ドラゴンレディーの目覚め

莉絵流

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最重要課題は・・・

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昨夜は、あの後、すぐにお風呂に入ってからベッドに入ったんだけど、
興奮冷めやらずで、なかなか寝つけなかった。

でも、今朝は目覚ましが鳴る前に目が覚めて、なぜか、スッキリしてる。
なんか、これからの展開を考えただけで、ワクワクする。
このワクワク感、めっちゃ好き。

今日は、会社に行ったら、まずは臨時チーム会をしよう。
あっ、その前に真田部長に朝イチで、昨日のことを報告しとかないとね。

今朝もアトランティーナは、ゆっくりさんだから、静かに出かけた。
電車も座れたから、眠気に襲われるかなって思ってたんだけど、
チェリーと話す余裕はあるみたい。良かった。

「チェリー、おはよう」

「おはよう、ミウ。昨日は、良い1日だったみたいだね」

「うん。そうなの!シンクロニシティーを体験したよ。
シンクロニシティーって、めっちゃワクワクするし、クセになるね(笑)」

「そうだね。でも、ミウが自分の内側に意識を向けて、整えていれば、
いつでも起こることだよ」

「そうなんだね。でもさ、どうしても外側に働きかけようしちゃうじゃない?
このクセを早く取り除いていかなきゃだよね」

「外側に働きかけないように気をつけていると、逆にいつまでも外側に
気を取られてしまうから、そうじゃなくて、いつも内側に意識を向けるように
意識していれば良いと思うよ。

前に、ミウの中で、部長と後輩に電球が点いているかどうかを毎日、確認していた
ことがあったでしょ?最初は、意識しないと電球が点いちゃったけど、
そのうち、意識しなくても消えてたじゃない?あの時みたいに、意識を向けて
いるうちに自然と出来るようになるから、心配しなくても大丈夫だよ」

「そういうこともあったね(汗)なんか、懐かしい。そっか、そうだね。
いつも意識は内側って思っていれば、確かに自然にそうなっていくかも
しれないね。チェリー、アドバイス、ありがとう!」

「私に出来ることは、何でもしたいし、しようと思っているの。
それが、私の幸せでもあるから」

「ありがとう、チェリー。チェリーにも、本当にいつも助けて貰ってるよね。
チェリーもアトランティーナと同じくらい、私にとって心の支えなんだよね」

「そう言ってもらえると、嬉しい。ミウ、ありがとう。
それで、今日は、どうするの?10日で、企画をまとめるんでしょ?」

「うん。会社に行ったら、とりあえず、部長とチームのみんなに昨日のことを
報告して、みんなの力を借りて、企画書を作ろうと思ってる」

「ミウ、変わったね。前だったら、独りで抱え込んでいたじゃない?
周りに協力を求められるようになったことは、もの凄く良いことだと思うよ」

「あっ、そうだね。昨日もレオンくんに同行をお願いしたし、みんなで企画書を
作ろうって自然に思ったけど、前の私だったら、誰にも頼らないで、
独りで何とかしようとしてたかもしれない。
私、自分でも気がつかないうちに変わってたんだね」

「うん。それも良い方向にね。ミウが自分のことを信じられるように
なってきたってことだから。自分のことが信じられるようになると、
他者のことも信じられるようになって、周りの力を借りられるように
なるんだよね」

「なるほどね。確かに前は、誰のことも信じられないっていうか、
自分独りでやった方が早いっていうか、そんなふうに思ってたから、
誰にも頼らずに独りで抱え込んでたのかもしれない。

でも今は、独りでやるより、みんなの力を借りた方が時間的なロスも失くせるし、
良いものが作れるような気がしてる。ホントだ!私、この部分が変わったんだね。
なんか、ちょっと嬉しい発見かも」

「良かったね。ミウは、自分でも気がつかないうちに少しずつかもしれないけど、
前進しているんだよ。私も嬉しい」

「私も!気づかせてくれて、ありがとう、チェリー!」

「じゃ、今日はまた、ちょっと忙しくなりそうだね。肩の力を抜いて、
深呼吸を忘れないで、余裕ある態度で臨んでね。
その方が上手く事が進んで行くから」

「うん、分かった。焦らないで、リラックスすることを心がけてみるよ」

「あとね、企画が通って、実現して、達成感と充実感を味わっている感覚を
先取りしながら、やってみて。そうすれば、きっと、ミウが思った通りに
全てが動いていくはずだから」

