食欲の錬金術師〜草しか食べれない転生草食エルフは錬金術で体をいじって食の旅に出る〜

シュガースプーン。

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第70話 手の込んだ魚介料理1

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「今日は時間もあるし、少し手の込んだ物を作ろうか」

 先程蟹と海老をたらふく食べた所だし、夕食まで時間があるので、フォルテはそう提案した。

 と言っても、フォルテの前世ではそこまで手は込んでおらず、サッと作る方法も存在する物だ。

「ヤコブ、まずは麺を作るぞ」

「分かりました。うどんですか?」

「いや、今日はパスタだ!」

「新しい麺なのですね!」

 ヤコブは新しい料理を覚える事にテンションが上がっている。

「麺はヤコブに任せて、レイアにはスープを手伝って貰おうかな」

「分かりました!」

「レイア、後で私にも教えてください!」

「分かりました! ヤコブさんもお願いしますよ」

 レイアとヤコブは、後でお互い作った料理を教え合う約束をした。

「それじゃ、ヤコブはまず、小麦粉、オリーブオイル、卵、それから塩が少々。これをこねてくれ」

「なんだかピザに似てますね」

 ヤコブがフォルテに質問すると、フォルテは頷いた。

「同じイタリアンだしな。卵が入っている他はほぼ同じだ。簡単な変化で別の料理になる。だからお前も発想力次第でゆくゆくは新しい料理を生み出せるかもしれないぞ?」

「はい! 頑張ります!」

 ヤコブは気合いが入ったようで、体重を乗せて生地をこねていく。

 レイアはその間に、フォルテの指示でトマトの皮を炙り剥きしていた。

 綺麗に皮が剥けているのを見て、フォルテが誉めると得意げな顔である。

「それさじゃ、レイアの調理を始めるぞ。まずはな、海老の頭と殻を外していくぞ。今回使うのはさっきの伊勢海老より小さい車海老と甘エビだ。やり方はさっき食べた時に覚えたな?」

「はい!」

 レイアがフォルテに渡された大量の海老を頭と殻、剥いた身を別の容器に仕分けしていく。

 その間に、フォルテは、セロリ、玉ねぎ、ニンニクを薄切りにしていく。

 ニンニクを切る前に包丁の腹で潰すのを忘れないようにしながら、順番に切って避けておく。

「よし、レイア、剥けたら頭と殻を炒めていくぞ」

 フォルテが鍋にオリーブオイルを入れながらレイアに指示をすると、レイアは驚いた顔をした。

「フォルテ様、身ではなく頭と殻を使うのですか?」

 先程のボイルは殻も頭も捨ててしまった。
 今回はそこを使うと聞いて不思議に思ったのであろう。

「そうだ。海老は殻からいい出汁がでる。今回はそれを使うんだ」

「え!」

「フォルテ様、では先程茹でた海水は……」

「出汁の塊だな。あれに味噌を溶いただけで美味しい味噌汁、スープになる。 と、言いたい所だがな、海水で湯掻いたから塩分が多すぎるな」

 フォルテはそう言って笑っているが、レイアとヤコブは顔を見合わせて今から使う海老の頭と殻を見た。

 ヤコブへコンソメの事でゴミが美味しいスープになる事を知っている。

 レイアは毒を食おうとするまでひもじい思いをした事がある。

 ゴミだと思ったものがゴミではない事がある。
 2人は、その事を今一度心に刻むのであった。

 レイアが海老の頭と殻をを炒めている間にフォルテはヤコブに指示を出しに行き、戻ってくるとレイアが調理している鍋を覗き込んだ。

「よし、いい感じに色が変わっているからさっき俺が切った野菜を入れるか」

 隣から先ほど切ったセロリ、玉ねぎ、ニンニク、そしてバターを入れて、塩胡椒で味を整えてから、しばらく炒めた後に、玉ねぎやセロリが透明になってしんなりしてきたところで白ワインを入れる。

 水気が飛ぶくらいまでゆっくり焦がさないように気をつけながら炒めたら、そこに水と湯むきしたトマトを四つにカットした物をボトボトと放り込む。

 アクを取り除きながらしばらく煮込んで、アクが出なくなったら蓋をして、弱火でじっくり煮込んでいく。

 水気が、半分になるくらいまで煮詰めたら、今回初披露の道具を使う。

 ガラスと鉄で作ったフードプロセッサーだ。

 紐を引くと中の刃が回転する前世ではブ◯ブ◯チョッパーと呼ばれていた物に近い。

 粗熱を取った先程の煮汁を煮込んだら海老の頭やら殻などと一緒に入れて、紐を引いて粉砕していく。

 ヤコブも頼んだ仕事を終えていたし、ケミーニアも呼んで4人で手分けして鍋の中の煮汁と具材をフードプロセッサーで粉砕して別の鍋に移していく。

 粉砕加減は粉々になって具材は見えず、滑らかなスープになるまでである。

 電動のミキサーがあればスイッチ一つなのだが、この世界にないものは仕方がない。

 それが終わったら、舌触りの悪い破片などを目の細かいザルで裏ごしして取り除く。

 最後に、生クリームを入れて、沸騰しない程度に温めたら、完成である。

「よし、できたぞ。海老のビスクだ。海老の身を使っていないのに濃厚な海老の味を楽しめるトマトクリームスープだ!」

 フォルテの言葉に鍋を覗き込んだケミーニア、レイア、ヤコブの3人は、その濃厚な海老の香りに先程の海老の味を思い出して唾を飲み込んだ。

「魚介とトマトは相性が良くてな、ボイルとはまた違った美味しさがあるから楽しみにしていろ。さて、次は麺を仕上げるぞ」

 一品目のスープが出来上がり、次はヤコブが打った麺の調理に移るのであった。
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