制服を纏い、
片目を前髪で隠していた。
表情にはほとんど変化がないが、
その瞳は澄み、そして強かった。
「リリアです。隊長、これからよろしくお願いします」
カレンが小さく頷きながら、
しずくの方へ向き直る。
「実はリリアは、セレス様の時代からの生え抜きだ。実力も、信頼も申し分ない。
――掃討戦の時は、別の作戦に従事していたため、一緒にはいなかったが……」
リリアは静かに言葉を続ける。
「私とカレン様がいれば、
マガツなど――葬り去ってやりましたのに。
隊長、その節は、カレン様を助けていただき、ありがとうございます」
しずくは深く頭を下げた。
「リリアさん、本当にありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願い致します」
その後、カレンは少し間を置き、
慎重に問いかけた。
「で――隊の名前なんだが、どうする?」
しずくはふと目を見開いた。
「え、隊の名前‥‥ですか?」
その言葉に、アヤメが軽く手を挙げ、
提案してきた。
「しずく様から取って、
雫星隊ではいかがでしょうか?」
その時、リリアがクールなまなざしのまま言った。
「私は『しずくはぴはぴ♡らぶりぃ号』が良いと思います。
真ん中をハートマークにすることで、愛を象徴していて可愛いと思います」
しずくは少し引き、視線を逸らした。
カレンは笑いながら言った。
「あー、しずく。リリアは前からこんな感じなんだ」
リリアは少しだけ首を傾げ、淡々と返した。
「カレン様、その言い方は何ですか?
私はいたって、真面目ですけれど……」
その言葉に、場に軽い笑いがこぼれた。
しずくは少し考え込むように唇に指を当てた。
「……そういえば、他の隊って、どんな名前なんでしょうか?」
その問いに、カレンは小さく頷き、腕を組みながら応じる。
「ふむ。いい質問だな。
各隊とも、隊長の個性がよく表れているぞ」
そのまま指を折って数えながら語り始めた。
「まず――リサさんの隊は紅刀隊。
突撃と制圧に特化した、斬撃系エクリプスの精鋭部隊だ」
アヤメが「うんうん」と小さく相槌を打つ.
「次に、クラウディアさんの隊は氷冠騎士団。
規律と名誉を重んじる、典型的な騎士団形式。盾と剣の編成が美しいな」
「ギルベルトさんの隊は鋼律連盟。
ここは珍しくエクリプスを中心とし、戦略と命令系統に絶対的な信頼が置かれている。動きは少ないが、一度動けば戦場を制する力がある」
「それから、ライラの隊は蒼炎拳団。
炎と格闘術の猛者が集まる、いわば爆発力の塊のような部隊だ。
癖は強いが、頼もしいぞ」
しずくがクスッと笑った。
「なんだか、名前を聞くだけで雰囲気が伝わってきますね」
カレンは静かに微笑んだ.
「だろう? 他にも――
エリナさんの隊は翠弓結社。
遠距離狙撃と遊撃に長けた、自然との調和を重んじる部隊」
「ミラの隊は夜幻楼。
幻術・暗殺・諜報。表には出ないが、非常に重要な任務を担っている」
「そして、ガレスさんの隊は鎧斧戦団。
最前線で防衛を担う鉄壁の部隊。重装備で一歩も引かない強者ぞろいだった。」
「……とはいっても、ガレスさんは少し特殊でね。
――まあ、その話はまた今度にしよう。」
カレンは最後に、しずくを見た。
「こうして少し挙げてみると、どの隊も、隊長の信念が形になっている。
しずく、お前も――自分の色を出していいんだ」
しずくは、皆の説明を聞きながら、そっと視線を落として考え込んだ。
どの隊も、それぞれの信念が込められていて、名前ひとつで空気が変わる。
自分は、どんな色でありたいのか――
やがて、顔を上げて口を開いた.
「……白光隊なんて、どうでしょうか」
その言葉に、アヤメが真っ先に反応した.
「素敵ですっ! しずく様らしい、やさしさと光を感じます!」
カレンも満足げに頷く.