「宇宙の法則だね。チェリーに言われるまで忘れてた(汗)そうだよね。
こういう時こそ使わなきゃだよね。実現して、達成感と充実感を味わうためには、
まず、私が楽しくて、ワクワク、ドキドキしちゃう企画を創る必要がある。

でも、『そんな企画が私に創れるのかなぁ』って心配するんじゃなくて、
そういう企画が出来上がって、ワクワク、ドキドキしてる自分を感じてみるよ。
そうすれば、今は思い浮かんでないけど、きっと、そういう企画を創ることが
出来るもんね。自分を信じて、取り組んでみる。ありがとう、チェリー」

「ミウのオーラが、キラキラしてるよ。そのオーラを見ているだけで、
私までワクワク、ドキドキしてきちゃった。
ミウが楽しんでいるのが伝わってくる。良い感じだね」

「ホントに!?やったー!今ね、誰に何をお願いしたら良いのかも
浮かんできたの。この調子で、飛ばして行くね」

「うん。でも、くれぐれも無理はしないでね。チームのみんなにも無理は
させないでね。誰か一人でも無理をしちゃうと、せっかくのプロジェクトも
台無しになっちゃうから」

「うん。朝、みんなにそれも伝えるつもり」

「ミウ、きっと上手く行くよ。あと、三番目に現れた元守護天使の弦夜くん、
仲良く慣れると良いね」

「彼も一応、私の恋人候補ってことになるんだよね?」

「アトランティーナが、どういう意図で、元守護天使たちに声をかけているのか、
私には分からないから、ミウの恋人候補なのかどうかは分からないの。
でも、レオンくんもハヤトくんも、ミウの役に立っているでしょ?
色々な気づきを与えてくれているでしょ?

だから、弦夜くんもそういう立ち位置なのかもしれない。
明日、会うテルくんもね。彼らのことを好きにならなければいけない、
彼らの中の誰かに恋をしなければいけないということではないよ。
ミウが、自然に好きになることは良いと思うけど、無理する必要はないと思う」

「うん、そうだね。まぁ、無理して恋するとか、出来ないしね(苦笑)
私は、目の前のことを楽しもうと思ってる。その中で、心が動くのなら、
それでも良いし・・・。流れに任せてみようと思ってるよ。
ただ、自分の中にある軸がブレないように、ちゃんと、いつでも地に足を
つけているようにってことは、気をつけていようと思ってる」

「ミウ、完璧だね。それで良いと思う。ミウなら、きっとステキな恋が出来るよ。
それも楽しみにしているね。じゃ、そろそろ降りる駅だね。
ミウ、今日もステキな1日になりますように・・・。いってらっしゃい!」

「チェリー、ありがとう!いってきます!」

今日もチェリーに気づかせてもらっちゃった。アトランティーナとチェリーが
居てくれて、私は前に進めているんだと思う。
ありがとう、アトランティーナ、チェリー。

会社に入る前に、今日の段取りを考えよう。まずは、会議室を押さえないとだね。
いや、その前に臨時チーム会をやることを伝えた方が良いのかな?
席に行ってみて、みんなが揃ってたら、先に伝えよう。
で、まだ揃ってなかったら、会議室を押さえようかな。

それから、チーム会をする前に真田部長に昨日のことと今後のことについて、
報告をしよう。こんな感じで良いかな?あとは、なるようになるでしょ。
あんまり深く考えない方が良いね。ただ・・・朝のチーム会も上手く運ぶし、
真田部長への報告も要点を逃さずに、分かりやすく伝えられるって、
信じて臨もう!それが、成功への第一歩になると思うから。

「おはようごさいま~す!」私の朝のルーティーン。大きな声で挨拶。
これをしないと私の1日が始まらないんだよね(笑)

