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14.金を儲けて、一山当てろ! 鉱山開発だ
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「ちょっと待ってください…… 鉱山ですか――」
平賀源内といえば、一般には江戸時代の大学者というイメージ。
様々な発明をしていることなどが思い浮かぶだろう。
エレキテル、寒暖計、石綿(アスベスト)で作った火浣布のエピソード。
で、ちょっと歴史に詳しい人なら戯作家としても有名だったことや「土用の丑の日のウナギ」、そのコピーライターだったことも知っているだろう。
しかし、その本業は本草学者。いわゆる博物学者だ。
科学がまだ細分化されていない時代の科学者だ。
そして、鉱山開発に熱意を持っていたと伝えられている。
(確か、あったよな――)
俺はパソコンを漁る。
二日後に戻るというスパン短さの中で、京子と朝まで過ごしてしまったのだ。
朝までいっしょに、江戸に持っていくモノや、当時の知識について話していただけ。
全く、性的な意味皆無で、京子はしょんぼりと帰って行ったのだ。
確かに、京子は見た目は正直「可愛い」だろう。
普通にモテるだけの容姿をしている。
一四六センチの小柄で細い体。ペッタンコな胸もその種の需要があるだろう。
ただ、どうにもアイツを女としてみることはできない。
あのゲスでエロアホで下品な思考も一因かもしれないが。
(京子…… 確か、鉱山の話はしたよなぁ)
当時の幕府の財政を考えれば、鉱山から得られる収入は大きい。
また、近代化を進めるにあたっては「鉄資源」が絶対に必要になるのだ。
そんなこんなで、そう言った史料を――
「まだかい? ワタル殿。ちょちょいと出てくるかと思ったがそうでもないんだな――」
「本当は、出てくるんですけどね。江戸で使うとなると。中々……」
「ふーん。ま、その辺の仕組みは後でいいんで、鉱山地図を出してくんねぇかなぁ~」
そう言って、柿の種を手で握って口の中に放り込んだ。
ポリポリとそいつを食べながらこっちを見ている源内だった。
「地図」「鉱山」でハードディスク内を検索するがファイルはヒットしない。
そんな俺をジッと期待込めた目で見つめる平賀源内。
そして、田沼意次、意知親子も熱い視線を俺に送るのだった。
「金が必要じゃ―― とにかく、財源が、幕府は金を必要としておるのだ」
田沼意次が言った。それは分かっている。
しかし、今は1779年だ。
享保の改革が終わり、数年前時点で300万両くらいの余剰金を幕府は抱え込んでいるはずだが……
それほど、金に困っていたのか?
確かにこれから、大事業を展開するわけで、金はいくらあってもいいのだろうが。
田沼意次の言葉にはそれ以上の切迫感のような物が感じられた。
「あ、これ」
メモリから移したデータの中に「資料一覧.txt」というのがあった。
京子やるじゃん。
もしかしたら、メールに書いてあったのかもしれないが、俺はメール最後まで読んでいないのだ。
メールが来たのが結構ギリギリの時間。
しかもだ――
メールの所々に「好き、好き、好き―― 京子を抱いて。先輩の女にしてぁ、あぁぁぁん、あふぅ~」とか――
「先輩の事を想って、今、とめどなく濡れてます。ああ、濡れた指でキーボードが。先輩を欲しがって」とか――
オランダじゃなくって「フランスっぽい」文書が書き連ねてあったのだ。マドンナでもいいけど。
当然スルー。
そんなのが、書いてあるメールなど細かく読まない。当然だ。
とりあえず「ありがとう」の返信メールだけを返しておいた。
というわけで、あわただしく添付ファイルをざっと確認して、持ってきたのだ。
確か「徳川実紀」とか「鎖国論」とかはちらっとあったのを確認している。
江戸の現時点、安永八年(1879年)六月時点から見れば未来の書物だ。
あとオランダ語の辞書「波留麻和解(はるまわげ)」もあったのを見たが。
俺はそのテキストファイルをクリックした。
(アホウか、アイツは……)
俺のマウスを握る手がプルプル震えた。
「おう、ワタル殿どうしたんだい?」
「いえ、なんでもないです。すぐ見つけますから」
