異世界娼館の幻想少女とひと時を -元外科医の俺は「幻想館」の支配人-

中七七三

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2.ショタ副支配人の暗黒面

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「すいません…… 支配人マネージャ

 ラミアの巨体というか長い下半身がとぐろを巻いている。ウネウネって感じ。
 ヘビの下半身の長さは5~6メートルくらいある。

 そして、人間の上半身。それも超つく美少女がジッと俺を見つめているわけだ。
 その潤んだ黒曜石のような瞳が「本当にすいません、勘弁してくだい」と訴えているのは分かる。

 この「幻想館」でもトップを争う人気娼婦だ。
 上半身の人間部分の美貌と巨乳は幻想世界でしかあり得ないレベル。
 超ロングの黒髪が月光を吸いこみ結晶化してしているかのようだった。
 
 彼女は、超絶的美貌の人外・モンスター娼婦なのだ。

「あの…… 体で誠意を見せないとだめでしょうか―― 支配人になら、何をされても……」

 そんな彼女が、おっぱいを隠している布を外しながら言った。
 華奢な人間の上半身に「なぜ、そんなに大きいの? 重力ってなに? 進化論ってなに?」って疑問を抱かざるを得ない巨乳。
 窓から差し込む月の青い光の中で、おっぱいの白い肌が滑いるようだった。
 俺は、マシュマロを思いだす。多分、すごく柔らかいのだろう。

「いいから! そうじゃないからさぁ!」

 俺はその動きを制止させる。商品に手を出すようなモラルのない人間ではないのだ。

「いいと思うのです。この際、お仕置きを兼ねて、支配人のぶっとい肉注射をぶち込んでおくもの良いことなのです! 柔肉に支配人の恐怖エキスを注入するのです! ドロドロの!」
「え! そんなに、凄いんですか…… 支配人……」
「アホウか!! オマエ、黙れよ!! ミチル!!」

 ミチルというのは副支配人だ。
 まるで可愛らしい無垢むくな小学生男子のように見えるが、これは「ショタ族」という種族らしい。
 亜人の一種だ。
 この「幻想館」での職歴は俺よりも長い。
 しかも、俺より年上なのだ。
 心に深い闇の暗黒面を持つ俺の部下だ。
 
「それはもう…… 人外なのです! 性欲魔神なのです! 鋼の高度をもったロングランスなのです!」

「死ぬか? オマエ死にたいのか? そうか……」

 俺はミチルの襟首を掴んで持ち上げる。
 小柄な体はひょいと持ちあがる。俺にパワーがあるわけではない。

「お、犯されるのです…… 支配人は、見境ないのです…… あ、あ、あ、あ、しゃ、しゃぶれば許してくれるのですか? 全部飲むのですか?」
「アホウかぁぁぁ!! 殺す! コイツ殺す!!」

 片手でミチルを持ち上げたまま、俺は机の脇に置いてあるショートソードを手に取った。
 刃渡り60センチの歩兵用の剣だ。

「支配人落ち着いて! 剣を剣をしまってください!」

 マジで殺意を覚えた俺をボーイが止めた。

「あのう…… 支配人のをペロペロすればいいんですか?」

 ミレーヌが言った。
 オマエの耳は腐っているのか? それは飾りか?
 ピット器官むしるよ?
 25センチの長い舌をペローンと出して、俺に接近してくるミレーヌ。
 下半身がヘビだけに、舌も長い。客の評価は高いが、今はそんなことを問題にしていない。

「ちげぇぇぇよ! 聞けよ。俺の話を聞けよ! マジで!」

 頭の血管がブチブチ切れそうになりながら、俺絶叫。
 はぁはぁと息が荒くなってくる。クソ……

 ミチルは無垢な瞳で俺を見つめ黙る。この外見と中身の恐ろしさのギャップはどうにかならんのか。
 ミレーヌも神妙な感じになって、上目づかいで俺を見つめている。
 ピカ一の美貌の持ち主だが、頭の中身はかなり問題がある。

 俺は呼吸を整え、とりあえずショートソードを元の場所に置いた。

「まずさぁ、ミレーヌ」
「はい」
「絞めつけプレイはさぁ、気を付けてって言ったよね。もうこれで骨折が今月4人目だよ―― やりすぎだよ」
「すいません。でも…… お客さんが『もっと、もっとぉぉぉ、きゅんきゅんに絞めてぇぇぇ♥』って言うんですぅ」

 確かに客の中には己の肉体が破壊されるまでの快楽を望む者がいる。
 この点、ミレーヌだけを責めるわけにはいかないのは確かだった。

「今日のお客さんもか?」
「そうです―― 『殺してくれぇぇ! いっそ、絞め殺してぇぇ! 逝くから! いっちゃぅぅ!』って言うから…… つい」
「いや…… それはプロとして、ほら…… 言葉を額面通りとっちゃダメだから」
「分かってますけどぉ……」

 大きな瞳がどんどん潤んでくる。ツーッと流れ出す涙。
 透明感をもった白い肌の上を涙が流れていく。
 なんか、滅茶苦茶、罪悪感を感じるんだけどなんで?