「おはようございます!今朝も元気ですね」
「ええ。お陰さまで、すごぶる元気です!(笑)」

おっ、みんな、揃ってるじゃん。じゃ、先に臨時チーム会のことを伝えて、
会議室は、誰かに取ってもらおう。
そのうちに、私は、真田部長に報告しようかな。

「おはよう。朝、少しだけ時間もらっても良いかな?」

「大丈夫ですよ」

「じゃ、臨時チーム会をしたいから、誰か会議室、取ってもらえるかな?」

「小さい会議室で良いですよね?私が予約しておきます」

「中川さん、ありがとう。じゃ、お願いします。特に用意するものはないから、
チャイムが鳴ったら、会議室集合ってことで」

真田部長も席にいる。

「真田部長、おはようございます。
今、少し、お時間よろしいでしょうか?」

「おはようございます、久遠さん。何かありましたか?」

「ご報告があります」

「じゃ、どこか会議室に行きますか?」

「いいえ、ここで大丈夫です」

「あっ、そうですか。では、どうぞ」

「阿刀田部長がクライアント契約をしたブルータイガーですが、
私のチームが海外担当になってからずっと、毎日、電話をして居たんですが、
先方がいつも留守で話が出来なかったんですね。それが昨日、
やっと話が出来まして、その流れで、昨日の夕方お会いすることが出来たんです。
それで、ロビープロモーションの企画を作ることになったので、そのご報告です」

「久遠さん、スゴイじゃないですか!阿刀田部長から引き継いだは良いものの、
どのチームに振ったら良いのか分からずに私が行って、
一応は、案件を頂きましたが、小さな案件を1件だけで、
申し訳なく思っていたんですよ。私が指示をしたわけでもないのに、
さすが、久遠さんですね」

「いいえ、まだ、発注を頂いたワケではありませんので。
それで、今からチームのみんなにも報告して、みんなの力を借りて、
企画書を創りたいと思っています。企画書が出来上がったら、
真田部長も目を通して頂けますでしょうか?」

「もちろんです!期日は、いつまでなんですか?芳村部長が担当ですか?」

「特に言われてはいないのですが、とりあえず2週間後くらいには、
先方に送るつもりでいます。芳村部長は、ほとんど席にいらっしゃらないと
いうことで、藤崎さんという方と直接やりとりをすることになりました」

「あ~、藤崎さんですか。2週間後ね・・・。なるほど。良いですね。
では、企画書、楽しみにしてますね」

「はい、ありがとうございます」

<2週間後ですか、なるほど>って言ったよね。やっぱり、藤崎さんのこと、
真田部長も知ってるんだね。ま、それは想定内のことだから、良いんだけどね。

「キンコーン、カンコーン」

チャイムが鳴った。よし、これからチーム会だ!
みんなの協力を得られますように・・・。

「改めて、おはようございます。みんなも忙しいと思うので、手短に済ませたいと
思っています。実は、昨日、このチームが出来てからずっと、電話をしていた
ブルータイガーとやっと話が出来ました。それで、いきなりアポも取れて、
夕方、レオンくんと一緒に行ってきました。

それで、企画を提案することになったので、みんなにも協力して欲しいなって
思ってるんだけど、どうかな?もちろん、みんなが抱えている案件も
あるだろうから、無理を言うつもりはないんだけどね」

ブルータイガーに企画を提案することになったって言った瞬間、みんなが湧いた。
そりゃそうだよね。外資系だし、映画好きっていうことは有名な会社だから、
夢は広がるよね。そこで、少し思案顔にはなったけど、谷くんが口火を切った。

「ぜひ、協力させてください!」

「谷くん、ありがとう!」

「じゃ、具体的な話をさせてもらうね。提案する企画は、ロビープロモーションを
考えています。そこで、お願いしたいのは、

①   各シネコンのロビープロモーションに関する使用料を含めた資料を取り寄せる
②   各シネコンでのロビープロモーションの過去事例をまとめる
③   ブルータイガーが映画および映画館で行ったプロモーションとそれ以外で
    行ったプロモーションの過去事例を調べる
④   ブルータイガー以外の企業が映画および映画館で行ったプロモーションの
       過去事例を調べる


