知らない世界に転生したと思ったら、すぐ側にガチ勢がいた件について

花宮

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三章 〜半年が経って〜

二十三話 『夢とティモシー・ブラン』

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「ねえ、ティモシー・ブランって誰?」


――場所はリリィこと美香の部屋だ。メイドとはいえ、そこそこデカい部屋を与えられている。
私は美香のベッドに腰掛けながら、美香にそう尋ねた。すると、美香はこういった。


「…え?あんた知らないの?うわ……マジで……?」


ドン引き、といった表情でそう尋ねてきた。……いや、だって、私……そこらへんの勉強真面目にやってなかったし。……まあ、興味もなかったから仕方ないといえば仕方ないんだけど。
と、私がそんなことを考えていると、美香はティモシー・ブランについて説明してくれた。


「ティモシー・ブランっていうのはね。白銀の王子って呼ばれているティモシー・ブランのことよ」


美香はうっとりした表情でそう言った。
……え?惚れてるの?あんた、ローラ推しじゃなかったっけ?


「あ、もちろん!私の推しは主人公であるローラよ!でも、ティモシーのことも好きなの!……だって、ティモシーって……!」


興奮しながらそういった美香。初めてかもしれない。ローラのこと以外でこんなに早口で喋ってるの。
私がそんなことを考えていると、美香はティモシー・ブランについて語り始めた。


「ティモシー・ブランは白銀の王子って呼ばれているくらいだから、髪も瞳も銀色なの!そして性格は何を考えているのか分からないミステリアスな王子で!でも、しっかりしていて頼りになる王子なの!」


「お、おう……でも、そんな人いた…?そんなイケメン、見たこともなければ聞いたこともないんだけど」


少なくともナタリー・アルディに憑依していたときには、そんな人いないと思う。……あったとしたら、誰かしらの女子がキャーキャー騒いでいる筈だし。


「あー……そっか。ごめん、奈緒がナタリーに追い出されたときに来たから、ナタリーが知らないのも当然か」


そう言いながら、美香は納得した表情をした。……なるほど。そういうことか……ん?ということは……。


「え!?あんた、私が精神修行しているとき、あんたはティモシー・ブランに萌えてたって訳!?」


私が半年間、頑張っている間あんたは推しに萌えていたと!? 私がそう詰め寄ると、美香はこういった。


「いや、もちろん、心配はしてたわよ!でも、ティモシーに会えたことで一瞬奈緒のことを忘れたことは事実だしぶっちゃっけ、現実逃避はしてたわ!」


「あー……」


それを言われたら何も言えない。……それに関しては、私も人のこと言えないし。
私が何とも言えない表情をしていると、美香がティモシー・ブランについての説明を続けた。


「でも、ティモシーはローラのことが好きになるのよ」


「え?まじ?」


私の問いに、美香は大きく頷いた。
へー……なるほどね……まぁ、少女漫画の主人公だし、それも当然か。
少女漫画——というかハーレム漫画のヒロインは、イケメンに好かれる。それが当たり前なのだ。


そして当て馬のナタリー・アルディはローラに嫌がらせをして、嫌われる。……そして、国外追放されるルートが待っているし、このまま……。


「ねえ、今更だけどナタリー・アルディって国外追放にならないの?このままじゃ原作再現になっちゃうんじゃ……」


折角、私が回避していたのに、このままでは原作通りになるのは嫌だなぁ……、だって仮にも私はあの身体に入ってたんだよ?そんな子が国外追放になるのは嫌じゃん?!


それがどんなに嫌なやつでもさ。
私がそう尋ねると、美香はこう言った。


「その心配はしなくても大丈夫だと思う。何せ私がいるのよ?私がフォローして、ナタリーが国外追放にならないようにするわ!」


美香は自信満々にそう答えた。……まあ、確かに美香なら大丈夫かもしれない。この原作のガチ勢なわけだし。……ナタリーに嫌われても大丈夫な精神力は持っているみたいだし。


「じゃあ、私は学校に行くけど……あんたはどうするの?学校に連れていくのは流石に……」


美香がナタリーの髪をときながら、私にそう尋ねてきた。
……まあ、確かにそうだよね。私はあの学園には入学してないわけだし。……だが、ここで美香と離れるのもなぁ……


少し考えたけどもいい考えは思い浮かばなかった。


「……ここで待ってるわ。美香が帰ってくるのを」  


私がそう言うと、美香は「そう?」といった後、「じゃあ、行ってくるね!」と言って学園に行ってしまった。……さて、これからどうしよう?


「…………とりあえず、本でも読んで暇つぶししよう」


私はそう言いながらため息を吐いた。
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