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蒔いた種を刈り取る
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今日は、1日だから、朝イチで会議だぁ~。
イヤだなぁ、会議。寝ちゃいそうだよ。
別に寝不足ってことでもないんだけど、つまんないんだもん。
会議してるヒマがあったら、見積書を作ってた方が良いに
決まってるじゃん。でも、イライラしないよ。
朝なんだし、今日も一日、平和に楽しく過ごすんだからね!
今朝も座れて良かった。
前は、全然、座れなかったのに、気持ちが変わるだけで、
状況が変わるなんて、ホント、不思議だよね。
はぁ~、会社に着いたけど、人がほとんどいない。
そうだよね。みんな、席に荷物置いたら、会議室に向かうもんね。
私も前の方の席になったらイヤだから、会議室に行こうかな。
へぇ~、みんな考えることは同じだよね。
後ろの方から席が塞がってる(笑)
とりあえず、私は、真ん中より後ろで、前に人が居る席が良いかな。
うん、ここなら、前からも見えにくいし、ここにしよっと♪
「キンコーン、カンコーン」
始業のチャイムが鳴ったと思ったら、すぐに始まる。
この会議の時だけ、時間通りなんだよね。
ま、局員全員が集まる月に一度の会議だから
緊張感が違うんだろうね。局長もいるし。
あ~、たるい。先月の売上高とか、今月の目標売上高とか、
会社としては、必要なのかもしれないけど、
こっちは、自分の出来ることをやるしかないからね。
もう、ほとんど聞いてないや(苦笑)
おっ、今月は人事異動があるんだ♪
私は内示されてないから、該当者じゃないけど、
誰が異動になるんだろう?
局長が言うってことは、もしかして退社?
「え~、今月いっぱいで退社する方が2名いらっしゃいます。
三橋部長と高梨くんです。
じゃ、三橋部長から、ご挨拶をお願いします」
え~っ、ウソでしょ!?ヤバッ、声が出ちゃうところだった(汗)
それにしても、部長と高梨がセットで居なくなるなんて!
いったい、どういうこと!?あっ、二人の挨拶、終わっちゃった。
ビックリし過ぎて、何も聞いてなかった(苦笑)
「それでは、これで、今月の局会は終了です。お疲れさまでした」
終わったと同時にみんな席を立つから、一気にざわつく。
私も早く席に戻りたいんだけど、周りが一気に立ち上がるから、
机とか、椅子が邪魔して、立ち上がれない。
少し待とう。それに、まだショック受けてるし。
ようやく、落ち着いて、席を立って、
自分の席に向かおうとした時、局長から声をかけられた。
「久遠さん」
「あっ、はい。おはようございます」
「おはようございます。久遠さん、頑張ってくれているみたいだね。
評判は聞いているよ。いつもありがとう」
「いいえ、とんでもない!自分の仕事をしているだけですから」
「今回の退社、二人とも久遠さんの部署からだよね」
「はい、そうですね。驚きました」
「何も聞いてなかったか・・・。
部長は、来月1日に間に合うように探しているけど、
高梨くんの分に関しては、来月1日には間に合わないかもしれないんだよ。
でも、高梨くんの分は、大丈夫だよね?
元々、彼、仕事してなかったんでしょ?」
「いや、その・・・」
「あっ、三橋部長も仕事してなかったか(笑)」
「・・・」
「あっ、ごめん、ごめん、返答に困っちゃうよね」
「いいえ、大丈夫です。高梨くんの分は、急ぎませんけど、
ずっと一人欠員というのは、さすがに困るので、補充はお願いします」
「もちろん、欠員のままにはしないよ。ちゃんと探しているから」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「じゃ、これからもチーフとして、頑張って。
今度の部長は、ちゃんと仕事する人だし、
高梨くんの補充も真面目なのを考えているから安心してて」
「はい」
なになに?局長に声を掛けられたのなんて、初めてなんですけど!
でも、局長、私があの二人を嫌がってるって、気づいてたのかな?
っていうか、私だけじゃなくて、みんな嫌がってたもんね。
でも・・・部長と高梨がいなくなることは、大歓迎なんだけど、
いきなりっていうのは、やっぱりショックだよ!
それにしても、どうして退社なんだろう?
しかも、全く情報がなかったことが不思議すぎる。
会議室から出て来た人が何やらコソコソ話してるねぇ。
さりげなく近寄って、っと。お行儀悪いけど、立ち聞きしちゃおう。
「三橋部長、早期退職者リストの筆頭だったらしいぜ」
「だろうな。だって、全然、仕事してなかったじゃん。
それなのに、いっつも怒鳴り倒して・・・。
あれじゃ、誰もついてこないだろ」
「だよなぁ。だから、高梨も部長のこと舐め切ってたんだろうな。
週末にフードデリバリーのバイトしてたんだってさ。
それがバレてクビだよ」
「まぁ、アイツも仕事してなかったしな。
生意気なだけで、あとは、何の取り柄もないしな。
あの部署の人、二人共、辞めてくれて、ありがとうって
感じなんじゃねえの(笑)」
そういうことだったんだ。全然、知らなかった。
それにしても、こういうことって起こるんだねぇ。
さて、来月から来る部長は、どんな人なんだろう?
局長は、「ちゃんと仕事する人」って言ってたけど・・・。
仕事もだけど、良い人だったら良いなぁ。
なんか、午前中は仕事が手につかないや。
部長と高梨を覗き見てみるけど、二人共、おとなしい。
もしかして、今日、言われたとか?
いやいや、いくらなんでも、それはないでしょう。
「久遠さん、今日のランチ、何か予定ありますか?」
なんか、イヤな予感。
「あっ、ごめん。ちょっと行きたいところがあるんだよね」
「そうですか・・・じゃ、また、ランチご一緒させてください」
「うん、ごめんね」
噂好きの派遣ちゃん。こういう日にランチに誘ってくるなんて、
絶対、部長と高梨の悪口でしょ。そういうことには乗りません。
だって、私の周波数が下がっちゃうじゃん!