この4点です。
今までは、芳村部長に連絡をしていたんだけど、ほとんど席にいない人で、
今後は、芳村部長ではなく、藤崎さんという人が窓口になってくれることに
なったのね。だから、これからも毎日、連絡をして、先方が何を望んでいるのか、
探りを入れるつもりでいます。また、予算についても、どのくらいを考えて
いるのかも聞いてみます。とりあえず、こんな感じです。

芳村部長は、派手なことが好きな方みたいなので、他社では提案できない、
斬新で、しかもインパクトのある企画を創たいと思っています。
でも、私独りでは、限界があるので、みんなの力を借りたいの。

もちろん、それぞれが抱えている案件もあるだろうし、負担にならない程度で
良いんだよね。このせいで残業とか、して欲しくないし。どうかな?」

「じゃ、僕は、①をやります。席に戻ったら、
早速、プロダクションに連絡してみます」

「谷くん、ありがとう!」

「じゃ、私は、③で。実は、ブルータイガーって、私もずっと気になってて、
少しだけ調べたことがあるんですよ。なので、それに少し付け加えるだけで
良さそうなので。なる早で、提出します」

「ありがとう!じゃ、③は、中川さんにお願いします」

「え~っと、じゃあ、私は②で。私も席に戻ったら、すぐに取り掛かります!」

「五十嵐さん、ありがとう。よろしくお願いします」

「うわっ、みんな早いな(苦笑)じゃ、僕は、④で。
席に戻ったら、すぐに取り掛かります!」

「みんな、スピード感あって良いね。よろしくお願いします。
それと、一番肝になる企画案だけど、これは、全員で考えようと思ってるので、
ご協力ください。

あと、私とレオンくんが先方との窓口になるので、何か分からないこととか
あったら、言って欲しい。それから、①~④の資料は、レオンくんに渡して
ください。レオンくん、資料の取りまとめをお願いしても良いかな?」

「はい、もちろんです」

「レオンくん、ありがとう!集計したものは、もちろん、みんなにシェア
するので、今週中にまた、チーム会をさせて欲しいんだけど、良いかな?」

「もちろんです!チームで、ブルータイガーの発注を取りましょうよ!」

「ありがとう!大きな金額でって思ってるので、みんなの力を貸してください!
よろしくお願いします!」

「はい!ところで、チーフは何かやりたいことがあるんじゃないんですか?」

「ちょっと考えてることはある。でも、それが実現可能かどうか、
これから検証しないといけないんだよね(苦笑)」

「え~っ、何ですか?教えてくださいよ」

ってな具合に、みんなからの協力を得ることが出来て、ひと安心。
私が考えてたことも、みんな面白がってくれて、実現可能かどうかの検証も、
ついでだからと言って、五十嵐さんが引き受けてくれることになった。
私は、なんて素晴らしいメンバーに恵まれているのかしら!
なんか、ますますドキドキ、ワクワクしてきちゃった。

チーム会をサクサク終わらせて、席に戻るとすぐに藤崎さんに電話をした。
芳村部長とは違い、すぐに電話に出てくれて、助かったぁ。
たった、これだけのことでも、今までが捕まらなかったから、
本当に有り難く感じちゃうよ。

「お世話になっております。シネムンドの久遠です。
昨日は、ありがとうございました。早速ですが、企画書なんですが、
2週間後くらいにお送り出来ればと考えておりますが、いかがでしょうか?」

