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第39話
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ダコタに連れられて、だだっ広い牧草地までやって来る。
すでに時刻は22時を回っているためか、家畜の姿は見えなかった。
「ここなら、誰の目も気にすることなく戦えそうだぜ」
ダコタは草むらの上に立つと、魔法ポーチの中から巨大な剣を取り出す。
以前はこんな物は持っていなかった。初めて見る武器だった。
「魔剣デュエルヴァーミリオン。てめーも名前くらいは聞いたことあんだろ? 勇者フェイトが竜神ゴルゴーンをぶっ倒した剣だ。<武器創造>で俺が作ったのさ! どうだナード! 恐ろしくて声も出ねーみてぇだな!」
剣身は僕の背丈くらいありそうだ。それを構えると、ダコタはニカッと笑う。
赤色の刃先は非常に鋭利で、悪魔の刻印がされた大きな鍔は禍々しさ満点。
柄頭には紫の水晶がはめられていて、それが光ると剣全体が怪しげに輝き始める。
(魔剣デュエルヴァーミリオン……。そんなものを作ってたんだ)
さすがに驚きを隠せない。もちろん、実物を見るのも初めて。
この大剣は、勇者フェイトが手にした七宝の武器の1つに数えられている。
一級鍛冶屋が作った伝説の剣。素材の入手は簡単じゃなかったはずだ。
「ルールは規定通りでいいな?」
「……え? あ、うん……」
魔剣デュエルヴァーミリオンに目を向けながら、静かに頷く。
冒険者には、お互いの力を証明するために、1対1で決闘を行うという伝統がある。
2つのパーティーが1つになる時とか、どちらがタイクーンにふさわしいか、己の力を示すために行われたりするんだ。
それで、決闘で使用可能なのは、武器のみっていうルールも存在する。
防具の装着はできなくて、また魔法も使っちゃいけない。
相手が負けを認めるか、もしくは瀕死の状態に追い込むまで戦う必要があって、敗者は冒険者ギルドで敗れた噂が広がることになる。
当然、敗れ去った者とパーティーを組みたがる人もいないから、その後タイクーンとして活躍することはできない。
いわば、命とプライドをかけた真剣勝負。それが決闘なんだ。
「てめーも早く武器出せよ。その腰にぶら下げた短剣でいいのか?」
「いや、僕はこれを使わせてもらうよ」
魔法ポーチに手を突っ込むと、中からウロボロスアクスを取り出した。
それを見た瞬間、ダコタの目の色が変わった。
「! そりゃ……デュカのウロボロスアクスじゃねぇか!? なんで、てめーがそれを……」
「譲り受けたんだ」
「譲り受けた、だと……?」
一瞬、ダコタが怪訝な顔を浮かべる。
デュカがそんなことをするはずがない、と言わんばかりの表情だ。
「どうする? やめておく?」
「ハッ! ざけんなよ! デュカには悪いが、んなガキのオモチャで俺を倒せるはずがねぇ!」
「そっか」
「ナード、今日こそてめーをぶっ殺す! もう容赦なんてしねぇからな! 覚悟しやがれッ!」
以前の僕なら、ダコタのその言葉に震え上がっていたと思う。
でも。
(……うん。まったく怖くない)
これまで積み上げてきた経験が僕を守ってくれていた。
今のダコタを見ても、正直恐怖は感じない。たとえ相手が七宝の武器を持っていたとしても。
「始めようか」
「ヒャハハッ! 強がってられるのも今のうちだ! まずはこいつの威力を見てみろやッ!」
魔剣デュエルヴァーミリオンをダコタが軽く振り抜く。
シュパンッ!
すると、赤色の閃光が一直線に駆け抜け、近くの大木を真っ二つに粉砕した。
「次はこれがてめーを襲うぜ」
「……」
「いいな? ちびるなよ!」
ダコタが構えた巨大な剣の先端を地面につけると、それが決闘開始の合図となった。
「くおぉらああぁぁッーーーー!」
魔剣デュエルヴァーミリオンの剣先を突き立てたままダコタが突進してくる。
僕もすぐさまウロボロスアクスを握り締め、応戦の構えを取った。
「無様に死に晒せッ! 両手剣術初級技――《オーバーストライク》!」
直前で飛び上がったダコタが、大剣を素早く振り下ろした瞬間
バゴゴオオオォォォォーーーーーン!!
先程とは比べものにならないくらいの激しい衝撃波が、地面を抉りながら襲いかかってくる。
「くっ!」
ウロボロスアクスを盾代わりにして衝撃波を防いだのも束の間――。
「ナードォォッ殺すッ!」
続けざまにダコタが大剣で連続攻撃を仕掛けてくる。
カッキーン!
