迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ

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3章

第11話

 コンコン、コンコン。

 翌朝。
 ノックの音とともにゼノは目覚めた。

「……っ、いてぇ……」
 
 あの後、ゼノはなんだか後ろめたさがあって椅子に座ったまま寝てしまっていた。
 どうやら寝違えてしまったらしい。

 コンコン、コンコン!

「……あぁ、はいはい……出ますよ……」

 寝ぼけ眼を擦りながら、ゼノはドアを開けた。

「ゼノ様! 大変なんですっ!」

 すると、焦った様子でモニカが部屋に飛び込んで来る。

「ん……どうした? またアーシャが起きてこないのか?」

「いえ、その逆です! アーシャさんがもう起きてるんですよぉ~!」

「……アーシャが?」

 ゼノは、それを聞いてようやく目を覚ました。
 昨夜、アーシャと深い話をしていたことに気付いたのだ。

 少しだけ気まずいものを感じる。

「しかもですよ!? それだけじゃなくて、朝食も作ってるんですっ! こんなこと今までなかったのに……」

「……」

「ゼノ様?」

「え? ああ……うん。俺もすぐに着替えて食堂に顔出すよ」

「は、はいっ! 先に行ってお待ちしてますねっ……!」

(……昨日のこと、もう一度ちゃんと謝らないとだよな)

 そんなことを考えながら、ゼノはドアを閉めるのだった。



 ◆



 食堂へ行くと、そこには朝食を用意するアーシャの姿があった。
 ゼノは、これまでのように普通に声をかける。

「おはよう」

「! ゼ、ゼノか……。お、おはよ……」

 だが、アーシャの反応は、これまでと比べてどこかぎこちない。

「アーシャ、昨晩は……その本当に悪かった」

「な……なにがだよ? アタシは何も気にしてねーぜ?」

「いや、でも……」

「今日で、あんたたちとパーティーを組むのも終わりなんだ。最後までよろしくなっ!」

 さらっと口にすると、アーシャはゼノを避けるようにモニカに声をかける。

「モニカぁー! こっちの皿、運ぶの手伝ってくれ~!」

「あ、はいっ!」

「ほら、ゼノも席着けよ。アタシがせっかく作ったんだ。ちゃんと食べてくれ。めちゃくちゃ美味いぜ?」

「あぁ……ありがとう」



 アーシャに促される形でそのままテーブルにつくと、3人で初めて一緒に食事を取ることに。

 意外なことに、アーシャには料理の才能があった。
 出された朝食は彼女が言うように本当に美味しく、魔法で用意した料理とは比較にならないくらい素晴らしかった。

「んふぅ~~♪ アーシャさん、料理が得意なら得意って言ってくださいよぉ~! 見直しちゃったじゃないですかぁー」

「見直すのが遅せーんだ、アホピンクは」

「んふふっ♪ こんな美味しい料理を提供してもらえるなら、その悪口も全然気になりません~♡ んぅぅ~~しあわしぇ……♪」

 モニカが幸せそうに頬張っている横で、ゼノもそれに同意した。

「うん。本当に美味しいよ。すごいな、アーシャは」

 ゼノがそう言うと、アーシャは突然、頬を赤らめて顔を逸らした。

「そ……そっか。よかったぜ……」 

「でもでも。アーシャさんは、どうしてこんなに料理がお上手なんですか~?」

「え? あ、それは……ワイアットに教えてもらったから」

「あの人って料理できたんですか!?」

「料理だけじゃないぜ。術式についても、ワイアットにびっちりと仕込まれたぜ。あいつは、いわばアタシの師匠ってとこだな」

「へぇ~。そぉーいえば、ゼノ様にもお師匠様がいるんですよねぇー? 嫉妬しちゃうくらい大好きな魔女さんっ♪」

「まあな」

「ちょっと、ゼノ様ー? わたしは皮肉で言ったんですけどぉー!?」

「そうなのか? けど、事実だし」

「あのぉ……もうちょっと躊躇してくれてもいいじゃないですかぁ~。わたし、好きってお伝えしましたよね? 乙女心も複雑なんですよ?」

「ちゃんと断ったと思うんだが」

「それでもめげずに、ワンチャン狙うのがわたしなんです!」

「いや、ワンチャン狙うなよ……」

 そんな風に自然と会話する2人の姿を見ながら、アーシャは内心ドキッとしていた。

「(今、こいつ……好きって伝えたって言ったよな!?)」

 サラッと口にしたモニカの言葉が、アーシャの頭の中でリフレインされる。

「(てか、モニカのヤツ! もうゼノに告白済みなのかよっ!? どうしよう……)」

 目を白黒とさせるアーシャの表情を見て、モニカは何か気付いたようだ。

「でも、今日のアーシャさん。なんかちょっとおかしくないですか?」

「な、なにがだよ……?」

「だって、朝もちゃんと起きてましたし、こんな美味しい朝食を作っちゃいますし……。それに、今日は普段に比べて大人しいっていうか」

「ア……アタシにだってな! テンションの低い日だってあるんだぜっ? ほら、いーから早く食べろって。出発が遅れたくないんだろ?」

「あ、そうでした。はーい♪」

「ゼノも……ちゃんと食ってくれよな。アタシはもう食べ終わったから、先に庭に出て〈斧術〉の朝練してくるぜっ……!」

「あ……」

 ゼノが何か声をかける間もなく、アーシャはばたばたと足音を鳴らして、食堂から出て行ってしまう。

 結局、この時間のうちに、ゼノはアーシャと距離を詰めることは叶わなかった。



 ◆



 朝食を終えて準備を整えた3人は、その後すぐに、南のダンジョン・ダンタリオン落園へと向かう。

 ゼノは以前、地図作成のためのダンジョン調査というクエストを受注した際に、一度ダンタリオン落園の内部に入ったことがあった。
 そのため、ほかの2人よりは、このダンジョンがどういう構造をしているのかを理解していた。

 大きな平原を歩きながら、ゼノはこの時間を利用して、モニカとアーシャに、ダンタリオン落園の構造について説明する。

 ダンジョン内はいくつもの落とし穴が存在し、それに足を取られてしまうと、ボス魔獣のいる最下層まで一気に落下することになる。
 最下層は沼地となっており、動けば動くほど沼地から抜け出せなくなってしまうのだ。

 この罠に引っかかった冒険者は、沼地で待ち構えているボス魔獣ドレッドグレンデルの餌食となってしまう。

 ドレッドグレンデルは、沼地に潜む巨人と揶揄され、その姿を正確に把握した冒険者はいないと言われている。
 沼地のどこから出現するかも定かではないため、まずは落ちないことが絶対条件と言えた。

「……では、どうやって倒せばいいんでしょうか?」

「うん。最下層まで降りたら、その岩場を利用して、俺が遠距離から沼地に向けて攻撃魔法を撃ち込むよ」

 出発前に緑クリスタルを使って召喚したガチャで、ゼノは攻撃魔法をいくつか入手していた。
 ちなみに、現在のステータスはこんな感じだ。

----------

【ゼノ・ウィンザー】
[Lv]53
[魔力値]0 [術値]0
[力]24 [守]14
[魔攻]405 [速]19 
[スキル]〔魔導ガチャ〕
[魔石コンプ率]141/666
[所持魔石]
☆2《リュート》 ☆2《爆音》
☆2《若返り》 ☆2《タクティクス》
☆2《温度調整》 ☆2《窒息》
☆2《魔法防御ダウン》 ☆2《魔弾》
☆2《クリーニング》 ☆2《テレパシー》
☆2《跳躍》 ☆2《パワーブレイク》
☆2《怒号の火球マグマボール》 ☆2《風獄の拡散ラースツイスト
☆3《レプリカ》 ☆3《朧蝶の毒ポイズンスプラッシュ
☆3《閻魔の電鎖釼ライトニングシュート》 ☆3《絶天の無穹キングブリザード
[所持クリスタル]
青クリスタル×34
緑クリスタル×3
[Ωカウンター]011.2%

----------

 勝てる目処は立ったとはいえ、決して油断はできない。
 ドレッドグレンデルは、これまで戦ってきたボス魔獣の中で間違いなく最強だからだ。

 だからこそ、慎重にダンジョン内を進む必要があった。
 
「落とし穴を見分けるのは簡単だ。その場所は窪んでいることが多いから。窪んでいる箇所は踏まないように注意して進もう」

「はい、分かりました。気をつけます!」

 そう元気に答えるモニカとは対照的に、「おう……」とアーシャは気のない返事をする。
 
 心ここにあらずといった様子で歩く彼女の姿を見て、やはりモニカは気になったようだ。 
 小声でゼノに話しかけてくる。

「あのぉ、ゼノ様。アーシャさんの様子、今朝からやっぱり変ですよね?」

「ああ……。俺も気になってるんだが」

 そう言いながら、ゼノがチラッとアーシャの方を見ると――。

「!」

 視線に気付いた彼女は、すぐに顔を背けてしまう。
 あからさまなその態度に、何かモニカは勘づいたようだ。

「……ゼノ様。ひょっとして、アーシャさんに何かしました?」

「へっ!?」

「なんかアーシャさん。ゼノ様を避けるみたいに、視線を逸らしたように見えたので」

「そ、そうかなぁ? たまたまじゃないか……?」

 そうトボけつつも、ゼノは内心そのことに気付いていた。

(はぁ……。やっぱり完全に避けられてるよなぁ……)

 少しだけ気分が落ち込みつつ、ゼノは2人と共にダンタリオン落園を目指して、平原を歩き続けるのだった。
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