「そのくらいで大丈夫です」

「あの・・・予算なんですが、どのくらいをお考えでしょうか?」

「それも特に芳村から言われておりませんので、幾らでもというのは、
おかしいですが、お任せします」

「では、金額ごとの企画を作って、お送りしますね。
あと、何かご希望はありますでしょうか?」

「それも特に聞いてませんね」

「そうですか・・・。商品広告と企業広告は、どちらがよろしいのでしょうか?」

「それも聞いていませんが、現状を考えると企業広告が良いのではないかと
考えております」

「分かりました。では、企業広告ということで、作らせて頂きます。
あと、このくらいの時間なら、電話をしても問題ありませんか?」

「そうですね。午前中に頂ける方が良いですね」

「ありがとうございます。ではまた、明日もこのくらいの時間に連絡させて
頂きますので、よろしくお願いいたします。失礼いたします」

レオンくんが心配そうに、こちらを見ている。私、そんなに頼りないかな?
チームのみんなが席にいたので、電話の内容を伝えた。

「えっ、本当に発注する気、あるんですかね?」

「発注する気はあるんじゃない?でも、どうしても発注したいワケではない。
だから、良い企画なら発注するけど、そうでなければ発注しない、
もしくは、今後のつきあいも無しにしようって考えてるのかもしれないよね。

とりあえず、金額が違う3つの企画を考えようと思うんだけど、どうかな?
ただ、まるっきり違う内容のものを3つっていうのは、そこまで時間もないから、
みんな詰めが甘くなって、総倒れになってしまうと思うので、
金額ごとにやることを変えるって感じが良いかなって思うんだよね。

基本は、同じ企画なんだけど、金額によって見せ方が違うっていうのかな。
やる内容でランク分けするっていうのかな。そんな感じ?」

「松竹梅ですね。金額によって、ゴージャス度を変えるっていう方向性で
良いんですよね?」

「そう!そんな感じ。ありがとう!分かりやすく、まとめてくれて。
じゃ、その方向性で進めます。一応、毎日、電話はしようと思ってるから。
忘れられないためにね」

「そういうの大事ですよね。日本っぽいアプローチなのかもしれませんけど」

「まぁね。果たして、外資系企業に通じるかどうかは分かんないけど(苦笑)
でも今は、やれることは全部やろうって思ってるんだ」

「一見、日本っぽく見えるのかもしれませんけど、僕は良いと思います。
どこの国も情熱は大切にしていますから。こちらの意志というか、
やる気を伝えることは、とても大切なことだと思います」

「ありがとう。なんか、レオンくんに言われると説得力があるね。
じゃ、みんなで発注目指して、進めていきましょう」

こんな感じで、午前中は終わってしまったんだけど、今になって、
少し不安になってきた。そこまで魅力的な企画書を創れるのかなって。
そんな私の後ろ向きなエネルギーを感じ取ったのか、レオンくんが近寄ってきた。

「ミウさん、久しぶりにランチ行きませんか?」

「うん、いいよ。じゃ、行く?」

断ろうと思ったのに、<いいよ>って言ってて、自分でビックリした(苦笑)
心と行動がアンバランス。なんか、久しぶりだな(汗)
こういう時は、チャクラもバランスを崩してるんだろうな。
どのチャクラがバランス崩してるんだろう?

「ミウさん、何が食べたいですか?

「う~ん、今日はパスタの気分かな?」

「じゃ、パスタの店に行きましょう!」

「えっ、レオンくんは?パスタで良いの?」

「今日は、ミウさんが食べたいものを食べましょう」

「えっ、ありがとう・・・」

「でも、次回は、僕の食べたいものにつきあってくださいね」

「うん♪」

相変わらず、レオンくんは優しい。私のエネルギーが下がってること、
感じてるんだろうな。だから、上げてくれるために誘ってくれたんだと思う。
私は、人に甘えることが苦手っていうか、好きじゃなかったけど、
今では、こういう人の好意に甘えても良いんだって思えるようになった。
これも成長の表れだね。

会社から程良い距離の店に入った。会社に近すぎると誰かに会ったり
しちゃうもんね。今日は、会社の人には会いたくない気分だったから、
それも嬉しい。アトランティーナと一緒で、私の心を読んだのかもしれない。
誰かに心を読まれるのって、あんまり気分が良いもんじゃないけど、
今日は、助かったって感じ。

