知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

三章 〜半年が経って〜

二十話 『事情』

鈴木美香。かつての私の数少ない友人の一人。私がいじめられていたところを助けてもらって、それから仲良くなって、高校も一緒だ。社会人になってからは一度も会ってはなかったけれど……。
まさか、こんな形で再開するとは夢にも思っていなかった。


「……ねぇ！奈緒？あんたは何でここの世界に召喚……されたの？元の姿だから転生ではないよね？」


……やはりこういう発想になるか。まあ、普通はそう思うだろう。しかし、私の場合は特殊だ。ナタリー・アルディに転生したと思ったら、元のナタリー・アルディが私を追い出して元の身体に戻ったし。


そして精神世界では本物のリリィと会ってモニタ越しに二人の様子を見て、ナタリー・アルディの身体にまた取り憑こうとして無心で祈っていたら、神様が召喚されて元の容姿のままここの世界に来た訳だし


……改めて考えてみると、意味不明な展開だ。そもそも、転生すること自体が意味不明なんだけども。しかし、その後の展開の方が意味不明なお陰で、転生がマシに見えるから不思議だ。


……この経緯を馬鹿正直に話したら、どうなるんだろう？……美香だって転生はしてるわけだし、信じてはくれるはずだとは思う。ただ――。


「（どうやって説明しよう……）」


私は、このことをどう説明すればいいのか分からなかった。決して美香を信用していないわけではない。ただ、あまりにも常識離れし過ぎていて信じてもらえるか不安なだけだ。だが、黙っていても何も始まらない。
こうなったら、ある程度ぼやかしてでも話してみるしかないだろう。私は深呼吸して、覚悟を決めて、


「美香。今から話す内容は、信じられないかもしれない。……それでも、聞く？信じて、くれる？」


と尋ねる。すると美香は「勿論！」と言いながら。


「ええ。私だってこの身体に転生したのよ？今更、どんな不思議なことがあったとしても驚かないわ！」


と言って、笑いながら私の手をぎゅっと握ってくる。……不思議と彼女の言葉だけで気持ちが落ち着いてきた。


「……あ、あのね……」

気づけば、私は彼女に全てを話していた。ナタリー・アルディに転生したと思ったら追い出されて、元のナタリー・アルディの身体に戻ったこと。そして神様が私を召喚して、この身体になったことを……全て包み隠さずに。


美香は真剣だった。私の話を馬鹿にせずに、真剣に聞いてくれた。流石に……私がナタリー・アルディに転生したことは気づいてなかったし、驚いていたけども。そして――。


「……何というか……急展開過ぎて、どう反応すればいいのか分からないわ」


と、ため息を吐いたのだった。