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第24話 恋愛ビフォーアフター。
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なんだか、すっごくとんでもないことをしたような気がする。
一条くんとの一夜。
ただの幼なじみ、押しかけベビーシッターとその雇用主。世那くんを挟んで成立した御恩と奉公。雇用賃貸契約。だったはずなのに。
その関係がガラリと変わってしまった。
「おかえりなさい」
「バッパッ!!」
私の腕の中で世那くんが声を上げ両手を伸ばす。
「ただいま、世那、明里」
仕事から帰ってきた一条くん。ネクタイを緩めながら、出迎えた私達に近づいてくる。私から世那くんを受け取り、抱き上げると、父子で頬ずり合って相好を崩す。
「高階」が「明里」に。名前呼びに仕様変更。
それだけじゃない。
チュッ。
軽く頬に触れた唇。一条くんからのキス。
「ただいま」
もう一回、私にだけの「ただいま」。甘い笑顔。柔らかく細められた目。
「う、うん。おかえり……なさい」
そのキスにどう反応していいかわかんなくって、声が尻つぼみ。顔、どうしようもなく熱い。
一条くんって、こんなことするキャラだったんだ。すっごい甘々。
「バッパ!!」
ン~ッと、目をつむって自分の顔を突き出した世那くん。もしかして世那くん、キス待ち? 緩んだほっぺと口元。
「世那も。ただいま」
チュッと一条くんがその頬にキス。それだけで世那くんが、「キャアッ」と声を上げた。
かわいいなあ、もう。
他にも変わったことはある。
夜。
世那くんが寝た後、私は一条くんの部屋を訪れるようになった。
以前は、暗いダイニングでコーヒーを飲みながらおしゃべりするだけだったのに。
「あっ……」
ベッドの上、座る彼に跨り、膝立ちになった私。
真綿にくるまれたガラス細工を取り出すように丁寧に脱がせたかと思えば、体中に火を灯すように性急に口づけ、むしゃぶりつかれる。
乱暴に。でも優しく。そして執拗に。
その度に体の奥から煮えたぎるような熱さが生まれ、思考は蕩けていく。
今だって、胸を愛撫され、気持ちよさに体が崩れ落ちそう。でも――。
「アッ……!!」
少しでも気を抜くと、彼の切っ先が膣口に触れる。そのままズブズブと沈み込んでしまえそうなほど、私の中は熱く蕩けている。
「明里……」
熱い彼の手のひらが私の腰を掴む。
「アァン……!!」
ズクンと挿ってきたそれに、ひときわ大きく声を上げた。
ゾクゾクしたものが背中を駆け上がり、どうしようもなくなって、すがるように彼の肩に腕を回す。
初めてじゃない体は、最奥までやすやすと彼を呑み込む。互いの恥骨がぶつかり合い、腫れ上がり敏感になっていた芽が押しつぶされた。
「アッ……、ンンッ!!」
キツいとか、苦しいとかそういうのじゃない。逆に、ピッタリと私に馴染む。足りないものを埋め合わされたような感覚。
これだけでもどうにかなりそうなのに。
「アッ、ハァ……、アアッ!!」
腰を動かし、抽送をくり返す一条くん。馴染んだものを引きずり出され、押し込まれるたび、そこからさらなる快感が生まれ、何度も体に気持ちいいが押し寄せる。
乱雑に、性急に脱ぎ捨てられた服。乱れたシーツ。暗い寝室に響く音。
「明里……、明里……っ!!」
熱く乱れた一条くんの声が私を呼ぶ。
その声に応えるように、私も腰を動かす。どちらがより激しく求め、動いているのかなんて知らない。二人で絶頂の階を駆け上がるように、律動をくり返し、口づけ、互いの舌を絡め合う。
「アッ、いいっ、アッ、ンッ……」
さざ波でしかなかった愉悦が、次第に津波となって押し寄せる。最初こそ痛くて仕方なかった行為だけど、今では気持ちよくって頭が真っ白になる。どこかに押し流され、弾け飛んでしまいそうな感覚。
「アアッ……!!」
「――クッ!!」
絶頂に震えた体を強く抱きしめられ、熱を与えられる。二度。三度。
与えられる度、私の体はキツく締まり、つま先まで強張る。
「――明里」