そのテキストには72ポイントのゴシック体で俺への愛がつづってあった。
最悪にゲスで下品でエロ極まりない文章で――
思えば、コイツの書く小説もこんなのばかりなのだ。
言葉に出すのもおぞましいような小説を書きやがるのだ。男の尻に花を活けるとか――
くそ…… 手間掛けやがって……
俺は必死に「鉱山の地図」を探したのだった。
ダース単位で呪詛の言葉を唱えながらだった。
あのチビ眼鏡の後輩に贈る言葉だ。
◇◇◇◇◇◇
「ほうぉ、これが正しい日本の形かよ。こんなかい。へえ……」
プリンターが動かないのでモニターを見ている。
源内さん、キーボードの上に柿の種の破片を……
「源内さん、これ結構精密なカラクリなんで、すいません」
「お、すまねぇな」
全然済まないと思ってっていないよって、感じの声で答える源内。
でも、こぼすのは止めた。
「なるほど…… ここが蝦夷地、なるほど確かに広大よななあぁ」
「ここが江戸となり申すか…… もう少し大きな地図も欲しゅうございますな」
大まかな地名と場所。マウスを動かして指示して説明すると、田沼親子が声を上げた。
一八世紀人らしい、未来の知識に触れた純粋な感動が見える言葉だった。
鉱山の場所を示す全国地図なのだが、そもそも、この時代の人間は正確な日本の姿を知らない。
伊能忠敬が「大日本沿海輿地全図」を完成させるのは、四〇年ほど先の話だ。
ちなみに、その地図もデータとしては入っている。
ただ、火災などで全てが残っているわけではない。国会図書館でも見れるのは一部だ。
その他、明治時代の地図や現代の正確な地図も入っている。
「ちゅーか、これじゃこまけぇ場所は分からねェが、まあ、有るってのは確かなわけだ」
「秩父鉱山ですか?」
「分かるかい? さすがだね。ワタル殿」
「一応、未来人なもんで――」
俺が見せているのは日本全国の鉱山の図だ。
鉱山の開発から閉山までの期間が西暦年で記載されている。
江戸時代には見つかっていない鉱山はその開発年を見れば分かる。
ジッと源内はモニターを見つめている。
それは秩父鉱山だ。
「やっぱ出るじゃねぇか…… オレは正しかったってわけだ」
源内は「アホウ共め」とでも言いたげに、言葉を吐いた。
そもそも、あの有名な「火浣布」はこ秩父の両神山で採取した石綿を使ったモノだ。
量が少なくて産業化は出来なかったが、歴史には名を残している。
防火剤として使える――
ってのはアズベストの健康への危険性が分かっているからだ。
難易度は高いが健康に有害ではそもそも産業化考えても仕方ない。
「なぁ、この山からどれくらいのモンが出たんだい?」
平賀源内が訊いてきた。
それも史料はあったはずだ。
今度は「秩父」で検索してファイル名がヒットした。
京子てめぇ――
こののファイル名を「秩父鉱山です! 好き好き先輩.txt」とかにしておくんじゃねーよ。
おまけに、見つけるのに手間取った「鉱山地図」は「先輩への愛の調べ 京子たん.JPG」になっていたし。
だから見つけるのに手間取ったのだ。開ける気にならねーよ。そんなファイル。
26にもなって「京子たん」じゃねーよ。マジで。
ちょっと怒りがこみ上げる。
とりあえず、その感情は置いておいて俺は、ファイルを開いた。
「中津川の鉄山ですね」
「おうよ、それだよ。ワタル殿。いや、あそこからは金も出るはずだったんだがなぁ」
「ほう…… あの鈍刀の鉄が出た山か―― 源内」
田沼意次がニヤニヤして言った。
「田沼様、ありゃ、精製する奴らの腕が未熟だった、てのもありますからね。ほら、出てますから、ちゃんと。二三〇年後の未来が俺を正しかったと言っているんですよ。この、天才・源内を!」
「まあ、分かった源内…… ソチは…… まあ、いい――」
田沼意次もなにか色々言いたいことはあるのだろう。
平賀源内が、秩父で取れた砂鉄で刀を作って田沼意次の前で、試し斬りしたというエピソードが残っている。
その刀は、見事にポキーンと折れたらしい。
でもって秩父の鉱山開発はとん挫。
「出たんだろ? 金は。なあ、ワタル殿」
自分の才能を疑うことを知らない人間なのだろう。
自信たっぷりに俺に言いきった。
平賀源内が俺の思っていた以上の天才であることは分かった。
だって、本当に秩父鉱山からは金が出たのだ。
その意味では天才です。やはり――
