ドラゴンレディーの目覚め

莉絵流

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怖い・・・でも、知りたい!

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アトランティーナに準備OKって言ってはみたものの、
本当に過去生に行くことが出来るのか、一抹の不安は拭いきれなくて、
なかなか、本気でリラックスすることが出来なかったの。

「ねぇ、ミウ。リラックスの仕方、忘れちゃったのかしら?
そのままだと、いつまで経っても過去生には行けないわよ。
神殿の儀式の時は、すんなり入れたのに、
いったい、どうしちゃったのかしら?」

「分かんない。なんか、身体から力が抜けないんだよね(汗)」

「怖いの?」

「分かんない・・・」

「怒らないから、今、何を感じているのかを教えてちょうだい。
そうじゃないと先に進めないから」

「そうだよね(汗)」

「ミウ、焦らなくて良いから、ゆっくり深呼吸してみて」

「はい。スゥ~、フゥ~、スゥ~、フゥ~、スゥ~、フゥ~」

「どう?少しは身体の力、抜けてきた?」

「ダメ・・・かもしれない。なんか、余計なことを考えちゃうよ」

「ねぇ、ミウ。ミウは、どうして過去生を見たいの?」

「それは・・・。今の私を変えたいから。どうしても自信が持てないのは、
私の中で、『お前は、幸せになってはいけない』とか、
『お前は、何をやっても上手くいかない』とか、
『お前なんか、もっと苦しめば良い』とかっていう声が
聞こえるような気がするの。

もちろん、毎日ってワケじゃないし、たまになんだけど、
その声がどこから来ているのかを知りたい。
そうじゃないと、これ以上、先に進めない気がするから。

もしかしたら、過去生とは関係ないところから届いている声なのかも
しれないけど、私の中で、1つ気になる過去生があるから、
そこから届いている声なのかどうかを確認したいし、過去生で
起こったことを私の思い込みじゃなくて、本当のことを知りたいから、
過去生を見てみたいって思ったの」

「そう。ちゃんと理由があるのなら、見た方が良いわよね?
どんな事実も受け取る覚悟はある?」

「・・・うん。でも、ちょっと怖いかな(苦笑)」

「そうよね。・・・私が、ミウが知りたい過去生の話をしてあげることも
出来るし、ミウの質問に答えてあげることも出来るけど、どうする?」

「それは、アトランティーナが、私が気になってる過去生のことを
知ってるってこと?」

「ええ。ミウが、どんな人生を生きて来たのか、ずっと見て来たから
知っているわよ」

「そっか・・・。そうだよね。それで、タイミングを見て、
今、こうして現れてくれたんだもんね」

「私がミウの質問に答えてあげることは簡単なことだけど、実際に、
ミウが見ることも重要だと思っているの。だから、ミウが過去生に
行きたいって言った時に協力することにしたのよ。

でも、ミウが怖いって言うのなら、やめることも出来る。
ミウが決めることよ。ミウは、どうしたいの?」

「・・・アトランティーナに聞いた方が楽だし、簡単だし、怖くないことも
分かる。でも・・・。やっぱり、自分の目で見てみたい!

ちょっと怖いけど・・・それでも、ちゃんと自分で確認した方が良いと思う。
なんか、そうじゃないと後悔しそうだから(汗)」

「分かったわ。じゃ、もう一度、トライしてみるということで良いかしら?」

「うん!今度は、ちゃんと力抜けそうな気がする」

「分かったわ。ミウの中で、覚悟が出来たっていうことね。
じゃ、早速、始めましょう」

「はい!よろしくお願いします!」

「じゃ、目を閉じて、ゆっくり呼吸をして。ミウのペースで良いわよ。
ゆっくり息を吸って、そして、ゆっくり息を吐いて。
これを何度か繰り返して、リラックスしてね。心と身体に入っている力を
抜いて、何も考えないで、真っ白にしていくのよ」

「スゥ~、フゥ~、スゥ~、フゥ~、スゥ~、フゥ~、・・・」

「ミウ、今、ミウは、どこにいるかしら?」

「・・・暗くて・・・あまり、周りが見えない」

「そう、近くに階段があると思うんだけど、どうかしら?」

「・・・あっ、あった。螺旋階段で、上に上がるのはないんだけど、
降りて行く階段がある」

「じゃ、その階段をゆっくり一段ずつ降りて行きましょう」

「はい。一段ずつだね」

「そうよ、一段飛ばしとかはなしね(笑)」

「うん、分かった(笑)ゆっくりだよね?」

「そう、ゆっくり一段ずつを踏み締めながら、降りて行って。
一つ・・・二つ・・・三つ・・・。ちゃんと降りられているかしら?」

「・・・うん。大丈夫。暗いから、ゆっくりじゃないと降りられないし」

「灯りは、何もないのかしら?」

「壁に松明みたいな感じのがある・・・かな?火が燃えてるの。
でも、怖くないよ。暗いけど、不気味でもないから大丈夫」

「そう、それは良かったわ。じゃ、続けて、一つ・・・二つ・・・三つ・・・。
まだ、階段は続いている?」

「・・・うん。でも、もう少し降りたら、踊り場?部屋?があるみたい。
暗いから、よく見えないけど・・・」

「大丈夫よ。足元にだけ意識を集中してね。落ちちゃったら大変だから。
一つ・・・二つ・・・三つ・・・。どうかしら?」

「・・・あとね、たぶんだけど、5段くらい降りたら、小さな部屋が
あるみたい」

「そう、じゃ、ゆっくり5段降りましょうね。
一つ・・・二つ・・・三つ・・・四つ・・・五つ・・・。
どう?部屋についたかしら?」

「うん。今、部屋についたよ」

「じゃ、その部屋には何があるかしら?階段は、まだ続いている?」

「続いてるみたいだけど、ここから下には壁に松明が付いてないから、
暗くて、よく見えないね」

「じゃ、部屋は、どんな感じかしら?」

「・・・小さな部屋で、扉があって、小さな椅子とテーブルがある。
でも、テーブルの上には何もないよ」

「ミウは、どうしたい?」

「扉があるから、開けてみたいけど・・・開けても良いのかな?」

「階段は?まだ暗くて、何も見えないかしら?」

「・・・うん。まだ何も見えなくて、真っ暗だから、降りられないと思う」

「そう。じゃ、扉が開くか試してみてちょうだい」

「うん、分かった」

「どう?開きそう?」

「・・・すっごく重たいけど、引いたら開きそうだよ」

「じゃ、開いてみましょうか」

「うん。・・・でも、ちょっとドキドキする」

「今は、開きたくない感じかしら?」

「開きたい気持ちと少し待ちたい気持ちがある・・・かな」

「椅子があるのよね?」

「うん。あるよ」

「じゃ、その椅子に座って、少し休みましょうか。それで、ミウが扉を
開きたくなったら、開いてみましょう。扉を開く時には、教えてね」

「うん。分かった。
・・・硬そうに見えたんだけど、この椅子、座り心地が良いよ」

「それは、良かったわ。じゃ、少しは落ち着けるわね?」

「うん。椅子に座ったら、スーッって力が抜けて、気持ち良くなってきた。
さっきまでのドキドキもおさまってきたよ。なんか、この椅子、不思議な感じ」

「そう。じゃ、そのまま休んでいると良いわ」

ミウの中に巣食っている過去生の記憶。ミウの意識の中では、とても残酷で、
苦しい経験として残っている。でも、真実は、ミウの記憶とは違う。

その真実を知ることで、今、ミウが抱えている罪悪感を手放すことが出来ると
私は信じている。私がミウに話して済ませてしまおうかと考えたことも
あったけれど、おそらく、それでは、ミウの中に残っている罪悪感を消すことは、
出来ないだろう。ミウは、私がミウを慰めるために優しい嘘をついていると
考えるだろうから・・・。でもね、ミウ。現実は、それほど残酷でもないのよ。
少なくともミウにとってはね。


<次回へ続く>
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