ドラゴンレディーの目覚め

莉絵流

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一滴ずつ

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レオンくんがまとめてくれた資料を下にサクッと打ち合わせを済ませて、
解散した。明日のシネコン巡りにも資料を持参しよう。現場で見たら、
資料に載っている数字が、ただの数字じゃなくて、
動き出してくれるような気がしたんだ。

「レオンくん、本当にありがとう!こんなに見やすくて、
使いやすい資料を見たの、初めてだよ!
レオンくんは、色々な面で優秀なんだね」

「ありがとうございます。色々な面って・・・
(守護天使としてもっていうことですか?)」

いきなり、身を屈めて耳元で囁くように言われて、不本意ながら、
ドキッとしてしまった(汗)

「うん。そういうこと!明日もよろしくね」

「最初、どこに行くんですか?」

「六本木から渋谷に行って、その後、新宿って感じかな。
六本木のシネコンに13時って、プロダクションの人に言ってあるから、
その前にランチしてから行こうね」

「分かりました。じゃ、いつもランチに行くくらいの時間に出れば、
間に合いますね。あの、プロダクションの人って、
いつも一緒に仕事している人なんですか?」

「うん。うちの会社を担当してくれてる人で、いつもお世話になってるの。
明日、レオンくんにも紹介するから、名刺を忘れずに持って行ってね」

「はい、ありがとうございます」

英語研修も思っていたより、良い感じだったし。っていうか、
『なるほどなぁ・・・』って思ったんだよね。英語も日本語も
同じ言葉なんだなって、めっちゃ当たり前のことに気がついたの。

子供の時、どうやって話せるようになったのかまでは覚えてないけど、
たぶん、テルさんが言ってたように、パパとか、ママが話してるのを
聞いてて、覚えたんだと思うんだよね。だから、もし、パパとママが
英語を話してたら、今頃、私は英語を話してたんだろうなって思うの。

だったら、意味とか、何にも考えないで、ただ、ひたすら英語を聞いてたら、
話せるようになるような気がしてるんだ。単純って思ったでしょ?
そう、私は単純なの(笑)アトランティーナやレオンくん、ハヤトくんに
言わせると「素直」っていうことらしいけどね(苦笑)

ま、私としては、どっちでも良いかな。だって、この単純さもまた、
私の強みなのかなって、最近は思えるようになってきたから。

午後も企画案を考えたり、細々とした作業をしてたら、いつの間にか
定時近くになってた。なんか、今日は、いつも以上に時間が経つのが
早い気がする。たぶん、昼休みがいつも違ってたからなんだろうな。
今日は、独りになる時間がなかったしなぁ・・・。
でも、その割には、イヤな感じがしないんだよね。少しずつだけど、
私の中で、何かが変化していってるんだと思うけど、たぶん、悪い方じゃないと
思うから、このまま、流れに乗っかっていようかなって思ってる。

「みんな、今日も定時で帰ろうね!」

一応、メンバーに声だけ掛けとこう。残業するほどの作業量じゃないとは
思うんだけど、日本人って、残業好きだからねぇ(苦笑)
私も日本人だけど、残業は嫌い。だって、<自分は仕事がデキません>って
宣言してるようなもんじゃん。そんなの絶対にあり得ないでしょ!

でも、みんなは、逆なのかなぁ?残業してる方がデキる人だと
思ってたりしてね(苦笑)いや、それとも自分のこと、<デキない奴>って
思ってたりする?もし、そうだとしたら、それだけは止めて欲しいかな。
だって、自分で自分のことを<デキない奴>って、思っちゃうのって、
寂しいし、哀しいじゃん。誰が言ってくれなくても、
自分だけは自分のことを<デキる奴>って思っていたいじゃん!

