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02.ペリーのカツラ奪われる
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「貴様! 何者だ!」
英語でいえば「You! Who are you!」であろうか。
しかし、天牙独尊には英語はわからぬのであった。
が、執務室にどこかどうみても完全無欠の謎の男が来れば「誰だ? オマエは」と言うであろう。
しかも身長七尺を超え、体重は五〇貫はあろうという巨人だ。
天牙独尊は「天牙独尊だよ。君を殺しにきたんだ。悪いね」と名乗り、目的を宣言。
ペリーにとってみれば、いやな宣言である。「悪いね」と気を使われても意味がない。
で、ペリーは男が右手に持った丸太のような兇器を見る。
日本語が分からなくとも、何を目的としてきたか分かろうというものだ。
しかも、丸太は血でべっとりと濡れていた。
ペリーはすばやく引き出しから拳銃を取り出す。
S&Wのナンバー1、ダブルアクションのリボルバーだった。
が、ただ取り出せただけだ。
ペリーの眼前で何かが爆発した。机だ。そこそこ大きな机が木っ端微塵に吹っ飛んでいた。
「面白いおもちゃ持ってるじゃないか? 『ぴすとーる』というやつかね」
「貴様、いったい何が目的だ。暗殺か? 私の暗殺なのか?」
「ん~ なに言っているかわからんのだけど」
天牙独尊はぽりぽりと頭をかいた。
蓬髪からはポロポロとフケが落ちる。
もしかしたらその何割かは虱だったかもしれない。
「とりあえず、それで撃ってみるのがいいと思うよ。君たち蛮夷の『文明の利器』たるものが、人の力の前に無力であることを知るにはいい機会だ」
言葉が分からなくとも自分がバカにされたのは分かった。
分からないのなら、軍人など辞めてしまったほうがいい。
「FUCK! GODDAMNNNNNNNNN!」
ペリーはアメコミ調の叫びを上げると引き金を引いた。
銃声が鋭く空気を切り裂く。
乾いた音――
しかし――
「うん、これは存外に痛いな。痛いことは痛い」
額に当たった弾丸を指先で穿りかえし天牙独尊は言った。
その他、胸に三発ほど当たっていたが、分厚い肉が弾丸の浸透を止めていた。
とんでもない存在である。
「じゃあ、まあ死んでもらうかな」
天牙独尊は自分に言い聞かせるように言った。
丸太が唸る。
ブンッ――と、空間ごと叩き割る音がする。
が、空振りした。
天牙独尊の踏み込みに床が耐えられなかったのだ。
床を踏み抜いた分だけ、軌道がズレた。
丸太が何も無い空間を走り抜けた。
「あら…… 『鬼崩し』を空振りするなんて何年ぶりか…… ま、床が抜けたんじゃ――」
天牙独尊はそこで言葉を中断。
じっとペリーを見つめた。
そこには、カツラが吹っ飛び丸ッパゲのペリーが座り小便で震えていた。
ハゲのおっさんの座り小便。
しかも、すがるような目つきというか、涙目であった。
「い、育毛中なのにぃぃ~」
ペリーは胸の奥から搾り出すように行った。
天牙独尊は爆笑した。
その笑い声は日本派遣艦隊旗艦「サスケハナ号」に響き渡った。
◇◇◇◇◇◇
「じゃ、お前らの大将の命は助けてやる。これは貰っていくけどな」
船員たちはエミニー銃を構え、男に照準を合わせている。
が、誰も引き金を引くことができない。
引けば、己が死ぬ。
その確信を抱かせるほどに、男の背中は凶暴であり、戦力は圧倒的だった。
「じゃあな!」
男はそう言って甲板から海に飛び込んだ。
夜の闇の中、飛沫の音が響いた。
英語でいえば「You! Who are you!」であろうか。
しかし、天牙独尊には英語はわからぬのであった。
が、執務室にどこかどうみても完全無欠の謎の男が来れば「誰だ? オマエは」と言うであろう。
しかも身長七尺を超え、体重は五〇貫はあろうという巨人だ。
天牙独尊は「天牙独尊だよ。君を殺しにきたんだ。悪いね」と名乗り、目的を宣言。
ペリーにとってみれば、いやな宣言である。「悪いね」と気を使われても意味がない。
で、ペリーは男が右手に持った丸太のような兇器を見る。
日本語が分からなくとも、何を目的としてきたか分かろうというものだ。
しかも、丸太は血でべっとりと濡れていた。
ペリーはすばやく引き出しから拳銃を取り出す。
S&Wのナンバー1、ダブルアクションのリボルバーだった。
が、ただ取り出せただけだ。
ペリーの眼前で何かが爆発した。机だ。そこそこ大きな机が木っ端微塵に吹っ飛んでいた。
「面白いおもちゃ持ってるじゃないか? 『ぴすとーる』というやつかね」
「貴様、いったい何が目的だ。暗殺か? 私の暗殺なのか?」
「ん~ なに言っているかわからんのだけど」
天牙独尊はぽりぽりと頭をかいた。
蓬髪からはポロポロとフケが落ちる。
もしかしたらその何割かは虱だったかもしれない。
「とりあえず、それで撃ってみるのがいいと思うよ。君たち蛮夷の『文明の利器』たるものが、人の力の前に無力であることを知るにはいい機会だ」
言葉が分からなくとも自分がバカにされたのは分かった。
分からないのなら、軍人など辞めてしまったほうがいい。
「FUCK! GODDAMNNNNNNNNN!」
ペリーはアメコミ調の叫びを上げると引き金を引いた。
銃声が鋭く空気を切り裂く。
乾いた音――
しかし――
「うん、これは存外に痛いな。痛いことは痛い」
額に当たった弾丸を指先で穿りかえし天牙独尊は言った。
その他、胸に三発ほど当たっていたが、分厚い肉が弾丸の浸透を止めていた。
とんでもない存在である。
「じゃあ、まあ死んでもらうかな」
天牙独尊は自分に言い聞かせるように言った。
丸太が唸る。
ブンッ――と、空間ごと叩き割る音がする。
が、空振りした。
天牙独尊の踏み込みに床が耐えられなかったのだ。
床を踏み抜いた分だけ、軌道がズレた。
丸太が何も無い空間を走り抜けた。
「あら…… 『鬼崩し』を空振りするなんて何年ぶりか…… ま、床が抜けたんじゃ――」
天牙独尊はそこで言葉を中断。
じっとペリーを見つめた。
そこには、カツラが吹っ飛び丸ッパゲのペリーが座り小便で震えていた。
ハゲのおっさんの座り小便。
しかも、すがるような目つきというか、涙目であった。
「い、育毛中なのにぃぃ~」
ペリーは胸の奥から搾り出すように行った。
天牙独尊は爆笑した。
その笑い声は日本派遣艦隊旗艦「サスケハナ号」に響き渡った。
◇◇◇◇◇◇
「じゃ、お前らの大将の命は助けてやる。これは貰っていくけどな」
船員たちはエミニー銃を構え、男に照準を合わせている。
が、誰も引き金を引くことができない。
引けば、己が死ぬ。
その確信を抱かせるほどに、男の背中は凶暴であり、戦力は圧倒的だった。
「じゃあな!」
男はそう言って甲板から海に飛び込んだ。
夜の闇の中、飛沫の音が響いた。
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