「うん、いい名だ。新しい光として、人類の希望を導く――まさにぴったりだな」
すると――リリアが、相変わらず無表情のまま、手をそっと挙げる.
「よいとは思いますが……
私はやはり、『しずくはぴはぴ♡らぶりぃ号』の方が……
真ん中のハートマークを光らせることで、希望を象徴していて可愛いと思います」
アヤメがわずかに口を引きつらせながら、無言でそっと距離をとったその時――
「白光隊《ルミナスホワイト》、君にピッタリな名前だ。それでいこう」
カレンがリリアの発言を完全にスルーしながら、しずくの提案を力強く採用した。
リリアは静かに一歩前に出て、
小さな声で抗議する。
「カレン様、私がまだ話している途中だったのですが……」
その声音は穏やかだが、妙に圧を感じさせる静けさがあった。
カレンは苦笑しながら、肩をすくめて言った.
「……まあ、その案はまた次の機会に検討しようか。な?」
「はい、了解しました」
淡々と返すリリアだったが、どこか納得していない様子で「はぴはぴ……」と小声で
呟き、後ろで指をそっとハート形のハンドサインを作ってみせた。
しずくは笑いをこらえながら、
目の前の仲間たちを見つめた。
この隊で、歩いていく。自分の意志で。
そして、新たな白光隊の物語が、静かに幕を開けた――。
光を反射する装束、鋭く研ぎ澄まされた視線、
そして少しの緊張。
周囲を見回していたのは、カレンだった。
彼女は深く息を吸い、
はっきりとした声で命じる。
「全員、整列!」
その一言に、靴音が一斉にホールへと響いた。
「本日をもって、私――カレン・シュナイダーは、№10を退任する!」
言葉の間に、重たい静寂が落ちる。
「そして……後任として、この者を任命する。
真壁しずく、前へ」
静かに前へ出た少女の顔には、
凛とした光が宿っていた。
「本日より、№10を拝命いたしました。
真壁しずくです」
声は少し震えていたが、
それ以上に確かな意志がこもっていた。
「これまで私は、
多くの方々に助けていただきました。だから今度は私が、誰かを守れる存在になりたい。 そして……皆さんと同じ仲間として、共に戦っていきたいと願っています」
彼女は深く頭を下げ、続ける。
「まだ至らないところも多いかもしれませんが、どうかよろしくお願いします!」
次の瞬間――。
整列していた魔法少女たちが、敬礼を揃える。
空気が震えた。
その瞬間、誰もがこの新たな幕開けを、
確かに感じていた。
――だが、その緊張を裂くように、
ホールの扉が開いた。
「申し訳ありません! 遅れましたっ!」
しずくが顔を上げると、
そこには荷物を抱えて、
息を切らしたアヤメの姿があった。
「……あ、アヤメちゃん!? なんでここに……!?」
――昨日の夜。リサの部屋。
「――リサ様に、伝えたいことがあります」
アヤメの声には、
いつもの冷静さとは違う熱が宿っていた。
言葉を探すように視線を泳がせ、
それでも一歩、前に出る。
リサは椅子から立ち上がり、
いつもの調子で軽く首を傾げた。
「……何だ。言ってみろ」
一拍の間。
アヤメは深く息を吸い込み、
声を震わせながら口を開いた。
「私は、しずく様の部隊に異動したいと考えておりますっ!!」
部屋の空気が、静かに凍った。
リサの瞳が鋭く細まる。
「……本気か?」
「はい」
アヤメは深く頭を下げたまま、
強い調子で答えた。
「も、申し訳ありません!