さて、ランチ、どこに行こうかなぁ。
お誘いを断ったワケだし、今日は、ちょっと遠出しとこう。
その方が安全だから(苦笑)
で、何食べたい?何食べる?今日は軽めが良いのかな?
うん、分かった。サラダね。じゃ、カフェ・ランチにしよっか♪
カフェ・ランチならコーヒーも付いてるしね。
サラダに小さいパンが付いてて、セットのスープにコーヒー。
かなり軽めだったけど、今日は、これでお腹いっぱい。
なんでだろう?あんなにイヤだった部長と高梨が辞めるっていうのに、
手放しで喜べないや。変なの。
でも、今月だけだけど、毎日、電球は消し続けるからね!
午後も消灯確認からスタート。なんか、今日はやる気が出ない。
仕事が溜まってるワケでもないから、のんびり進めるか。
なんか、周りがざわついてる。そりゃ、そうだよね。
派遣ちゃん達は、局会に出てないし、正社員で、
高梨のチーフである私でさえ、退社の理由を知らなかったんだから、
気になるよね。私も立ち聞きしただけで、
本当のところは確認してないし。
ま、確認するつもりもないんだけど(苦笑)
でも、部長も高梨も席にいるんだから、少しは
遠慮してあげれば良いのに・・・。みんな、優しくないよね。
いくらイヤな思いをさせられたからといって、
傷口に塩を塗るようなことは、しない方が良いと思うんだよな。
だって、会社に勤めてる以上、いつ理不尽な解雇通告を
されないとも限らないからね。
おそらく、部長も高梨も今回の解雇は、理不尽だと
思ってるだろうし・・・。
二人共、分かってなさそうだからなぁ(苦笑)
ま、私には関係のないことだし、これ以上、考えるのは、
時間と労力の無駄。仕事しよっと。
なんか、考えないようにしようって思いながらも、
別に部長と高梨のことを考えてたワケじゃないけど、
いまひとつ仕事に身が入らないまま終業時間になっちゃった。
こんな日は、残業しないに限るね。
って、ここのところ、残業してないけどね(笑)
終業チャイムも鳴ったことだし、帰ろう。
「お先に失礼しま~す!」
「あっ、久遠さん、今日って予定ありますか?」
ランチ、誘ってきた子だ。もう、私を引き込まないでよ!
普段、仲良くしてるワケじゃないんだし。
社員から話を聞きたいだけなんでしょ!
「うん、今日は学生時代の友達と会う約束してるんだよね」
「あ、そうですか・・・。
じゃ、仕方ないですね。お疲れさまでした」
「お疲れさま」
一応、笑顔で挨拶はしたけど、私じゃなくて、他の人に聞きなさいよ!
きっと、他の社員からも断られて、私のところに来たんだろうな。
あの子、仕事はそこそこするんだけど、噂好きだって、
みんなが知ってるからね。困ったもんだ。
それにしても・・・ランチの時といい、今といい、
すんなりウソの予定が口から飛び出してくれて、本当に感謝だよ、私♪
さて、今夜は、何を食べましょうか?お昼が軽めだったけど、
お腹は、あんまり空いてないね。
どうする?ん?オムライスが食べたいと!了解です。
う~んと、オムライスにサラダとスープで、どうだ!
あっ、喜んでくれてるね。良かった。
じゃ、オムライスとサラダは作るとして、
スープは、ビーフコンソメを買ってもよろしいでしょうか?
OKが出た!ビーフコンソメスープ、美味しいもんね。
クルトンも入ってるし♪
私が作るオムライスは、チキンライスじゃないんだよね。
缶詰のコーンを入れたバターライスなの。ケチャップが苦手で(苦笑)
だから、家の冷蔵庫にケチャップが入ってたことはありません(笑)
たまに友達が遊びに来るとブーイングがすごいけど(苦笑)
でも、ここは私の家だから、文句は言わせませんよ(笑)
オムライスとサラダを作って、買って来たビーフコンソメスープを添えて、
充実の夕食が済んだ。
今夜のお風呂は、お湯を溜めよう。身体の芯からあっためたい気分だから。
お湯に浸かりながら考える。
今回の二人の退社も私と関係があるのかなぁ?アトランティーナに聞いてみよう。
なんかね、全然、関係ないってことはないような気がするんだよね。
私、何にもしてないけど。
お風呂から出たら、部屋のチャイムが鳴った。
『あっ、石のベッドだ!めっちゃ早い!!』
お風呂上がり用のワンピ着てて良かったぁ(汗)
玄関まで、大した距離じゃないけど、ほぼダッシュして、ドアを開けた。
「大丈夫ですか?そんなに急がなくても大丈夫ですよ」
「あっ、すみません。大丈夫です」
「じゃ、こちらです」
「ありがとうございます!」
私がドタバタしてたの、聞かれちゃったみたいだね。
ちょっと恥ずかしいかも(汗)
それにしても、やっぱり重たいなぁ。
まぁ、石の塊みたいなもんだもんね(笑)
どんな感じだろう。ワクワクしちゃう♡
箱を開けるのが楽しみ。
子供の頃、クリスマス・プレゼントを開ける時みたいだ。
私、誕生日よりクリスマスの方がワクワクしたんだよね(苦笑)
理由は、分かんないけど。
うわぁ!こっちの小さいのがアーカンソー産だね。
めっちゃキラキラしてる!これでブレスレットがあったら、欲しいなぁ。
あっ、こっちのがヒマラヤ産だね。
あれっ、ネットの写真で見た時には気がつかなかったけど、
ほんのりピンクがかってるかも!?なんか、可愛い♪
どっちも正解だった気がする。
今夜、アトランティーナに紹介するんだ♪石のベッドにするのは、その後だね。
石のベッドが届いたりして、ちょっとバタついちゃったけど、
ちゃんと10時前にはベッドに入れる。
以前は、午前0時を過ぎることがほとんどだったけど、
今では、ちゃんと10時前にはベッドに入れるから、
自分のことなんだけどスゴイなって思う。
習慣って、なかなか変わらないものじゃない?
