知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

花宮

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三章 〜半年が経って〜

二十八話 『図星な言葉』

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——それからの出来事は割とうまくいった。


まず、王が捕まえられた。あっさりと。特に抵抗もしなかったらしい。
正直壮大な戦いを予想し、準備をしていたため拍子抜けした。


何なら、その場にいる全員、あっけにとられてしまっていた。だって絶対に対抗するとばかり思っていたから。
王は言った。


『もうどうでもいい。私はもう目的を果たした。』


それだけを言って、王はそのまま連行された。あまりにも、あっさりと。あっさりしすぎて、逆に罠なんじゃないかと疑ってしまった。


そして、数日が経ち、


「………レオン様。どうして、私と婚約してくれませんの?あの女は逃げたのですよ?ニコラス様と一緒に」


そんな声が飛び込んできた。……場所はリリィ……美香の部屋の前でそんなこと言うのか……。というか、ローラとニコラス様が一緒に逃げた?


その割にはレオン様の態度普通すぎないか?愛しのローラが、自分じゃない男と逃げるだなんて、絶対に許せないと思うのだが。


「逃げてなどいない。あいつらは仕事に行っただけだ。」


レオン様は淡々と答える。仕事って……何?戸惑う私とナタリー。ナタリーと同じ意見なのは癪だが、私も同じ気持ちだ。それにリリィもいねーし。


「仕事?そんなの嘘よ!だって、ニコラス様と一緒に……」


「その話はよせ。」


レオン様はナタリーの言葉を遮って、少し冷たい口調で言う。顔は無表情だが、なんとなく怒っているように思うのは私だけだろうか?


「どうしてですの……?どうしてそんな冷たい目で私を見るのですか……?私の何がいけないのでしょう……」


悲しそうに目を潤ませるナタリー。可愛いなぁおい!!と思いながらも、この場面で言うことではないので黙っておく。私は空気が読める女なのだ! レオン様は相変わらず無表情のまま何も答えない。何を考えているのか全く分からない。


「……レオン様は私の事、嫌いなのですか?だから婚約したくないと?」


「ずっと、そう言ってるが。しかも、ローラがニコラスと逃げた?勘違いも甚だしい。」


ギロッとナタリーを睨みつけるレオン様。その態度に怯みながらも、ナタリーも言い返す。


「だ、だって!」


「だっても何もない。この際だから言う。俺はお前みたいなヤツが嫌いなんだ。……昔のお前の方がよかった」


……昔のお前——要するに、私が憑依していた頃ってことだろうか?


「それが今は何だ?つまらない女になりやがって。もううんざりだ」


「なっ……!」
  

ナタリーはショックを受けたのか、口をパクパクさせながら言葉にならない声をあげている。……自業自得とはいえ、ちょっと可哀想ではある。


「……もういい。俺は行く。」


そう言って、レオン様はそのままどこかへ行ってしまった。……隠れておいて良かった、とホッとしているのも束の間。


「ちっ、何見てるのよ……っ」


ばれてしまった。


「す、すみません……。」
 

一応謝っておく。でも、勝手に盗み聞きしていたのは悪いとは思ってるけど、それは成り行きだし、私は悪くないと思う。


「あんたは——私の体に入ってた奴なんでしょ?」


……まさか気付いているとは思わなかった。


「えっと、その……」


私は何と言えばいいのか分からず、視線を彷徨わせる。すると、そんな私を見てなのか、彼女はため息を吐き出した後、呆れたように言った。


「別に隠さなくていいわ。バレバレなんだから………とゆうか、こんな女の方が良いのかしら……?は……?ありえないんですけど!?」


急にキレだしたぞこの人!?なんでこうなるんだ……。情緒不安定にも程があるだろ……これは破滅しますわ……!


「クソが!どうして私が振られるんですの!!」


ダンダン、と足を踏み鳴らしながら、大声で叫んでいる。正直やめてほしいのだが……。


「私のどこがダメなんですの!?こんなに顔が良くてもダメと言うの!?」


「……いやぁ……性格とかじゃないですかね」


思わず本音が出てしまう。だって本当にそれしか思いつかないのだもの……。


「はぁ?性格?こんなに性格が良くて、顔もいいのに?ありえないでしょう」


うーわ……こいつ自分の性格が悪いことに気づいてないタイプの人間だこれぇ……


こういうタイプの人間が一番厄介で面倒臭いんだよなぁ……
 まぁ……元々、そういう役柄だったし、仕方ない部分はあると思うけど……。


だって彼女は、悪役令嬢で意地悪を通り越して邪悪だし……いや、逆か?邪悪で意地悪だからこそ、悪役令嬢になったのだから。


「まぁ……そうですよね」


だから私はあえて肯定するような発言をする。そうすれば、更に怒ると思ったからだ。案の定と言うべきかなんというか……彼女は顔を真っ赤にして激怒していた。


「ふざけんじゃないわよ!!私のどこが邪悪なのよ!」


その自信はどこからくるのか知りたいところではあるけれど、今はその話じゃないだろうと思い直し、適当に誤魔化すことにする。


「ご、ごめんなさい……言い過ぎました」


「ふん、分かればいいのよ」


彼女は満足そうな顔をしていたが……そういうところやぞ。と私は思う。まぁ……私には関係無いことだけどね。


「じゃあ、私もう行くんで」


これ以上関わるのは面倒だと思い、その場から立ち去ろうとするが——腕を強く掴まれてしまう。痛いんだけど!!


「待ちなさい、まだ話は終わってないわ」


いやもう終わったも同然では?むしろ終わらせたつもりだったのだけど??と言いたくなったが我慢した。言ったら絶対面倒なことになるし……うん。


「……何ですか?」


渋々ではあるが聞き返すことにする。正直無視したいところだけど、そうもいかないだろう。


「あの女……イザベラ……だっけ?あれも憑依してるでしょ」


「……!?」


突然のことに驚きすぎて私は固まってしまった。
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