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24話:俺、ナザレに凱旋を決意!
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俺は今日も説法と言う名の街宣活動を行い、奇蹟の力で貧民を治療した。
目の見えなかった奴は見えるようになったし、立てないババアは立てるようになる。
「医者はなんのためにあるのだ……」
なんか、そう暗い顔をしてつぶやいている奴もいた。
俺の奇蹟を見て。なんかコイツは、医者なんだろうなぁと思った。
こういった俺の神の奇蹟は、ガリラヤ地方に鳴り響いているわけだ。
おそらく、極貧集落であるナザレ村にも俺の名声は届いていることであろう。
「そろそろいいんじゃね?」
治療を終えた俺は言った。
「はい? 何がですか。イエス先生(ラビ)」
ペドロが言った。弟子にしてまだ日が浅いが一応一番弟子だ。
なんか、日に日にハゲが治って、毛が元にもどってきている気がする。
それも、アフロっぽいヘアになりつつある。
これも、俺の奇蹟のパワーの影響だろうか……
神と髪、くだらねぇぇぇ!マジで。
しかしだ――
なんか、ペドロがシモンっぽくなっているなぁと思った。
なにがシモンっぽいのか、相変わらず分からない。
時々頭に「まさと」って浮かぶ。神の啓示なのか……
まあ、そんなことを考えていながらも俺は答える。
「ナザレに帰ってみようかなーって思う」
「ああ、先生の故郷っすね」
「まあ、そうだな」
まだ1年もたってないのに、ナザレで底辺大工をやっていたのが遠い日のようである。
あのクソな村には嫌な思い出しかねーんだ。
母親がクソ売女で、ビッチのパンパンなので、酷い目にあったのだ。
村の男の大人たちは共犯関係というか、兄弟になってしまっているので、責めることができない。
しかし、子どもは容赦なし。俺や俺の弟妹はイジメの標的だった。
だが、俺は屈しなかった。徹底的にやりあったのだ。
負けと認めるまでは負けではないのだ。俺の魂は折れない。
つーか、明日に希望のない貧困が更に弱者をさがし、それを叩く構造だったのだろう。
俺や俺の弟妹をいじめまくったガキどもも、今はいい大人だ。ただし、全員貧乏人。
ひひひ、絶対にその日暮らしの貧乏人だ。それも根性最低の貧乏人。
「徹底的に、やらねばならんな。ナザレの村には然るべき、説法を…… ひひひひひひひひ」
愉悦。
今や、先生と呼ばれ、律法学者を論破しまくりの俺。
そして、未だに貧困の中で蛆虫のような生活をしているアホウども。
そんな奴らでも、救ってやらねばならぬと思うと、愉快な感じ。何とも言えん。
「しかし、先生のことをメシア(救世主)と呼ぶものも増えてきましたな」
弟子のひとりが言った。俺の周囲には結構な数の弟子がつき従っている。
「え~ 俺は言ってないよ。自分がメシアとか言ってないんだけどぉぉ~」
俺は満面の笑みを浮かべ、弟子をたしなめるのであった。
それは、オマエラが言っているんだよね。また、俺の評判を広めちゃって、もう。
「キリスト―― アナタはキリストだわ」
マリアちゃんだった。男だらけの弟子の中で、紅一点。
というか、マイラバーでマイハニーの存在。つーか、事実上の嫁。
「ん~ それは…… まあ、いいけどね」
「アナタはそうなる運命だわ。イエス・キリスト――」
碧い瞳でジッと俺を見つめるマリアちゃん。
キレイ、可愛い。マジ天使である。
「なんだい? キリストってのは? ええ~」
ペドロが突っかかるようにマリアに言った。ユダは冷笑を浮かべている。
どうも、ペドロもユダもそうなのだが、マリアをあまりよく思っていないようだ。
俺を独占しているという思いがあるのだろう。
「救世主。この地上のユダヤを救う革命を起こし、ユダヤの王になるべき存在――」
「なんじゃそりゃ! 分けわからん。神の国が来れば救われるんじゃねーのか?」
マリアがキッと強い瞳でペドロを見つめる。たじろぐペドロ。
「神の国を地上に作る。それがキリスト―― ローマ支配を……」
「その先は、言わぬ方がいいかと。今はまだ――」
