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第40話 ☆復讐回①
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「ヒャハハッ! やったぜ! この魔剣の直撃を受けて生きていられるはずがねぇ! ついに忌まわしきナードをぶっ殺したぞ!」
土煙が上がって、徐々に状況が明らかになる。
――けど。
そこにダコタの望む光景はなかったみたいだ。
「……なっ!?」
僕は、体に絡み付いた草木を払い落として立ち上がる。
それを見て、ダコタは激しく動揺した声を上げた。
「あ、ありえねぇ……直撃だったろうがッ!」
「たしかに、魔剣デュエルヴァーミリオンはすごい武器だって思うけど……」
「っ!」
「使う人がダメだと、宝の持ち腐れだね」
「て……てめーッ! 殺す殺す殺す殺すッーー!」
血走った眼を向けると、ダコタは水晶ジェムを取り出して、魔法発動を唱えた。
魔法を使っちゃいけないってきちんとルールを確認したはずなのに、もうなりふり構っていられないみたいだ。
「〝かの者にエデンの加護があらんことを 武器を一段階強化せよ――《ファーストライズ》〟」
魔剣デュエルヴァーミリオンを強化すると、剣先を突き立てながらもう一度突進してくる。
「てめーのゴミみてぇな命もこれで終わりだ! 両手剣術中級技――《皇殺斬》!」
デュゴゴゴゴゴゴーーーーーンッッ!!
その攻撃もまた、近距離で直撃を食らってしまう。
僕の体は、激しい衝撃波と共に吹き飛ばされた。
「……ッ、さすがに死んだはずだぞ!」
土煙が上がる中、そんな焦った声が聞こえてくる。
「!?」
そして、その場で僕がゆっくり立ち上がると、今度こそダコタはわなわなと全身を震わせ始めた。
「な……なんでだよッ! 二度も直撃させただろぉがッ!」
まるで、得体の知れないものでも見るように、その目は大きく見開かれている。
なおも信じられないのか、ダコタは魔剣を振り回して攻撃してくるけど、そのどれを受けても僕は無傷だった。
「ば、化け物かよ、コイツ……」
まるで歯が立たないって気付いたんだろう。
ダコタは力なく大剣をその場に沈ませた。
そんなダコタのもとへゆっくり近付くと、種明かしをすることに。
「普段、他人のステータスなんて見る機会ないでしょ?」
「っ!?」
「だから、こうやって無意味なことができるんだ。いい機会だから見せてあげるよ。あれから僕が、どれだけ強くなったのか」
ビーナスのしずくのエンドパーツに触れると、自分のステータスをダコタの前に表示させる。
-----------------
[ナード]
LP1,529
HP1,000/1,000
MP500/500
攻500
防500
魔攻500
魔防500
素早さ500
幸運500
ユニークスキル:
<アブソープション【スロットβ】>
<バフトリガー【ON】>
属性魔法:
《ファイヤーボウル》《デモンズフレイム》
《ファイナルボルケーノ》
《サンダーストライク》《プラズマオーディン》
《ライトニングヘブン》
《サイレントカッター》《ブラックサイクロン》
《エターナルストーム》
《フリーズウォーター》《バブルハウリング》
《ブルーリヴァイアサン》
無属性魔法:
《ヒール》《ヒールプラス》
《フルキュア》《ニルオール》
《サードライズ》《超集中》
《瞬間移動》《環境適応》
攻撃系スキル:
<体術>-《あばれ倒し》-《秘技・天翔蹴り》
-《爆烈神覇・絶影掌》
<片手剣術>-《ソードブレイク》-《鷹回剣》
-《グラビティサザンクロス》
<斧術>-《メテオスピン》-《無双炎車輪》
-《終焉の大斧》
補助系スキル:
《分析》《投紋》《調薬》
《高速詠唱》
《アルファウォール》《オメガウォール》
《ソリッドシェルター》
《ディフェンスクラッシュ》
《火のカーテン》《雷のカーテン》
《風のカーテン》《水のカーテン》
武器:ウロボロスアクス
防具:
アイテム:
ポーション×158、ダブルポーション×41