でも、何かが変わると自然と習慣も変わっていくのかもね。
もちろん、その逆もあるとは思うんだけど。
ベッドに入って深呼吸。身体をチェックして・・・
う~ん、まだ力が抜け切れてないね。
「ふぅ~」息をゆっくり吐く。息を吐いて、身体の力が抜けていく時、
なんか、膨らんだ風船が萎んでいくような感じがするんだよね(笑)
私は、膨らんだ風船かって、自分で突っ込んじゃうけど(苦笑)
はぁ~、ようやくリラックスしてきた。「ふわぁ~」あくびが出てきたね。
そろそろ、アトランティーナ・モードに入れるかな・・・。
「ミウ」
「あっ、アトランティーナ!
今夜も会えて嬉しい♪あのね、すっごいことが起こったの!」
「すっごいことって何が起こったの?」
「今月いっぱいで、部長と高梨が会社を辞めることになったの!」
「それは、良かったじゃない!おめでとう♪」
「それがね、部長は早期退職者リストの筆頭だったらしくてリストラで、
高梨は、週末にフードデリバリーのバイトをしていたのが
会社にバレて解雇なんだって。」
「だから何?辞めて欲しくないの?」
「そうじゃないけど、二人共、自主退社じゃなくて、解雇だから・・・」
「だから?」
「解雇されるって、ショックだろうなって思ったら、
なんか、喜べなくて・・・」
「ミウは、本当に優しいわね」
「そんなんじゃないよ!だって、もし、自分だったらって考えたら、
喜んじゃいけないような気がしたの」
「そう。でも、よく考えてみて。
部長も高梨くんも自分で蒔いた種を刈り取っただけでしょ?
そうは思わない?」
「えっ、どういうこと?」
「部長は、仕事もしないで、ゲームばっかりやってたのよね?
でも、部下がちょっとした失敗をしただけで、怒鳴り散らしてた。違う?」
「違わない。その通り」
「会社に勤めるということは、その会社で与えられた仕事をする
っていうことよね?部長ということは、部下の手本になるっていうことだし、
部下を育てる立場にあるということでもあるわよね?
部長は、そのどれも成し遂げていなかったんじゃない?
成し遂げるどころか、むしろ、その逆だったんじゃないかしら?」
「そうだね」
「そうしたら、会社にとっては、不要な人材ということにならない?
だって、雇っていたら、お給料を払わなければいけないでしょ?
全く、仕事をしない人にお給料を払うなんて、経費の無駄になるものね。
辞めて頂こうってことになっても仕方がないんじゃない?
つまり、仕事をしないでゲームをする、
部下に対して、部長としての役割を果たさなかった、
という2種類の種を蒔いたから、その蒔いた種に見合った実を収穫した、
ただ、それだけのこと。」
「なるほどね」
「高梨くんもそう。会社では仕事をしないで、
会社で禁止されているバイトをしていたら、会社としては、
じゃ、会社は辞めて、バイトだけにしたら?ということになるわよね?
だって、仕事をしない人にお給料を支払う必要はないんだから。違う?」
「その通りだね」
「確かにミウの言う通り、本人達はショックだと思うの。
でも、会社に対して、何をしたのかってことを考えると
ショックを受ける方がおかしいということになるのよ。
【全ては自分の責任】なんだから」
「あっ、そうだよね!なんか、自分に悪いことが降りかかると
【全ては自分の責任】って分かるんだけど、
人に悪いことが降りかかると同情の方が先で、
【全ては自分の責任】ってこと、忘れちゃうみたい」
「それはね、きっと、まだミウの中に『良い人だと思われたい』
という気持ちがあるからだと思うわ。
つまり、自分の評価を他の人に委ねてしまっているってこと」
「えっ、だって、評価って他の人がするもんじゃないの?」
「違う。確かにミウが経験してきた学校や会社は、
ミウの評価を先生や上司がしてきたかもしれない。
でも、思い出してみて。
同じことをしても、人が変わるだけで、評価も変わったりしなかった?」
「あ~、確かに」
「それじゃ、何が良くて、何が良くないのか、分からないじゃない。
だから、本来、評価というものは、自分でするものなの」
「なんか、難しいね」
「少しも難しくないわよ!
それに、人に評価を委ねていると、その時々で価値観を変える必要が生じて、
本当のミウを見失ってしまうことになるの。
ミウの中に居る小さなミウが置き去りになってしまうことにもなるのよ。
ミウの中に居る小さなミウは、ミウ自身に褒めてもらいたいのね。
他の誰かに褒めてもらっても嬉しくないの。
ミウも他の誰かに喜んでもらうより、ミウの中に居る小さなミウに
喜んでもらった方が嬉しいはずよ」
「確かに!私の中に居る小さな私が喜んでくれた時、
今まで感じたことがないくらい、めっちゃ嬉しかったもん!」
「でしょ?それに、自分で自分を評価するには、
自分に対する絶対的な信頼も必要になってくるの。
自分を信じることの大切さ、強さは、今のミウなら分かるわよね?」
「うん、ルシフェールの攻撃を受けた時、
確かに私は、私のことを信じていたと思う」
「もし、あの時、ミウが自分のことを信じ切れていなかったら、
おそらく、ルシフェールが仕掛けた怒りの流れに
流されてしまっていたでしょうね。
だから、人の意見に耳を傾けることは大切だけど、
決めるのは、いつも自分。誰かの目を気にする必要はないのよ。
でもね、ミウ、今日のミウは、それが出来ていたところもあるのよ。
ランチと夜の誘いを断ったでしょ?
