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『マーク・ザッカーの独り言②』
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あれから数日が経った。レオナルド様はカトリーヌ嬢を婚約者の座から下ろし、婚約破棄をした。
そしてその数日後にマリー・アルメイダ嬢と婚約を結んだ。婚約破棄から婚約を結ぶまで、実に早かった。レオナルド様の手腕に感心するばかりだ。もちろん、悪い意味で。
さて、レオナルド様が新しく連れてきた婚約者――マリー・アルメイダ嬢。彼女はとても美しい。腰まで伸びた綺麗なストレートの金髪、パッチリとした青い目に長い睫毛、桃色に色づいた唇。
誰もが口を揃え、彼女を褒め称えた。
加えて、成績も良く、品行方正。まさに非の打ち所がない令嬢だった。家柄はカトリーヌ嬢とは下で子伯爵家なところだけがネックだ。
だが、それ以外だと特に問題がない。正直カトリーヌ嬢よりもマリー嬢の方が妃に向いているとさえ思える。ただ家柄が下なのがネックだが。
まぁ、そこら辺はレオナルド様がなんとかするだろう。
「マーク」
そんなことを思っていると、声を呼ばれた。この冷淡で、効率重視で、機械的な声は――。
「セドリックさん。どうかしましたか?」
国王の専属執事、セドリック・ブラックだ。彼は私の上司だ。私はセドリックさんを尊敬し、彼のようになりたいと思っていた。
機械のような正確さ、効率を重視するところはさすが国王の専属執事だ、と感心するばかりだ。
同じ従者として、セドリックさんのように効率よく仕事ができるようになりたいと思っている。憧れの人だ。
そんなこと、言うのは恥ずかしいので絶対に本人には言わないが。そんなことを思っていると、
「……マーク?どうした?」
「いや……すみません。ぼーっとしていました。それで、何の用でしょうか?」
セドリックさんに話しかけられているのに、ぼーっとするなんて。セドリックさんに失礼だ。
私はすぐにセドリックさんの方を向いた。すると、セドリックさんは……
「ジョン様に報告があるのですが……今、どこにいるかわかりますか?」
キョロキョロと辺りを見回しながら、セドリックさんは言った。珍しいこともあるものだ。セドリックさんがジョン様に報告なんてもんあるのか?ジョン様は国王、つまりセドリックさんの主なのだが……。
まぁいい。それよりも今はセドリックさんの質問に答えなければ。
「……ジョン様は、今はお友達と……その、友達の方と遊んでいますよ?」
ジョン様は疎遠されがちな立場だと思っていたので、友達と遊んで来る、と言われた時めちゃくちゃ驚いた。
ジョン様にも友達がいたのか、と。失礼ながらそう思ってしまった。
「………そうですか。ジョン様にご友人が……」
そしてセドリックさんも珍しく、驚いていた。いつも機械のように冷静で無表情のセドリックさんが、目を見開き驚きを露わにしている。そのことに少し面白くなった。
「意外です。セドリックさんもそんな顔をするんですね」
「私だって人間です。驚く時は驚きます」
そう言いながらも、いつもの無表情に戻ってしまった。残念だが、セドリックさんの驚く顔が見られただけでも良しとしよう。
そんなことを思っていると、セドリックさんが口を開いた。
「じゃあ、伝言をお願いできますか?ジョン様のことで」
「はい。もちろんです」
元々私は、ジョン様の専属執事だ。ジョン様のことなら、知っている必要性があるだろう。
「……それで伝言、というのは?」
首を傾げながら私がそう言うと、セドリックさんは咳払いをし、口を開いた。
そして、こう言った。
……セドリックさんの口からは信じられない言葉が飛び出したのだった。
そしてその数日後にマリー・アルメイダ嬢と婚約を結んだ。婚約破棄から婚約を結ぶまで、実に早かった。レオナルド様の手腕に感心するばかりだ。もちろん、悪い意味で。
さて、レオナルド様が新しく連れてきた婚約者――マリー・アルメイダ嬢。彼女はとても美しい。腰まで伸びた綺麗なストレートの金髪、パッチリとした青い目に長い睫毛、桃色に色づいた唇。
誰もが口を揃え、彼女を褒め称えた。
加えて、成績も良く、品行方正。まさに非の打ち所がない令嬢だった。家柄はカトリーヌ嬢とは下で子伯爵家なところだけがネックだ。
だが、それ以外だと特に問題がない。正直カトリーヌ嬢よりもマリー嬢の方が妃に向いているとさえ思える。ただ家柄が下なのがネックだが。
まぁ、そこら辺はレオナルド様がなんとかするだろう。
「マーク」
そんなことを思っていると、声を呼ばれた。この冷淡で、効率重視で、機械的な声は――。
「セドリックさん。どうかしましたか?」
国王の専属執事、セドリック・ブラックだ。彼は私の上司だ。私はセドリックさんを尊敬し、彼のようになりたいと思っていた。
機械のような正確さ、効率を重視するところはさすが国王の専属執事だ、と感心するばかりだ。
同じ従者として、セドリックさんのように効率よく仕事ができるようになりたいと思っている。憧れの人だ。
そんなこと、言うのは恥ずかしいので絶対に本人には言わないが。そんなことを思っていると、
「……マーク?どうした?」
「いや……すみません。ぼーっとしていました。それで、何の用でしょうか?」
セドリックさんに話しかけられているのに、ぼーっとするなんて。セドリックさんに失礼だ。
私はすぐにセドリックさんの方を向いた。すると、セドリックさんは……
「ジョン様に報告があるのですが……今、どこにいるかわかりますか?」
キョロキョロと辺りを見回しながら、セドリックさんは言った。珍しいこともあるものだ。セドリックさんがジョン様に報告なんてもんあるのか?ジョン様は国王、つまりセドリックさんの主なのだが……。
まぁいい。それよりも今はセドリックさんの質問に答えなければ。
「……ジョン様は、今はお友達と……その、友達の方と遊んでいますよ?」
ジョン様は疎遠されがちな立場だと思っていたので、友達と遊んで来る、と言われた時めちゃくちゃ驚いた。
ジョン様にも友達がいたのか、と。失礼ながらそう思ってしまった。
「………そうですか。ジョン様にご友人が……」
そしてセドリックさんも珍しく、驚いていた。いつも機械のように冷静で無表情のセドリックさんが、目を見開き驚きを露わにしている。そのことに少し面白くなった。
「意外です。セドリックさんもそんな顔をするんですね」
「私だって人間です。驚く時は驚きます」
そう言いながらも、いつもの無表情に戻ってしまった。残念だが、セドリックさんの驚く顔が見られただけでも良しとしよう。
そんなことを思っていると、セドリックさんが口を開いた。
「じゃあ、伝言をお願いできますか?ジョン様のことで」
「はい。もちろんです」
元々私は、ジョン様の専属執事だ。ジョン様のことなら、知っている必要性があるだろう。
「……それで伝言、というのは?」
首を傾げながら私がそう言うと、セドリックさんは咳払いをし、口を開いた。
そして、こう言った。
……セドリックさんの口からは信じられない言葉が飛び出したのだった。
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