マジックポーション×100、マジックポッド×25
エリクサー×2、水晶ジェム×206
英霊の短刀×1、超強化装甲×1
上帝の盾×1、太陽の兜×1
ミスリルグローブ×1
貴重品:ビーナスのしずく×1
所持金:50,491,367アロー
所属パーティー:叛逆の渡り鳥
討伐数:
E級魔獣80体、E級大魔獣1体
C 級魔獣54体、C級大魔獣1体
B級魔獣227体、B級大魔獣5体
状態:ランダム状態上昇<物理ダメージ無効>
-----------------
「な、な、な……なんだよこのステータスッ!? LP1,529……? あ、あり得ねぇ……! てめー何を……」
「全部<アブソープション>っていうユニークスキルのおかげなんだけどね。僕、相手のLPを吸収することができるんだよ」
「……相手のLPを、吸収…………?」
多分、何を言っているのか理解できていないんだろう。
ダコタは声を震わせながら、僕の言葉を復唱した。
「それと<バフトリガー>っていう面白いスキルも持っていて。ほら、【状態】の項目に<物理ダメージ無効>って表示されてるでしょ? だから、今の君がいくら攻撃を当てても、一切ダメージを受けることはないんだ」
「!!」
「運が悪かったね。正直言って、今日の内容はチート過ぎるんじゃないかって僕も思ってる」
「ふ、ふ、ふ……ふざけんなぁぁぁぁぁ~~~~ッ!!」
顔を真っ赤にして、魔剣デュエルヴァーミリオンを力の限り振り下ろしたダコタの一撃を、僕はいとも簡単に回避する。
「ぶっちゃけるとさ。これまでの攻撃はわざと当たってたんだよね」
「な……ッ」
「だって、その方が君のプライドをズタズタにできるでしょ?」
「ぐおおおおぉぉぉぉぉおおおーーーーー!!」
絶叫に近い雄叫びを上げながら、なおも大剣を振り回すダコタ。
が。
「っ!?」
ダコタの背後に素早く回り込むと、魔剣デュエルヴァーミリオンを奪って、僕はそれを遠くへ放り投げた。
「<武器創造>だっけ? 無駄な努力ご苦労さま」
「……ああ、ぁっ……」
「これまで散々僕のことをいじめてくれたよね? ここからはその仕返しをさせてもらうよ。まず挨拶がわりに1発」
ドスンッ!
「ぐがふッ!?」
ダコタの腹部に、僕の鋭い拳がヒットする。
口から胃液を吐き出しつつ、ダコタはその場でうずくまるようにして悶えた。
「あ゛……ぐがぁ゛……うぐぅぅッ……!」
「僕は君にいじめられながらずっと思ってたんだ。いつかこうやって復讐したいって……ねっ!」
ズコンッ!
「ぶふぉっ……!?」
重いひと蹴りが顔面に命中する。
ダコタは鼻から血を垂れ流し、這い回るようにして、この場から逃げようとしていた。
それを踏みつけて阻止する。
「ダメだよ。誰が帰っていいって言ったのかな? 決闘はきちんと負けを認めないと」
「んぐぐッ……だ、誰が……てめぇ……なんかにぃ…………どぎゃぁ!?」
ぐしゃりとダコタの銀髪を掴み上げると、僕は顔を近付けながら言った。
「てめぇじゃないよね? ナードさん……いや、ナード様でしょ?」
「……い、言うわけがねぇ……だろがぁ…………おぶぅッ!?」
「ほら、ちゃんと目を見て言ってよ? 『ナード様。これまで散々いじめてきてしまって本当にごめんなさい。私は害虫で、生きてる価値もないゴミクズです。もう金輪際、ナード様には逆らいません』って……ねぇ!」
バゴンッ!
「あ゛ぁあぁあ゛ぁッッ……!」
抉るような高速パンチをダコタの顔面にぶち当てる。
僕は<体術>を習得しているけど、これといって技は使っていない。
まったく技を使わずとも、これだけ一方的にダコタを翻弄できてしまっているんだ。
もう言い訳の余地がないくらい、僕たちの間には決定的な力の差があった。
「相変わらず強情だね。でも、それもどこまで保つかな。それじゃ、これまでの恨みを1つずつ晴らさせてもらうよ。これは、クラスメイトの前で僕を裸にして、笑いものにした時の1発!」
ドスンッ!
「ぐ、があッ……!?」
「これは、脅迫されてお金を巻き上げられた時の1発!」
ズコンッ!