あっ、そういうことなのか!仕事だけじゃなくて、色々な面で、
自分だけは自分のことを信じるって、こういうことなんだ!
わっ、マジ!?なんか、今、何かが降りてきたのかも!?
今日は、気づくことが多い1日になったなぁ・・・。やっと、私の中が
満たされ始めたってことなのかな?ま、とりあえず、終業のチャイムが
鳴ったら、今日もすぐに帰ろうっと。

「チーフ、帰るんですか?」

終業チャイムが鳴り終わったタイミングで席を立ったら、声を掛けられた。

「うん、帰るけど、何かある?」

「このチームで飲みに行ったことないから、行きたいなって思ったんですけど、
いかがですか?」

「今日は遠慮しとく。明日、シネコン巡りするから、見落としがないように、
チェックポイント挙げておきたいしね」

「あっ、分かりました・・・」

「今日じゃなくてさ、ブルータイガーから発注もらったらにした方が
良いんじゃね?」

「あっ、そっか!じゃ、私は、飲み会することをモチベーションに
頑張ろうかな」

「お前、どんだけ飲みたいんだよ(笑)」

「え~っ、だって、このチームで飲みに行ったことないんだも~ん!」

「飲みニケーションだっけ?ガチで日本のオッサンだな。海外では、
職場の仲間で飲みに行くって、あんまりないんだよね?レオンくん」

「そうですね。終業時間になったら、みんな家に帰りますね。
あまり、職場の人間とは一緒にいないかもしれません(苦笑)」

「ほら、みろ!チームで飲み会って言ってる時点でダメなんだよ!」

「そんなことはないと思うよ。だって、私たちは日本人なんだから。
馴れ合いになるのは、私もあんまり好きじゃないけど、たまに、
何かあった時とか?そういう時に飲みに行くっていうか、
打ち上げ的なことをしても良いと思うよ。だから、ブルータイガーから
発注を頂いたら、みんなで打ち上げしようよ!

あんまり、日本人だからとか、海外ではどうだとかって、
既存の枠に自分たちを嵌め込まない方が良いと思うけどね」

「さっすが、チーフ!じゃ、気持ち良く打ち上げ出来るように、
マジで取りに行きましょう!」

「えっ、今までマジじゃなかったの!?(笑)じゃ、お疲れ~」

「お疲れさまでした!あっ、レオンくん、明日、よろしくね!」

「はい!お疲れさまでした!」

英語研修のこと、気に病んでたけど、気に病む必要なんて全くなかったね。
そうだ!アトランティーナに言って、今日観た映画、一緒に観たら
良いんじゃない?でも、毎日、同じ映画を観るって言ったら、
アトランティーナ、なんて言うかなぁ?

「え~っ、毎日、同じ映画観るの~?」

って、ブツブツ言いそうだよね(苦笑)なんか、ブツブツ言ってる
アトランティーナの顔が目に浮かぶ(笑)なんて言うか、分かんないけど、
提案だけしてみようかな。とりあえず、今日観た映画のDVD、買って帰ろうかな。

「ただいま~」

「おかえり、ミウ!なんか、充実感が満ち溢れている顔をしているわね。
英語研修、楽しかったの?」

「うん、まあまあかな。でも、ちょっと提案っていうか、お願いがあるんだ。
その前に手洗って、着替えてくるね」

「うん、分かった!じゃ、ご飯の用意しちゃうわね」

「は~い」

アトランティーナは、いつも私が帰って来たら、すぐにご飯が食べられるように
用意してくれてる。サクッと食べて、お喋りタイムを
たくさん確保するために・・・かな?ホント、有り難いよね。

それでも、手洗って着替えたら、お手伝いしようって思うんだけど、
大抵、すでに食卓に料理が並んでるんだよね(汗)仕事がデキる人っていうのは、
何をしてもデキるもんなんだよね。

料理も美味しいし、見た目もキレイに盛り付けてあるし、
ホントにアトランティーナは、何をやっても完璧!
さすが、最高位天使だけのことはあるね。
これは、あんまり関係ないのかな?(笑)