「そうなのです! 支配人の管理が悪いのです! ミレーヌちゃんのせいではないのです!」
「黙れよ! クソ! オマエは黙れ!」

 俺は机の脇に置いたショートソードに手を伸ばす。

「イエース! 支配人! アナタの言葉は絶対なのです!!」

 コロコロ態度を変えるショタ族の副支配人。
 これも文化の違いなのか? それともやはりコイツの個人的な性格の問題なのか……

「う……ん。絞めつけプレイはオプションにするかなぁ」
「オプション? なんですか、支配人」
「別料金にして、ちゃんと注意事項を書いて、それに納得してもらった上でやるということにする」

 俺の言葉を聞いて、ミレーヌは首を傾け考える。ふわりと揺れる黒髪。
 その仕草がマジで可愛らしく、まさに幻想のモンスター少女という感じなのだ。
 俺だって、支配人という立場で無ければ……

「要するに、絞めつけプレイは、「やる」か「やらない」かを最初に決めるんだ。そして、希望する客は別料金をとって、注意事項も確認させるようにする。そうすれば、少しはマシになると思う。ミレーヌの手取りも増えることになる。絞めつけプレイの分は別料金だからな」

 俺はの言葉に、コクコクとミレーヌはうなづいた。
 彼女もお金が大好きなのだ。

「ま、ミレーヌはこれでいいとしてだ……」

 ということで、ミレーヌの問題はこれで当面は行こくことにする。
 用事が終わったミレーヌは部屋からズルズルとヘビボディを引きずって出て行った。

「おい、クズ―― オマエだ。ミチル」
「はぁぁぁ? なんですか。ボクはちゃんと仕事しているのです」

 無垢で純真な視線を真っ直ぐに俺に向ける副支配人。
 
「スキュラのシーケリアちゃんのチラシは出来たんだろうな?」
「出来たのです! 絵付なのです! もはや天才としか言いようがないのです。才能なのです」

 そう言って、羊皮紙に書いたチラシを見せる副支配人。

「ん、オマエ、絵だけは上手いな……」
「釈然としない、褒め方なのですが、まあいいのです」

 スキュラの触手。そして、俺の元の世界にあったJKの制服をイメージして作った服。
 それが、似合っているのが絵からも感じられた。

 これは、俺のアイデアだった。
 店の待合室に「幻想館」に在籍する娼婦のポスターと紹介文を貼ろうと思ったのだ。
 まあ、この世界では字の読める人間は、体感的に20%くらいじゃないかと思う。
 それでも、絵がついていれば、なにが書いてあるのかと興味を持つかもしれない。
 そして、新しい客の指名につながるかもしれないのだ。
 ビジネスなのだから、儲かる方法を考えるのは当然だった。

「まあ、紹介文は俺が書くとしてだ……」

 俺は羊皮紙を受け取り、机の上に置く。
 そして、小学生のような副支配人を見つめるのだった。

「触手舐めようとした? シーケリアちゃんの」
「……」
「娼婦(商品)には手を出すなといったよな……」
「味を見ないと、真の芸術にたどり着けないと……」
「黙れ――」

 黙るミチル。姿勢は直立不動になる。

「シーケリアちゃんだけじゃねーぞ! ホルスタイン獣人のミルキーさんのおっぱいも揉もうとしたろう!」
「違うのです! それは違います! 吸おうとしたのです!」
「余計悪いわ! 最悪だよ! オマエ! 本当に! もう、オーナーの知り合いじゃなきゃクビにしてぇぇよぉぉぉ!!」
「ボクをクビにできるのは、オーナーだけなのです。お飾りの支配人に人事権などないのです。ひゃはははははは!!」
「殺すかぁぁ!」
「ウソなのです。ボクは支配人に忠誠を誓っているのです。反省しているのです。もうしないのです。一生のお願いなのです。許してください」
 
 ペラペラと薄っぺらい謝罪の言葉をマシンガンのように吐きだすゲス野郎だった。
 しかし、コイツがある部分では有能であることも事実なのだ。クソだが。

「チッ! もういい、とにかく帳簿の整理して、先月分は終わらせてくれ。今日中に」
「分かったのです」

 ショタ族のミチルは数字にも強い。
 一応、俺がチェックしているし、一流冒険者のオーナーに対する尊敬か恐れがあるせいか、金銭でのごまかしはしない。
 エロいことはエロいし、俺を追い落とそうと暗躍することはあるが、銭金の計算に掛けては一応の矜持を持っていた。
 そして俺の「殺す」も儀式みたいなものになっている。
 本気じゃないことは、もうミチルも見切っているのだろう。
 マジで怒っているぞというメッセージ程度にしか意味はない。
 それでも、命令をきかせるには有効ではあった。

 ヤシワラは、皇国から公認をもらっている廓街(くるわまち)だが、自治権はかなり強い。
 元の世界のように「人権」なんて概念はないし、法の運用も恣意的な部分が大きい。
 無法地帯ではないが、決して安全な街ではないのだ。

 本当に殺す気だったら、その手の商売をする輩はいくらでもいるのだ。
 お互いにだ――
 
「しかし、夜は長いぜ、くそ……」

 俺は窓の外を見た。俺の部屋は三階にある。
 下にはまだ、多くの人間、亜人、その他諸々が歩いている。
 客足の勢いはまだまだこれからがピークだった。

「ま、食っていくためだよな――」

 俺はそう言って、イスに座って深く身を沈める。
 まあ、なんだかんだ言って、この世界のこの仕事はそれほど嫌ではなかったのだった。
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