刃と刃がぶつかり合い、甲高い音が牧草地に響き渡る。
なんとか寸前のところで防いだけど……。
「オラッ!」
「いっ……!?」
そのままダコタが魔剣デュエルヴァーミリオンを力強く振り抜くと、ウロボロスアクスは勢いに押され、弾かれて飛ばされてしまう。
「ハッ! 勝負あったな!」
剣先が目の前に突きつけられる。
ちょっとばかり油断していたみたいだ。さすが竜神ゴルゴーンを倒した大剣ってことはある。
「命乞いしたって認めねーぞッ! 誰も助けなんか来ねぇんだからな! 今ここでお前をぶっ殺す! んで、てめーの首をもぎ取って、セシリアに俺の方が強いってことを認めさせてやる!」
「セシリア?」
急に、まったく考えもしなかった人物の名前を出されて思わず声を上げてしまう。
「どうして、セシリアに強いって認めさせる必要があるの?」
「……ククッ、時間稼ぎのつもりかぁ? まぁいいだろう! どうせてめーは今ここで死ぬわけだからな! 教えてやるよ。あいつはな、またてめーとパーティー組みたがってんだよ。どうだ? 好きだった女にもう一度そんな風に思われてよ。涙が出るほど嬉しいだろぉ?」
「なんで?」
「……ッ、あん……?」
「なんで、僕が嬉しがると思ったの? ていうか、めちゃくちゃ迷惑だし。僕はあの人ともう一度パーティーを組むつもりなんてないけど」
「な、なにぃ……?」
「正直、君たちの関係がどうなろうが知ったことじゃないし。どうでもいいことに、僕を巻き込まないでくれるかな」
「てめー自分がどういう状況にあるか、分かってねーみてぇだな、ああんッ!? セシリアもやっぱりバカだぜ。こんなヤツとまた組もうだなんてな! ハッ、いいだろう! そんなに死に急ぎてぇなら、もう止めねぇ……」
その時。
ダコタの目がスッと据わるのが分かった。
そして、にやりと口元を曲げると、魔剣デュエルヴァーミリオンを高く振り上げ、それを思いっきり振り下ろす。
「死ねええぇぇッ! 寄生虫ッーーー!」
鋭利な刃が夜を斬り、爆ぜた閃光が僕に直撃する。
避けるヒマすらなかった。
シュパァァァァァァンーーーーッ!!
僕の体はズタボロとなり、そのまま抉られた地面とともに激しく吹き飛ばされた。
すでに時刻は22時を回っているためか、家畜の姿は見えなかった。
「ここなら、誰の目も気にすることなく戦えそうだぜ」
ダコタは草むらの上に立つと、魔法ポーチの中から巨大な剣を取り出す。
以前はこんな物は持っていなかった。初めて見る武器だった。
「魔剣デュエルヴァーミリオン。てめーも名前くらいは聞いたことあんだろ? 勇者フェイトが竜神ゴルゴーンをぶっ倒した剣だ。<武器創造>で俺が作ったのさ! どうだナード! 恐ろしくて声も出ねーみてぇだな!」
剣身は僕の背丈くらいありそうだ。それを構えると、ダコタはニカッと笑う。
赤色の刃先は非常に鋭利で、悪魔の刻印がされた大きな鍔は禍々しさ満点。
柄頭には紫の水晶がはめられていて、それが光ると剣全体が怪しげに輝き始める。
(魔剣デュエルヴァーミリオン……。そんなものを作ってたんだ)
さすがに驚きを隠せない。もちろん、実物を見るのも初めて。
この大剣は、勇者フェイトが手にした七宝の武器の1つに数えられている。
一級鍛冶屋が作った伝説の剣。素材の入手は簡単じゃなかったはずだ。
「ルールは規定通りでいいな?」
「……え? あ、うん……」
魔剣デュエルヴァーミリオンに目を向けながら、静かに頷く。
冒険者には、お互いの力を証明するために、1対1で決闘を行うという伝統がある。
2つのパーティーが1つになる時とか、どちらがタイクーンにふさわしいか、己の力を示すために行われたりするんだ。
それで、決闘で使用可能なのは、武器のみっていうルールも存在する。
防具の装着はできなくて、また魔法も使っちゃいけない。
相手が負けを認めるか、もしくは瀕死の状態に追い込むまで戦う必要があって、敗者は冒険者ギルドで敗れた噂が広がることになる。
当然、敗れ去った者とパーティーを組みたがる人もいないから、その後タイクーンとして活躍することはできない。
いわば、命とプライドをかけた真剣勝負。それが決闘なんだ。
「てめーも早く武器出せよ。その腰にぶら下げた短剣でいいのか?」
「いや、僕はこれを使わせてもらうよ」
魔法ポーチに手を突っ込むと、中からウロボロスアクスを取り出した。
それを見た瞬間、ダコタの目の色が変わった。
「! そりゃ……デュカのウロボロスアクスじゃねぇか!? なんで、てめーがそれを……」
「譲り受けたんだ」
「譲り受けた、だと……?」
一瞬、ダコタが怪訝な顔を浮かべる。
デュカがそんなことをするはずがない、と言わんばかりの表情だ。
「どうする? やめておく?」
「ハッ! ざけんなよ! デュカには悪いが、んなガキのオモチャで俺を倒せるはずがねぇ!」
「そっか」
「ナード、今日こそてめーをぶっ殺す! もう容赦なんてしねぇからな! 覚悟しやがれッ!」
以前の僕なら、ダコタのその言葉に震え上がっていたと思う。
でも。
(……うん。まったく怖くない)
これまで積み上げてきた経験が僕を守ってくれていた。
今のダコタを見ても、正直恐怖は感じない。たとえ相手が七宝の武器を持っていたとしても。
「始めようか」
「ヒャハハッ! 強がってられるのも今のうちだ! まずはこいつの威力を見てみろやッ!」
魔剣デュエルヴァーミリオンをダコタが軽く振り抜く。
シュパンッ!