今夜もサクッと食べて、片付けも一緒にやって、これから楽しいお喋りタイム。
私がコーヒーを淹れているとアトランティーナがデザートの用意をしてくれた。

「ミウ、テルはどうだった?」

「優秀って感じだった。話に無駄がないし、分かりやすいし、
講師にピッタリだと思ったよ」

「学歴が全てじゃないけど、一応、彼、ケンブリッジ卒だからね」

「えっ?そんなにエリートだったんだ!」

「あら、私だって、一応、ハーバード卒なんですけど」

「ひぇ~、アトランティーナって、ハーバード卒なの?私ね、過去に出会った人、
って言っても大した数じゃないけど、その中で、一番頭が良いなっていうか、
こういう人のことを頭が良いって言うんだなって思ったのが、
ハーバード卒の人なんだよね。そう考えるとアトランティーナが
ハーバード卒っていうの、納得かもね。
レオンくんもそんな感じでエリートなの?」

「レオンは、どこだっけ?あんまり興味ないから覚えてないけど、
確かレオンも世間一般から見たら、エリートだったと思うわよ」

「じゃ、真田部長も?」

「あの人は、人間としての経歴よりも宇宙的な経歴が凄まじいからね(苦笑)
人間としての経歴は全く知らないし、興味もないかしらね(笑)」

「そうなんだ。でも、真田部長も優秀な感じがするよね?」

「あら、そう?それで、レッスンは、どんな感じだったの?」

「映画を観ることになったの」

「映画?英語のレッスンじゃないの?」

「英語のレッスンなんだけど、まずは、私たちに英語脳を作ってもらいたいって
言ってた。だから、字幕なしの映画を観て、意味は考えなくて良いから、
何を言っているのか、言葉を聞き取りなさいって言われた。

でも、映画って2時間くらいあるでしょ?だから、途中までしか
観られないんだけど、その途中までを毎回、観るんだって。
それで、聞き取ることが出来るようになったら、続きを観るって感じに
するらしいよ。

あとね、レッスンの間は、極力、日本語を使わない、考えないように
するんだって。英語を聞いて、英語で考えて、英語を話すっていう感じに
するらしい。

言葉を覚えるには、まず聞いて、その言葉を真似るのが良いんだって。
私たちが赤ちゃんの時に言葉を覚えたのと同じやり方で英語を覚えて
いくんだってさ」

「なるほどね。確かに、その方が身につくかもね。英語のフレーズを
覚えたところで、実際に使えるかって言われたら、使えないことが
ほとんどだもの。だから、日本で教える英語は、学校も英会話スクールも、
クラスルーム・イングリッシュって言われちゃうのよ。教室の中でしか通用しない
英語ってね(苦笑)テルに講師を依頼して、正解だったかもしれないわね」


「真田部長もテルにお願いして良かったって言ってた。今日が初日だったから、
初日だけってことで、真田部長も参加したの。あとね、真田部長が今日だけって
言ってたけど、ポケットマネーで、私たちのお弁当も用意してくれたんだよ!」

「なかなか気が利くじゃない。それで、どんなお弁当だったの?美味しかった?」

「えっ、そこ?(笑)」

「あら、大事なことよ」

「まぁ、そうなんだけど。でも、今日は、英語を聞き取ることに集中してたから、
味なんて、全然、分かんなかった(苦笑)あれ、絶対、消化に悪いと思う」

「ははは(笑)ミウが消化のことを気にするなんて、ちょっと意外ね。
普段もあんまり噛まないんだから、消化に悪いのは、
いつものことなんじゃない?(笑)」

「そうなんだけどね(苦笑)」

「それで、参加者は?ミウのチームだけ?他のチームからの参加はあったの?」

「ううん、うちのチームだけ。だから、私を含めて6名だね」

「人数的には、ちょうど良いんじゃない?それに、目的がある人たちが揃った方が
上達も早いわよ」

「でもね、みんな、ほとんど聞き取れなかったって、暗くなってた」

「そう・・・。でも、今日が初日だし、これからなんじゃないの。
それで、ミウはどうだったの?」

「全部は、聞き取れなかったけど、少しは聞き取れたよ」

「あら、良かったじゃない!ちゃんとテルには、そう言ったの?」

「うん。みんな、ほとんど聞き取れないって言ったから、私も足並み揃えた方が
良いのかなって、一瞬、思ったんだけど、ここは本当のことを言った方が良いって
思ったから、ちゃんと本当のこと言った」