とても失礼なことを言っているのは承知しています。
リサ様には、入隊当初から目をかけていただいて
……本当に、感謝しかありません」
アヤメは、感情を見せない少女だった。
淡々と任務をこなし、冷静沈着で、
時に機械的とすら言われたこともあった。
「でも――私は、しずく様と出会ってから……少しずつ変わっていったんです」
その瞳が潤む。
「しずく様は、私の心に……水を注いでくれました。
静かで、あたたかくて、強い……。
その光に照らされて、私は初めて、人と笑い合うことを覚えたんです」
アヤメの声が震える。
「しずく様がナンバーズに選ばれたと聞いたときは、嬉しかったです。
でも……同時に、ものすごく寂しかった。
この人と、もう並んで歩けなくなるのかって、そう思ってしまったんです」
拳を握りしめたまま、彼女は頭を深く下げた。
「こんな時代です。 いつ、誰がいなくなるか分からない。
だから私は……あの人と一緒にいたいんです。
ただ、守られる存在じゃなく、共に戦う仲間として。
どうか……リサ様……」
涙を浮かべながら、静かに頭を下げる。
「……お願い致します。
私を、しずく様の隊への異動許可をっ……。」
リサはゆっくりと立ち上がり、
歩み寄って――アヤメの頭をぽん、と優しく叩いた。
「もういい。分かった」
その手に、アヤメの肩の力がふっと抜けた。
リサは小さく笑って言う。
「最初、お前の頭を叩いたときはな……
申し訳ありませんが、触らないでくださいって、真顔で言われたもんだ」
アヤメはしゃくり上げながら、涙の中で笑った。
「うぅ……むかしの話は、しないでくださいよぉ……」
その顔には、確かに変わった少女の姿があった。
リサは静かに頷いた。
「アヤメ……しずくを、頼んだぞ」
「……はい。 ありがとうございましたっ…。」
――
「……あ、アヤメちゃん!? なんでここに……!?」
ホールの中央で、
アヤメは大きく息を整えると、静かに口を開いた。
「本日付けで……№10隊に異動となりました。三条アヤメです!」
異動書類を掲げ、力強く一礼する。
「皆さま、どうぞよろしくお願いします!」
カレンが隣で、穏やかに笑った。
「ふふっ……しずく。いい仲間を持ったな」
しずくは、こみ上げるものを堪えながら、
優しく微笑んだ。
その瞳の奥に、強く、揺るがぬ光が灯っていた。
カレンが軽く手を上げ、声を通した。
「さて、皆に自己紹介も終わったところで、部隊編成に移ろう――。」
その声に、少女たちの視線が再び並び直した。
「副官は、私――カレン・シュナイダーが担当する。
エクリプス隊長は――アヤメ、君だ」
「はい!」
と、アヤメが力強く返事をした。
カレンは微笑んで続ける。
「そして――こちらが、カレン隊の副官だった、リリアです」
その時、緑の髪を軽く揺らす少女が前に出た。
彼女は忍者のような軽装の制服を纏い、
片目を前髪で隠していた。
表情にはほとんど変化がないが、
その瞳は澄み、そして強かった。
「リリアです。隊長、これからよろしくお願いします」
カレンが小さく頷きながら、
しずくの方へ向き直る。
「実はリリアは、セレス様の時代からの生え抜きだ。実力も、信頼も申し分ない。
――掃討戦の時は、別の作戦に従事していたため、一緒にはいなかったが……」
リリアは静かに言葉を続ける。
「私とカレン様がいれば、
マガツなど――葬り去ってやりましたのに。
隊長、その節は、カレン様を助けていただき、ありがとうございます」
しずくは深く頭を下げた。
「リリアさん、本当にありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願い致します」
その後、カレンは少し間を置き、
慎重に問いかけた。
「で――隊の名前なんだが、どうする?」
しずくはふと目を見開いた。
「え、隊の名前‥‥ですか?」
その言葉に、アヤメが軽く手を挙げ、
提案してきた。
「しずく様から取って、
雫星隊ではいかがでしょうか?」
その時、リリアがクールなまなざしのまま言った。
「私は『しずくはぴはぴ♡らぶりぃ号』が良いと思います。
真ん中をハートマークにすることで、愛を象徴していて可愛いと思います」
しずくは少し引き、視線を逸らした。
カレンは笑いながら言った。
「あー、しずく。リリアは前からこんな感じなんだ」
リリアは少しだけ首を傾げ、淡々と返した。
「カレン様、その言い方は何ですか?