すると、赤色の閃光が一直線に駆け抜け、近くの大木を真っ二つに粉砕した。
「次はこれがてめーを襲うぜ」
「……」
「いいな? ちびるなよ!」
ダコタが構えた巨大な剣の先端を地面につけると、それが決闘開始の合図となった。
「くおぉらああぁぁッーーーー!」
魔剣デュエルヴァーミリオンの剣先を突き立てたままダコタが突進してくる。
僕もすぐさまウロボロスアクスを握り締め、応戦の構えを取った。
「無様に死に晒せッ! 両手剣術初級技――《オーバーストライク》!」
直前で飛び上がったダコタが、大剣を素早く振り下ろした瞬間
バゴゴオオオォォォォーーーーーン!!
先程とは比べものにならないくらいの激しい衝撃波が、地面を抉りながら襲いかかってくる。
「くっ!」
ウロボロスアクスを盾代わりにして衝撃波を防いだのも束の間――。
「ナードォォッ殺すッ!」
続けざまにダコタが大剣で連続攻撃を仕掛けてくる。
カッキーン!
刃と刃がぶつかり合い、甲高い音が牧草地に響き渡る。
なんとか寸前のところで防いだけど……。
「オラッ!」
「いっ……!?」
そのままダコタが魔剣デュエルヴァーミリオンを力強く振り抜くと、ウロボロスアクスは勢いに押され、弾かれて飛ばされてしまう。
「ハッ! 勝負あったな!」
剣先が目の前に突きつけられる。
ちょっとばかり油断していたみたいだ。さすが竜神ゴルゴーンを倒した大剣ってことはある。
「命乞いしたって認めねーぞッ! 誰も助けなんか来ねぇんだからな! 今ここでお前をぶっ殺す! んで、てめーの首をもぎ取って、セシリアに俺の方が強いってことを認めさせてやる!」
「セシリア?」
急に、まったく考えもしなかった人物の名前を出されて思わず声を上げてしまう。
「どうして、セシリアに強いって認めさせる必要があるの?」
「……ククッ、時間稼ぎのつもりかぁ? まぁいいだろう! どうせてめーは今ここで死ぬわけだからな! 教えてやるよ。あいつはな、またてめーとパーティー組みたがってんだよ。どうだ? 好きだった女にもう一度そんな風に思われてよ。涙が出るほど嬉しいだろぉ?」
「なんで?」
「……ッ、あん……?」
「なんで、僕が嬉しがると思ったの? ていうか、めちゃくちゃ迷惑だし。僕はあの人ともう一度パーティーを組むつもりなんてないけど」
「な、なにぃ……?」
「正直、君たちの関係がどうなろうが知ったことじゃないし。どうでもいいことに、僕を巻き込まないでくれるかな」
「てめー自分がどういう状況にあるか、分かってねーみてぇだな、ああんッ!? セシリアもやっぱりバカだぜ。こんなヤツとまた組もうだなんてな! ハッ、いいだろう! そんなに死に急ぎてぇなら、もう止めねぇ……」
その時。
ダコタの目がスッと据わるのが分かった。
そして、にやりと口元を曲げると、魔剣デュエルヴァーミリオンを高く振り上げ、それを思いっきり振り下ろす。
「死ねええぇぇッ! 寄生虫ッーーー!」
鋭利な刃が夜を斬り、爆ぜた閃光が僕に直撃する。
避けるヒマすらなかった。
シュパァァァァァァンーーーーッ!!
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「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」
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