「テルには、その方が良いわね」

「他にも、みんなが何も言わない時も思ったこととか、聞きたいこととか、
全部、言ってみた。なんか、自然に出来てたよ」

「そう!それは良かった」

「うん。アトランティーナに思ったことは言った方が良いって言われてたでしょ?
相手がどう思うとか、どう感じるとかは、考える必要ない。
思ったことをそのまま言えば良いって。それね、出来てたと思う」

「ほらね、やれば出来るじゃない。それで、少しは聞き取れたって言ったら、
テルはなんて言ったの?」

「テルさんが、私が少しは聞き取れたって言ったら、メンバーに
<皆さんも少しは聞き取れたんじゃないんですか?>って聞いたの。
そしたら、メンバーの子が<チーフは、何度か海外旅行に行ってるから、
聞き取れるんだと思いますけど、私たちは、海外旅行もそんなに行ったことが
ないし、行ったとしてもツアーなので、英語を使う機会がほとんどなくて・・・。
でも、チーフは、海外に行く時、ツアーは使わないんですよね?>って言ったの」

「それで?」

「私は、ツアーだと回るところが決められちゃうから好きじゃなくて、
好きなところを好きなだけ回りたいから、ツアーでは行かないのね。
それを言った」

「そしたら?」

「テルさんが<ミウさん、英語は話せないんですよね?>って言うから、
英語で仕事をすることは出来ないけど、旅行くらいなら一人でも行けるって
答えたの。そしたら、<じゃ、少しは喋れるってことじゃないですか!
心強いですよ。レオンだけじゃなくて、ミウさんも皆さんのサポート、
お願いしますね>って言ってきたんだよね(苦笑)」

「なんか、テルらしいわね。それで、どう答えたの?」

「いきなりは無理だけど、そのうち出来るようになれば良いなとは思ってます
って答えた」

「テルは、それで納得したの?」

「納得したのかなぁ?<その気持ちが大事なんです!前向きな人が居てくれて、
良かったです!>って言ってたよ。それで、<じゃ、また来週もよろしく
お願いします!See you next week!Bye-bye♪>って帰って行った。
一応、真田部長とレオンくんに挨拶してたけどね」

「ふぅ~ん。それで、ミウは、どんな感じだったの?楽しかったの?
つまらなかったの?」

「英語脳っていうのが、衝撃的だったかな。でも、めっちゃ納得した。
それでね、英語も日本語も同じ言葉なんだなって、
ごくごく当たり前のことに気がついたの。

子供の時、どうやって話せるようになったのかまでは覚えてないけど、
たぶん、テルさんが言ってたように、パパとか、ママが話してるのを聞いてて、
覚えたんだと思うんだよね。だから、もし、パパとママが英語を話してたら、
今頃、私は英語を話してたんだよ、きっと!

だから、これからでも、意味とか、何にも考えないで、ただ、ひたすら英語を
聞いてたら、話せるようになるような気がしたの(笑)単純かもしれないけど、
この単純さもまた、私の強みなのかなって思った」

「良いじゃない、ミウ」

「あとね、今日は、いろんなことに気づいたの。テルさんが、会議室を
出て行った後、みんな気が抜けたみたいになったのね。口数も少なかったし。
だから、多少なりとも緊張してたんだなって思ったんだけど、
私は、全く緊張しなかったの。それで、なんで緊張するんだ?って考えた時、
良く思われたい、デキるって思われたいっていう気持ちがあるから
なんだよなぁって思ったの。

たぶん、今までの私には、そういう気持ちが少なからず、あったと思うの。
でも、今日の私には、きっと、それが無かったから緊張しなかったんだと
思うんだよね。誰になんて思われても、私は私なんだから、別によくない?
って思ってたような気がするの。