私はいたって、真面目ですけれど……」
その言葉に、場に軽い笑いがこぼれた。
しずくは少し考え込むように唇に指を当てた。
「……そういえば、他の隊って、どんな名前なんでしょうか?」
その問いに、カレンは小さく頷き、腕を組みながら応じる。
「ふむ。いい質問だな。
各隊とも、隊長の個性がよく表れているぞ」
そのまま指を折って数えながら語り始めた。
「まず――リサさんの隊は紅刀隊。
突撃と制圧に特化した、斬撃系エクリプスの精鋭部隊だ」
アヤメが「うんうん」と小さく相槌を打つ.
「次に、クラウディアさんの隊は氷冠騎士団。
規律と名誉を重んじる、典型的な騎士団形式。盾と剣の編成が美しいな」
「ギルベルトさんの隊は鋼律連盟。
ここは珍しくエクリプスを中心とし、戦略と命令系統に絶対的な信頼が置かれている。動きは少ないが、一度動けば戦場を制する力がある」
「それから、ライラの隊は蒼炎拳団。
炎と格闘術の猛者が集まる、いわば爆発力の塊のような部隊だ。
癖は強いが、頼もしいぞ」
しずくがクスッと笑った。
「なんだか、名前を聞くだけで雰囲気が伝わってきますね」
カレンは静かに微笑んだ.
「だろう? 他にも――
エリナさんの隊は翠弓結社。
遠距離狙撃と遊撃に長けた、自然との調和を重んじる部隊」
「ミラの隊は夜幻楼。
幻術・暗殺・諜報。表には出ないが、非常に重要な任務を担っている」
「そして、ガレスさんの隊は鎧斧戦団。
最前線で防衛を担う鉄壁の部隊。重装備で一歩も引かない強者ぞろいだった。」
「……とはいっても、ガレスさんは少し特殊でね。
――まあ、その話はまた今度にしよう。」
カレンは最後に、しずくを見た。
「こうして少し挙げてみると、どの隊も、隊長の信念が形になっている。
しずく、お前も――自分の色を出していいんだ」
しずくは、皆の説明を聞きながら、そっと視線を落として考え込んだ。
どの隊も、それぞれの信念が込められていて、名前ひとつで空気が変わる。
自分は、どんな色でありたいのか――
やがて、顔を上げて口を開いた.
「……白光隊なんて、どうでしょうか」
その言葉に、アヤメが真っ先に反応した.
「素敵ですっ! しずく様らしい、やさしさと光を感じます!」
カレンも満足げに頷く.
「うん、いい名だ。新しい光として、人類の希望を導く――まさにぴったりだな」
すると――リリアが、相変わらず無表情のまま、手をそっと挙げる.
「よいとは思いますが……
私はやはり、『しずくはぴはぴ♡らぶりぃ号』の方が……
真ん中のハートマークを光らせることで、希望を象徴していて可愛いと思います」
アヤメがわずかに口を引きつらせながら、無言でそっと距離をとったその時――
「白光隊《ルミナスホワイト》、君にピッタリな名前だ。それでいこう」
カレンがリリアの発言を完全にスルーしながら、しずくの提案を力強く採用した。
リリアは静かに一歩前に出て、
小さな声で抗議する。
「カレン様、私がまだ話している途中だったのですが……」
その声音は穏やかだが、妙に圧を感じさせる静けさがあった。
カレンは苦笑しながら、肩をすくめて言った.
「……まあ、その案はまた次の機会に検討しようか。な?」
「はい、了解しました」
淡々と返すリリアだったが、どこか納得していない様子で「はぴはぴ……」と小声で
呟き、後ろで指をそっとハート形のハンドサインを作ってみせた。
しずくは笑いをこらえながら、
目の前の仲間たちを見つめた。
この隊で、歩いていく。自分の意志で。
そして、新たな白光隊の物語が、静かに幕を開けた――。
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