あれは、自分にとってプラスにならないと思ったから、断ったんでしょ?」
「うん、そう!だって、どうせ部長と高梨がなんで辞めることになったのかとか、
部長がどうだとか、高梨がどうだとかって悪口大会になるのは、
目に見えてたから、そんなことしたら、私の周波数が低くなって、
また、イヤなことに遭遇することになるって思ったから断ったの」
「ほら、分かってるじゃない!
あの時は、『断ったらイヤな人だって思われるんじゃないかな』
とは思わなかったんでしょ?」
「思わなかった。っていうか、
あの子にイヤな人だって思われても良いって思ったもん」
「それで良いのよ。誰かに良い人だって思われたくて何かをしても、
それは決してミウのためにはならないの。
ミウが『こうしたい!』って思うことだけをすれば良いし、
『これが言いたい!』っていうことだけを言えば良い。
それをイヤだと思う人も居れば、いいなと思う人も居る。
それは、それぞれの自由だから、ミウはどうすることも出来ないのよ」
「そうだね。部長と高梨がクビになるのは私のせいじゃないんだし、
私は、素直に喜んでも良いんだね」
「喜んで良いっていうより、教訓にして欲しいかな(苦笑)
でも、今日、職場がざわついている時、部長と高梨くんが居るんだから、
少し遠慮してあげれば良いのにって思ったのは、良いと思うの。
この違い、分かってもらえるかしら」
「うん、なんとなくだけど、分かる気がする。
自分も他の人も大切にすることが愛なんだよね?
でも、同情は、相手を大切にすることじゃなくて、
自己満足っていうか、エゴなのかな?って思う。
だから、同情は愛じゃないんだよね」
「そう、その通りよ!
ミウは、いつも私が言いたいことを分かりやすくまとめてくれるから、
本当、助かるわ」
「えへっ、それほどでも(笑)
あとね、ちょっと気になったんだけど、
二人の退社に私は関係あるのかな?」
「そうね・・・無関係とは言えないわね」
「やっぱり!ねぇ、どんな関係があるの?」
「先週の金曜日、朝の挨拶をした時、
初めて喜ばれたって言ってたわよね?」
「うん、ビックリしたけど、めっちゃ嬉しかった」
「ミウが部長と高梨くんのことを気にしなくなって、
仕事に集中できるようになったって、言ってたでしょ?
おそらく、ミウの身体の周りを取り囲んでいるエネルギー体が
変化したんだと思うの。
エネルギー体は、ほとんどの人は目で見ることが出来ないけど、
感じることは出来るのね。だから、みんな、何も言わないけど、
あなたの変化を感じ取っていたのだと思うの。
それで、無意識のうちに、ミウに倣うようになっていったのね。
どう?最近の職場の雰囲気、何か変わったんじゃない?」
「そうだね。部長と高梨のことが気にならなくなったら、
他の人にイライラするかなって思ってたけど、
全然、そんなことなくて、仕事がしやすい環境になったかも。
もちろん、今日の派遣ちゃんとかは、ちょっとイラつくけど、
こちらに影響を及ぼすほどじゃないしね。割と平和かもしれないね」
「それは、ミウの変化が周りに影響を及ぼしたということになるわね。
みんな、人のことを気にするよりも自分の仕事に集中した方が、
精神衛生上にも良いし、仕事の効率も上がるということに、
ミウを通して、気がついたということよ。
エネルギー体、つまり、オーラは、感情によって変わる
という話をしたでしょ?オーラを目で見ることが出来る人は、
ほとんどいないけど、誰もが感じることは出来るの。
ミウの感情面が大きく変わったという自覚はある?」
「それはある!だって、あんなに毎日、イライラしてたのが、
今は、全くイライラしてないもん。
たぶんだけど、他の人に対してもイライラしながら接していたと思う。
何もしてないのに、イライラした対応されたら、誰だってイヤだもんね。
あの頃は気づかなかったけど、今なら、それが分かるの。反省してるよ」
「変わらなければ分からないことがあるということに気づけて良かったわね。
おそらく、周りの人は、言わないけど、驚いているはずよ。
あんなにイライラしたミウが、最近は穏やかに接してくるわけじゃない?
『何があったんだろう?』って不思議に思いながらも、
ミウの変化に喜んでいると思うの。
周りに居る人たちは、ミウの鏡だって話したわよね?
それはミウだけじゃなくて、他の人もそうなの。
だから、ミウが穏やかに人と接すると自然と
相手も穏やかになっていくのね。
つまり、ミウから穏やかさの波が職場に広がったということ。
職場の雰囲気が変わった、つまり、職場の周波数が変わったということ。
だから、その周波数に合わない人は排除されることになる。
部長と高梨くんも変化に気づいていたと思うの。
でも、人が変わるのって、大変なことでしょ?
なんとなく、流されていた方が楽だものね。
それは、ミウも分かるわよね?」
「うん、流されないように踏ん張るのって、
かなり心の力が必要だと思う」
「そうね、何か信念がないと難しいわよね。
だから、変化に気がつきながらも何も対処をしなかったから、
部長と高梨くんは、他の人との差が開き過ぎてしまったの。
結果として、それまでは、目立たなかったことが、
目立つようになってしまって、解雇という結果に
繋がったということよ。
変化に対応しなかったという種を蒔いたから、
その場に居続けることが出来ないという実を刈り取った。
さっきも言ったように、自分で蒔いた種を自分で刈り取った、
ただ、それだけのこと。
ミウのせいではないかもしれないけど、
職場の環境を変えたという点において、
ミウが無関係とは言えないということね。
いずれにしても、<ピンチはチャンス>という言葉があるでしょ?
