67 / 75
三章 〜半年が経って〜
二十二話 『情報』
しおりを挟む「それでさー。ナタリー様……じゃなくて、奈緒。これからの方針をどうしましょう?」
美香はそう言いながら、私の淹れた紅茶を優雅に飲んでいた。私は美香の正面に座り、紅茶を一口飲む。
「ふーん。美味いじゃない。あんた、こんな才能あったのね?」
美香は紅茶を一口飲み、瞳をキラリと輝かせた。私はそんな美香に苦笑しつつ、話を続けた。
「……で、これからの方針でしょー?まずー、イザベラ様に話を聞く。これは決定事項でしょ?後は……スティブーン様、レオナルド様の観察?」
「観察?なんで?」
私が首を傾げながら、そう尋ねると、美香はドヤ顔になりながら、 私が淹れた紅茶を再び一口飲み、こう言った。
「ナタリー様の話によると犯人はイザベラ様ほぼ一択……なんですけども、イザベラ様はまだ犯人と決まったわけではありませんし、念の為、スティブーン様とレオナルド様も観察……と。ナタリー様はお二人は犯人ではないか、と私は睨んでいるわけよ」
美香の話を聞いて、私は美香の肩に手を置き、美香にこう言った。
「……私はあいつ……イザベラが犯人とそう思っているけども」
「…まぁ、そう考えた方が自然だけどさー」
美香はそう言いながら、紅茶を飲み干した。
私は空になったティーカップに再び紅茶を注ぐと美香はティーカップを見つめながら、私にこう言った。
「そういや、あのイザベラも、スティブーンもみんな転生者なんでしょ?しかもイザベラに関してはあんたの妹って……世間って狭いわよねぇ」
美香はティーカップを見つめながら、しみじみとそう言った。私はそんな美香を見つめ、ため息をつきながらこう言った。
……確かに世間って狭い。
私はそう思いながら、美香にこう言った。
「そうね。だから憎くて堪らなくてつい締め殺すところだったのよ。だからあのとき来てくれてありがとうね。美香」
私がそう言うと、美香は苦笑いしながら私にこう言った。
「……まぁ、事情が事情だからねぇ……」
同情するような眼差しで私を見つめる美香。私はそんな美香から目を逸らし、紅茶を一口飲んだ。
「……ま、いいわ。ささっとあの子を問い詰めるわよー」
そう言って、美香は紅茶を飲み干した。
私はそんな美香を見つめながら、深いため息を漏らすのであった。
△▼△▼
――そんなこんなで、今私たちは私はイザベラこと妹の前にいる。妹は不機嫌そうな顔をして、私を見ている。だが、特に私に触れることなく、ただ座っていた。
「で?なんか用?てゆうか、何でこの女もいるわけ?ナタリーとやらもいないじゃない」
妹は私と美香にそう吐き捨てた。唾が顔にかかり、私は顔をしかめた。
……美香がいなければ、とっくにぶん殴っているのに。
「忙しいときに大変申し訳ございません。イザベラ様」
「それに私を締め殺そうとした女もいるとか最悪なんだけど!私は忙しいの!」
妹はイライラした様子でそう捲し立てた。私はため息をつき、美香にこう言った。
「妹はこれになると話は聞かないから……今日はやめておくのが得策だと思うわ」
私がそう言うと美香は仕方なさそうに頷きながら、美香はイザベラにこう尋ねた。
「では、また後で来ます。でも、その前に一つ質問をさせてください」
「はぁ?なによ!」
妹は美香の質問が気に入らなかったらしく、怒りを露わにしていた。そんな妹の態度にも動じることなく美香は尋ねた。
「あの闇の魔石はどこで手に入れたんですか?」
美香がそう尋ねると、妹はビクッと肩を震わせた。
そして、美香から目を逸らしながら、小さな声でこう言った。
「そんなもの知らないわ」
妹はそう言うが、明らかに動揺していた。何かを隠しているのは目に見えて明らかだった。……そういうところは、小さい頃から、何も変わっていない。
私は妹に近付き、妹の肩を掴みながらこう言った。
「嘘をつくな。お前、知ってるんだろ」
自分の声とは思えないほど、冷たい声色を出してしまった。妹は私の手を振り払い、私を睨みながらこう言った。
……その瞳には明らかに恐怖の色が滲んでいた。
「……言え。何処で手に入れた」
妹の胸ぐらを掴むと、妹は私の腕を振りほどき、
「な、何なのよ!あんた!」
と、半ばやけになりそう叫んでいた。私はそんな妹に構うことなく、じっと妹を睨んでいると、妹はため息をつきながら、こう言った。
「あれは……もらったの」
妹がそう言う。………貰った?誰に?とゆうか、誰に貰ったんだ?と、私が首を傾げていると、妹は私を見つめ、こう続けた。
「あいつ――……あー……あいつの名前なんだっけ?確か……そう、ティモシー・ブラン。ティモシーが私にくれたのよ」
妹はにやけながら、そう言った。………ティモシー……?誰?と、私が首を傾げていると、美香が驚いたように、
「は、はぁ?ティモシー・ブランって……あの、『白銀の王子』ですか?」
………白銀の王子?何、その恥ずかしい名前。
私が呆気に取られていると、美香は妹に詰め寄りながらこう続けた。
「ティモシー様が貴方にあの魔石を渡したんですか!?」
美香は興奮した様子で、妹にそう捲し立てていた。そんな美香の様子にため息をつきながら妹は答えた。
……心なしか、頬が赤い気がするのは気のせいだろうか? 私はそんなことを思いながらも二人の会話に耳を傾けた。すると、妹がこう言った。
「そうよ。ティモシーがくれたのよ」
そう、妹が言った。
10
あなたにおすすめの小説
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい
斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。
※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。
※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる