食欲の錬金術師〜草しか食べれない転生草食エルフは錬金術で体をいじって食の旅に出る〜

第69話 家

　トリトニア王国は基本的に魚を食べる習慣は無く、肉が手に入らない地域、野菜が手に入らない地域の人間がひもじさのあまり食べるといった印象がある。

　それ故にわざわざ魚を食べる為に取ってくると言った感覚がなく、しかも今の季節のように雪の積もる季節でもない限り、冷蔵技術のない世界では、後回しにしてしまう食材の為に、足が早いのは勿論の事、生臭さで食物としては下の下と言う扱いであった。

　蟹と海老といった気持ち悪く捨てる食材を美味しく食べた事で、トリントや組合長達も、海産物に希望を見出していた。

「それで、どうやって食材の良さを広めるのですか？」

　トリントが、フォルテに質問した。

「まずはお前達のように漁師達が海産物の良さに気づく必要がある。ここに家を建てて、毎日魚介を食べながら、漁師達にも魚介類を使った料理を食べてもらうのがいいと思うぞ。それに、他国に輸出する為に干物やオイル漬けなどの加工品を覚えてもらわないといけないからな。そうなると、俺が会社を作って誰かを雇った方がいいか？　それとも、国営の事業にするか？」

　フォルテの言葉に、トリントは真面目な顔で答える。

「できれば、我が国の事業にさせていただければと思っています。対価を払ってでも、ご教授願えればと思います」

　そう言ってトリントは頭を下げた。

「いいだろう。俺も事業をするのは面倒くさいからな。対価は俺が欲しい時に海産物を食べる権利だ。それ位いいだろう？」

「はい！　ありがとうございます」

　破格の条件である。詳しくは後で話す事にして、空き地に家を建てる許可をもらう。

　フォルテは錬金術で大きな家を建てた。

「それで、フォルテ様は漁師達に何を食べさせて理解を得るつもりですか？」

　家ができて中へ入ると、ヤコブが質問をしてきた。

　レイアは暖炉に火をつけに行き、ケミーニアやトリントが興味深そうにフォルテを見た。


「そうだな。色々な物を食べてその美味さを知って欲しいが、初めは見た目で先入観のないものの方がいいだろう。なのに、知れば結構見た目が悪い物。たこ焼きとお好み焼きを初めは食べてもらおうと思っている！」

「お好み焼きって、あのお好み焼きですか？」

　ヤコブは料理名を聞いて自分が知っているものかと質問して、ケミーニアは好物なので目を輝かせている。

「そうだ。お前達が食べた事があるのは豚玉だ。今回のはシーフードミックスにする！　お好み焼きの基本の二つのうちの一つだな。他にも色々な組み合わせができるんだ。お好みでな」

「なるほど。そういう意味なのですか」

　フォルテの説明に、ヤコブが理解して頷いた。

「たこ焼きも粉物だから似ているが、また違った美味さがあるぞ。だが、それよりもだ」

　フォルテの笑顔を見て、ヤコブもケミーニアも、戻って来たレイアも続きの言葉を察した。

「「「「今は、晩ご飯のメニューだ！」」」」

　明日以降の話は後でする事にして、今日の晩ご飯に取り掛かるのであった。