部長と高梨君は、人生をより良くするためのチャンスを逃してしまったのよ。
でもね、今回の解雇もチャンスであることに間違いはないの。
このチャンスをどう活かすのかは、本人たち次第なんだけどね。
その前に、この解雇がチャンスだってことに気づいていれば良いんだけど・・・」
<次回へ続く>
イヤだなぁ、会議。寝ちゃいそうだよ。
別に寝不足ってことでもないんだけど、つまんないんだもん。
会議してるヒマがあったら、見積書を作ってた方が良いに
決まってるじゃん。でも、イライラしないよ。
朝なんだし、今日も一日、平和に楽しく過ごすんだからね!
今朝も座れて良かった。
前は、全然、座れなかったのに、気持ちが変わるだけで、
状況が変わるなんて、ホント、不思議だよね。
はぁ~、会社に着いたけど、人がほとんどいない。
そうだよね。みんな、席に荷物置いたら、会議室に向かうもんね。
私も前の方の席になったらイヤだから、会議室に行こうかな。
へぇ~、みんな考えることは同じだよね。
後ろの方から席が塞がってる(笑)
とりあえず、私は、真ん中より後ろで、前に人が居る席が良いかな。
うん、ここなら、前からも見えにくいし、ここにしよっと♪
「キンコーン、カンコーン」
始業のチャイムが鳴ったと思ったら、すぐに始まる。
この会議の時だけ、時間通りなんだよね。
ま、局員全員が集まる月に一度の会議だから
緊張感が違うんだろうね。局長もいるし。
あ~、たるい。先月の売上高とか、今月の目標売上高とか、
会社としては、必要なのかもしれないけど、
こっちは、自分の出来ることをやるしかないからね。
もう、ほとんど聞いてないや(苦笑)
おっ、今月は人事異動があるんだ♪
私は内示されてないから、該当者じゃないけど、
誰が異動になるんだろう?
局長が言うってことは、もしかして退社?
「え~、今月いっぱいで退社する方が2名いらっしゃいます。
三橋部長と高梨くんです。
じゃ、三橋部長から、ご挨拶をお願いします」
え~っ、ウソでしょ!?ヤバッ、声が出ちゃうところだった(汗)
それにしても、部長と高梨がセットで居なくなるなんて!
いったい、どういうこと!?あっ、二人の挨拶、終わっちゃった。
ビックリし過ぎて、何も聞いてなかった(苦笑)
「それでは、これで、今月の局会は終了です。お疲れさまでした」
終わったと同時にみんな席を立つから、一気にざわつく。
私も早く席に戻りたいんだけど、周りが一気に立ち上がるから、
机とか、椅子が邪魔して、立ち上がれない。
少し待とう。それに、まだショック受けてるし。
ようやく、落ち着いて、席を立って、
自分の席に向かおうとした時、局長から声をかけられた。
「久遠さん」
「あっ、はい。おはようございます」
「おはようございます。久遠さん、頑張ってくれているみたいだね。
評判は聞いているよ。いつもありがとう」
「いいえ、とんでもない!自分の仕事をしているだけですから」
「今回の退社、二人とも久遠さんの部署からだよね」
「はい、そうですね。驚きました」
「何も聞いてなかったか・・・。
部長は、来月1日に間に合うように探しているけど、
高梨くんの分に関しては、来月1日には間に合わないかもしれないんだよ。
でも、高梨くんの分は、大丈夫だよね?
元々、彼、仕事してなかったんでしょ?」
「いや、その・・・」
「あっ、三橋部長も仕事してなかったか(笑)」
「・・・」
「あっ、ごめん、ごめん、返答に困っちゃうよね」
「いいえ、大丈夫です。高梨くんの分は、急ぎませんけど、
ずっと一人欠員というのは、さすがに困るので、補充はお願いします」
「もちろん、欠員のままにはしないよ。ちゃんと探しているから」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「じゃ、これからもチーフとして、頑張って。
今度の部長は、ちゃんと仕事する人だし、
高梨くんの補充も真面目なのを考えているから安心してて」
「はい」
なになに?局長に声を掛けられたのなんて、初めてなんですけど!
でも、局長、私があの二人を嫌がってるって、気づいてたのかな?
っていうか、私だけじゃなくて、みんな嫌がってたもんね。
でも・・・部長と高梨がいなくなることは、大歓迎なんだけど、
いきなりっていうのは、やっぱりショックだよ!
それにしても、どうして退社なんだろう?
しかも、全く情報がなかったことが不思議すぎる。
会議室から出て来た人が何やらコソコソ話してるねぇ。
さりげなく近寄って、っと。お行儀悪いけど、立ち聞きしちゃおう。
「三橋部長、早期退職者リストの筆頭だったらしいぜ」
「だろうな。だって、全然、仕事してなかったじゃん。
それなのに、いっつも怒鳴り倒して・・・。
あれじゃ、誰もついてこないだろ」
「だよなぁ。だから、高梨も部長のこと舐め切ってたんだろうな。
週末にフードデリバリーのバイトしてたんだってさ。
それがバレてクビだよ」
「まぁ、アイツも仕事してなかったしな。
生意気なだけで、あとは、何の取り柄もないしな。
あの部署の人、二人共、辞めてくれて、ありがとうって
感じなんじゃねえの(笑)」
そういうことだったんだ。全然、知らなかった。
それにしても、こういうことって起こるんだねぇ。
さて、来月から来る部長は、どんな人なんだろう?
局長は、「ちゃんと仕事する人」って言ってたけど・・・。
仕事もだけど、良い人だったら良いなぁ。
なんか、午前中は仕事が手につかないや。
部長と高梨を覗き見てみるけど、二人共、おとなしい。
もしかして、今日、言われたとか?
いやいや、いくらなんでも、それはないでしょう。
「久遠さん、今日のランチ、何か予定ありますか?」
なんか、イヤな予感。
「あっ、ごめん。ちょっと行きたいところがあるんだよね」
「そうですか・・・じゃ、また、ランチご一緒させてください」
「うん、ごめんね」
噂好きの派遣ちゃん。こういう日にランチに誘ってくるなんて、
絶対、部長と高梨の悪口でしょ。そういうことには乗りません。
だって、私の周波数が下がっちゃうじゃん!