お店に入って、二人共、本日のオススメを頼んだ。パスタが食べたいって、
私の身体が言ったのは確かなんだけど、どんなパスタまでは
指定してこなかったからね。

「レオンくん、ありがとう。なんか、ちょっとだけ救われた気分だよ」

「ミウさん、ちょっと弱気になってましたよね?」

「うん。急に不安になった。発注が取れるような企画を提案できるのかなって」

「プレッシャーを感じてしまうのは分かるんですけど、今、ミウさんが
弱気になると、そのエネルギーが伝播して、チーム全体の士気が
下がってしまいます。ミウさんには、いつも、どんな時でも強気でいて
もらわないと困ります。もちろん、僕が言うまでもなく、そんなことは、
ミウさん自身が一番良く分かっているとは思いますけどね」

「そうだね。分かってるんだけど、強気で居続けるっていうのは、
なかなか難しいね。ほら、私って、元々、そんなに強気じゃないから」

「そんなことないです!少なくともアトラン国に居た頃のミウさんは、
結構、いつも強気でしたよ」

「えっ、そうなの!?」

「そうですよ!そうじゃなきゃ、ドラゴン・レディーなんて無理ですから」

「そっか・・・。ドラゴンたちを束ねていたんだもんね」

「そうですよ。自信に満ち溢れていて、キラキラしていて、そして、いつも笑って
いました。そんなミウさんのことが、みんな大好きだったんです」

「そうだったんだね。あっ、そうだ!レオンくんに聞きたいことがあったんだ!
良い機会だから、聞いちゃおうかなぁ」

「えっ、なんですか?」

「ねぇ、私の良いところって、どういうところかな?」

「ミウさんの良いところですか・・・」

「無いの?」

「いいえ、ありますよ!努力家で、頑張り屋さんで、明るくて、前向きで、
素直で、人のことを思いやれて、優しくて・・・言い出したらキリがない
くらい、良いところがたくさんあります。

でも、気をつけないといけないのは、良いところも見方を変えれば、
悪いところになってしまうということです」

「というと?」

「ミウさんの良いところは、全部、見方を変えると自分に無理をさせてしまうと
いうことになります。今だって、全部、自分独りで背負い込みそうになって
いますよね?違いますか?」

「そうなのかなぁ・・・。正直、分かんないや」

「現状、発注につながるような斬新な企画を出す必要がありますけど、
クライアント目線を気にし過ぎると何も浮かばなくなりますよ。
結果として、発注が頂ければ、それに越したことはないですけど、
その前にもっと意識を向ける必要がありますよね?分かりませんか?」

「えっ?」

「ミウさんは、何がしたいんですか?ミウさんが好きなことは何ですか?
ここからブレてしまったから、苦しくなってしまったんですよ。
気がつきませんか?」

「あっ・・・そうかも」

「たぶん、昨日は、色々なことが上手く進んで、楽しかったはずです。
好きなことが出来るかもしれない、やってみたいと思っていたことが実現するかも
しれない。そう思っていたはずです。でも、今日になって、部長に報告して、
チームのみんなに話していくうちに発注を取らなければいけないという意識に
なってしまった。

でも、そうじゃないんです。発注を取れるかどうかは、ただの結果です。
結果のことばかり考えていたら、どんどん萎縮してしまって、逆に発注を頂ける
ような企画を生み出すことなんて出来ませんよ!望み通りの結果を得るためには、
苦しんでいてはダメなんです。ミウさんが、どのくらい楽しんでいるのか、
そこが重要なんです。

ミウさんが心の底から楽しいと思ったものでないと、仮に発注を取れたとしても
虚しいだけです。だから、目線を変えてください。
そうすることが、ミウさんにとっても、チームのメンバーにとっても、
会社にとっても一番良いんですから」

「そっか・・・そうだよね!今朝、チェリーに言われたばかりなのに、
もう忘れちゃってる。働きかけるのは、いつも自分の内側で、外側じゃないって、
頭では分かってるのに、まだ、落とし込めてないんだ、私」

「その通りです。働きかけるのは、自分の内側で、決して、外側の何かでは
ありません。それに、昨日も話していたじゃありませんか!
【キッカケは、いつも愛】だって。今のミウさんの中に愛はありますか?」

「うわっ、ホントだね。もう、目からウロコとは、正にこういうことを
言うんだね!」

「何を言っているのか、僕にはよく分かりませんが、とにかく、ミウさんは、
今の状況を楽しんでください。ミウさんが、やりたいと思うことを企画に
してください。おそらく、幾つかあるはずですから」