ただ、なんか難儀な人間であるような感じも俺はヒシヒシと感じている。
一筋縄ではいないだろう。なんせ、時の最高権力者と言ってもいい老中の田沼意次に対しこの態度なのだ。
期待に目を輝かす平賀源内に俺は正解を伝える。
「とにかく、鉄、鉛、金、銀、銅、その他色々、産出します。1934年だから…… 今からざっと155年後ですかね」
「どれくれぇ出るんだい?」
「その年には約二〇〇〇トンですか。金銀鉱石が――」
「トン?」
「ああ、ちょっと待ってください」
俺は表計算ソフトを立ち上げ、計算した。
一貫が3.75キログラムだ。
二〇〇〇トンは二〇〇万キログラムってことになる。
「ああ、五三万貫ですか」
「五三万だと! つーか、これなんだ? え? 計算するのかい?」
表計算ソフトに喰いついてくる平外源内。
オランダの温度計やら機械を弄っているのだから、算用数字も分かるのかもしれないが。
「源内さんは、この数字の文字は分かります?」
「ああ、オランダ文字だな見たことはあるし、意味も分かる」
「じゃあ、これは時間のあるときに、教えます」
「おう、頼むぜ。でだ――」
平賀源内がキュッと田沼意次の方を見た。
「田沼様ぁぁ! 掘りましょうよぉぉ! 秩父ぅぅ!! 金銀ザクザクですよ!」
「構わぬ。掘ればよかろう」
「いいんですか!」
「川越藩が、良いと言うならな。まあ、こちらからあまり余計なことは言わぬ方が良いのではないか?」
「ん~ 確かに…… ケツの穴がちいせぇからなぁ…… 幕府が口出して金出すと横取りされるんじゃねぇかと勘ぐって、ビビりやがる」
源内は腕を組んで考え込む。
「ま、金は土岐殿と商売すればどうにでもなるか―― 山のひとつやふたつ買ってもいいかぁ…‥」
ウンウンと源内は頷きながらニヤニヤ笑っていた。
この天才の頭脳中では何かの絵図が出来あがっているのだろう。
すごく雄大でちょっと無謀かもしれないようなこと。
平賀源内といえば、一般には江戸時代の大学者というイメージ。
様々な発明をしていることなどが思い浮かぶだろう。
エレキテル、寒暖計、石綿(アスベスト)で作った火浣布のエピソード。
で、ちょっと歴史に詳しい人なら戯作家としても有名だったことや「土用の丑の日のウナギ」、そのコピーライターだったことも知っているだろう。
しかし、その本業は本草学者。いわゆる博物学者だ。
科学がまだ細分化されていない時代の科学者だ。
そして、鉱山開発に熱意を持っていたと伝えられている。
(確か、あったよな――)
俺はパソコンを漁る。
二日後に戻るというスパン短さの中で、京子と朝まで過ごしてしまったのだ。
朝までいっしょに、江戸に持っていくモノや、当時の知識について話していただけ。
全く、性的な意味皆無で、京子はしょんぼりと帰って行ったのだ。
確かに、京子は見た目は正直「可愛い」だろう。
普通にモテるだけの容姿をしている。
一四六センチの小柄で細い体。ペッタンコな胸もその種の需要があるだろう。
ただ、どうにもアイツを女としてみることはできない。
あのゲスでエロアホで下品な思考も一因かもしれないが。
(京子…… 確か、鉱山の話はしたよなぁ)
当時の幕府の財政を考えれば、鉱山から得られる収入は大きい。
また、近代化を進めるにあたっては「鉄資源」が絶対に必要になるのだ。
そんなこんなで、そう言った史料を――
「まだかい? ワタル殿。ちょちょいと出てくるかと思ったがそうでもないんだな――」
「本当は、出てくるんですけどね。江戸で使うとなると。中々……」
「ふーん。ま、その辺の仕組みは後でいいんで、鉱山地図を出してくんねぇかなぁ~」
そう言って、柿の種を手で握って口の中に放り込んだ。
ポリポリとそいつを食べながらこっちを見ている源内だった。
「地図」「鉱山」でハードディスク内を検索するがファイルはヒットしない。
そんな俺をジッと期待込めた目で見つめる平賀源内。
そして、田沼意次、意知親子も熱い視線を俺に送るのだった。
「金が必要じゃ―― とにかく、財源が、幕府は金を必要としておるのだ」
田沼意次が言った。それは分かっている。
しかし、今は1779年だ。
享保の改革が終わり、数年前時点で300万両くらいの余剰金を幕府は抱え込んでいるはずだが……
それほど、金に困っていたのか?
