神の甲虫は魔法少女になって恩返しします

中七七三

文字の大きさ
4 / 10

4.魔法少女ロガシー

しおりを挟む
「魔法少女って…… それは」

 サシスは言いました。ここは、戦場せんじょうです。
 正確にいえば、まだ戦場せんじょうにはなっていませんが、時間の問題で戦場せんじょうになるでしょう。
 そんなところに少女がいることが不思議ふしぎといえば、不思議ふしぎです。
 多くの人たちは、このあたりから逃げています。

「魔法使いで、ボクは女の子だからね。だから魔法少女なんだ」

「魔法使い?」

 サシスはきかえしました。
 魔法使いについて、話には聞いたことがあります。
 風、火、土、水の精霊せいれいの力をかりて、不思議ふしぎな力をだす者だということをうっすらと思いだします。

 サシスは魔法使いという者にであったったのは初めてです。
 本当にそんな人がいるのかどうか、サシスは分かりません。もしかしたらいるかもしれません。
 
 でも、この目の前のかわいく、きれいな少女が「魔法使い」つまり「魔法少女」であるというのはしんじられませんでした。

「あれ、しんじられないってかおをしているね。えっと…… 名前は?」
「ボクはサシス・セソというんだ。アイウエ王国のしたっぱの兵隊へいたいだよ。今は」
「ふーん。ボクの名前はロガシーってうんだ」
「ロガシー?」

 サシスはそのきれいな少女の名を口の中でころがすように言いました。
 ロガシーと名乗った、魔法少女はむねをはっています。
 ほっそりとした体です。サシスがだききかかえたら、れてしまいそうな感じに見えました。
 
「魔法が使えるのかい? ロガシーは」

「ボクのことをうたがっているよね? いいよ。ボクのすごい魔法をみせてあげる」

 そう言うとロガシーは「トン」と一歩後ろに下がりました。
 そして、くるりとまわりをみると、ごろんところがっている大きないわをみました。

「あの大きないわをボクの魔法で木っ端こっぱみじんにするからね」

 ロガシーはニッコリ笑ってサシスに言いました。
 そのいわは、サシスの身の丈みのたけほどもあるような丸い大きないわなのです。
 サシスがどんな道具どうぐをつかっても、で木っ端こっぱみじんになどできそうにありません。

「魔法で…… そんなことができるのかい?」
「できるさ。ボクの魔法は強力なんだよ」

 フンッ! と自信たっぷりにロガシーは言いました。
 
 ロガシーは「見てて」というとすっと細い腕を前に突出し、手のひらを上に向けて構えたのです。

 ロガシーの桜色ピンクいろをしたくちびるがすっと動きました。

「にゅる にゅる にゅる ぷりぷる ぬるぬる ぷぷぷ ぬゅるりん ぬゅるりん ぷりぷり にゅるりん」

(これは、魔法の呪文じゅもんなのか?)

 サシスは思います。

「あッ!!」

 サシスは思わず声を上げていました。
 ロガシーの手のひらから、にゅるにゅると細く茶色のものが出てきたのです。
 それは、全部が茶色ではなく、ところどころ黄土色おうどいろだったり、なにかニンジンのような色をした赤いつぶつぶもまじっているようです。
 にゅるにゅるぬるぬると、手のひらから出てきた「それ」はグルグルとヘビのようにとぐろをいていきます。

 !」

 ロガシーが大きな声でそういうと、ヘビのとぐろを巻いたような茶色の物は、いきおいよくんでいきました。
 とがった方を先にして、いわに向かって一直線いっちょくせんです。

 空気がれてしまうかのようなすごい音がしました。 
 その茶色いとぐろをいたものが、いわ命中めいちゅうしたのです。
 一瞬でいわが木っ端みじんとなり、バラバラと細かい砂のようになった破片が飛んできました。

「ほら、ボクの魔法ってすごいでしょ」

 ロガシーは長い黒髪をゆらし言いました。

「す、すごい…… これが魔法なんだ……」

 サシスは、おどろきました。
 こんな、かわいく、きれいな少女が大きないわにを木っ端こっぱみじんにしたのです。
 おどろくなというほうが絶対ぜったい無理むりなのですから。

(土の精霊せいれいの魔法なのかな…… ボクは魔法にはくわしくはないけど……)

 サシスは、自分の知っている少ない魔法の知識ちしきでそう考えました。
 そして、サシスはあることを思いつきました。

「ロガシー、その魔法でボクを、いいや、ボクだけじゃない。アイウエ王国をたすけてくれないか」

「うんいいよ。ボクの魔法は、そもそも、君のために使うつもりなんだから。サシス」
 
 魔法少女ロガシーはそういってニッコリとわらうのでした。

 本当にきれいでかわいい笑顔えがおで、サシスは少しドキドキしてしまいました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

『ラーメン屋の店主が異世界転生して最高の出汁探すってよ』

髙橋彼方
児童書・童話
一ノ瀬龍拓は新宿で行列の出来るラーメン屋『龍昇』を経営していた。 新たなラーメンを求めているある日、従業員に夢が叶うと有名な神社を教えてもらう。 龍拓は神頼みでもするかと神社に行くと、御祭神に異世界にある王国ロイアルワへ飛ばされてしまう。 果たして、ここには龍拓が求めるラーメンの食材はあるのだろうか……。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

#アタシってば魔王の娘なんだけどぶっちゃけ勇者と仲良くなりたいから城を抜け出して仲間になってみようと思う

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 ハアーイハロハロー。アタシの名前はヴーゲンクリャナ・オオカマって言ぅの。てゆうか長すぎでみんなからはヴーケって呼ばれてる『普通』の女の子だょ。  最近の悩みはパパが自分の跡継ぎにするって言って修行とか勉強とかを押し付けて厳しいことカナ。てゆうかマジウザすぎてぶっちゃけやってらンない。  てゆうかそんな毎日に飽きてるンだけどタイミングよく勇者のハルトウって子に会ったのょ。思わずアタシってば囚われの身なのってウソついたら信じちゃったわけ。とりまそんなン秒でついてくよね。  てゆうか勇者一行の旅ってばビックリばっか。外の世界ってスッゴク華やかでなんでもあるしアタシってば大興奮のウキウキ気分で舞い上がっちゃった。ぶっちゃけハルトウもかわいくて優しぃし初めての旅が人生の終着点へ向かってるカモ? てゆうかアタシってばなに言っちゃってンだろね。  デモ絶対に知られちゃいけないヒミツがあるの。てゆうかアタシのパパって魔王ってヤツだし人間とは戦争バッカしてるし? てゆうか当然アタシも魔人だからバレたら秒でヤラレちゃうかもしンないみたいな?  てゆうか騙してンのは悪いと思ってるょ? でも簡単にバラすわけにもいかなくて新たな悩みが増えちゃった。これってぶっちゃけ葛藤? てゆうかどしたらいンだろね☆ミ

処理中です...