乱れた呼気を整えつつ、グッタリと弛緩した私の頬に触れる一条くんの手。やわらかな微笑み。
――気持ちいい。
嵐のような情交のあとに、ジンワリと伝わってくる愛情。
互いの熱が、私の体の奥で溶け合わさって、混ざっていくような感覚。寄り添う素肌も熱も匂いも心地いい。まるで私のためにあつらえられたような一条くんの体。彼のために用意されたような私の体。
相性がいいというのは、こういうのを言うのかもしれない。
スキあらばキスをして。夜毎に体を交わす。時には一緒にシャワーを浴びて。それだけですまない時もあるけど、サッパリしたら、世那くんを挟んで一緒に眠る。
「どうしたの?」
常夜灯、オレンジの光がボンヤリ灯る和室。スヤスヤ眠る世那くんの向こう、頬杖ついて横たわる一条くん。暗がりでもわかる、優しい眼差し。
「なんでもない。おやすみ」
その視線が妙にこそばゆく恥ずかしくて、布団をひっかぶって目を閉じた。
* * * *
「今日は、水族館に行こうか」
土曜日。
一条くんが言い出した。
本当は公園でボール遊びを予定してたんだけど、天気予報の傘マークはまったく消える気配を見せなくて。当日になっても「だから雨だって言ってんじゃん」みたいなドヤ顔でシトシトと雨を降らせていた。
水族館なら、雨でも楽しめるし。
そういう理由かと思ってたら。
「魚なら、明里も怖くないだろ?」
そっちか。
まあ、魚は追いかけてきたり、かかとを攻撃したりしない。
「世那くん。パパが水族館に連れて行ってくれるって。お魚さんいっぱい、楽しみだね~」
私の苦手対策じゃなく、あくまで世那くんの情操教育。世那くんにいっぱい楽しんで、お魚を覚えてもらう作戦。
「オッカ、ナ~」
おしい。
最近の世那くんは、よく喋る。
水族館は、公共交通機関でのアクセスもよく、久々の電車に乗った世那くんは、それだけで大喜びだった。人見知り発動して泣くかぐずるか不安だったけど、意外に静かに一条くんに抱っこされ、外の景色を見るだけだった。もちろん、何かしら指さして「ア~ウ~」おしゃべりしたけど。
大きな水飛沫をあげ、音楽に合わせて飛ぶイルカたち。
暗い蒼の水の中、白くフンワリゆらめくクラゲ。
キラキラと水面の白い網が降り注ぐ海中トンネル。
ヨチヨチ歩きのペンギン。ヌッとこちらに顔をむけてくれたアザラシ。色とりどりの熱帯。巨大な影のように群れなす小さな魚。
「オッオ~、オ~」
その一つひとつに世那くんが声を上げる。
見るものすべてが新鮮で、見るものすべてが驚きで。
世那くんの世界が少しずつ広がっていくのを感じる。
今こうして見てること、感じてることは彼の記憶に残らないかもしれないけど、それでも、こうして出かけたことはきっと彼の心の糧になる。
そんなことを考えながら、ショップ前にあるベンチに腰かける。
一条くんと店内でぬいぐるみを選ぶ世那くん。なんてかわいい。かわいいけど……疲れた。夕べの後遺症で、腰のあたりがジンワリ重い。昨日はちょっと無理しちゃったからなあ。
「――お疲れ」
目の前に差し出されたペットボトル。差し出してくれたのは一条くん。世那くんだけじゃなく、私のことも気づかってくれる。
冷たいお茶が心地よい。
隣に腰掛けた一条くんに、求められるままペットボトルを手渡すと、彼が続けて残りを口にした。
ゴクリと鳴らされた喉が軽く上下する。
間接キス。――照れてどうする。今更。
「世那くん、楽しそうでよかった」
ベンチから少し離れたところを歩き回る世那くん。その手には青いイルカのぬいぐるみ。
今日一日で一気にお気に入りになった生き物、「イゥカ」。いろいろおしい。そんなに大きくないぬいぐるみなのに、世那くんが持つと抱えるぐらいの大きさになる。
時折イルカの影からヒョコッと顔を見せて、ニコッ。
「ねえ、一条くん」
「なに?」
「いけないとわかってるけどさ。あのイルカ、もっと買ってあげたくなるわ」
イルカだけじゃない。アザラシもペンギンもおさかなも。
ショップのなかのもの。「あそこの棚にあるもの全部いただくわ」したい。
「ダメだろ、それは」
クスクスと一条くんが笑う。
「欲張りな明里には、これを。手を出して」
なに?
