イエス伝・底辺からの救世主! -底辺で童貞の俺に神様が奇跡の力をくれたんだが-

中七七三

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旧約聖書 短編集

天使のケツを掘りたがるやつがいる街は滅ぶ

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 吾輩ちょっと地上に降りて見た。神だけど。

「よう、アブラハムちゃん元気?」

 って吾輩が言ったら、なんか涼んでいたのに、土下座。
 さすがやね。べたっと地面に土下座。

「あのさぁ。いる? 嫁さんのサラちゃん」

「はい、テントの奥にいるんですけど。それより、お食事の準備しますので、まってください」

 アブラハムは良い奴だ。吾輩、コイツは見どころあると思っている。
 大洪水で人類滅ぼしたときに、生きのこらせたノアの子孫だけどね。
 過去最高レベルの義人かなぁと思う。
 
 子牛の丸焼きとバターとパンが出てきた。
 吾輩食べた。旨い。

「でさぁ、アブラハムの嫁のサラに男の子できるからね。それ教えに来た」

「え!!!! ちょっと待ってくださいよ。サラ、いい年ですよ。もう閉経してるんですけど?」

「いや、吾輩は神だからね。閉経してようがなんだろうが、孕ませ可能だから。処女でも受胎させるからね。マジで」

「マジっすか…… っぱねぇっすよ。主…… さすがですわぁ~」

 アブラハムは畏れ入っている。
 まあ、吾輩は全知全能なのであるから。
 閉経してようが、孕む。絶対に孕む。

 すると、テントの陰からサラが出てきた。
 確かにババア。見た感じももう閉経してるのである。これは。

「いや…… ちょっと、私はもうババアですよ。いやですよぉ、主よ。ほほほほほ」

 笑いやがった。

「笑ったね…… 今、笑ったよね? なにがおかしいのかな? 吾輩おかしなこと言ったの? ねえ?」

 吾輩は尊敬され、崇拝されるのが大好きなのであって、笑われるのは嫌いなのだ。
 だから、言ったのだ。吾輩の言葉で、アブラハムもサラも真っ青。

「笑ってません! もう、絶対に笑ってないです!」

 ババアのサラが真面目に言った。
 呪うかと思ったけど、ここで呪うと「男の子が生まれる」前提がどうなるの? って話になりそうなので考えた。

 まあいいわ――
 許したる。吾輩寛大。
 なぜならば、サラどころではないヤバい問題があるのだよ。
 吾輩は、一応アブラハムにそれを教えにきたのだ。

「ソドムとゴモラの街は滅ぼすわ。マジで。ダメだ。あそこ、変態の魔境。狂っとるよ。焼き払おうと思うんだけど。どう?」

「まじっすかぁぁ、っぱねーっすよ。でも、いきなり焼き払うのは、どうっすかねぇ…… あの街にもいい奴いるんじゃないっすか?」

「いるかぁ? 変態の背徳の街だぞ?」

「50人はいるかもしれんですよ」

「ん…… そうかぁ……」

 吾輩は考えた。全知全能の頭脳をつかいフル回転で考える。

 以前も、全人類を滅ぼそうと思ったら、ノアがいた。
 チンチン丸出しにして酔っぱらって寝て、それを息子みられ、なぜか孫の子孫を呪うような義人。
 この意味不明さが、吾輩は結構好き。

 確かに、ソドムやゴモラにもノアのような義人がいるやもしれん。
 アブラハムの言うことにも一理ある。

「んじゃ50人いたら、滅ぼすの止めるかぁ」

「主よ、例えばですよ、45人とかだったらどうっすか? 四捨五入すると50人っすよね!」

「ん? まあ、そうだな。ンじゃ45人でもOK」

「それじゃ切りよく40人でもいいっすよね?」

「30人は?」
「まあいいよ」
「20人は?」
「いいけど」
「じゃあ!10人」
「どこまで行くんだよ? 怒るよ? 吾輩がいくら寛大でも」

 アブラハム低姿勢で根切りやがったのである。
 気が付くと義人が10人いたら滅ぼさないことに決まっていた。

 ユダヤ人の交渉術は油断ならねーなと吾輩は思った。

 で、吾輩は、ソドムで一番の義人というロトところに、天使を送りこんだのだ。
 事前調査な。
 10人いい奴がいるかなぁって感じ。

 そしたら、天使から緊急入電だよ。ヤバいよ。

『主よ! 主よ! ヤバいです。ソドムの奴ら、俺たちを知りたいとかいって出せと暴れてます。ロトの家を取り囲んでます』
『知りたい? 教えてやれよ』
『違うんすよ! 古代ユダ社会では「知りたい」ってのは、ホモセックスです。相手を知るというのはホモセックスなんですよぉぉ!』
『マジか? やべぇ! 吾輩ホモ大嫌いなんだけどぉぉ!』
『しかも、レイプです! 無理やりです。輪姦です! ああああ! あばれてます! ヤバい、バリケードがぁぁ――』
『おい! 天使! 天使! 応答せよ! 天使――』

 現地偵察の天使からの通信が途切れた。
 
 ヤバい。
 吾輩の想像以上にソドムヤバい。
 
 ソドムの街では客がくると、町中で輪姦。
 レイプだよ……
 男、女関係なくだ。やべぇ…… 全知全能の吾輩でもドンビキ。

『―― 主、主、応答せよ、主!』
『おう! 天使か。どうよ? ヤバいの? やっぱ』
『ジジイも若者もレイプさせろと暴れてます。ロトが、娘出すといったら、娘より、オマエでてこいと、ケツ穴犯すと騒いでます!』
『クソだなぁ…‥ マジで』
『ほんと、マジで最悪ですよ。滅ぼしましょうよ。早く』
『よっしゃ! 硫黄入りの火焔をまき散らして焼払うから、ロトだけ逃がしたれ』
『了解』
『それから、後見るなと言っとけよ。見たらダメだからな。マジで!』
『ロトに伝えます!』

 で、通信は終わりだ。
 さてと、滅ぼそう。ヤバい。あんな変態の街とか、おぞましい。
 焼く。焼き尽くす。

 吾輩は、炎と硫黄をまき散らして、ソドムとゴモラを焼いた。
 消毒。これは地上の消毒なのだ。

 よし、ロトは逃げているな。よしよし。
 あああ! アホウか? また女だよ。
 なんで、女はアホウなのか――
 
 後見るなって言ったよね? 言ったよ。吾輩は言った。
 でも、見ているんだもん。塩になっちゃたよ……
 
 まあ、いっかぁ。
 地上が少しはキレイになったしなぁ。
 
 吾輩少しすっきりした。
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