ユダだった。ユダの言葉でマリアの口が止まった。
「ふんッ、まあ、アナタの言うとおりかもしれないわね。でも、いずれそのときは来るわ」
「さあ、どうでしょうかね」
弟子たちが言い争いというか、何か言っているのを俺は黙って聞いていた。
俺はそもそも、神の子なのである。
地上に使わされた神の子。これはマジ。
『人類救済計画』の遂行者として動かねばならないことになっている。
でも、この計画の詳細が全く分からん。
でもって、時々マリアとユダが話すような内容も、俺には分からん言葉が多いのだ。
なにそれ? キリストってとか思う。マジで。
つーか、それって人類救済計画と関係あるかなぁ……
このあたり、ちょっと不明確というか、計画の名前だけミステリアスな感じで、実際中身はよく考えてねーんじゃねーのとか思ったりもする。主は極めて雑な感じの性格なのだ。
俺は主との通信を試みる。どうも最近はつながらないのだ。
『もし、もし~ どーなの? 主よ。これ、いいの? なんか、キリストとか言われたけど』
『ただいま、全知全能で遍在する唯一神の吾輩は留守にしております。ピーとなりましたら、ご用件を――』
まただった。
最近は神と通信しようしても、こんなんばっか。マジで。
「キリストとかメシアとか、まあ細かけぇことはどーでもいいんだよ。俺は俺で行くから」
ビシッと俺は言った。
とにかく、今まで通り行こうと思う。神からの指示もとくにないし。
まあ、なんか不味いことやってれば、向こうからやってくるだろう。
今のところ、人類救済計画は順調といっていいのかもしれん。全容はよく知らんが。
「というわけで、まずはナザレ凱旋だよ。な、ユダよ」
「はい。イエス先生――」
「どーなの? 何人くらい動員できそう」
大量動員して、せいぜい100世帯かそこらナザレ村を圧倒するのである。
マリアちゃんとの夜のお勉強で俺は数を数えることができるようになったのだ。
産めよ増やせよ的なことをやる回数を数えるためにであった。
今までの最高は俺が14回で、マリアちゃんが20回くらい。でも、本当は倍くらいだと思う。
「ナザレの会堂の広さにもよりますが……」
「んなもん、ねーよ。貧乏村だぞ。マジで、ドンビキするレベルの貧乏村だ」
「では、どこで説法を?」
「まあ、俺の実家の土間でいいだろ。家の周囲を、こう弟子たちで囲んでな。集まった奴らを出られなくするんだよ。
で、俺の説法を聞かせて、悔い改めるまで外に出さないってのはどうだ?」
「うーん…… 悪くはないと思いますが。悔い改めたかどうか、どうやって分かるのですか?」
「んなもん、俺が決めるに決まってんじゃん。マジで。本当は神が決めるけど、その前の一次審査的な感じで」
「いんじゃねぇっすか! 先生。なあ、アンデレ」
「悔い改めない奴は、神罰、喰らう」
230センチ、体重250キロのアンデレがニィィっと兇悪な笑みを浮かべた。
俺の弟子ともなれば、神罰を地上でアウトソーシングすることも可能だろう。
「んじゃ、俺の説法が終わって、悔い改めた奴は家に帰す。それ以外の奴らは、ペドロとアンデレ――」
「はい! 先生!」
「お前らが、徹底的に教えてやればいいよ。神の国が近づいていることと、悔い改めないとどうなるかを……」
「さすが、イエス先生っす! ぱねぇや! このペドロどこまでもついていきますぜ!」
元漁師のペドロは俺の信頼に応えようと必死なのだった。
結構純真なのだ。
「では、どうしますか…… 今動員できる弟子は、5000人ほどですが」
「そんなので、移動したら、兵站がもたないわ」
「ばかか! 弟子の分散逐次投入は下策だ! 口を出すな女! 先生には奇蹟の力もあるんだ! ねえ、先生」
「まあ、そうだけどさぁ……」
俺は食い物を分裂させ、増殖させる奇蹟の能力をもっている。
しかし、止める能力が無い。だから、危険なのだ。
できれば、使いたくないのだった。
「まあ、ナザレ村程度なら1000人程度でいいんじゃね? ペドロたちもいるんだろ、オマエラがいれば、大丈夫だよ」
「へへへへへへ!! 先生! 先生にそう言われちゃ、かなわねぇ」
ペドロはニコニコである。この元漁師は俺に心酔しているのだ。