言われるまま、何かを受け取るように手を出すと、ひっくり返され下から支え持ち上げられる。――指輪?
左手の中指。
そこにはまったイルカの形、銀色の指輪。
「今日の記念。世那とおそろいイルカ」
「一条くん……」
「ホントはもっと気の利いたものを贈りたいけど。今はこれで」
見ると、少しだけ一条くんの頬が赤い。視線が合うと、ツイッと外されてしまった。
「ありがとう。うれしい。大事にする」
なんたって、好きな人からの贈り物第一号だもん。大事にしないわけがない。ギュッと指輪ごと手を抱きしめる。すっごいサプライズ。涙出そう。
「バッパ!!」
私達のもとに戻ってきた世那くん。イルカを抱えたままこっちを見上げてくる。
「世那」
一条くんが膝の上に座らせようとしたら、ズルリと腕の中から逃げ出した。まるで抱っこ拒否の猫。すべるように私と一条くんの間に陣取って座る。
「バッパ」
世那くんが一条くんを見上げる。
「アァイ!!」
世那くんが私を見上げる。――「アァイ」って私のこと?
私、「タァ、ナッ」から「アァイ」に語形変化?
思わず一条くんと顔を見合わせる。すると、世那くんがニコォッと笑って、イルカのぬいぐるみに顔を埋めた。
なにこれ。なにこのかわいい生き物。
やっぱりお店のもの全部お買い上げして、お持ち帰りしたいわ。
一条くんとの一夜。
ただの幼なじみ、押しかけベビーシッターとその雇用主。世那くんを挟んで成立した御恩と奉公。雇用賃貸契約。だったはずなのに。
その関係がガラリと変わってしまった。
「おかえりなさい」
「バッパッ!!」
私の腕の中で世那くんが声を上げ両手を伸ばす。
「ただいま、世那、明里」
仕事から帰ってきた一条くん。ネクタイを緩めながら、出迎えた私達に近づいてくる。私から世那くんを受け取り、抱き上げると、父子で頬ずり合って相好を崩す。
「高階」が「明里」に。名前呼びに仕様変更。
それだけじゃない。
チュッ。
軽く頬に触れた唇。一条くんからのキス。
「ただいま」
もう一回、私にだけの「ただいま」。甘い笑顔。柔らかく細められた目。
「う、うん。おかえり……なさい」
そのキスにどう反応していいかわかんなくって、声が尻つぼみ。顔、どうしようもなく熱い。
一条くんって、こんなことするキャラだったんだ。すっごい甘々。
「バッパ!!」
ン~ッと、目をつむって自分の顔を突き出した世那くん。もしかして世那くん、キス待ち? 緩んだほっぺと口元。
「世那も。ただいま」
チュッと一条くんがその頬にキス。それだけで世那くんが、「キャアッ」と声を上げた。
かわいいなあ、もう。
他にも変わったことはある。
夜。
世那くんが寝た後、私は一条くんの部屋を訪れるようになった。
以前は、暗いダイニングでコーヒーを飲みながらおしゃべりするだけだったのに。
「あっ……」
ベッドの上、座る彼に跨り、膝立ちになった私。
真綿にくるまれたガラス細工を取り出すように丁寧に脱がせたかと思えば、体中に火を灯すように性急に口づけ、むしゃぶりつかれる。
乱暴に。でも優しく。そして執拗に。
その度に体の奥から煮えたぎるような熱さが生まれ、思考は蕩けていく。
今だって、胸を愛撫され、気持ちよさに体が崩れ落ちそう。でも――。
「アッ……!!」
少しでも気を抜くと、彼の切っ先が膣口に触れる。そのままズブズブと沈み込んでしまえそうなほど、私の中は熱く蕩けている。
「明里……」
熱い彼の手のひらが私の腰を掴む。
「アァン……!!」
ズクンと挿ってきたそれに、ひときわ大きく声を上げた。
