知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

花宮

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二章 〜思惑〜

四話 『百合フラグ』

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「す、すみません……ナタリー様……」


少し落ち着き。今私たちは、学園の裏庭にあるベンチに座っている。ローラは申し訳なさそうに謝ってきた。
私は大丈夫だよ、という風に笑うが、ローラの顔は暗いままだ。


「ローラ。急にどうしたの?何かあった?」


ローラは『いえ……何もありません』と答えたが、明らかに元気がない。いつものローラじゃないし……やっぱり気になる。


「ローラ。どうしたの?本当に。……もしかして、その……ニコラス様のことが……?」


私がそう聞くと、ローラの目が大きく見開かれる。


「そ、そういうわけじゃ……!むしろ、逆……と言うか……」


だんだん声が小さくなっていく。ローラが何を言うのか全く想像がつかないし、全然予想できない。
でも、一つ分かることは……
―――絶対に良い話ではないということ。
だって、あんなに悲痛そうな表情をしていたから。


「ローラ。私、どんなことでも受け止めるから」


だから、何でも言って?と付け足して言うと、ローラは意を決したように口を開く。


「あの……ニコラス・シャトレ様の…目が…」


「目……?」


目がどうしたんだろ……? そんなことを考えていると――ドンッ!と、大きな音がした。音の方向を見てみると――そこには、レオン様がいた。レオン様は息を切らしていて、額には汗が滲んでいた。
一体どうして……と考えていると、レオン様はこちらに向かってくる。


「ちょっと!レオン様!今いいところなんですから邪魔しないでください!空気読んで!」


何だこの空間は……カオスすぎる。リリィとレオン様の登場でローラはポカーンと口を開けている。………リリィに味方するわけじゃないけど……空気読めや!レオン様!と、心の中で悪態をつく。ローラの話聞きたいのに!


「……ローラ、場所を変えましょう。レオン様には聞かせたくないのでしょう?」


コクリとローラがうなずくのを見て、私は立ち上がり、ニッコリとリリィを見て微笑む。


「リリィ。レオン様を押さえつけといて。これは命令よ」


「――!かしこまりました!」


途端に目を輝かせ、嬉々としてレオン様を抑えに行くリリィ。そして、リリィが抑えに行っている間に私はローラを連れてその場から離れる。


レオン様の方が力が強いだろうからリリィが突破させるのは時間の問題だと思うが、少しの時間稼ぎで充分だ。


「ローラ。こっち」


と言ってローラの手を引っ張る。今度の場所は倉庫裏の人気のない所だ。ここなら誰にも聞かれないだろう。


「さ、ここなら誰も聞かれないわ。話を続けてちょうだい」


そう促すと、ローラはゆっくりと口を開いた。


「ニコラス・シャトレ様の……目が…怖いんです……」


「怖い?」


「はい……。まるで、獲物を狙うような……捕食者のような……そんな感じがして……」


ほぉーん。ニコラス様………私の友達をなんて言う目で見てるんですかねー? 私の顔が怒りに満ち溢れていることに気付いたのか、ローラは慌てて弁解を始める。


「で、でも!私の気のせいかも知れませんし!でも、気になって……!」


「そう。それで、ローラはどうしたいの?」


「どうって……言われましても……ただ、気になっているだけですし……」


ローラはそう答えるが……リリィ曰く、ニコラス・シャトレはローラのことを好きになるらしいしなー……レオン様と同じく、一目惚れしちゃった可能性あるんだよなー……


「……分かったわ。ローラはニコラス様に今後近づかず私が相手をする。これでいい?」


「え!?ナタリー様がですか……?いや、それは……ナタリー様のお手を煩わせるわけにはいかないですし……!」


「私のことは気にしなくていいの。それに……嫌なの。ローラが変なことに巻き込まれるのは」 


これは本当。変なことに巻き込まれるのは嫌だし傷つけたくないし。


「で、でも…!ナタリー様が危険な目に合うのも嫌です……!」


……ローラは本当に優しいなー。優しすぎだよ?もうちょい我がまま言ってもいいと思うんだけど?まぁ、そこがローラのいいところでもあるんだろうけど。


「……ローラ。これは私が決めたことよ。私、言いたいことは絶対に曲げない主義なの」


「……分かりました。ナタリー様がそこまで仰られるなら……お言葉に甘えさせていただきます」


ローラがそう言った。私はそれを確認してからニッコリと笑いながら。


「安心しなさい。ローラの安全は私が守るわ。…私がこう言ったからには守り抜くから安心しなさい」


「はい……!ありがとうございます!」


ローラはそう言って微笑んだ。


△▼△▼



「はぁ!?それは完璧にフラグ!百合フラグ!ヤバイじゃん!ニコラス様をダシにしてローラと急接近ってことですね!」


リリィが大声で叫ぶ。うるさい。耳元で叫ばないでほしい。私は人差し指を口に当ててシーッと言うと、リリィはハッとした表情を浮かべて口に手を当てる。


「す、すみません。つい興奮してしまい……申し訳ございません」


咳払いをしてリリィは改めてこう言った。


「それで、ナタリー様はローラ様と常に一緒にいるんですよね?」


「……そうね」



「それって、完全に恋が始まるフラグじゃないですか!」


リリィはキラキラした瞳で私を見る。恋が始まるフラグなんて一つも立ててないけど否定するとリリィが面倒臭そうなので、私は適当に相槌を打っておくことにした。


「にしても、ニコラス様は何でローラ様のことをいやらしい目で見てたんでしょうか」


「いや、いやらしい目とは言ってないわよ!?」


リリィの誤解を招く言い方に慌てて訂正する。
だが、リリィは話を聞いていなかったし、ぶつぶつと何かを呟きながら考え込んでいた。
これは、放っておいた方が良さそうだ。私はため息を吐いていると。


「ローラ様のことをいやらしい目で見てるって何てふしだらな――!」


「あー……うん、そうね」


もう面倒になって適当に返事を返す。すると、リリィは私に向かってこう言った。


「そういえばレオン様はどうするんです?レオン様には事情は話さないんですよね?とゆうか、話すなんて許しませんが」


「別に話すつもりは今のところないけれど……根掘り葉掘り聞いてこないようにリリィ、レオン様のこと見張っておいて。……ローラのためだもの。出来るわよね?」


大概、リリィはこういうと張り切って従ってくれる。ローラ関連なら尚更だ。
案の定、リリィは笑顔で「はい!」と返事をし、満面の笑みを浮かべていた。
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