確かにこれから、大事業を展開するわけで、金はいくらあってもいいのだろうが。
田沼意次の言葉にはそれ以上の切迫感のような物が感じられた。
「あ、これ」
メモリから移したデータの中に「資料一覧.txt」というのがあった。
京子やるじゃん。
もしかしたら、メールに書いてあったのかもしれないが、俺はメール最後まで読んでいないのだ。
メールが来たのが結構ギリギリの時間。
しかもだ――
メールの所々に「好き、好き、好き―― 京子を抱いて。先輩の女にしてぁ、あぁぁぁん、あふぅ~」とか――
「先輩の事を想って、今、とめどなく濡れてます。ああ、濡れた指でキーボードが。先輩を欲しがって」とか――
オランダじゃなくって「フランスっぽい」文書が書き連ねてあったのだ。マドンナでもいいけど。
当然スルー。
そんなのが、書いてあるメールなど細かく読まない。当然だ。
とりあえず「ありがとう」の返信メールだけを返しておいた。
というわけで、あわただしく添付ファイルをざっと確認して、持ってきたのだ。
確か「徳川実紀」とか「鎖国論」とかはちらっとあったのを確認している。
江戸の現時点、安永八年(1879年)六月時点から見れば未来の書物だ。
あとオランダ語の辞書「波留麻和解(はるまわげ)」もあったのを見たが。
俺はそのテキストファイルをクリックした。
(アホウか、アイツは……)
俺のマウスを握る手がプルプル震えた。
「おう、ワタル殿どうしたんだい?」
「いえ、なんでもないです。すぐ見つけますから」
そのテキストには72ポイントのゴシック体で俺への愛がつづってあった。
最悪にゲスで下品でエロ極まりない文章で――
思えば、コイツの書く小説もこんなのばかりなのだ。
言葉に出すのもおぞましいような小説を書きやがるのだ。男の尻に花を活けるとか――
くそ…… 手間掛けやがって……
俺は必死に「鉱山の地図」を探したのだった。
ダース単位で呪詛の言葉を唱えながらだった。
あのチビ眼鏡の後輩に贈る言葉だ。
◇◇◇◇◇◇
「ほうぉ、これが正しい日本の形かよ。こんなかい。へえ……」
プリンターが動かないのでモニターを見ている。
源内さん、キーボードの上に柿の種の破片を……
「源内さん、これ結構精密なカラクリなんで、すいません」
「お、すまねぇな」
全然済まないと思ってっていないよって、感じの声で答える源内。
でも、こぼすのは止めた。
「なるほど…… ここが蝦夷地、なるほど確かに広大よななあぁ」
「ここが江戸となり申すか…… もう少し大きな地図も欲しゅうございますな」
大まかな地名と場所。マウスを動かして指示して説明すると、田沼親子が声を上げた。
一八世紀人らしい、未来の知識に触れた純粋な感動が見える言葉だった。
鉱山の場所を示す全国地図なのだが、そもそも、この時代の人間は正確な日本の姿を知らない。
伊能忠敬が「大日本沿海輿地全図」を完成させるのは、四〇年ほど先の話だ。
ちなみに、その地図もデータとしては入っている。
ただ、火災などで全てが残っているわけではない。国会図書館でも見れるのは一部だ。
その他、明治時代の地図や現代の正確な地図も入っている。
「ちゅーか、これじゃこまけぇ場所は分からねェが、まあ、有るってのは確かなわけだ」
「秩父鉱山ですか?」
「分かるかい? さすがだね。ワタル殿」
「一応、未来人なもんで――」
俺が見せているのは日本全国の鉱山の図だ。
鉱山の開発から閉山までの期間が西暦年で記載されている。
江戸時代には見つかっていない鉱山はその開発年を見れば分かる。
ジッと源内はモニターを見つめている。
それは秩父鉱山だ。
「やっぱ出るじゃねぇか…… オレは正しかったってわけだ」
源内は「アホウ共め」とでも言いたげに、言葉を吐いた。
そもそも、あの有名な「火浣布」はこ秩父の両神山で採取した石綿を使ったモノだ。
量が少なくて産業化は出来なかったが、歴史には名を残している。