ゾクゾクしたものが背中を駆け上がり、どうしようもなくなって、すがるように彼の肩に腕を回す。
初めてじゃない体は、最奥までやすやすと彼を呑み込む。互いの恥骨がぶつかり合い、腫れ上がり敏感になっていた芽が押しつぶされた。
「アッ……、ンンッ!!」
キツいとか、苦しいとかそういうのじゃない。逆に、ピッタリと私に馴染む。足りないものを埋め合わされたような感覚。
これだけでもどうにかなりそうなのに。
「アッ、ハァ……、アアッ!!」
腰を動かし、抽送をくり返す一条くん。馴染んだものを引きずり出され、押し込まれるたび、そこからさらなる快感が生まれ、何度も体に気持ちいいが押し寄せる。
乱雑に、性急に脱ぎ捨てられた服。乱れたシーツ。暗い寝室に響く音。
「明里……、明里……っ!!」
熱く乱れた一条くんの声が私を呼ぶ。
その声に応えるように、私も腰を動かす。どちらがより激しく求め、動いているのかなんて知らない。二人で絶頂の階を駆け上がるように、律動をくり返し、口づけ、互いの舌を絡め合う。
「アッ、いいっ、アッ、ンッ……」
さざ波でしかなかった愉悦が、次第に津波となって押し寄せる。最初こそ痛くて仕方なかった行為だけど、今では気持ちよくって頭が真っ白になる。どこかに押し流され、弾け飛んでしまいそうな感覚。
「アアッ……!!」
「――クッ!!」
絶頂に震えた体を強く抱きしめられ、熱を与えられる。二度。三度。
与えられる度、私の体はキツく締まり、つま先まで強張る。
「――明里」
乱れた呼気を整えつつ、グッタリと弛緩した私の頬に触れる一条くんの手。やわらかな微笑み。
――気持ちいい。
嵐のような情交のあとに、ジンワリと伝わってくる愛情。
互いの熱が、私の体の奥で溶け合わさって、混ざっていくような感覚。寄り添う素肌も熱も匂いも心地いい。まるで私のためにあつらえられたような一条くんの体。彼のために用意されたような私の体。
相性がいいというのは、こういうのを言うのかもしれない。
スキあらばキスをして。夜毎に体を交わす。時には一緒にシャワーを浴びて。それだけですまない時もあるけど、サッパリしたら、世那くんを挟んで一緒に眠る。
「どうしたの?」
常夜灯、オレンジの光がボンヤリ灯る和室。スヤスヤ眠る世那くんの向こう、頬杖ついて横たわる一条くん。暗がりでもわかる、優しい眼差し。
「なんでもない。おやすみ」
その視線が妙にこそばゆく恥ずかしくて、布団をひっかぶって目を閉じた。
* * * *
「今日は、水族館に行こうか」
土曜日。
一条くんが言い出した。
本当は公園でボール遊びを予定してたんだけど、天気予報の傘マークはまったく消える気配を見せなくて。当日になっても「だから雨だって言ってんじゃん」みたいなドヤ顔でシトシトと雨を降らせていた。
水族館なら、雨でも楽しめるし。
そういう理由かと思ってたら。
「魚なら、明里も怖くないだろ?」
そっちか。
まあ、魚は追いかけてきたり、かかとを攻撃したりしない。
「世那くん。パパが水族館に連れて行ってくれるって。お魚さんいっぱい、楽しみだね~」
私の苦手対策じゃなく、あくまで世那くんの情操教育。世那くんにいっぱい楽しんで、お魚を覚えてもらう作戦。
「オッカ、ナ~」
おしい。
最近の世那くんは、よく喋る。
水族館は、公共交通機関でのアクセスもよく、久々の電車に乗った世那くんは、それだけで大喜びだった。人見知り発動して泣くかぐずるか不安だったけど、意外に静かに一条くんに抱っこされ、外の景色を見るだけだった。もちろん、何かしら指さして「ア~ウ~」おしゃべりしたけど。