「んじゃ、行くぜ。ナザレに! このイエスの凱旋じゃぁぁぁ!!」
俺は高らかに宣言したのであった。
ガラリアの青い空にビリビリと俺の咆哮が響き渡るのであった。
目の見えなかった奴は見えるようになったし、立てないババアは立てるようになる。
「医者はなんのためにあるのだ……」
なんか、そう暗い顔をしてつぶやいている奴もいた。
俺の奇蹟を見て。なんかコイツは、医者なんだろうなぁと思った。
こういった俺の神の奇蹟は、ガリラヤ地方に鳴り響いているわけだ。
おそらく、極貧集落であるナザレ村にも俺の名声は届いていることであろう。
「そろそろいいんじゃね?」
治療を終えた俺は言った。
「はい? 何がですか。イエス先生(ラビ)」
ペドロが言った。弟子にしてまだ日が浅いが一応一番弟子だ。
なんか、日に日にハゲが治って、毛が元にもどってきている気がする。
それも、アフロっぽいヘアになりつつある。
これも、俺の奇蹟のパワーの影響だろうか……
神と髪、くだらねぇぇぇ!マジで。
しかしだ――
なんか、ペドロがシモンっぽくなっているなぁと思った。
なにがシモンっぽいのか、相変わらず分からない。
時々頭に「まさと」って浮かぶ。神の啓示なのか……
まあ、そんなことを考えていながらも俺は答える。
「ナザレに帰ってみようかなーって思う」
「ああ、先生の故郷っすね」
「まあ、そうだな」
まだ1年もたってないのに、ナザレで底辺大工をやっていたのが遠い日のようである。
あのクソな村には嫌な思い出しかねーんだ。
母親がクソ売女で、ビッチのパンパンなので、酷い目にあったのだ。
村の男の大人たちは共犯関係というか、兄弟になってしまっているので、責めることができない。
しかし、子どもは容赦なし。俺や俺の弟妹はイジメの標的だった。
だが、俺は屈しなかった。徹底的にやりあったのだ。
負けと認めるまでは負けではないのだ。俺の魂は折れない。
つーか、明日に希望のない貧困が更に弱者をさがし、それを叩く構造だったのだろう。
俺や俺の弟妹をいじめまくったガキどもも、今はいい大人だ。ただし、全員貧乏人。
ひひひ、絶対にその日暮らしの貧乏人だ。それも根性最低の貧乏人。
「徹底的に、やらねばならんな。ナザレの村には然るべき、説法を…… ひひひひひひひひ」
愉悦。
今や、先生と呼ばれ、律法学者を論破しまくりの俺。
そして、未だに貧困の中で蛆虫のような生活をしているアホウども。
そんな奴らでも、救ってやらねばならぬと思うと、愉快な感じ。何とも言えん。
「しかし、先生のことをメシア(救世主)と呼ぶものも増えてきましたな」
弟子のひとりが言った。俺の周囲には結構な数の弟子がつき従っている。
「え~ 俺は言ってないよ。自分がメシアとか言ってないんだけどぉぉ~」
俺は満面の笑みを浮かべ、弟子をたしなめるのであった。
それは、オマエラが言っているんだよね。また、俺の評判を広めちゃって、もう。
「キリスト―― アナタはキリストだわ」
マリアちゃんだった。男だらけの弟子の中で、紅一点。
というか、マイラバーでマイハニーの存在。つーか、事実上の嫁。
「ん~ それは…… まあ、いいけどね」
「アナタはそうなる運命だわ。イエス・キリスト――」
碧い瞳でジッと俺を見つめるマリアちゃん。
キレイ、可愛い。マジ天使である。
「なんだい? キリストってのは? ええ~」
ペドロが突っかかるようにマリアに言った。ユダは冷笑を浮かべている。
どうも、ペドロもユダもそうなのだが、マリアをあまりよく思っていないようだ。
俺を独占しているという思いがあるのだろう。
「救世主。この地上のユダヤを救う革命を起こし、ユダヤの王になるべき存在――」
「なんじゃそりゃ! 分けわからん。神の国が来れば救われるんじゃねーのか?」
マリアがキッと強い瞳でペドロを見つめる。たじろぐペドロ。
「神の国を地上に作る。それがキリスト―― ローマ支配を……」
「その先は、言わぬ方がいいかと。今はまだ――」
ユダだった。ユダの言葉でマリアの口が止まった。
「ふんッ、まあ、アナタの言うとおりかもしれないわね。でも、いずれそのときは来るわ」
「さあ、どうでしょうかね」
弟子たちが言い争いというか、何か言っているのを俺は黙って聞いていた。