さて、ランチ、どこに行こうかなぁ。
お誘いを断ったワケだし、今日は、ちょっと遠出しとこう。
その方が安全だから(苦笑)
で、何食べたい?何食べる?今日は軽めが良いのかな?
うん、分かった。サラダね。じゃ、カフェ・ランチにしよっか♪
カフェ・ランチならコーヒーも付いてるしね。
サラダに小さいパンが付いてて、セットのスープにコーヒー。
かなり軽めだったけど、今日は、これでお腹いっぱい。
なんでだろう?あんなにイヤだった部長と高梨が辞めるっていうのに、
手放しで喜べないや。変なの。
でも、今月だけだけど、毎日、電球は消し続けるからね!
午後も消灯確認からスタート。なんか、今日はやる気が出ない。
仕事が溜まってるワケでもないから、のんびり進めるか。
なんか、周りがざわついてる。そりゃ、そうだよね。
派遣ちゃん達は、局会に出てないし、正社員で、
高梨のチーフである私でさえ、退社の理由を知らなかったんだから、
気になるよね。私も立ち聞きしただけで、
本当のところは確認してないし。
ま、確認するつもりもないんだけど(苦笑)
でも、部長も高梨も席にいるんだから、少しは
遠慮してあげれば良いのに・・・。みんな、優しくないよね。
いくらイヤな思いをさせられたからといって、
傷口に塩を塗るようなことは、しない方が良いと思うんだよな。
だって、会社に勤めてる以上、いつ理不尽な解雇通告を
されないとも限らないからね。
おそらく、部長も高梨も今回の解雇は、理不尽だと
思ってるだろうし・・・。
二人共、分かってなさそうだからなぁ(苦笑)
ま、私には関係のないことだし、これ以上、考えるのは、
時間と労力の無駄。仕事しよっと。
なんか、考えないようにしようって思いながらも、
別に部長と高梨のことを考えてたワケじゃないけど、
いまひとつ仕事に身が入らないまま終業時間になっちゃった。
こんな日は、残業しないに限るね。
って、ここのところ、残業してないけどね(笑)
終業チャイムも鳴ったことだし、帰ろう。
「お先に失礼しま~す!」
「あっ、久遠さん、今日って予定ありますか?」
ランチ、誘ってきた子だ。もう、私を引き込まないでよ!
普段、仲良くしてるワケじゃないんだし。
社員から話を聞きたいだけなんでしょ!
「うん、今日は学生時代の友達と会う約束してるんだよね」
「あ、そうですか・・・。
じゃ、仕方ないですね。お疲れさまでした」
「お疲れさま」
一応、笑顔で挨拶はしたけど、私じゃなくて、他の人に聞きなさいよ!
きっと、他の社員からも断られて、私のところに来たんだろうな。
あの子、仕事はそこそこするんだけど、噂好きだって、
みんなが知ってるからね。困ったもんだ。
それにしても・・・ランチの時といい、今といい、
すんなりウソの予定が口から飛び出してくれて、本当に感謝だよ、私♪
さて、今夜は、何を食べましょうか?お昼が軽めだったけど、
お腹は、あんまり空いてないね。
どうする?ん?オムライスが食べたいと!了解です。
う~んと、オムライスにサラダとスープで、どうだ!
あっ、喜んでくれてるね。良かった。
じゃ、オムライスとサラダは作るとして、
スープは、ビーフコンソメを買ってもよろしいでしょうか?
OKが出た!ビーフコンソメスープ、美味しいもんね。
クルトンも入ってるし♪
私が作るオムライスは、チキンライスじゃないんだよね。
缶詰のコーンを入れたバターライスなの。ケチャップが苦手で(苦笑)
だから、家の冷蔵庫にケチャップが入ってたことはありません(笑)
たまに友達が遊びに来るとブーイングがすごいけど(苦笑)
でも、ここは私の家だから、文句は言わせませんよ(笑)
オムライスとサラダを作って、買って来たビーフコンソメスープを添えて、
充実の夕食が済んだ。
今夜のお風呂は、お湯を溜めよう。身体の芯からあっためたい気分だから。
お湯に浸かりながら考える。
今回の二人の退社も私と関係があるのかなぁ?アトランティーナに聞いてみよう。
なんかね、全然、関係ないってことはないような気がするんだよね。
私、何にもしてないけど。
お風呂から出たら、部屋のチャイムが鳴った。
『あっ、石のベッドだ!めっちゃ早い!!』
お風呂上がり用のワンピ着てて良かったぁ(汗)
玄関まで、大した距離じゃないけど、ほぼダッシュして、ドアを開けた。
「大丈夫ですか?そんなに急がなくても大丈夫ですよ」
「あっ、すみません。大丈夫です」
「じゃ、こちらです」
「ありがとうございます!」
私がドタバタしてたの、聞かれちゃったみたいだね。
ちょっと恥ずかしいかも(汗)
それにしても、やっぱり重たいなぁ。
まぁ、石の塊みたいなもんだもんね(笑)
どんな感じだろう。ワクワクしちゃう♡
箱を開けるのが楽しみ。
子供の頃、クリスマス・プレゼントを開ける時みたいだ。
私、誕生日よりクリスマスの方がワクワクしたんだよね(苦笑)
理由は、分かんないけど。
うわぁ!こっちの小さいのがアーカンソー産だね。
めっちゃキラキラしてる!これでブレスレットがあったら、欲しいなぁ。
あっ、こっちのがヒマラヤ産だね。
あれっ、ネットの写真で見た時には気がつかなかったけど、
ほんのりピンクがかってるかも!?なんか、可愛い♪
どっちも正解だった気がする。
今夜、アトランティーナに紹介するんだ♪石のベッドにするのは、その後だね。
石のベッドが届いたりして、ちょっとバタついちゃったけど、
ちゃんと10時前にはベッドに入れる。
以前は、午前0時を過ぎることがほとんどだったけど、
今では、ちゃんと10時前にはベッドに入れるから、
自分のことなんだけどスゴイなって思う。
習慣って、なかなか変わらないものじゃない?