「うん。分かった!そうだよね。午後は、私の中にある、やってみたいことを
書き出してみるよ。それで、その中から企画になりそうなものを選んでみるね」

「はい。そうしてください。僕も自分の中にある、やってみたいことを
企画にしてみます」

「うわぁ、ありがとう、レオンくん。なんか、急に身体が軽くなったよ。
お昼前の私、ガッチガチだったもん」

「はい、見てて分かりました。だから、ランチに誘ったんです。
気づいて欲しかったから」

「レオンくん、ホントにありがとう!さすが、元守護天使!(笑)」

「なんか、ミウさんを見ているとミウさんの守護天使だった頃のことを
思い出して、つい、口を出したくなってしまいます。ミウさんは、
話せば分かる人だし、他の人よりも勘が良いから、こちらが言ったこと以上の
結果を出してくれますからね」

「えっ、そうなの!?」

「そうですよ。僕は、ミウさんがアトラン国に居た頃は、
ミウさんの守護天使でしたが、他の時代、他の国で、ミウさん以外の守護天使を
したこともあります。皆さん、それぞれに魅力的ではありましたが、
ミウさんほど、勘が良い人はいませんでした。だから、何度も同じことを
アドバイスしたし、中には、幾らアドバイスしても気づかなくて、
言うのをやめてしまったこともあります」

「そうなんだぁ・・・。それ、アトランティーナも言ってた。
助けを求められた時しか、何も言わなかったって」

「そうです。でも、助けを求めているのに、アドバイスしても聞いてくれない人も
たくさんいますよ」

「へぇ~、それって、めっちゃもったいないよね。せっかくアドバイスして
くれてるんだから、聞かないと!だって、聞けば、絶対、上手く行くって
分かってるのにね」

「気づかない人、結構、多いんですよ。それだけ皆さん、いつも身体に力が
入っているということなんですけどね(苦笑)」

「あっ、あと、呼吸が浅いんだよ!私も人のこと言えないけどね(苦笑)
あ~、これも今朝、チェリーに言われてたわ。もう、せっかくアドバイスして
もらってたのに、忘れちゃってるなんて・・・。
私もかなり、もったいないことしてたね(苦笑)」

「でも、気づいたから良いじゃないですか。きっとチェリーも今頃、
ホッとしていると思いますよ。ミウさんが、やっと気づいてくれたって」

「あと、レオンくんに感謝してると思うよ。私が気づくキッカケを作ってくれて、
ありがとうって」

「そうですかね。だったら、僕も嬉しいです」

「ホント、レオンくんがうちのチームに来てくれて、いや、それ以前に、
うちの会社に来てくれて良かった!これは、アトランティーナのお陰でも
あるね。今日、帰ったら、アトランティーナにもお礼を言わなくちゃ」

「そう言ってもらえて、嬉しいです。これからもミウさんの力になりたいです」

「ありがとう!これからも力になってね。頼りにしてるから」

「ミウさんのそういうところが良いところなんですよ。切り替えが早くて、
素直なところ。それと、勘が良いところ。この3つもさっき言ったことに
付け加えてくださいね。あっ、素直はさっきも言いましたね(笑)」

「うん、分かった。ありがとう!元気になった!」

「良かった。ミウさん、これだけは忘れないでください。いつでも先に
あるのは、内側にある考えや感情です。そして、それが外側の世界に影響を
与えるんです。だから、目を向けるのは、いつでも自分の内側。
自分のハートに関心を持ってください」

「自分のハートに関心を持つこと・・・。はい。肝に銘じます。
ありがとう、レオンくん。じゃ、少し早いけど、戻ろうか」

「そうですね」

レオンくんのお陰で、お昼に行く前の私とでは、まるで別人ってくらい、
エネルギーが変わったと思う。やっぱり、持つべきものは、元守護天使だね(笑)

もちろん、今の守護天使たちも助けてくれてるし、支えてくれてるって
ちゃんと分かってるし、みんなに感謝してるよ。ありがとう♡


<次回へ続く>
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