「ぐげほっ、おえぇぇッ……!?」
「これは、僕を盗みの犯人に仕立て上げて、みんなに一方的に責めさせた時の1発!」
バゴンッ!
「がぁっぁぁあぁ……ッ!」
「これは、暴力にものを言わせて、仲間と一緒に僕をリンチした時の1発!」
ボゴンッ!
「ぐ、……あ、ァ……げほっ、おえ……!」
次々に罪状を読み上げながら、ダコタの顔を殴り続ける。
すでにダコタの鼻はぐちゃぐちゃに潰れて、目元はこぶで見えなくなるくらい真っ赤に腫れ上がっていた。
けど、こんなもんじゃ全然足らない……。
これまでの恨みをすべて晴らすように、僕は無心で拳を振り下ろし続けた。
「――これは、セシリアと一緒に僕をパーティーから追放した時の1発!」
ガゴンッ!!
「……ぅ、ごォっ゛…………」
もはや、声が出なくなるくらいに、ダコタを滅多打ちにしていた。
悔し涙なのか、ボコボコに腫れたダコタの目からは微かに涙が流れている。
それを見て、ようやくひと息つくことができた。
「だいぶ気持ちがすっきりしたかな。それじゃ、次の1発で終わりにするよ。それまでに僕への謝罪がなかったら……」
僕は、両手をかざして<アブソープション>を唱える。
すると、ダコタの体は発光し、手のひらに眩い光が吸い込まれていく。
「……ッ!? て……めぇ……な、にを…………」
「今、君のLPを1まで吸い取ったんだ。ちゃんと謝ってくれたら、この1だけは残してあげる。まあでも、これでもう冒険者としての君の人生は終了しちゃったけど、死んじゃうよりはマシだよね? さあ、分かったら早く謝罪してよ。これまでの件すべて」
「……ざ……け、ん……なッ…………」
ダコタは依然として闘志を失っていなかった。
僕に屈服するのが、嫌で嫌で嫌で仕方ないんだろうな。
もういいか。
こんな態度なんだし、手加減する必要もないよね。
そのまま片腕を掴むと、無言のままそれをボキッと折った。
「ぐぎゃああああぁぁぁああああ~~~!!」
続けてもう1本の腕も掴む。
「死にたいみたいだから、こっちもいいよね?」
「……あ゛ぁぁ……っ、ま、待って……くれえぇぇ……」
「ん?」
「す……す……すみ……ません……すみませんでしたあぁぁ……俺がぁ、今まで……うぐっ……」
「なに? もっとはっきり言ってよ」
「ぐぎょええぇぇぇええぇえぇぇえ~~~~ッ!?」
もう片方の腕もボキッと折ってしまう。
ダコタは血と涙で顔をぐちゃぐちゃにさせながら、巨大な体躯を地面に深く突きつけて謝罪をした。
「……うええ……うぇぇ、ううッ……ほんとぉにぃ……ごめんなさひぃ……俺がぁ、悪かったですぅ……間違って、ましたぁ……」
「それで? 誰になんて言うんだっけ?」
「ナ……ナード様あぁぁ……! だからぁ、もぉ……許してくださぃ……この通りですぅ……本当にぃ……すみませ…………がぁっぁ!?」
僕はダコタの頭を力の限り足で踏みつけながらこう言った。
「これで分かったでしょ? いくら君が僕に挑んだとしても、もう一生敵うことはないんだって」
「……は、はひぃっ……! 大変、申し訳ございません、でしたあぁぁっ…………!」
それを聞いた瞬間、最後のひと蹴りをダコタの顔面に振り抜く。
「ヒイィィッ!?」
バゴンッ!!