防火剤として使える――
ってのはアズベストの健康への危険性が分かっているからだ。
難易度は高いが健康に有害ではそもそも産業化考えても仕方ない。
「なぁ、この山からどれくらいのモンが出たんだい?」
平賀源内が訊いてきた。
それも史料はあったはずだ。
今度は「秩父」で検索してファイル名がヒットした。
京子てめぇ――
こののファイル名を「秩父鉱山です! 好き好き先輩.txt」とかにしておくんじゃねーよ。
おまけに、見つけるのに手間取った「鉱山地図」は「先輩への愛の調べ 京子たん.JPG」になっていたし。
だから見つけるのに手間取ったのだ。開ける気にならねーよ。そんなファイル。
26にもなって「京子たん」じゃねーよ。マジで。
ちょっと怒りがこみ上げる。
とりあえず、その感情は置いておいて俺は、ファイルを開いた。
「中津川の鉄山ですね」
「おうよ、それだよ。ワタル殿。いや、あそこからは金も出るはずだったんだがなぁ」
「ほう…… あの鈍刀の鉄が出た山か―― 源内」
田沼意次がニヤニヤして言った。
「田沼様、ありゃ、精製する奴らの腕が未熟だった、てのもありますからね。ほら、出てますから、ちゃんと。二三〇年後の未来が俺を正しかったと言っているんですよ。この、天才・源内を!」
「まあ、分かった源内…… ソチは…… まあ、いい――」
田沼意次もなにか色々言いたいことはあるのだろう。
平賀源内が、秩父で取れた砂鉄で刀を作って田沼意次の前で、試し斬りしたというエピソードが残っている。
その刀は、見事にポキーンと折れたらしい。
でもって秩父の鉱山開発はとん挫。
「出たんだろ? 金は。なあ、ワタル殿」
自分の才能を疑うことを知らない人間なのだろう。
自信たっぷりに俺に言いきった。
平賀源内が俺の思っていた以上の天才であることは分かった。
だって、本当に秩父鉱山からは金が出たのだ。
その意味では天才です。やはり――
ただ、なんか難儀な人間であるような感じも俺はヒシヒシと感じている。
一筋縄ではいないだろう。なんせ、時の最高権力者と言ってもいい老中の田沼意次に対しこの態度なのだ。
期待に目を輝かす平賀源内に俺は正解を伝える。
「とにかく、鉄、鉛、金、銀、銅、その他色々、産出します。1934年だから…… 今からざっと155年後ですかね」
「どれくれぇ出るんだい?」
「その年には約二〇〇〇トンですか。金銀鉱石が――」
「トン?」
「ああ、ちょっと待ってください」
俺は表計算ソフトを立ち上げ、計算した。
一貫が3.75キログラムだ。
二〇〇〇トンは二〇〇万キログラムってことになる。
「ああ、五三万貫ですか」
「五三万だと! つーか、これなんだ? え? 計算するのかい?」
表計算ソフトに喰いついてくる平外源内。
オランダの温度計やら機械を弄っているのだから、算用数字も分かるのかもしれないが。
「源内さんは、この数字の文字は分かります?」
「ああ、オランダ文字だな見たことはあるし、意味も分かる」
「じゃあ、これは時間のあるときに、教えます」
「おう、頼むぜ。でだ――」
平賀源内がキュッと田沼意次の方を見た。
「田沼様ぁぁ! 掘りましょうよぉぉ! 秩父ぅぅ!! 金銀ザクザクですよ!」
「構わぬ。掘ればよかろう」
「いいんですか!」
「川越藩が、良いと言うならな。まあ、こちらからあまり余計なことは言わぬ方が良いのではないか?」
「ん~ 確かに…… ケツの穴がちいせぇからなぁ…… 幕府が口出して金出すと横取りされるんじゃねぇかと勘ぐって、ビビりやがる」
源内は腕を組んで考え込む。
「ま、金は土岐殿と商売すればどうにでもなるか―― 山のひとつやふたつ買ってもいいかぁ…‥」
ウンウンと源内は頷きながらニヤニヤ笑っていた。
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