俺はそもそも、神の子なのである。
地上に使わされた神の子。これはマジ。
『人類救済計画』の遂行者として動かねばならないことになっている。
でも、この計画の詳細が全く分からん。
でもって、時々マリアとユダが話すような内容も、俺には分からん言葉が多いのだ。
なにそれ? キリストってとか思う。マジで。
つーか、それって人類救済計画と関係あるかなぁ……
このあたり、ちょっと不明確というか、計画の名前だけミステリアスな感じで、実際中身はよく考えてねーんじゃねーのとか思ったりもする。主は極めて雑な感じの性格なのだ。
俺は主との通信を試みる。どうも最近はつながらないのだ。
『もし、もし~ どーなの? 主よ。これ、いいの? なんか、キリストとか言われたけど』
『ただいま、全知全能で遍在する唯一神の吾輩は留守にしております。ピーとなりましたら、ご用件を――』
まただった。
最近は神と通信しようしても、こんなんばっか。マジで。
「キリストとかメシアとか、まあ細かけぇことはどーでもいいんだよ。俺は俺で行くから」
ビシッと俺は言った。
とにかく、今まで通り行こうと思う。神からの指示もとくにないし。
まあ、なんか不味いことやってれば、向こうからやってくるだろう。
今のところ、人類救済計画は順調といっていいのかもしれん。全容はよく知らんが。
「というわけで、まずはナザレ凱旋だよ。な、ユダよ」
「はい。イエス先生――」
「どーなの? 何人くらい動員できそう」
大量動員して、せいぜい100世帯かそこらナザレ村を圧倒するのである。
マリアちゃんとの夜のお勉強で俺は数を数えることができるようになったのだ。
産めよ増やせよ的なことをやる回数を数えるためにであった。
今までの最高は俺が14回で、マリアちゃんが20回くらい。でも、本当は倍くらいだと思う。
「ナザレの会堂の広さにもよりますが……」
「んなもん、ねーよ。貧乏村だぞ。マジで、ドンビキするレベルの貧乏村だ」
「では、どこで説法を?」
「まあ、俺の実家の土間でいいだろ。家の周囲を、こう弟子たちで囲んでな。集まった奴らを出られなくするんだよ。
で、俺の説法を聞かせて、悔い改めるまで外に出さないってのはどうだ?」
「うーん…… 悪くはないと思いますが。悔い改めたかどうか、どうやって分かるのですか?」
「んなもん、俺が決めるに決まってんじゃん。マジで。本当は神が決めるけど、その前の一次審査的な感じで」
「いんじゃねぇっすか! 先生。なあ、アンデレ」
「悔い改めない奴は、神罰、喰らう」
230センチ、体重250キロのアンデレがニィィっと兇悪な笑みを浮かべた。
俺の弟子ともなれば、神罰を地上でアウトソーシングすることも可能だろう。
「んじゃ、俺の説法が終わって、悔い改めた奴は家に帰す。それ以外の奴らは、ペドロとアンデレ――」
「はい! 先生!」
「お前らが、徹底的に教えてやればいいよ。神の国が近づいていることと、悔い改めないとどうなるかを……」
「さすが、イエス先生っす! ぱねぇや! このペドロどこまでもついていきますぜ!」
元漁師のペドロは俺の信頼に応えようと必死なのだった。
結構純真なのだ。
「では、どうしますか…… 今動員できる弟子は、5000人ほどですが」
「そんなので、移動したら、兵站がもたないわ」
「ばかか! 弟子の分散逐次投入は下策だ! 口を出すな女! 先生には奇蹟の力もあるんだ! ねえ、先生」
「まあ、そうだけどさぁ……」
俺は食い物を分裂させ、増殖させる奇蹟の能力をもっている。
しかし、止める能力が無い。だから、危険なのだ。
できれば、使いたくないのだった。
「まあ、ナザレ村程度なら1000人程度でいいんじゃね? ペドロたちもいるんだろ、オマエラがいれば、大丈夫だよ」
「へへへへへへ!! 先生! 先生にそう言われちゃ、かなわねぇ」
ペドロはニコニコである。この元漁師は俺に心酔しているのだ。
「んじゃ、行くぜ。ナザレに! このイエスの凱旋じゃぁぁぁ!!」
俺は高らかに宣言したのであった。
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