体をぐったりさせると、ダコタはそれっきりまったく動かなくなった。
足で蹴り上げながら、その場に放り捨てる。
「ふぅ……」
誰もいない牧草地を見渡して、僕は清々しい気分になっていた。
これでダコタは、もう二度と目の前に現れることはないだろう。
「君じゃこれは扱えないよ。これは僕が使わせてもらうから」
草むらに放り投げられたままの魔剣デュエルヴァーミリオンを拾い上げる。
<武器創造>で作り上げた渾身の一級品を奪う。それがダコタに対する最後の復讐だった。
「あとは……」
結界越しに夜空を見上げながら、僕は思う。
まだ1人、復讐を成し遂げなくちゃいけない相手がいるって。
土煙が上がって、徐々に状況が明らかになる。
――けど。
そこにダコタの望む光景はなかったみたいだ。
「……なっ!?」
僕は、体に絡み付いた草木を払い落として立ち上がる。
それを見て、ダコタは激しく動揺した声を上げた。
「あ、ありえねぇ……直撃だったろうがッ!」
「たしかに、魔剣デュエルヴァーミリオンはすごい武器だって思うけど……」
「っ!」
「使う人がダメだと、宝の持ち腐れだね」
「て……てめーッ! 殺す殺す殺す殺すッーー!」
血走った眼を向けると、ダコタは水晶ジェムを取り出して、魔法発動を唱えた。
魔法を使っちゃいけないってきちんとルールを確認したはずなのに、もうなりふり構っていられないみたいだ。
「〝かの者にエデンの加護があらんことを 武器を一段階強化せよ――《ファーストライズ》〟」
魔剣デュエルヴァーミリオンを強化すると、剣先を突き立てながらもう一度突進してくる。
「てめーのゴミみてぇな命もこれで終わりだ! 両手剣術中級技――《皇殺斬》!」
デュゴゴゴゴゴゴーーーーーンッッ!!
その攻撃もまた、近距離で直撃を食らってしまう。
僕の体は、激しい衝撃波と共に吹き飛ばされた。
「……ッ、さすがに死んだはずだぞ!」
土煙が上がる中、そんな焦った声が聞こえてくる。
「!?」
そして、その場で僕がゆっくり立ち上がると、今度こそダコタはわなわなと全身を震わせ始めた。
「な……なんでだよッ! 二度も直撃させただろぉがッ!」
まるで、得体の知れないものでも見るように、その目は大きく見開かれている。
なおも信じられないのか、ダコタは魔剣を振り回して攻撃してくるけど、そのどれを受けても僕は無傷だった。
「ば、化け物かよ、コイツ……」
まるで歯が立たないって気付いたんだろう。
ダコタは力なく大剣をその場に沈ませた。
そんなダコタのもとへゆっくり近付くと、種明かしをすることに。
「普段、他人のステータスなんて見る機会ないでしょ?」
「っ!?」
「だから、こうやって無意味なことができるんだ。いい機会だから見せてあげるよ。あれから僕が、どれだけ強くなったのか」
ビーナスのしずくのエンドパーツに触れると、自分のステータスをダコタの前に表示させる。
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[ナード]
LP1,529
HP1,000/1,000
MP500/500
攻500
防500
魔攻500
魔防500
素早さ500
幸運500
ユニークスキル:
<アブソープション【スロットβ】>
<バフトリガー【ON】>
属性魔法:
《ファイヤーボウル》《デモンズフレイム》
《ファイナルボルケーノ》
《サンダーストライク》《プラズマオーディン》
《ライトニングヘブン》
《サイレントカッター》《ブラックサイクロン》
《エターナルストーム》
《フリーズウォーター》《バブルハウリング》
《ブルーリヴァイアサン》
無属性魔法:
《ヒール》《ヒールプラス》
《フルキュア》《ニルオール》
《サードライズ》《超集中》
《瞬間移動》《環境適応》
攻撃系スキル:
<体術>-《あばれ倒し》-《秘技・天翔蹴り》
-《爆烈神覇・絶影掌》
<片手剣術>-《ソードブレイク》-《鷹回剣》
-《グラビティサザンクロス》
<斧術>-《メテオスピン》-《無双炎車輪》
-《終焉の大斧》
補助系スキル:
《分析》《投紋》《調薬》
《高速詠唱》
《アルファウォール》《オメガウォール》
《ソリッドシェルター》
《ディフェンスクラッシュ》
《火のカーテン》《雷のカーテン》
《風のカーテン》《水のカーテン》
武器:ウロボロスアクス
防具:
アイテム:
ポーション×158、ダブルポーション×41
マジックポーション×100、マジックポッド×25
エリクサー×2、水晶ジェム×206
英霊の短刀×1、超強化装甲×1
上帝の盾×1、太陽の兜×1
ミスリルグローブ×1
貴重品:ビーナスのしずく×1
所持金:50,491,367アロー
所属パーティー:叛逆の渡り鳥
討伐数:
E級魔獣80体、E級大魔獣1体
C 級魔獣54体、C級大魔獣1体
B級魔獣227体、B級大魔獣5体
状態:ランダム状態上昇<物理ダメージ無効>
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「な、な、な……なんだよこのステータスッ!? LP1,529……? あ、あり得ねぇ……! てめー何を……」
「全部<アブソープション>っていうユニークスキルのおかげなんだけどね。僕、相手のLPを吸収することができるんだよ」
「……相手のLPを、吸収…………?」
多分、何を言っているのか理解できていないんだろう。
ダコタは声を震わせながら、僕の言葉を復唱した。
「それと<バフトリガー>っていう面白いスキルも持っていて。ほら、【状態】の項目に<物理ダメージ無効>って表示されてるでしょ? だから、今の君がいくら攻撃を当てても、一切ダメージを受けることはないんだ」
「!!」
「運が悪かったね。正直言って、今日の内容はチート過ぎるんじゃないかって僕も思ってる」
「ふ、ふ、ふ……ふざけんなぁぁぁぁぁ~~~~ッ!!」
顔を真っ赤にして、魔剣デュエルヴァーミリオンを力の限り振り下ろしたダコタの一撃を、僕はいとも簡単に回避する。
「ぶっちゃけるとさ。これまでの攻撃はわざと当たってたんだよね」
「な……ッ」
「だって、その方が君のプライドをズタズタにできるでしょ?」
「ぐおおおおぉぉぉぉぉおおおーーーーー!!」
絶叫に近い雄叫びを上げながら、なおも大剣を振り回すダコタ。
が。
「っ!?」
ダコタの背後に素早く回り込むと、魔剣デュエルヴァーミリオンを奪って、僕はそれを遠くへ放り投げた。
「<武器創造>だっけ? 無駄な努力ご苦労さま」
「……ああ、ぁっ……」
「これまで散々僕のことをいじめてくれたよね? ここからはその仕返しをさせてもらうよ。まず挨拶がわりに1発」
ドスンッ!
「ぐがふッ!?」
ダコタの腹部に、僕の鋭い拳がヒットする。
口から胃液を吐き出しつつ、ダコタはその場でうずくまるようにして悶えた。
「あ゛……ぐがぁ゛……うぐぅぅッ……!」
「僕は君にいじめられながらずっと思ってたんだ。いつかこうやって復讐したいって……ねっ!」
ズコンッ!
「ぶふぉっ……!?」
重いひと蹴りが顔面に命中する。
ダコタは鼻から血を垂れ流し、這い回るようにして、この場から逃げようとしていた。
それを踏みつけて阻止する。
「ダメだよ。誰が帰っていいって言ったのかな? 決闘はきちんと負けを認めないと」
「んぐぐッ……だ、誰が……てめぇ……なんかにぃ…………どぎゃぁ!?」
ぐしゃりとダコタの銀髪を掴み上げると、僕は顔を近付けながら言った。
「てめぇじゃないよね? ナードさん……いや、ナード様でしょ?」
「……い、言うわけがねぇ……だろがぁ…………おぶぅッ!?」
「ほら、ちゃんと目を見て言ってよ? 『ナード様。これまで散々いじめてきてしまって本当にごめんなさい。私は害虫で、生きてる価値もないゴミクズです。もう金輪際、ナード様には逆らいません』って……ねぇ!」
バゴンッ!
「あ゛ぁあぁあ゛ぁッッ……!」
抉るような高速パンチをダコタの顔面にぶち当てる。
僕は<体術>を習得しているけど、これといって技は使っていない。
まったく技を使わずとも、これだけ一方的にダコタを翻弄できてしまっているんだ。
もう言い訳の余地がないくらい、僕たちの間には決定的な力の差があった。
「相変わらず強情だね。でも、それもどこまで保つかな。それじゃ、これまでの恨みを1つずつ晴らさせてもらうよ。これは、クラスメイトの前で僕を裸にして、笑いものにした時の1発!」
ドスンッ!
「ぐ、があッ……!?」
「これは、脅迫されてお金を巻き上げられた時の1発!」
ズコンッ!
「ぐげほっ、おえぇぇッ……!?」
「これは、僕を盗みの犯人に仕立て上げて、みんなに一方的に責めさせた時の1発!」
バゴンッ!
「がぁっぁぁあぁ……ッ!」
「これは、暴力にものを言わせて、仲間と一緒に僕をリンチした時の1発!」
ボゴンッ!
「ぐ、……あ、ァ……げほっ、おえ……!」
次々に罪状を読み上げながら、ダコタの顔を殴り続ける。
すでにダコタの鼻はぐちゃぐちゃに潰れて、目元はこぶで見えなくなるくらい真っ赤に腫れ上がっていた。
けど、こんなもんじゃ全然足らない……。
これまでの恨みをすべて晴らすように、僕は無心で拳を振り下ろし続けた。
「――これは、セシリアと一緒に僕をパーティーから追放した時の1発!」
ガゴンッ!!
「……ぅ、ごォっ゛…………」
もはや、声が出なくなるくらいに、ダコタを滅多打ちにしていた。
悔し涙なのか、ボコボコに腫れたダコタの目からは微かに涙が流れている。
それを見て、ようやくひと息つくことができた。
「だいぶ気持ちがすっきりしたかな。それじゃ、次の1発で終わりにするよ。それまでに僕への謝罪がなかったら……」
僕は、両手をかざして<アブソープション>を唱える。
すると、ダコタの体は発光し、手のひらに眩い光が吸い込まれていく。
「……ッ!? て……めぇ……な、にを…………」
「今、君のLPを1まで吸い取ったんだ。ちゃんと謝ってくれたら、この1だけは残してあげる。まあでも、これでもう冒険者としての君の人生は終了しちゃったけど、死んじゃうよりはマシだよね? さあ、分かったら早く謝罪してよ。これまでの件すべて」
「……ざ……け、ん……なッ…………」
ダコタは依然として闘志を失っていなかった。
僕に屈服するのが、嫌で嫌で嫌で仕方ないんだろうな。
もういいか。
こんな態度なんだし、手加減する必要もないよね。
そのまま片腕を掴むと、無言のままそれをボキッと折った。
「ぐぎゃああああぁぁぁああああ~~~!!」
続けてもう1本の腕も掴む。
「死にたいみたいだから、こっちもいいよね?」
「……あ゛ぁぁ……っ、ま、待って……くれえぇぇ……」
「ん?」
「す……す……すみ……ません……すみませんでしたあぁぁ……俺がぁ、今まで……うぐっ……」
「なに? もっとはっきり言ってよ」
「ぐぎょええぇぇぇええぇえぇぇえ~~~~ッ!?」
もう片方の腕もボキッと折ってしまう。
ダコタは血と涙で顔をぐちゃぐちゃにさせながら、巨大な体躯を地面に深く突きつけて謝罪をした。
「……うええ……うぇぇ、ううッ……ほんとぉにぃ……ごめんなさひぃ……俺がぁ、悪かったですぅ……間違って、ましたぁ……」
「それで? 誰になんて言うんだっけ?」
「ナ……ナード様あぁぁ……! だからぁ、もぉ……許してくださぃ……この通りですぅ……本当にぃ……すみませ…………がぁっぁ!?」
僕はダコタの頭を力の限り足で踏みつけながらこう言った。
「これで分かったでしょ? いくら君が僕に挑んだとしても、もう一生敵うことはないんだって」
「……は、はひぃっ……! 大変、申し訳ございません、でしたあぁぁっ…………!」
それを聞いた瞬間、最後のひと蹴りをダコタの顔面に振り抜く。
「ヒイィィッ!?」
バゴンッ!!
体をぐったりさせると、ダコタはそれっきりまったく動かなくなった。
足で蹴り上げながら、その場に放り捨てる。
「ふぅ……」
誰もいない牧草地を見渡して、僕は清々しい気分になっていた。
これでダコタは、もう二度と目の前に現れることはないだろう。
「君じゃこれは扱えないよ。これは僕が使わせてもらうから」
草むらに放り投げられたままの魔剣デュエルヴァーミリオンを拾い上げる。
<武器創造>で作り上げた渾身の一級品を奪う。それがダコタに対する最後の復讐だった。
「あとは……」
結界越しに夜空を見上げながら、僕は思う。
まだ1人、復讐を成し遂げなくちゃいけない相手がいるって。
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一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
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