強気のスタンス、崩れなかったっていうか、英語云々とは関係なく、
私的にもの凄い前進だなって感じて、めっちゃ気持ち良かった」

「ホント、すごい前進ね、ミウ!おめでとう!」

「ありがとう、アトランティーナ!あとね、まだ気づいたこと、あるんだよ」

「な~に?何に気がついたの?」

「今日、帰って来る時ね、今日は、そんなに忙しくないはずなのに、
なんか、メンバーが残業しそうな感じがしたから、定時で帰るように言ったの。
なんかさ、日本人って、残業しない社員はダメな社員って思ってるとこ
あるでしょ?私は、日本人だけど、残業は嫌いだし、残業してる方が、
<自分は仕事がデキない>ってアピールしてるような気がするのね。

でも、みんなは逆で、残業してる方がデキる人だと思ってるのかなぁ、
それとも自分のこと、<デキない奴>って思ってたりするのかなぁって
考えてたの。でもね、もし、自分のことを<デキない奴>って
思ってるんだとしたら、それだけは止めて欲しいって思ったのね。


だって、自分で自分のことを<デキない奴>って、思っちゃうのって、
寂しいし、哀しいじゃん。誰が言ってくれなくても、自分だけは自分のことを
<デキる奴>って思っていたいって、自然に思えたの。

それで、『あっ、そういうことか!』って気がついたの。仕事だけじゃなくて、
色々な面で、自分だけは自分のことを信じるって、こういうことなんだって。
目からウロコっていうか、目の前がパァーッと開けたような感じがしたんだ」

「スゴイじゃない、ミウ!やっと、ここまで来たわね。それにしても、よく自分で
気づいてくれたわ。こればかりは、周りがどんなに言っても本人が気づかないと
前に進めないからね。よくやったわね、ミウ!さっきも言ったけど、おめでとう!
明日は、ケーキか何か用意しておく?」

「いや、それは良いから(苦笑)なんかね、見えたんだよね」

「何が?何が見えたの?」

「なんか、ビーカーみたいな入れ物があって、そこに一滴ずつくらいのペースで、
水が落ちてるんだよね。めっちゃゆっくりでイライラしちゃう感じなんだけど、
そのビーカーみたいな入れ物に水がいっぱいになって、溢れたところが見えたの。

これって、もしかして、ずっとアトランティーナやチェリーが言ってくれてた
ことが、私の中で満ちたってことなんじゃないかなって。それで、やっと実感を
伴って、理解することが出来たってことなんじゃないかなって。だってね、
気がついた時、よく分かんないけど、私の中が満ちたって感じがしたんだよね」

「そっかぁ・・・。一滴ずつだったかぁ。それじゃ、長くかかるわね(苦笑)
それでも、例え一滴ずつでも注いでいれば、いつかはいっぱいになって、
満ちるのよね。だから、出来なくても諦めちゃダメってことよ。
それも理解できたんじゃない?」

「そうだね。ホント、一滴ずつだったかぁ・・・って私も思ったよ(苦笑)
それでも、いっぱいになってくれて、嬉しかったし、満ちたって感じた時は、
ホント、めっちゃ気持ち良かったよ」

「でしょうね(笑)そういえば、帰って来た時、提案だとか、
お願いだとかって言ってたわよね?」

「あっ、そうそう。今日の英語研修で観た映画なんだけど、お家でも観たら、
少しは早く聞き取れるようになるかなぁと思って、これから毎日、
アトランティーナと一緒に観たいなぁって思ったの。どうかな?」

「毎日、同じ映画を観るってこと?」

「やっぱりね」

「何が、やっぱりね、なの?」

「たぶん、アトランティーナは、毎日、同じ映画を観るのをイヤがると
思ったんだよね」

「だって、飽きちゃうじゃない」

「そう言わずにつきあってくれないかなぁ?」

「映画にもよるわね。教材の映画は何?」」

「【NOTTING HILL】っていうタイトルだった」

「あ~、あの映画ね。アメリカの映画だけど、出演者のほとんどは
イギリス人だものね。だから選んだのね。ストーリーも分かりやすいし、
教材としては良い映画だと思うわ」