でも、何かが変わると自然と習慣も変わっていくのかもね。
もちろん、その逆もあるとは思うんだけど。
ベッドに入って深呼吸。身体をチェックして・・・
う~ん、まだ力が抜け切れてないね。
「ふぅ~」息をゆっくり吐く。息を吐いて、身体の力が抜けていく時、
なんか、膨らんだ風船が萎んでいくような感じがするんだよね(笑)
私は、膨らんだ風船かって、自分で突っ込んじゃうけど(苦笑)
はぁ~、ようやくリラックスしてきた。「ふわぁ~」あくびが出てきたね。
そろそろ、アトランティーナ・モードに入れるかな・・・。
「ミウ」
「あっ、アトランティーナ!
今夜も会えて嬉しい♪あのね、すっごいことが起こったの!」
「すっごいことって何が起こったの?」
「今月いっぱいで、部長と高梨が会社を辞めることになったの!」
「それは、良かったじゃない!おめでとう♪」
「それがね、部長は早期退職者リストの筆頭だったらしくてリストラで、
高梨は、週末にフードデリバリーのバイトをしていたのが
会社にバレて解雇なんだって。」
「だから何?辞めて欲しくないの?」
「そうじゃないけど、二人共、自主退社じゃなくて、解雇だから・・・」
「だから?」
「解雇されるって、ショックだろうなって思ったら、
なんか、喜べなくて・・・」
「ミウは、本当に優しいわね」
「そんなんじゃないよ!だって、もし、自分だったらって考えたら、
喜んじゃいけないような気がしたの」
「そう。でも、よく考えてみて。
部長も高梨くんも自分で蒔いた種を刈り取っただけでしょ?
そうは思わない?」
「えっ、どういうこと?」
「部長は、仕事もしないで、ゲームばっかりやってたのよね?
でも、部下がちょっとした失敗をしただけで、怒鳴り散らしてた。違う?」
「違わない。その通り」
「会社に勤めるということは、その会社で与えられた仕事をする
っていうことよね?部長ということは、部下の手本になるっていうことだし、
部下を育てる立場にあるということでもあるわよね?
部長は、そのどれも成し遂げていなかったんじゃない?
成し遂げるどころか、むしろ、その逆だったんじゃないかしら?」
「そうだね」
「そうしたら、会社にとっては、不要な人材ということにならない?
だって、雇っていたら、お給料を払わなければいけないでしょ?
全く、仕事をしない人にお給料を払うなんて、経費の無駄になるものね。
辞めて頂こうってことになっても仕方がないんじゃない?
つまり、仕事をしないでゲームをする、
部下に対して、部長としての役割を果たさなかった、
という2種類の種を蒔いたから、その蒔いた種に見合った実を収穫した、
ただ、それだけのこと。」
「なるほどね」
「高梨くんもそう。会社では仕事をしないで、
会社で禁止されているバイトをしていたら、会社としては、
じゃ、会社は辞めて、バイトだけにしたら?ということになるわよね?
だって、仕事をしない人にお給料を支払う必要はないんだから。違う?」
「その通りだね」
「確かにミウの言う通り、本人達はショックだと思うの。
でも、会社に対して、何をしたのかってことを考えると
ショックを受ける方がおかしいということになるのよ。
【全ては自分の責任】なんだから」
「あっ、そうだよね!なんか、自分に悪いことが降りかかると
【全ては自分の責任】って分かるんだけど、
人に悪いことが降りかかると同情の方が先で、
【全ては自分の責任】ってこと、忘れちゃうみたい」
「それはね、きっと、まだミウの中に『良い人だと思われたい』
という気持ちがあるからだと思うわ。
つまり、自分の評価を他の人に委ねてしまっているってこと」
「えっ、だって、評価って他の人がするもんじゃないの?」
「違う。確かにミウが経験してきた学校や会社は、
ミウの評価を先生や上司がしてきたかもしれない。
でも、思い出してみて。
同じことをしても、人が変わるだけで、評価も変わったりしなかった?」
「あ~、確かに」
「それじゃ、何が良くて、何が良くないのか、分からないじゃない。
だから、本来、評価というものは、自分でするものなの」
「なんか、難しいね」
「少しも難しくないわよ!
それに、人に評価を委ねていると、その時々で価値観を変える必要が生じて、
本当のミウを見失ってしまうことになるの。
ミウの中に居る小さなミウが置き去りになってしまうことにもなるのよ。
ミウの中に居る小さなミウは、ミウ自身に褒めてもらいたいのね。
他の誰かに褒めてもらっても嬉しくないの。
ミウも他の誰かに喜んでもらうより、ミウの中に居る小さなミウに
喜んでもらった方が嬉しいはずよ」
「確かに!私の中に居る小さな私が喜んでくれた時、
今まで感じたことがないくらい、めっちゃ嬉しかったもん!」
「でしょ?それに、自分で自分を評価するには、
自分に対する絶対的な信頼も必要になってくるの。
自分を信じることの大切さ、強さは、今のミウなら分かるわよね?」
「うん、ルシフェールの攻撃を受けた時、
確かに私は、私のことを信じていたと思う」
「もし、あの時、ミウが自分のことを信じ切れていなかったら、
おそらく、ルシフェールが仕掛けた怒りの流れに
流されてしまっていたでしょうね。
だから、人の意見に耳を傾けることは大切だけど、
決めるのは、いつも自分。誰かの目を気にする必要はないのよ。
でもね、ミウ、今日のミウは、それが出来ていたところもあるのよ。
ランチと夜の誘いを断ったでしょ?
