イエス伝・底辺からの救世主! -底辺で童貞の俺に神様が奇跡の力をくれたんだが-

中七七三

文字の大きさ
35 / 44

35話:イエスは救世主か?

しおりを挟む
 神殿の神官どもと、わらわらと出てきた。

「バカどもが出てきましたぜ」
「サドカイ派のクソ神官スノッブどもかよ―― もう、いい加減論破も飽きたんだけどぉぉ」
「やっぱローマの介入はなーか」
「面倒なのでしょうな。なるべくユダヤの争いには介入したくないのでしょう」

 冷静に状況を語るのはユダだった。
 そういえば、コイツは神殿で暴れていたかな? 
 なんか顔を見なかったような気がした。
 ま、気のせいかも知れんけど。

 ユダの言うとおりローマのクソどもはこういった騒ぎは面倒くさいので介入はしてこないだろう。
 実際に、神殿の回廊のとこまで出てきてはいたが、なんもしない。傍観していただけだ。

「今の総督府のピラトは無事任期を終わらせたいだけの人物ですので――」
「ふーん、詳しいんだな」
「まあ、私は元々商人ですので。先生ラビ

 ユダはあるかなしかの韜晦の表情を見せ、俺に言った。

「で、なに? 俺を救世主メシアだって崇める集団も結構集まっているんだな――」

 俺の訊いた話では、神殿の閉鎖された正門辺りで、騒乱状態になっているらしい。
 俺を救世主として、この腐ったユダヤ社会を改革しようとするユダヤ市民革命の動きである。まあ、古代社会なんだけど。

 そんな神殿の外の喧騒とは関係なく、俺とサドカイ派の神官は対峙していた。

「このインチキ救世主メシアが! ガリラヤ地方――ナザレとかいう村の淫売の子どもじゃねぇか! だいたいあんな貧民村から救世主なんか出るわけねーだろ!」
「そうだ、救世主メシアはベツレヘムで生まれるんだよ! このインチキが!」

 言いたい放題なのであるが、この程度のことならなれている。
 ただ、面倒くさいので、全員手持ちのトンカチで血の海に沈めてやろうかと思う。
 つまり、俺の中にいる凶悪な剣の心が、「やっちゃえ! やっちゃえ!」と行動指針を示すわけですよ。
 俺はこの地に平穏をもたらすのではなく、騒乱と血をもたらすのであるな――と今気づいた。
 そもそも、平穏な改革などありえんのだ。

「わが先生ラビ救世主メシアではないという理由はなんでしょうか?」

 俺の弟子たちの中では例外的(マリアちゃん除く)インテリのユダが言った。
 まあ、ここは弟子に任せておくのも威厳があっていいかな――と思った。

「まず、ベツへレムで救世主メシアは生まれるのだ! ナザレではない。そしてダビデ王の血を引くものだ!」

「それどうでしょう?」
 
「なんだと……」

「ダビデは救世主メシアを「主」と呼んでいますが―― この意味は分りますか?」

「ぬっ……」

 ほう、そう来たかと、俺は感心した。
 ダビデの子孫が救世主メシアでありながら、ダビデはその血族を「主」と呼ぶ矛盾。
 ここを突いてきたわけだ。
 なるほどなぁ~
 
「ぐぬぬぬぬぬ!」

 神官たちは黙ってしまう。
 弟子のレベルでこれである。
 俺がでてきたら、もう手に負えないことは確実だろう。それくらい想像する頭はあると俺も期待したい。

「この騒動の始末はつけさせてやる!」

 神官たちは、苦虫を噛み潰し、その汁を堪能した顔で、ぞろぞろと帰って言った。
 だもんで、俺たちも、近くのエルサレムを出て、村に帰ったのだった。
 
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

処理中です...