「アトランティーナ知ってるの?」

「知ってるわよ。でも、ミウはまだ子供だったから分からないかも
しれないわね」

「っていうことは、テルさんだって子供だったんじゃない?」

「教材として、相応しい映画を探して、辿り着いたってところじゃ
ないかしら?」


「ふぅ~ん。有名な映画なの?」

「日本でも公開されたはずよ。【ノッティングヒルの恋人】っていう映画」

「あ~、タイトルは聞いたことがある!」

「映画の仕事しているんだから、知っていて欲しかった映画ね。
私は、結構、好きな映画よ。おそらくだけど、次の映画もイギリス人が
多く出演している映画を選ぶわね。私が講師なら、そうするけど」

「なんで?」

「同じ英語でも、アメリカ人が話す英語とイギリス人が話す英語は違うのよ。
イギリス人が話す英語の方が聞き取りやすいの。だから、イギリス人が多く
出演している映画か、イギリス映画を選ぶだろうと思ったのよ」

「へぇ~、そうなんだ。じゃ、そのうち【007】とか出てくるのかな?」

「【007】はないと思うわよ。教材向きではないでしょ」

「あ~、なんとなく、分かる気がする(苦笑)でも、映画好きだから、
映画観て英語の勉強するって、ちょっと楽しみなんだよね」

「テルのことだから、そこも考えていると思うわよ。だって、映画の仕事を
している人たちに英語の勉強をしてもらうんだから、好きなことを
取り入れた方が良いじゃない」

「なるほどね。色々と計算済みってことだね」

「大した計算ではないけどね」

「それで、映画観るの、つきあってくれる?」

「良いけど、DVDは?」

「今日、帰りに買って来た♪」

「しっかり準備して。私が断らないことを知っていたわね」

「毎日、同じ映画を観るのは、イヤがると思ったけど、理由が理由なだけに、
アトランティーナは、つきあってくれると思った。それで、聞き取れない
ところは、教えてくれるんじゃないかなって」

「じゃ、私も講師代をミウからもらわなくちゃね」

「え~っ!幾ら?」

「本当に請求するはずないでしょ!でも、何も無しっていうのじゃ
面白くないから、そうね・・・デザートのケーキを買って来るっていうのは
どうかしら?」

「映画を観ながら食べるケーキね」

「そう!毎日じゃなくて良いから」

「あっ、じゃ、ケーキ以外で、ちょっとつまめるスイーツっていうのも
アリじゃない?それなら毎日、買わなくても、何日かは保つでしょ?
それで、たまにケーキ。これでどう?」

「分かったわ。それで、引き受けましょう」

「やったー!アトランティーナは、なんだかんだ言っても優しいから、絶対、
つきあってくれると思ってたんだ!ありがとう、アトランティーナ!」

「はいはい、仕方ないわね。おつきあいさせて頂くわ。それで、今夜から?」

「うん。今日は、最初に挨拶とかあって、30分くらいしか観られなかったの。
たぶんね、来週以降もそんな感じだと思うんだよね。
60分、しっかり観るなんて出来ないと思うよ」

「そうよね。昼休みを使って、だものね。昼休みが60分あるからって、
それを全部、使えるわけではないものね」

「うん。私たちも出来るだけ早く、会議室に行こうとは思ってるけどね」

「ま、難しいわね」

「ってことで、早速、お願いしても良いかな?」

「ええ。でも、まずは、映画を全部観た方が良いと思うわ。字幕アリでね。
それで、ストーリーが入っていれば、観やすくなるし、内容が分かっている分、
英語も聞き取りやすくなると思うの。だから、今夜は、字幕アリで最後まで
観ましょう。まだ、20時半くらいだし。ミウはどう思う?」

「アトランティーナが言った通りが良いと思います!」

「まったく・・・(笑)じゃ、早速、観ましょうか」

「は~い」


<次回へ続く>
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