あれは、自分にとってプラスにならないと思ったから、断ったんでしょ?」
「うん、そう!だって、どうせ部長と高梨がなんで辞めることになったのかとか、
部長がどうだとか、高梨がどうだとかって悪口大会になるのは、
目に見えてたから、そんなことしたら、私の周波数が低くなって、
また、イヤなことに遭遇することになるって思ったから断ったの」
「ほら、分かってるじゃない!
あの時は、『断ったらイヤな人だって思われるんじゃないかな』
とは思わなかったんでしょ?」
「思わなかった。っていうか、
あの子にイヤな人だって思われても良いって思ったもん」
「それで良いのよ。誰かに良い人だって思われたくて何かをしても、
それは決してミウのためにはならないの。
ミウが『こうしたい!』って思うことだけをすれば良いし、
『これが言いたい!』っていうことだけを言えば良い。
それをイヤだと思う人も居れば、いいなと思う人も居る。
それは、それぞれの自由だから、ミウはどうすることも出来ないのよ」
「そうだね。部長と高梨がクビになるのは私のせいじゃないんだし、
私は、素直に喜んでも良いんだね」
「喜んで良いっていうより、教訓にして欲しいかな(苦笑)
でも、今日、職場がざわついている時、部長と高梨くんが居るんだから、
少し遠慮してあげれば良いのにって思ったのは、良いと思うの。
この違い、分かってもらえるかしら」
「うん、なんとなくだけど、分かる気がする。
自分も他の人も大切にすることが愛なんだよね?
でも、同情は、相手を大切にすることじゃなくて、
自己満足っていうか、エゴなのかな?って思う。
だから、同情は愛じゃないんだよね」
「そう、その通りよ!
ミウは、いつも私が言いたいことを分かりやすくまとめてくれるから、
本当、助かるわ」
「えへっ、それほどでも(笑)
あとね、ちょっと気になったんだけど、
二人の退社に私は関係あるのかな?」
「そうね・・・無関係とは言えないわね」
「やっぱり!ねぇ、どんな関係があるの?」
「先週の金曜日、朝の挨拶をした時、
初めて喜ばれたって言ってたわよね?」
「うん、ビックリしたけど、めっちゃ嬉しかった」
「ミウが部長と高梨くんのことを気にしなくなって、
仕事に集中できるようになったって、言ってたでしょ?
おそらく、ミウの身体の周りを取り囲んでいるエネルギー体が
変化したんだと思うの。
エネルギー体は、ほとんどの人は目で見ることが出来ないけど、
感じることは出来るのね。だから、みんな、何も言わないけど、
あなたの変化を感じ取っていたのだと思うの。
それで、無意識のうちに、ミウに倣うようになっていったのね。
どう?最近の職場の雰囲気、何か変わったんじゃない?」
「そうだね。部長と高梨のことが気にならなくなったら、
他の人にイライラするかなって思ってたけど、
全然、そんなことなくて、仕事がしやすい環境になったかも。
もちろん、今日の派遣ちゃんとかは、ちょっとイラつくけど、
こちらに影響を及ぼすほどじゃないしね。割と平和かもしれないね」
「それは、ミウの変化が周りに影響を及ぼしたということになるわね。
みんな、人のことを気にするよりも自分の仕事に集中した方が、
精神衛生上にも良いし、仕事の効率も上がるということに、
ミウを通して、気がついたということよ。
エネルギー体、つまり、オーラは、感情によって変わる
という話をしたでしょ?オーラを目で見ることが出来る人は、
ほとんどいないけど、誰もが感じることは出来るの。
ミウの感情面が大きく変わったという自覚はある?」
「それはある!だって、あんなに毎日、イライラしてたのが、
今は、全くイライラしてないもん。
たぶんだけど、他の人に対してもイライラしながら接していたと思う。
何もしてないのに、イライラした対応されたら、誰だってイヤだもんね。
あの頃は気づかなかったけど、今なら、それが分かるの。反省してるよ」
「変わらなければ分からないことがあるということに気づけて良かったわね。
おそらく、周りの人は、言わないけど、驚いているはずよ。
あんなにイライラしたミウが、最近は穏やかに接してくるわけじゃない?
『何があったんだろう?』って不思議に思いながらも、
ミウの変化に喜んでいると思うの。
周りに居る人たちは、ミウの鏡だって話したわよね?
それはミウだけじゃなくて、他の人もそうなの。
だから、ミウが穏やかに人と接すると自然と
相手も穏やかになっていくのね。
つまり、ミウから穏やかさの波が職場に広がったということ。
職場の雰囲気が変わった、つまり、職場の周波数が変わったということ。
だから、その周波数に合わない人は排除されることになる。
部長と高梨くんも変化に気づいていたと思うの。
でも、人が変わるのって、大変なことでしょ?
なんとなく、流されていた方が楽だものね。
それは、ミウも分かるわよね?」
「うん、流されないように踏ん張るのって、
かなり心の力が必要だと思う」
「そうね、何か信念がないと難しいわよね。
だから、変化に気がつきながらも何も対処をしなかったから、
部長と高梨くんは、他の人との差が開き過ぎてしまったの。
結果として、それまでは、目立たなかったことが、
目立つようになってしまって、解雇という結果に
繋がったということよ。
変化に対応しなかったという種を蒔いたから、
その場に居続けることが出来ないという実を刈り取った。
さっきも言ったように、自分で蒔いた種を自分で刈り取った、
ただ、それだけのこと。
ミウのせいではないかもしれないけど、
職場の環境を変えたという点において、
ミウが無関係とは言えないということね。
いずれにしても、<ピンチはチャンス>という言葉があるでしょ?
部長と高梨君は、人生をより良くするためのチャンスを逃してしまったのよ。
でもね、今回の解雇もチャンスであることに間違いはないの。
このチャンスをどう活かすのかは、本人たち次第なんだけどね。
その前に、この解雇がチャンスだってことに気づいていれば良いんだけど・・・」
<次回へ続く>
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