大きな水飛沫をあげ、音楽に合わせて飛ぶイルカたち。
暗い蒼の水の中、白くフンワリゆらめくクラゲ。
キラキラと水面の白い網が降り注ぐ海中トンネル。
ヨチヨチ歩きのペンギン。ヌッとこちらに顔をむけてくれたアザラシ。色とりどりの熱帯。巨大な影のように群れなす小さな魚。
「オッオ~、オ~」
その一つひとつに世那くんが声を上げる。
見るものすべてが新鮮で、見るものすべてが驚きで。
世那くんの世界が少しずつ広がっていくのを感じる。
今こうして見てること、感じてることは彼の記憶に残らないかもしれないけど、それでも、こうして出かけたことはきっと彼の心の糧になる。
そんなことを考えながら、ショップ前にあるベンチに腰かける。
一条くんと店内でぬいぐるみを選ぶ世那くん。なんてかわいい。かわいいけど……疲れた。夕べの後遺症で、腰のあたりがジンワリ重い。昨日はちょっと無理しちゃったからなあ。
「――お疲れ」
目の前に差し出されたペットボトル。差し出してくれたのは一条くん。世那くんだけじゃなく、私のことも気づかってくれる。
冷たいお茶が心地よい。
隣に腰掛けた一条くんに、求められるままペットボトルを手渡すと、彼が続けて残りを口にした。
ゴクリと鳴らされた喉が軽く上下する。
間接キス。――照れてどうする。今更。
「世那くん、楽しそうでよかった」
ベンチから少し離れたところを歩き回る世那くん。その手には青いイルカのぬいぐるみ。
今日一日で一気にお気に入りになった生き物、「イゥカ」。いろいろおしい。そんなに大きくないぬいぐるみなのに、世那くんが持つと抱えるぐらいの大きさになる。
時折イルカの影からヒョコッと顔を見せて、ニコッ。
「ねえ、一条くん」
「なに?」
「いけないとわかってるけどさ。あのイルカ、もっと買ってあげたくなるわ」
イルカだけじゃない。アザラシもペンギンもおさかなも。
ショップのなかのもの。「あそこの棚にあるもの全部いただくわ」したい。
「ダメだろ、それは」
クスクスと一条くんが笑う。
「欲張りな明里には、これを。手を出して」
なに?
言われるまま、何かを受け取るように手を出すと、ひっくり返され下から支え持ち上げられる。――指輪?
左手の中指。
そこにはまったイルカの形、銀色の指輪。
「今日の記念。世那とおそろいイルカ」
「一条くん……」
「ホントはもっと気の利いたものを贈りたいけど。今はこれで」
見ると、少しだけ一条くんの頬が赤い。視線が合うと、ツイッと外されてしまった。
「ありがとう。うれしい。大事にする」
なんたって、好きな人からの贈り物第一号だもん。大事にしないわけがない。ギュッと指輪ごと手を抱きしめる。すっごいサプライズ。涙出そう。
「バッパ!!」
私達のもとに戻ってきた世那くん。イルカを抱えたままこっちを見上げてくる。
「世那」
一条くんが膝の上に座らせようとしたら、ズルリと腕の中から逃げ出した。まるで抱っこ拒否の猫。すべるように私と一条くんの間に陣取って座る。
「バッパ」
世那くんが一条くんを見上げる。
「アァイ!!」
世那くんが私を見上げる。――「アァイ」って私のこと?
私、「タァ、ナッ」から「アァイ」に語形変化?
思わず一条くんと顔を見合わせる。すると、世那くんがニコォッと笑って、イルカのぬいぐるみに顔を埋めた。
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